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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第一章 学園一のイケメン御曹司をGETせよ!乙女の疾走編
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5、念願のポールポジション!(その3)

慈円多(じえんた)学園 第一上級学生食堂 VIPラウンジ…


あたしは今、憧れの赤御門凛音(せきみかどりおん)様と一緒に、その中でも最上階テラスの通称”ホワイト・テーブル”に座っている。

2フロア分をぶち抜いたこの上級学生食堂は、階下を通って普通学食に行く生徒達を見下ろすことが出来る。

ここは、全部で10テーブル20席しかない”選ばれた人間だけの席”なのだ。


ウェイターがやって来て凛音様に尋ねる。

「赤御門様、お飲み物は何にしましか?」

「フィリコのキングキャップを2つ。あと食後のコーヒーはコピ・ルアクを2つ」

ウェイターはうやうやしく一礼すると下がって行った。


フィリコのキングキャップ……1本720mlで1万円は越えるというミネラル・ウォーター。

たかが水にどうしてそんな値段が付くのか、あたしの頭では理解ができないが、ともかくセレブ御用達のすごい水だ。


そしてコピ・ルアク。

これはコーヒーの実を食べたジャコウネコの糞から取り出した、最高級コーヒー豆だ。

こちらも一杯で1万円近い値段がする。

動物の糞を食べてみようってだけでも罰ゲームなのに、それを飲むのに一万円なんて常軌を逸しているんじゃないか?


しかもどちらも1人分だけで、優にあたしが作ったお弁当の材料費を越えている。

なんだか申し訳ない気がして、あたしは小さくなった。


赤御門様は私の弁当を開いた。

まずは鶏のひつまぶしを一口。

「……うまい……」

赤御門様の口からその言葉が漏れた。


――やった!――

ついにその言葉を言わせる段階まで来た!


次に赤御門様は豚の角煮を口にする。

数回咀嚼し、ゆっくりと飲み込んだ。

さらに野菜のテリーヌ風酢漬けや一口サラダも、次々に口に運んでくれる。

あっと言う間に私の力作弁当は空になった。

彼は1本1万円のミネラル・ウォーターを半分ほど飲み干すと、満足したように言った。

「いや、本当に美味いよ。ウチのシェフでも弁当でここまで作れる人は中々いない。君、本当に料理が上手なんだね」


あたしはもう有頂天だった。

これで御曹司の記憶に”天辺美園(あまべみその)”の名前は、しっかりと焼きついただろう。

あたしの人生の階段は、一段上に進んだのだ。


「これからも赤御門先輩に食べて貰えるよう、一生懸命に作ります。また是非食べて下さい。よろしくお願いします!」

私は深々と頭を下げ、普段より1ランク高い声で、可愛くお願いした。

「勿論だよ。本当に美味しかった。食が進む弁当だったよ。お腹一杯になれたしね。こっちこそ、またよろしく頼む」

赤御門様は神々しい爽やかな笑顔を、私に向けてくれた。

――やった!――

本日2度目の、心の中でのガッツポーズ!


その時、2フロア下の一般学生用学食のフロアが目に入った。

そこを兵太が歩いていくのが見える。


そっか、あたしが赤御門様にお弁当を渡すことに成功したことを、兵太は知る方法がないのだ。

それで今まで屋上で、あたしが来るのを待っていたのかもしれない。

……今からだと、学食のパンとか残ってるかな……

あたしの心が、チクっとだけ痛んだ。


「悪いんだけど、僕は5時間目の授業の準備があるんだ。先に行くね。君はもう少しゆっくりしていっていいよ」

赤御門様はそう言って席を立った。

本当はもうちょっと個人的なことを、色々話したかったんだけど……まあ、仕方が無い。


赤御門様がいなくなった以上、この席に一人で座っているのは忍びない。

あたしは2つ分の弁当を片付けると、テーブルを離れた。


下に降りる階段の手前、咲藤ミラン、雲取麗佳、天女梨々香の3人がいるテーブルが見えた。

3人ともあたしの方を、嫌な目つきで睨んでいる。

その前を通る時、あたしにわざと聞えるように、彼女達が話し始めた。


「でもあ~んな粗末で貧乏臭い弁当を、赤御門さんが選ぶなんてね~」雲取麗佳の声だ。

「ほぼ茶色一色でしたものね。あとは野菜だけ?コンビニ弁当かと思いましたわ」と天女梨々香

「まぁ、赤御門さんも男の子だからね。ボリュームだけ、欲しい時もあるでしょ」"だけ"を強調してそう言ったのは咲藤ミランだ。

「でもあんな粗末な弁当を人前に出せるなんて、神経を疑うわぁ。あたしなら犬のエサにしか出来ないけど」

「あら、ウチの犬なら食べませんよ、あんなの。だって産地もわからない素材で作った料理なんて」

「いつも私達のちゃんとした弁当を食べているからね。たまにはゲテモノ料理を試してみたくなったんじゃない?」

そう言って3人は笑い声を上げた。


あたしは拳を握り締めた。

クソ女共がっ!

聞こえよがしに当てこすりやがって!

テメーらが負けたのが、そんなに悔しいか?

だったら実力で勝ってみせろよ!

そりゃ、あたしはアンタらみたいに金の掛かった食材は使えないけど、その分、調理法と手間でカバーしてるんだよ!


あたしは下唇を噛みしめ、無言で階段を降りていった。

この続きは2/25(月)に投稿予定です。

基本的に、月、水、金、土日のいずれか、に投稿したいと思います。

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