EP2、あたしが慈円多学園を選んだ訳(中編)
主人公・美園はなぜ「上を目指す」ことに拘るようになったのか?
それは中1の時の体験からだった。
クラスの女子に嫌われ、除け者にされていた杉村綾。
だが美園は「そういう女子の集団性」を嫌い、普通に杉村と話しをする。
杉村は美園だけが話が出来る相手のため、美園にまとわりつく。
それを快く思わない、女子の中で中心人物の熊本典子が、美園に「杉村と話さないように」と忠告した。
その後、しばらくして夏休みになった。
あたしの杉村綾に対する態度は変わらなかったが、
ボス猿女子達も特にあたしに何かを仕掛けてくることは無かった。
夏休み中、あたしはただダラダラ~っと家で過ごしていた。
クラブ活動をしていないあたしは、夏休みは特にお誘いがない限り、どこにも出ない。
日々、テレビを見て、マンガ読んで、ラノベ読んで……
つまり食っちゃ寝の生活を過ごしていた。
状況が変わったのは、二学期に入ってからだ。
クラスの女子全員が、今度はあたしを除け者にし始めたのだ。
あたしが話しかけても、ほとんど返事もしない。
あたしが近づくと、みんながその場から離れていく。
そして、あの杉村綾でさえ、あたしに対してそういう態度を取っていた。
何があったのか知らないが、杉村綾はボス猿女子達の腰巾着となっていたのだ。
彼女達と一緒になって、露骨にあたしを無視する態度を取る。
まぁそっちがそういう態度を取るなら、別にいいか。
あたしはそう思っていた。
あたしが無視されるようになってから2週間くらい経った頃、
小学校時代に仲が良かったが、今は別クラスの女の子と、帰りに一緒になった。
「美園ちゃん、いまC組女子から除け者にされているんだって?」
「そうみたいだね」
あたしは軽く答えた。隠したってしょうがない。
その子はちょっと考えた様子で、次の事を言った。
「あたし、C組の女子で塾が一緒の子がいるんだけど、その子から話を聞いたんだ……」
彼女の話によると、こうらしい。
夏休みに、偶然デパートで熊本さんと杉村さんが出会ったそうだ。
そこで2人が話したところ、思いがけず意気投合し、
夏休み中に他のボス猿女子とも一緒に遊ぶようになったらしい。
それだけなら「めでたし、めでたし」で終わるのだが、ここからが問題だ。
杉村さんがボス猿女子達に、こう言ったそうなのだ。
「天辺さんは、熊本さん達の事を悪く言っている」
あたしはそんな事は一言も言った覚えは無いが、彼女達の中ではそれが盛り上がり、
ついにあたしを除け者にする事が決定したらしい。
(勿論「ボス猿女子」は心の声だ。それを口に出していうほど愚かじゃない)
なお熊本さんは兵太が好きらしいが、あたしと兵太の仲がいいのも、気に入らない原因の一つだと言う。
「教えてくれてありがと。でも大丈夫だよ、あたしは気にしてないから」
その子にはそう言って別れた。
だがあたしの中にも、フツフツと杉村綾に対する怒りが込み上げてきた。
別にクラスの女子に合わせて、あたしを除け者にするのはいい。
熊本達の事だ、彼女の言う通りにあたしを除け者にしないと、その相手を標的にしかねない。
人間、誰しも自分が可愛い。
だが自分の立場を良くするために、他人にデマを吹き込むか?
それも1学期は唯一の話し相手だった、あたしに対して!
くだらない争いは御免だが、杉村綾のやり方は腹に据えかねた。
と言っても、あたしもそれで正面切ってケンカするほど馬鹿じゃない。
そうして”あたしが除け者の状態”は、1ヶ月以上続いた。
この続きは3/8(金)夕方くらいに投稿予定です。