12、戦いが終わって、その後(前編)
学園祭に続き、体育祭も終わった。
言ってしまえば「高校生活の大きなイベント二つ」が完了した、ってことだ。
そしてそれに伴い、あたしの学校での立場も大きく変わった。
あたし自身は変わったつもりはないが、周囲の目が変わったと言うべきか?
その一つが「人気投票ベスト7」に入り、インデペンデンツ候補と言われるようになった事だ。
一応説明しておくと、慈円多学園では「セブン・シスターズ」と呼ばれる
学園を支配する権力を持つ、七人の美女がいる。
彼女達は「真・生徒会」を結成し、表面上の生徒会を操り、学園内で強力な権力を誇っているのだ。
そのセブン・シスターズのトップが学園の女王・雲取麗華だ。
彼女はその抜群の美貌とスタイルの良さで、ファッション雑誌の専属モデルであり、
実家は日本有数の企業のご令嬢でもある。
しかしなぜ、たかが高校の非公認生徒会がそこまでの力を持てるのか?
それはこの学園が「全ての女性はあるがままで美しい」という理念を掲げる世界的組織
『女性地位向上安定平穏委員会』通称(AWSSC:オウソック)
がバックにいるからだ。
その団結力と影響力は凄まじく、逆らえばマスコミから広告代理店、そして大企業でさえ業績が傾くと言われている。
人気商売の政治家を操るなんて、お手のものと言われている。
事実、歴代のセブン・シスターズは
「女性国会議員」「女性若年取締役」「女子アナウンサー」「大手マスコミ役員」「大手雑誌女性編集長」「女性起業家」
などなど、日本だけでも数々の分野に「重要な役職者」
として、そのイスに座っている。
慈円多学園の女子にとって「セブン・シスターズ」の地位は単なる憧れではなく、
「人生の勝利者への切符」とも言えるのだ。
そんなセブン・シスターズだが、通常は「インデペンデンツ」と呼ばれる女生徒の中から選ばれる事が多い。
インデペンデンツとは、その名の通り「独立した人気や勢力を持っている生徒」と言う意味だ。
幸か不幸か、あたしは学園祭の人気投票ランキングで同率7位となり
「インデペンデンツ候補」と呼ばれるようになった。
これは学校の様々な場所で話題になっている。
今まであたしに目もくれなかった人までが、あたしが通るだけでチラ見するようになった。
あたしを見て、ヒソヒソと何かを話している女子もいる。
かと思えば、今までまるで接点が無かったのに、やけにあたしに近づこうとする他クラス女子もいた。
同じ事は男子にも言えた。
遠目で
「あの女がランキング7位?ぜんぜん大したことないじゃん」
(うっせー、オマエに何か関係あるか?)
「意外にインデペンデンツ候補って、簡単になれるのかな」
(あたしだって、なりたくてなった訳じゃねーよ!)
なんて言うのは、まだマシな方だ。
この前なんか、あたしが印刷室でクラスのプリントを印刷していた時だ。
外にいた男子4人が、誰もいないと思って(印刷室は校舎の端にあり、普段はあまり人がいない)
デカイ声で、こんな話をしていやがった。
「1年E組の天辺美園って見た?」
「見た見た」
(は?あたしはパンダや珍獣じゃねーぞ!)
「どう思う?」
「まー普通な感じじゃねー」
「だよな~」
(なんでアンタラが判定してんだ?)
「俺は普通に可愛いと思うぞ、天辺」
(お?マトモな奴もいたか?)
「オマエ、あんなのが好みなの?」
「天辺なんて、渋水に比べると大分落ちるだろ?インデペンデンツって柄じゃねーよ」
「そうそう、渋水はスタイルもいいしさ。胸もちょうど良く大きくDカップって感じじゃん」
(ち、ちくしょう。言いたい放題言いやがって。しかし渋水相手じゃ容姿に関しては何も言えないよ・・・)
「俺は巨乳は好きじゃないんだよ。どっちかって言うと、胸は小さくていい」
(そうだそうだ!女の価値を胸で測るんじゃない!もっと言え言え!)
「ホラ、これ見ろよ。この前の学園祭の時にセクシーナース姿」
あたしは手が止まった。
あの画像、まだあるのか?
既に学校裏サイトと化している非公認学園内サイト『聞き耳ジエンタ』には、削除依頼を出しておいたのに。
「ほら、この胸の空き具合。もうちょっとで見えそうだろ?」
「おお、本当だ」
「確かにこういう『見えそうで見えない』ってそそるよな」
(バ、バカ!なんて写真を持ってるんだ?そんなもの、いつまでもスマホに入れているんじゃない!さっさと消せ!)
「俺、こういう『小ッパイ』子が好きなんだよ。片手で収まるような、さ」
(あ?『小ッパイ』って何だ、『小ッパイ』って。誰が『片手で収まる』って?アンタ、見た事あるのか?ウチの父親でさえ、小5の時からあたしの胸なんて見たこと無いはずだ!)
「まあ、そういうのも確かにいいかもな」
「俺も出来れば全部見たいよ」
「うん、見たい見たい!この子、足もキレイだしな」
「意外に大胆な子っぽいから、頼めば見せてくれるんじゃね?」
(馬鹿野郎!テメーらなんかに見せる訳ねーだろ!弥勒菩薩が降臨する56億7千万年後まで待ったって、見せねーよ!)
これ以上、放っておくと、どこまで好き勝手な事を言うかわからない。
あたしは大きく咳払いをし、わざと物音を大きく立てて、印刷作業を開始した。
それで不埒な男子共は、印刷室内に女生徒がいる事に気づき、コソコソとその場から逃げて行った。
クズ男子どもが!
将来、セクハラで訴えられて、一生を棒に振っちまえ!
あたしはため息をついた。
確かにあの『学園祭でのセクシー・ナース姿』は、学内男子の目を引いたようだ。
だがあの姿は、あたしにとってこの上なく不本意な姿だ。
あたしには現在、付き合っている彼氏・幼馴染の兵太がいるが、兵太だってイイ気はしないだろう。
口には出さないが、あの件を不満に感じているのは、何となくわかる。
この続きは、本日13時過ぎに投稿予定です。
 




