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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
110/116

11、体育祭の激闘(最終決戦)

 女子騎馬戦、第三戦。

あたしは『咲藤同盟軍』の最先端にいた。

あたしの左右と後ろには、如月七海、佐野美香子、そして関本美香や大場薫などのガールズ・バンドのメンバーがいた。


「七海、さっきの打合せ通り、頼むね。みんなを引っ張って行って!」


「了解!目一杯暴れてみせるよ。美園は適当な所で、うまくやって!」


 周囲を見渡すと、みんなも同じように無言でうなずく。

前方を見渡すと、正面に横の壁のように展開した雲取・渋水軍が見える。

 だが総大将である雲取麗華や、副将の渋水理穂のクラスは、そのさらに奥に配置されているため見えない。

七海があたしの横で面白そうに言った。


「この作戦が成功したら、『慈円多ジャーナル』ではビッグニュースになるよ!」


あたしも七海の方を見て、不適な笑いを返す。


「それではただいまより、女子騎馬戦の第三回戦を開始します」


戦いを告げるゴングだ!


「行くぞおっ!」


あたしは騎馬上から力強く号令をかけた。


「行くぞおっ!」


「行くぞおっ!」


「行くぞおっ!」


 周囲から、同じような掛け声が響く。

鬨の声、という奴だろうか?

 敵は眼前に広がる、同様の騎馬軍団。

だが敵は、あたし達の二倍以上だ。

あたしの、いやあたし達の、最大の戦いが始まった。


「全軍、突撃!」


 あたしの掛け声と共に、一斉に『咲藤同盟軍』10クラスが突き進んだ。

壮絶な雄叫びとクラウンドの土煙と共に、正面の『雲取連合軍』に突き進む。


 対する雲取軍は、ほとんど前には出てこない。

『鶴翼の陣』は基本は待ち受けの陣形のためだ。

攻めて来た敵を鶴の翼が覆うように、敵を取り囲んで殲滅する。


 やがて我が軍の先鋒が、敵軍と接触した。

そこから激しい戦闘が始まる。


 敵は二倍以上だ。

だが『魚鱗の陣』なら後方は味方のため、後ろからいきなりハチマキを奪われる事は無い。

最前線が劣勢になった場合は、いったん前の味方が後方に引き、後方が前に出る。

これを繰り返して前に進むのが『魚鱗の陣』だ。


 だが敵はその圧倒的な数を武器にして、『鶴翼の陣』の両端を包み込むように窄めて来た。

こうして取り囲んで、敵を殲滅するのだ。


 あたしの騎馬は、このタイミングでいったん後方に下がる。

そのまま1-Eのクラスからも離れて、『魚鱗の陣』の最後方まで下がった。

そこには既に咲藤ミラン、菖蒲浦あやめ、海野美月、鳳カンナ、斉藤カノンの騎馬が揃っていた。

全員が頭巾のように、ジャージの上着で顔を隠すように頭に巻いていた。


「そろそろいいか?」


咲藤ミランがそう聞く。


「まだです。もうちょっと鶴の翼が崩れて、乱戦になってから」


あたしは周囲の状況を見ながら、そう答えた。

そして同様に、ジャージの上着を頭に巻いて覆面にする。


 あたし達の軍は、非常に良く戦っている。

圧倒的な数の敵を前にして、かなりの圧力を掛けて前に進もうとしている。

その成果は、二段構えになっている『鶴の翼』の形が、徐々に崩れている事からも解る。


 だが所詮は多勢に無勢。

敵本陣がある後方の渋水理穂、雲取麗華のクラスまでは届かない。

渋水のヤローは笑いながら「圧倒的じゃないか、我が軍は」とでも言ってるのかな?


 だが今に見ていろ。

目にモノ見せてやる!


 敵の最左翼が崩れた。

『中立組』が配置しているエリアと接触しそうだ。


「いまだ!」


 あたしはそう叫んで、味方の『魚鱗の陣』を後ろから抜け出した。

あたしの後を、咲藤ミラン、菖蒲浦あやめ、海野美月、鳳カンナ、斉藤カノン、他四つの騎馬が続く。


 あたしは自分の陣から見て左側、つまり『中立組』のいる方に向かった。

中立組は、突然あたし達が自軍を抜け出して、襲い掛かって来たように思ったのだろう。

中立組があたし達に対して、身を固くする。

彼女たちは基本的に「他の抽選券を奪い取るより、自分達の抽選券を守る」戦略なのだ。


 だがあたし達は、そんな中立組をまったく無視して、その後ろ側を通り抜ける。

前方では中立組と雲取軍の最左翼が接触し、小競り合いが始まっていた。


 そんな中立軍も雲取軍の最左翼1-Jも無視して、あたし達はその背後に回った。

右手には京奈月理鈴の3-Lがいた。

だが突然現れた高々十騎の騎馬チームを、真正面から相手にする事は無かった。

それとも京奈月理鈴に「静観してくれ」と頼んだ約束を守っているのか?


 京奈月理鈴の3-Lを回り込んだ。

目の前には横に伸びた


[竜宮翠子3-F][雲取麗華3-H][渋水理穂1-G]


の軍がいる。


 あたし達は二手に分かれた。

あたし、鳳カンナ、他二つの騎馬が、渋水理穂のクラスに、

咲藤ミラン、菖蒲浦あやめ、海野美月、斉藤カノン、他二つの騎馬が、雲取麗華のクラスに、

横腹を突く形で、襲い掛かった。


「なに?」

「どうしたの?」

「誰よ、コレ!」


 あたし達は他の騎馬には目もくれず、一直線に渋水のいる騎馬を目指した。

思った通りだ。


 渋水はクラスの中央後方に、そして多数の『抽選券の封筒』を頭上に掲げていた。

あたし達4騎馬は一丸となって突っ込む。

混乱した状況の中で、渋水が初めてあたしの方を見た。

まだあたしを認識していないみたいだ。


 あたしは騎馬自体を渋水の騎馬にぶつけるように突き進んだ。

横腹から突っ込まれた渋水の騎馬は大きく体勢を崩した。

その隙に、まるで王冠のように抽選券の封筒を大量に装着したハチマキを、渋水の頭から奪い取る。


「ウソッツ!」


渋水が叫んだ時には、あたし達の騎馬をそのまま駆け抜けていた。

渋水の軍勢を貫通した事になる。


 すぐ横には、同様に雲取麗華の軍勢を突破して、

やはり大量の封筒を付けたハチマキを手にした咲藤ミランがいた。

あたしは咲藤ミランと目を合わせると、互いに横に並んだ。

そしてあたしは渋水のハチマキを、咲藤ミランは雲取麗華のハチマキ高く掲げて、大声で叫んだ。


「雲取麗華と渋水理穂のハチマキは、あたし達が取ったぞぉ~!」


 その言葉が聞えたのか、雲取連合軍の動きが一瞬止まる。

そこにあたし達の正規軍が正面から押し込んだ。

敵は総崩れとなった。

魚麟が鶴の翼を突き破ったのだ。


 そこで競技時間5分が完了したらしく、

「騎馬戦終了です」のアナウンスが流れる。


「「「ヤッター!勝った!!!」」」


あたし達は一斉に歓声を上げた。

『咲藤同盟軍』の完全勝利だ!


 これがあたしの作戦。

「絶対優位」を自認している雲取麗華と渋水理穂の隙を突く作戦だ。

 第二回戦から、大半の抽選券は大将と副将である

雲取麗華と渋水理穂が持っていると予想していた。

そもそも渋水が自分の抽選券を、他人に任せるはずがない。


 数の上で劣勢のあたし達は、その急所だけを攻撃する作戦を取ったのだ。

言うなれば『鶴翼の陣VS魚鱗の陣』と『織田信長の桶狭間の戦い』の合わせ技だ。

まずは正規軍で『鶴翼の陣VS魚鱗の陣』の正面戦闘を展開する。

ある程度、陣営が乱れた時に、少数部隊が横手に回って、敵本陣の攻撃する。

そのために『中立組』を隠れ蓑にしたのだ。

さらには二列目最左翼の『京奈月理鈴のクラス』にも、念の為に静観する事を約束させた。

『力対知恵』の戦いで、あたし達は雲取・渋水連合軍に、見事に勝利を収めたのだ。


 敵側はほとんどが呆然としている。

あの女王・雲取麗華でさえ、言葉もなくあたし達を見ていた。

だが渋水理穂だけは、激しい怒りを秘めた目で、あたしを睨み据えていた。

この続きは、明日7月18日(木)の7時過ぎに投稿予定です。

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