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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第一章 学園一のイケメン御曹司をGETせよ!乙女の疾走編
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7、ああ「キャビアで雑魚を釣る」なんて(前編)

結論から言おう。

あたしはその日の”弁当お届けレース”には負けた。


あたしの全財産をかけたキャビア入りの弁当は、あの人には届かなかったのだ。


ああ、ゆで卵とタマネギを細かく刻んだ上に、たっぷり乗せたキャビアのカナッペ。

クリームチーズとスモークサーモンのキャビア乗せ。

キャビアを散らしたトマト味のパスタ。

キャビアの軍艦巻き。


その全てが、赤御門様には届かなかったのだ。

ああ、神は死んだ!人類への絶望のため!


今日は奴らも本気だった。

本気で『アタシに対する対策』を講じて来ていたのだ。

今日の妨害役はいつもより人数が多い上、明らかにあたしを標的にしていた。

あたし一人に対し、常に三人が張り付いていたのだ。


さらにあたしのスタート・ポジションも悪かった。

4列目8番。一番右側だ。

あたしはスタートで出遅れた上、さらに三人の妨害役に前を阻まれたのだ。

勝ち目がある訳がなかった。


今日の勝利者5人を尻目に、あたしは”特製キャビア弁当”を抱えて、トボトボとその場を立ち去ろうとした。


「ちょっと、待ちなさいよ」

振り替える。

声をかけて来たのは、渋水理穂だ。

前にも言ったが、渋水理穂は次期セブン・シスターズの座を狙っている美少女だ。

学年はあたしと同じ一年生だが、入学当時からその可愛さは際立っていた。

既に男子生徒の親衛隊がいるくらいだ。

まるでアニメキャラのようなパッチリした目。

小顔でスッキリと尖った顎のラインまで、まさしくアニメ顔だ。

トドメは金髪でツインテール。

昨今のヲタク学生には、さぞかし受けるだろう。


「何か用?」

あたしはトゲが無い程度に穏やかに聞いた。

こいつから話しかけてくるなんて初めてだ。

一体、何の用件なんだ?


渋水はちょっと気取った足取りで近づいて来た。

身長はあたしと同じくらいのはずだが、スカートから伸びる太ももは、あたしより長く感じる。

って言うか、こいつ、このスカートの短さで学校来てるのか?

駅の階段とかで、絶対丸見えだろ?


「天辺さん、だっけ?あなた、足が速いのね。今までは隠してたって訳?」

渋水は口許に笑いを浮かべて、腕組みした。

「別に、隠していたって訳じゃないけど。スタート位置が悪いと全力で走れないでしょ」

渋水は目を閉じて「いかにも」って感じでうなずいた。

仕草までアニメキャラな女だ。


「でもさ天辺さん、アナタ、これからはもうトップは走れないわよ」

あたしは無言で渋水を見つめた。何となくコイツの言いたい事はわかった。

「もうアナタは完全にマークされているからね。足が早い上に、お弁当も赤御門さんの受けが良かったそうだから」


まじ?ねぇ、それマジ?

あたしは渋水に問い質したかった。


だがその前に渋水の言葉が続いた。

「それでね、セブンシスターズの連中が手を組んだのよ。妨害役を増やして、アナタ専用の妨害役を付けることに」

そうか、あいつら、そこまでやったか?

今日だけじゃなく、これからずっとアタシを完全マークし続けるんだな。


あたしの様子を伺っていた渋水は、そこで顔を耳元まで近づけてきた。

「それで提案なんだけど、アタシと手を組まない?」

予想通りだったが、驚いたフリをして、渋水の顔を見る。

「アタシ達も協力する事が必要だと思うの。アナタがアタシの仲間になってくれれば、ある程度はトップ争いに入れるように配慮するわ。その分、普段はアタシのためにくじ引きと妨害役の邪魔をお願いしたいんだけどね」


なるほどね。アタシがいい場所のクジを引いたらそれを譲れ、そして普段は妨害役を引き付けて、渋水の邪魔をさせるな、そういうことか?

その見返りは、何回かに一回は先頭集団の争いに加われるようにしてくれるってか?


「どう?悪い話じゃないと思うけど」

渋水は既にあたしが提案に乗る前提で、そう言い放った。

まるで悪役令嬢のセリフだ。


「悪いけど、あたしは遠慮しとく。そういうのは好きじゃないから」

あたしがそう答えると、渋水は目を丸くした。

「断るって言うの?このままじゃアンタ、絶対にトップ争いに入れないんだよ?アタシと手を組まないとチャンスはない!」

「あたしは自分の力で頑張るよ。他人の手は借りない。だから渋水さんも、あたしは気にしないで頑張って」

彼女はあたしを睨み付けた。

「後悔しても知らないから!」

そう言い捨てると、クルリと後ろを向いて去っていった。

最後の捨てゼリフまで悪役令嬢だ。


彼女の言うことにも、確かに一理ある。

あたしはマークされている以上、この先は勝つ事は難しいかもしれない。


だが彼女の提案に乗ると言うことは、彼女の考えた通りにしか、レースに参加できないということだ。

それでは”あたし自身が赤御門様に選ばれる”という大いなる目的を達成できない。


そもそもツインテールなんかで男受けを狙っている女なんて、信用できるか!

この続きは3/3(日)に投稿予定です。

基本的に、月、水、金、土日のいずれか、に投稿したいと思います。

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