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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
109/116

11、体育祭の激闘(寝返り)

 そこに七海が駆け込んで来た。


「大変!1-A、1-Bが、雲取陣営に寝返った!」


「「なんだって!」」


あたしと斉藤カノンが、ほぼ同時に声をあげた。


「それだけじゃない。様子見だった1-J、1-Kも雲取陣営に着いたんだよ!」


あたしはギリギリと歯噛みしながら、雲取と渋水がいる陣営を睨んだ。


・・・クソッ、このままじゃ負けは確実だ・・・


既に雲取・渋水の陣営は、勝ちを確定させようとしているのか、自分達に着いたクラスを集結させているようだ。


「斉藤さん、すぐに咲藤先輩の所に行きましょう!みんなで対策を!」


・・・


 咲藤ミラン、菖蒲浦あやめ、海野美月、鳳カンナ、斉藤カノン、そしてあたしの6人が、咲藤ミランの元に集まった。

念の為、情報に通じている如月七海にも一緒に来てもらう。


「現状の勢力はこうだ」


咲藤ミランが紙を広げた。


【雲取連合軍】22クラス

<中核組>

雲取麗華(3-H)、天女梨々花(3-B)、竜宮翠子(3-F)、京奈月理鈴(3-L)

藤宮姫野(2-D)、ミリア・ザイツ・橋立(2-F)、夕霧玲奈(2-K)、日野原葵(2-B)

渋水理穂(1-G)、

<支援組>

3-D、3-E、3-G、3-I、

2-E、2-L

1-H、1-I、1-L

<後追い組>

1-J、1-K

<寝返り組>

1-A、1-B、


【咲藤同盟軍】10クラス

<中核組>

咲藤ミラン(3-J)、菖蒲浦あやめ(3-K)、海野美月(3-C)

鳳カンナ(2-A)、斉藤カノン(2-G)

天辺美園(1-E)

<支援組>

2-H、

1-C、1-D、1-F


【中立組】4クラス

エスティ・ロスナバーグ(2-C)

3-A

2-I、2-J


その紙を見つめた菖蒲浦が言った。


「クラスだけで見ても、敵側22クラスに対し、コッチは10クラス。中立組4クラスが動かないとしても、コッチが圧倒的に不利なのは間違いないわね」


さらに海野美月が追い打ちをかける。


「しかもコッチが二回戦で負けた騎馬を失っているのに対し、雲取側は抽選券を温存していたから、負けた騎馬もほとんど復活できる」


咲藤が難しい顔でうなずいた。


「そうだ。向こうは復活したゾンビ騎馬がいる。こっちは集めた抽選券で復活させても、なお及ばないだろう。実際の騎馬の数では22対8くらいの差がある」


菖蒲浦がため息をついた。


「この圧倒的な数の差で押し囲まれたとしたら、私達は全滅、ってことになるのかしら・・・」


 あたしはその会話を聞きながら、歯を噛み締め、拳を握り締めた。


・・・このまま渋水の軍門に下るなど、絶対に納得できない。何とか逆転する方法はないのか・・・


「見ろ、雲取の方はもはや勝利確定のつもりか、向こう側に味方の陣営を全て集めているぞ」


その言葉を聞いた時、あたしの頭の中に何か響くものがあった。

雲取・渋水陣営を眺める。

敵は大群となった自陣営を、横に長く展開している。


・・・圧倒的な数の差、押し囲んで全滅、横に長く展開・・・


「咲藤先輩、2-Cのエスティ・ロスナバーグは、まだ完全中立なんですか?他の中立クラスは?」


突然のあたしの勢いに、咲藤ミランは一瞬おどろいていた。


「え、ああ。おそらくエスティは完全中立だと思う。あたしはエスティとはけっこう交流があるんだ。それから2-Iと2-Jはわからないが、3-Aはクラス全体が反・雲取派なんだ。あたしらに味方はしないまでも、雲取の陣営には付かないだろう」


「2-Iは大丈夫よ。それはあたしが確認している」


斉藤カノンが、そう補足した。


「それ、もう一度確認して貰えますか?それから以前に『京奈月理鈴に最初は静観して動かない』って約束、アレはまだ有効か確認できますか?」


「一応まだ有効だと思う。なんだ、天辺。何か策があるのか?」


全員の目が、期待と不安を持ってあたしを見る。


「ええ、中立組が中立を保ってあたし達を攻撃せず、京奈月理鈴が最初静観してくれれば、もしかしたら勝てるかもしれません」


あたしは不敵に笑った。

それを見て咲藤ミランが満足げに笑って、あたしの肩に手を置いた。


「よし、わかった。ここは天辺の作戦に賭けるとしよう。天辺、今からオマエがこのチームの総大将だ。頼んだぞ!」


あたしも力強くうなずく。

渋水理穂なんかに負けてたまるか!


・・・


「京奈月理鈴の3-Lは、抽選券を20枚にするなら、最初の3分はある程度なら静観してもいいって」


如月七海がそう連絡してきた。

新聞部の先輩が3-Lにいるため、七海が交渉役を買って出たのだ。


「わかった。それで手を打つ。そう伝えて」


あたしは電話を切った。

京奈月理鈴、セブン・シスターズの一人の割には、セコい野郎だ。


「エスティ・ロスナバーグと3-Aは、三回戦も中立を貫くと言っている。こっちが攻撃しない限り、向こうも手を出して来ない」


「2-I、2-Jも同じよ」


咲藤ミランと斉藤カノンがそう言った。


 いまここに居るのは、咲藤ミラン、菖蒲浦あやめ、海野美月、鳳カンナ、斉藤カノン、あたしの6人だ。

あたしは作戦の全容を説明した。


「敵は大部隊だから、三回戦が始まる直前には、部隊を展開できない。だから今から陣営の準備をしている」


あたしは紙を広げた。


「敵の陣営はコレです」


--------------------------------------------------------------------------------

               [竜宮3-F]

               [雲取3-H]

               [渋水1-G]

 [京奈月3-L][藤宮2-D][ミリア2-F][夕霧2-K][日野原2-B][天女3-B]

[1-J][1-K][2-E][1-H][1-I][3-D][3-E][3-G][3-I][1-L][2-L][1-A][1-B]

          ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓

              (攻撃方向)

--------------------------------------------------------------------------------


「この陣形は『鶴翼の陣』。大部隊が敵を包囲して殲滅するのに適した陣形と言われています。しかもこの陣形は『Y字型』にして、大将のいる本陣を後ろ側にして、正面からの防御にも強いです」


 あたしはこれでも『微妙に歴女』だ。

戦国時代なら上杉謙信を描いた海音寺潮五郎の『天と地と』、武田信玄を描いた新田次郎の『武田信玄』、斉藤道三と織田信長を扱った司馬遼太郎の『国盗り物語』くらいなら読んでいる。

決して『ラノベしか読んでいない』訳じゃない。


 菖蒲浦がそれを見てうなずく。


「なるほど、天辺さんの言う通りね。するとこちらは『魚鱗の陣』で挑むのかしら?」


さすがは華道部部長、彼女もわかっている。


「ええ、あたし達の陣形はこれです」


--------------------------------------------------------------------------------

      (攻撃方向)

      ↑↑↑↑↑↑

       [天辺1-E]

       [1-C][1-D]

     [1-F][鳳2-A][2-H]

[斉藤2-G][菖蒲浦3-K][咲藤3-J][海野3-C]

--------------------------------------------------------------------------------


「『鶴翼の陣』に対しては『魚鱗の陣』が有効と言われています。実戦でも武田信玄が三方ヶ原の戦いで徳川家康を打ち破り、逆に家康は関ヶ原の戦いで西軍の鶴翼に魚鱗で対峙してます」


咲藤ミランが広げた紙を指さして指摘した。


「歴史上の話はわかったが、この状態でも敵と圧倒的な戦力差がある事は変わらないだろう。取り囲まれたら、どうにも出来ないんじゃないのか?」


菖蒲浦も意見を述べる。


「天辺さんの言う通り、『鶴翼の陣』には『魚鱗の陣』で挑むのがセオリーだけど、雲取側も強引な突進を警戒して、『Y字型』にしている上、鶴翼の展開も前後の二段構えにしているわ。そう簡単に雲取の本陣まで切り込めると思えないけど?」


あたしはニヤリと笑って説明した。


「確かに『鶴翼の陣』が包囲して殲滅する陣形に対し、『魚鱗の陣』は突進突破型の陣形。だけどあたし達の狙いは、その突進突破型である事が重要なんです」


そう言って敵の陣形を書いた紙を指さした。


「雲取側は、後から参加した1-J、1-K、1-A、1-Bは最前列の両端に配置してます。つまりこの4クラスは雲取に信頼されていない。同じ理由で二列目の最右翼と最左翼は、天女梨々花と京奈月理鈴。この二人も信頼されていない。実質、雲取麗華に信頼されているのは、本陣前の渋水と背後を守る竜宮だけです」


あたしは全員の顔を見渡した。


「この点と『中立組』があたし達の左側に陣取っている点が、あたし達の勝機です」

この続きは、明日7月17日(水)投稿予定です。

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