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あなたにこの弁当を食べさせるまで!  作者: 震電みひろ
第三章 仁義無き戦い!少女戦国編
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11、体育祭の激闘(第一回作戦会議)

 その夜、早速あたしは咲藤ミランと斉藤カノンに

「1-Eは咲藤の陣営に参加する」とSNSのDMで伝えた。

当然、彼女達が喜んでくれた事は言うまでもない。


 だが翌日、いやもしかしたら前日からかもしれないが、学校内の雰囲気は明らかに変わっていた。

各クラスでどちらの陣営に入るか、その話で持ち切りだったのだ。

セブン・シスターズがいるクラスは、もちろん彼女達の意思でほぼ決定するが、

それ以外のクラスでは喧々諤々と議論されていた。

 何しろ高校生活はクラブ活動での繋がりが強い。

雲取麗華はテニス部で、咲藤ミランは女子陸上部だ。

クラスの中で所属する部が同数なら、当然意見は分かれる。

あたし達E組や渋水のG組のように、すんなり決まる方が少ないかもしれない。


 だがそうは言いつつも、次期セブン・シスターズ候補である『インデペンデンツ』の連中を核に、

それぞれのクラスがいくつかの陣営に分かれて行った。

今の所は、以下の勢力となっている。


【雲取麗華の陣営】

雲取麗華(3-H)、天女梨々花(3-B)、竜宮翠子(3-F)、

藤宮姫野(2-D)、日野原葵(2-B)

渋水理穂(1-G)


【咲藤ミランの陣営】

咲藤ミラン(3-J)、菖蒲浦あやめ(3-K)、

斉藤カノン(2-G)、

そしてあたし、天辺美園(1-E)


【どちらに着くか未定、または第三勢力】

京奈月理鈴(3-L)、海野美月(3-C)、

夕霧玲奈(2-F)、ミリア・ザイツ・橋立(2-F)、鳳カンナ(2-A)、エスティ・ロスナバーグ(2-C)

他1年のEとGを除くクラス。


 現時点では雲取6:咲藤4で、あたし達が不利だ。

実はセブン・シスターズが、体育祭騎馬戦でここまで二つに分かれるのは珍しい事だそうだ。

よってそれ以外のクラスは、どちらに着けば有利か、様子を伺がっているらしい。


 その日の昼食、あたしは『兵太と一緒に屋上でお弁当』ではなく、

学食の最上階テラス『ホワイト・テーブル』に座っていた。

一緒にいるのはファイブ・プリンス・・・ではなく、咲藤ミランと菖蒲浦あやめだ。


 咲藤ミランがため息がちに言った。


「やはり京奈月理鈴は、雲取麗華の方に着くか・・・」


菖蒲浦あやめが静かに頷く。


「彼女は常に勝ち馬に乗るから。今のところ優勢なのは雲取麗華の方だしね」


「天女梨々花はどうだ?本心ではかなり雲取麗華を嫌っているはずだが」


菖蒲浦あやめが静かに首を左右に振る。


「ダメでしょう。反感は持っていても、雲取に反抗するほどの気概は無いわ。特にこの騎馬戦では抽選券を多く集める事が目的だから、わたしたちの方には付かないでしょうね」


あたしは疑問に思っている事を聞いてみた。


「今まであまり名前が出て来ていないんですけど、海野美月さんはどうなんですか?」


 海野美月、彼女もセブン・シスターズの一人だ。

だが他のセブン・シスターズのメンバーに比べると、どちらかと言うとパッとしない。

これは『美人じゃない』という意味ではない。

海野美月は美人だ。

しかも可愛い感じの『男子に好かれそうな美人』だ。

 だが他のメンバーに比べると、オーラが無いのだ。

一言で言うと『普通っぽい』。


 だが演奏となると雰囲気が変わる。

彼女の演奏を一度だけ聞いた事があるが、サックスを吹いている彼女は、周囲の雰囲気を一変させていた。

音楽に合わせて、まるで役者のように雰囲気を変えてしまうのだ。

彼女が『吹奏楽部の聖少女』と呼ばれていた理由が理解できた。


 あたしがそう言ったのを聞いて、咲藤ミランと菖蒲浦あやめは顔を見合わせた。

やがて咲藤ミランが口を開く。


「おそらくダメだろ。海野美月は」


「どうしてですか?」


変わって菖蒲浦あやめが答える。


「彼女はセブン・シスターズの事には興味がないのよ。むしろ敬遠しているみたい」


「音楽の事しか頭にないみたいだからな。学園内での地位とか権力とか、そんなものには興味がないんだ」


・・・むしろソッチが普通だと思うが・・・


そんなあたしの考えを察したのか、

菖蒲浦あやめが付け加える。


「わたし達だって、何もセブン・シスターズの地位に固執し、権力を行使しようとは思っていない。だけどクラブの予算とか、部員達の立場とか、様々な点で有利な面もあるのは事実だから」


「『お弁当お届けレース』でもな」


咲藤が苦笑しながら言う。


 そうか、セブン・シスターズでも、そんな女子がいるんだ。

みんなモデルか女優みたいな美人揃いだから、てっきりギラギラした人たちばかりかと思っていた。


 その時、菖蒲浦あやめが、ふと思いついたように顔を上げた。


「もしかして、天辺さんなら・・・」


すると咲藤ミランも彼女の方を見た。


「なるほど、天辺ならもしかして・・・」


・・・なんだ、何を言っているんだ?あたしなら、何だと言うのだ?・・・


菖蒲浦あやめが、あたしの方を見た。真剣な表情だ。


「天辺さん、あなた、海野美月に会って、あたし達に協力するように話してみてくれない?」


「どうしてあたしなんですか?あたしは海野先輩とは、一度も話したことが無いですけど」


すると咲藤ミランが問いかける。


「天辺、おまえは本心では、セブン・シスターズになりたいと思ってないだろ?」


 図星だ。

って言うか当たり前だ。

セブン・シスターズは、誰もが超ド級の美人ばかりだ。

あたしなんかが入ったら、それこそ


『六人の月の中に混じった、一人だけのスッポン』


になってしまう。

惨めな思いはしたくない。


「ええ、まあ、あんまり・・・」


あたしは戸惑いながらも正直に口にした。


「それだよ、それ」


咲藤が指をパチンと鳴らす。


「海野美月もセブン・シスターズにはなりたくなかった。最後まで断ろうとしていたんだ。オマエならきっと海野と話しが通じると思う」


「そうね、天辺さんなら海野さんとも話が合うかもしれない。私が海野さんに連絡を取るわ。セブン・シスターズの中では、私が一番彼女とは仲がいいから」


それで話は決まってしまった。


・・・本当に大丈夫か?海野美月とあたしじゃ、はるかに向こうの方が美人なんだけど・・・

この続きは、7月11日(木)7時頃、投稿予定です。

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