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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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13、16歳の誕生日(第三章、最終話)(前編)

「美園、風呂のカビ落とし洗剤を持ってきてくれ」


 階下から父親の呼ぶ声が聞こえる。

自分の部屋でそれを聞いたあたしは、本棚の整理する手を中断し、面倒臭そうに階段を降りて行った。

風呂場横の洗剤置き場から、風呂用カビ落とし洗剤を手に取り、風呂場を開ける。


「おお、サンキュー」


寒いのにTシャツとパンツだけの姿の父親に手渡す。


・・・このくらい、お母さんに言えよ!一階にいるんだから・・・


と思うが、父親は母親が微妙に怖いらしい。

割とあたしに頼む事が多い。

あたしとしても重要な資金調達先である父親の不興は買いたくないので、黙って言う事を聞いている。


・・・


「美園、美園、ちょっと来て!」


今度は母親がお呼びだ。


あたしは軽くウンザリ感を出しながら、母親のいる和室に向かった。


「なぁに?」


母親は和室で掃除機を持っていた。


「ここにある服、これ、みんなアンタのでしょ?いつも言っているじゃない。「和室に放っておかないで、自分の部屋に持って行きなさい」って。まったくだらしないんだから」


「コレ、半分はお姉ちゃんのだよ」


あたしは不満顔を浮かべながら、自分の服をかき集めた。


「じゃあお姉ちゃんの服も、持って行ってあげて!このままじゃ片付かないし、掃除も出来ないんだから!」


母親が半ギレぎみにそう指示する。


・・・なんであたしに言う?・・・


「お姉ちゃんはどこに行ったのよ?」


「今朝からスキー旅行に行ったわよ、だから美園、アンタが片付けて!」


・・・だから、なんであたしに言う?・・・


・・・遊びに行った姉のため、妹のあたしがその後始末をしろってか?


 お姉ちゃんには、このオトシマエはいつか必ずつけて貰おう。

取り合えず将来、親の老後の面倒はお姉ちゃんに見てもらうしかない。

あたしはさっさと嫁に行くぜ・・・


 あたしは不満度MAXで、姉の洋服も一緒にかき集めた。

キャツの服は、ベッドの上にもでもブン投げておけば十分だろう。


 今日は12月29日。

家族揃って大掃除だ。(お姉ちゃんはいないが)

父親も昨日から休暇だ。

朝からみんなで手分けして、家の掃除をしている。

(あたしは自分の部屋の掃除しか、していないが)


 父親は風呂掃除、玄関の掃除、家の窓拭き、車の掃除。

母親は、リビング、和室の掃除、台所の掃除、トイレ掃除、洗面所の掃除と大忙しだ。

あたしは自分の部屋の掃除と、階段・廊下の掃除をし、それ以外に父親と母親のヘルプに入る。


 この日は朝食はトースト、昼はカップ麺で軽く済ませる。

午後4時過ぎには、母親が正月の食材のために買い物に出た。

今日の晩御飯はスーパーのお惣菜だろう。

母親だって、スーパーマンでも時間を戻せる魔法使いでもない。

大掃除の日くらいは、食事を作らないのは当たり前だ。


 夕食はやっぱりスーパーのお惣菜だった。

ちなみに母親が買い物に行っている間に、ご飯はあたしが炊いた。

食事の後、洗い物をしている母親とテレビの前で居眠りしている父親を横目に、

あたしは風呂を入れて一番最初に入らせてもらった。


 風呂を出て、保湿のための乳液を付け、髪の毛を乾かす。

そのままテレビの前にいるが、あんまりテレビも面白くない。

クリスマスは過ぎた、大晦日でもない、12月29日はテレビさえ適当な番組しか流さない。


 母親はあたしと入れ替わりに風呂に入った。

父親はそのまま寝こけている。

掃除した後の汚れた身体のまま、よくこんなに熟睡できるもんだ。


・・・なんだよ、誰も覚えてないじゃん・・・


やるせなくなったあたしは、テレビを消して自分の部屋に上がった。


・・・


 今日は12月29日。

あたしの誕生日だ。

そう記念すべき16歳の誕生日。

昭和時代だったら、16歳と言えば「法律的に結婚できる年齢」だったそうだ。

そんな、ある意味「節目」とも言える年齢になった誕生日なのに、誰も覚えていてくれない。

誰も祝ってくれない。


 この傾向はあたしが小学校6年生くらいからだった。

小学校4年生くらいまでは、大掃除の後、かろうじてケーキくらいはあったのだ。

だが小6くらいから、いつの間にかウヤムヤになってしまった。

誕生日プレゼントは「クリスマスかお年玉に少し色を付ける」程度だ。

それも大抵は忘れていて、後から「そう言えば美園は誕生日だったよな」ってな具合で、

ついでに貰える、って感じだ。

流石に高校生となった今となっては、

親に「あたしの誕生日、ちゃんと祝ってよ!」なんて言わないが、

こんな大掃除だけで過ぎていく

『忘れ去られた誕生日』といのも、切ないものだ。


 こんな日に生まれたから、友達との誕生日会なんてやった事はない。

小学校の頃は


「今月は〇〇ちゃんの誕生日だね。パーティーやるから来てね!」


と言い合っていたのを、羨ましく眺めたものだ。


 ちなみに兵太のヤツは、冬休みに入ってすぐにバスケ部の合宿に行った。

嫌がらせのように『クリスマスを跨いだ日程』でだ。

きっと彼女なんていそうもない、あの『おしゃべり先輩』あたりが日程を組んだんだろうな。

赤御門様なら、こんな女心を蔑ろにした日程は、絶対に組まないはずだ。

よって冬休みに入ってから、あたしは兵太とも会っていない。

兵太が帰って来るのは、明日30日の夜だ。

付き合って最初の誕生日だって言うのに。


「まったく、こんな日に産むなよな・・・」


思わず独り言が出た。

イカン、イカン。

人間、孤独な時にストレスが溜まると、うつ病になるらしい。

独り言はその兆候だと聞いた事がある。


「早いけど寝るか」


・・・その方が、この空しい日が早く終わるしな・・・


と、またもや独り言をつぶやいてしまった。

この続きは、本日午後1時過ぎに投稿予定です。

これで完結となります。

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