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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
107/116

11、体育祭の激闘(女子騎馬戦・一回戦)

 そして午前最後の種目・女子騎馬戦の一回戦だ。

全校の女生徒が騎馬チームを組んで参加する。

あたしの騎馬チームは、七海の計らいであたし以外は重量級だった。

女子柔道部員2名とウェイトリフティング部1名、あたし以外は60キロ級女子だ。


 だがここで問題が発生した。

女子柔道部の一人・猪熊重美が

「武者役はぜひ自分にやらせて欲しい」と言いだしたのだ。

どうやら他クラスで、叩きのめしたい相手がいるらしい。


 だがあたしの体重は43キロだ。

対する彼女の体重は65キロ。

誰が考えても、あたしが武者役の方がいいはずだ。

あたしも必死に抵抗したが、猪熊さんが引かなかった。


「あたしの腕力なら、騎馬上の武者役を引きずり倒すことが出来る!」


と言うのが、彼女の主張だった。


 開始時間が迫ってきた。

これ以上、言い争っていても仕方が無い。

あたしは「二回戦以降は、あたしが武者役で上になること」を条件に、一回戦では騎馬になる事を承諾した。

騎馬のバランスを取るため、あたしが前の馬で、残り二人が左右の馬となる。


 騎馬の形を作り、猪熊重美を乗せて立ち上がる。

が、重い!

予想以上に重い。

左右の重量級二人が「あたし達が支えるから」とは言ってくれたものの、猪熊重美の65キロの体重が、あたしの細い肩にのしかかる。

思わず脚がよろめいた。

いやいや、やっぱり体重43キロのあたしが馬で、65キロの彼女が上って、絶対に間違っているだろ?


「それではただいまより、女子騎馬戦の第一回戦を開始します」


騎馬戦開始のアナウンスがスピーカーから流れた。


「うわぁーーー!」


と言う声と共に、全校女子の騎馬が突進して行く。


 一方、完全に過重積載・重量オーバーのあたしは、ヒョロヒョロとしか進めない。


「コラ、美園。もっと気合入れて走れ!周りに遅れてるよ!」


猪熊さんの叱咤が跳んだ。


「無理言わないでよ。これが精一杯だよ!」


そう返すあたしに、猪熊がさらに喚いた。


「大丈夫だ、美園なら!アンタの脚力なら、まだまだ行ける。もっと本気を出せ!」


バッカ野郎!あたしの脚力は『あたしの体重』を支えるためであって、アンタの体重じゃない!

65キロは完全にキャパ・オーバーなんだよ!


 だがあたしはその文句を飲み込んだ。

代わりに下腹に力を込めて、必死に走る。


・・・きっと今、凄い顔してるだろうな。この顔を写真に取られたら、人気女子ベスト7から即落ちするんじゃないか?・・・


 猪熊重美は言うだけあって、確かに腕力は強かった。

2チームの騎馬を一度に相手にして、両方の腕を持って引き倒そうとする。

だがその腕力も、下で支えるあたし達があってこそ、だ。

左右の二人が大分カバーしてくれているが、もうあたしは限界だった。


・・・ヤバイ、脚が生まれたての子鹿のように、プルプル震えている・・・


 その時だ。

3つ目の騎馬が後ろから忍び寄り、あっと言う間に、猪熊が着けていた『抽選券入りハチマキ』を奪い取って行った。


・・・あ、あ、あ・・・


これであたし達は、一回戦は敗退だ。

腕力がある猪熊なら、負ける事は無いと思っていた考えが甘かった。


 騎馬を解体して、スゴスゴと陣地に戻る。

途中、猪熊が言った。


「すまない。まさか後ろから来られるとは。やっぱり美園が武者役の方が良かったようだ」


・・・いまさら言ったって、遅いんだよ!・・・


あたしは心の中で罵ったが、頭の中は別の事で一杯だった。


 あたし達のような普通の騎馬は、4人分の抽選券を武者役のハチマキに着けている。

いま取られたのは、4枚の抽選券なのだ。

あたしは元々3枚持っていたが、他の3人は一枚ずつだ。

あたしには2枚残っているが、4人分には足らない。

つまり二回戦以降に参戦できないのだ!

ちなみに残りの2枚は咲藤ミランに預けている。

彼女が負ける事はまず無いだろう。


 あたしは思いっきり落ち込んでいた。

あれだけ咲藤・菖蒲浦が期待をかけてくれ、作戦会議にも参加していたあたしが、

一回戦敗退とは・・・

どのツラを下げて、彼女達に言えるのだろう?


・・・


 体育祭、昼食。

あたしは傷心のまま、兵太と一緒にお弁当を食べようとした。


「ただいまより、臨時のお弁当お届けレースを開催します。今から放送する男子とお弁当を食べようとする女子は、体育祭運営委員の所に行き、レースに参加して下さい。3年C組・赤御門凛音君。3年E組・青磁館翔人君。3年C組・紫光院涼君。・・・」


 続々とファイブ・プリンスおよびその候補であるインデペンデンツの名前が呼び上げられていく。

みんな大変だなぁ。

この過激な体育祭の中で、さらに臨時のお弁当お届けレースまでやらされちゃって。

しかも体育祭のお弁当は、通常の『5回分一緒に食べたこと』にカウントされるんだよな。

こう言っちゃ何だが、あたしはフツー男子の兵太と付き合っていて良かった。


「・・・1年E組・中上兵太君・・・」


ハッ?

あたしは自分の耳を疑った。

いま、何て?

その場で『ステータス:石化』状態だ。


「ヤッホー、美園」


如月七海がノーテンキな声をかけて来た。


「すっごいね~、中上君、臨時お弁当お届けレースの対象者になってるじゃない。やっぱ人気あるね~。あたしの言った通りでしょ」


・・・何ダッテ?・・・


あたしは空ろな目を、七海に向けた。

すぐ後ろに学級委員の佐野美香子も一緒にいる。


「あたしも事前アンケートで中上君の名前を書いちゃった。美園には悪いと思うけど、体育祭の時くらいいいよね?他のクラスでも中上君のこと狙っているヤツがいるしさ」


まったく悪びれもせず、そう言いやがる。

それでもまだ放心状態だったあたしに、七海が呼びかけた。


「ホラ、臨時お弁当お届けレースの受付が始まっちゃうよ。早く運営委員の所に行かないと」


それであたしは我に返った。

既に佐野美香子は、体育祭運営委員のテントに向かっている。

他にもぞくぞくと女子がテントに集まっていた。


・・・おのれ、裏切り者どもめ!全員、返り討ちにしてくれるわ!・・・


あたしはデーモン族と合体したがごとく、全身から呪いと怒りの気を放ちながら、テントに向かった。


 結局、兵太への『お弁当お届けレース』に参戦した女子は21名だった。想定外の多さだ。

どうやら「女子への事前アンケート」で20名を越える場合、臨時のお弁当お届けレースが開催されるらしい。

内3人はあたしと同じE組だ。


 そして川上純子ちゃんが参戦しているのは当然として、彼女の1-Lから3人も参加していやがった。

どうやら川上さんが誘ったらしい。

チクショウ、そんなにしてまで、あたしの邪魔をしたいか?


 それだけではない。

何と驚いたことに、3年生が2人、2年生までもが7人もエントリーしていたのだ!


「中上君、かわいい!」


って上級生女子達に大人気だったのだ!

兵太のヤロー、あたしの見ていないところで、他の女に色目使ってたのか?

油断も隙も無い。


 レースは100m。何組か同時にレースが行われる。

20人くらいだと、特にスタート位置を決めることなく、適当に集まって一斉にスタートだ。

あたしも周囲の女を押しのけて、前の方のスタートを陣取った。

100mくらいだと、後ろの方だとさすがのあたしも挽回できない可能性がある。


「スタート」


その声と同時に、あたしは一気に5人くらいをゴボウ抜きにした。

そのままトップで独走する。

真っ先に兵太の前にたどり着いた。


「ハイ兵太、お弁当!さ、もういいでしょ、行くよ!」


他女子がたどり着いて、何かを言うヒマを与えない。

他の女子がお弁当を開いて何か言いたそうにする中、あたしはポカンとしている兵太の手を引き、その場から強引に立ち去らせた。

まったく、こんな体育祭、やってられないよ!

この続きは、明日7月15日(月)9時過ぎに投稿予定です。

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