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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第一章 学園一のイケメン御曹司をGETせよ!乙女の疾走編
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EP2、あたしが慈円多学園を選んだ訳(前編)

今回もサブストーリーです。三話ほど続きますが、お付き合い下さい。

今日も赤御門様にお弁当は渡せなかった。

よって今日も兵太と屋上で2人並んで弁当を食べている。

(もちろん、距離は空けている)


突然、兵太が聞いてきた。


「なぁ、おまえって、昔からそんなに『上を目指す!』って言う性格だったっけ?」


あたしはホウレンソウとニンジン入りのだし巻き卵焼きを口に入れながら考えた。


この話って、兵太にもしていなかったのか。


・・・


そう、あたしが『人生、勝たなきゃ意味が無い』と思ったのは、中1の秋からだった。


あたしと兵太は、普通の公立中学校に通っていた。

どこにでもある、一般的な中学校だ。


中学に入って最初の頃は、同じ小学校の子と集まっていたが、すぐに新しいクラスで何人かの仲の良い友達が出来た。


こうしてクラスの中で女子は3つか4つのグループに別れていった。


だがその中で一人、どこのグループにも属さない子がいた。


杉村綾


彼女はまぁまぁ可愛い感じの子だったが、どこか調子のイイ所があった。

そして中1の割りにはマセていたのか、中学に入って早々にバレー部の先輩を付き合いだしたのだ。


これだけでも杉村綾は、他の女子から目を付けられやすいのに、彼女はクラスの男子にも八方美人的な所があったのだ。


クラスの女子連中の中で、彼女に対する不満が蓄積して行った。

特に当時のクラスで、あたしが密かに「ボス女子三人衆」と呼んでいた連中の怒りを買ってしまったようだ。


ついにはある日の放課後、雑談中に、彼女に対する欠席裁判とも言うべき状態になってしまったのだ!


「あの子さぁ、男なら誰でも色目使うでしょ」

「バレー部の先輩にも、自分から言い寄ったんだって」

「『先輩、すっご~い!カッコいいです~』とか媚売っちゃってさ。見てらんないよ」

「それなのにクラスの男子にも、ベタベタして行くよね」

「今日も『石田く~ん、何してるの?』とか言ってさ、バッカみたい」

「あいつ、男の前だと声変わるんだよね。『く~ん』とか伸ばしちゃって」

「マジ、鼻につくよ。あたし、アイツとはもう話さない」

「あたしも!」

「あたしも!」


話が流れていく内に、杉村綾には「クラスの女子全員で、村八分の刑」に決まってしまった。


あたしは「何だかなぁ~」と思いつつも、特に彼女を庇ってやる義理は無いので、何も言わなかった。


と言って、他の女子に合わせて、彼女を無視するつもりも無かった。

(こういう所が周囲から「雰囲気を読まない奴」って思われる点なんだろう、と自分でも思う)


次の日から、杉村綾に対する全女子の態度は徹底していた。

杉村綾が近寄ると、露骨に女子達は会話を止めて離れていくし、彼女には挨拶もしない。


授業中のプリントを回す時も、彼女に対しては顔を向けずに投げ捨てるように渡す。


杉村綾が男子と話すのを見ると、その男子に

「あの子と話さない方がいいよ。あの子は女子全員に嫌われているから」

とわざわざご注進に及ぶ女子までいた。


ある日、あたしが先生の手伝いのために遅くなり、一人で下校しようとした時だ。

下駄箱に杉村綾がいた。


彼女はあたしの方をチラっと見たが、黙って下を向いていた。

既に彼女も十分に、クラスで除け者にされていることを理解していた。


「さよなら」


あたしは普通に声をかけた。

そのまま横を通り過ぎていく。


杉村綾は驚いたように顔を上げると、小さな声で「さよなら」と言った。


それで終わりかと思ってあたしが歩いていたら、後ろから彼女が追いかけてきたのだ。


「あの、天辺さん・・・」


並ぶと彼女はおずおずと聞いてきた。


「なに?」


「その・・・天辺さんは、あたしと話して大丈夫なの?」


「なんで?」


「みんながあたしのこと、避けているみたいだから・・・」


あたしは正直言って、そういう女子達の”群れ作り”みたいなのが嫌いだった。

昔はみんな普通に仲良くしてたのに、小6くらいから、そんな雰囲気が出来てきたような気がする。

そんな事に関わっているのも、面倒臭い。


「話したくない人は、話したくない理由があるんじゃないの。あたしは別に杉村さんと”話さない”って理由も無いから」


そう答えると彼女はホッと安心したようだ。

それからあたしと彼女は数言、言葉を交わした。内容は覚えてない。


別れ際、彼女が言った。


「これからも、あたしと友達でいてくれる?」


あたしは内心「めんどくせーなー」と思いながら


「友達とか何とかじゃなくて、同じクラスなんだから、話しかけてくれればいいじゃん。あたしは別に普通に話すよ」


と答えた。


翌日から、杉村綾は休み時間の度にあたしの席に来た。

どこに行くにも一緒にくっついて来た。

正直「ウザイ」とは思っていたが、特に口に出すことは無かった。


そんなあたしの態度は、ボス猿女子の目には余ったらしい。


ある時、女子トイレでボス猿女子の一人・熊本典子と一緒になった。

手を洗っていると、熊本典子が背後に来た。


「美園、あんた、何で杉村綾なんかと仲良くしてんの?」


「別に、特別仲良くもしてないけど。杉村さんが話しかけてくるから、話してるだけだよ」


熊本典子は強い調子で言った。


「みんなで『杉村綾とは話さないようにしよう』って決めたじゃん!」


は?あたし、そんな事に賛成した覚えはないけど。

あの場にいたからって、全員が賛同したと思われちゃ困る。


「もう一回言っておくけど、杉村綾と関わらない方がいいよ。最後の忠告だから」


熊本はそう言ってトイレを出て行った。

おいおい、手、洗ったか?

この続きは3/7(木)に投稿予定です。

時刻はお昼頃を目指しています。

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