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やらかしの93

「お前の名前は?」

「我はザード、魔王9位、超神ザードだ。」


「お前、ここからヤゴナまで、どんだけの距離があるか解っているのか?」


「知らん。」

 ボカッ!

「痛い!」

「おっと、思わず殴っちまった。」

「うぅ。」涙目になるザード。

 おぉ、すべてがカンストしている俺が殴ればそれなりに痛いか。

「直線距離で、およそ440万長だ。」

「え?」

「え? じゃない、440万長だ。」


「なんだそれ?」

 ボカッ!

「つう!」

「お前、わざとだろう?」


「違う。いや、そうだな、領民を殺され、頭に血が上っていた。」

「ほぉ。」

「話し合いに応じる。」

「んじゃ、ゴーレムとデスナイトを消してもらおうか。」

「解った。だが、このままでは無理だ、スタンを解いてくれ。」


「あぁ。」俺は腰の剣を抜き、ザードの首に刃をあてる。

「余計な事をしたら、このまま切るぞ。」

「しない。」


「紫炎。」

(クリアを唱えてください、それでこの場がすべて解かれます。)

(いや、こいつだけを解きたい。)

(では、ヒールを2回です。)

「ヒール、ヒール。」

「解除!」ゴーレムとデスナイトが消える。


「おぉ、約束を守ったな。」そう言いながら、俺は刀を収める。


「クリア。」そこにいた冒険者たちが動き始める。


「お前達のまとめ役は誰だ?」俺が冒険者たちに問う。


「俺だ。」ドワーフらしき男が歩いて来て言う。

「俺は、ベカスカのAランク、ケイジだ。」そう言いながら、ギルドカードを見せる。


「何? Aランクだと。」そういながら、ドワーフは俺のカードを見る。

「おぉ、100年近く生きているが、初めて見たぜ。」


「で、こいつの処遇を俺に任せてくれないか、あぁ、今の戦いで損害があったなら俺が肩代わりする。」

「あぁ、まだ始まったばかりだったから、軽傷の奴ばかりだ。」

「それは良かった、ラヒール!」あたり一帯を光が包む。

「な?」ドワーフが困惑する。

「疲れが取れた。」

「傷が消えた。」

「これだけ集まったんだ、迷惑料がいるな。」俺はそう言いながら、机を虚無の部屋から出して並べる。


「何をしているんだ?」

「あぁ、飲み会だ!」

「は?」

「冒険者なら、コップは持ってるよな?」俺が聞く。

「あぁ、当然だ。」

「大き目なものを持っているか?」

「あぁ。」


「まず、つまみだ!」そう言って、虚無の部屋からロック鶏の唐揚げを取り出し、机に並べる。

「え? 何だこれ?」

「ロック鶏の唐揚げだ。」

「ロック鶏? ものすごく高いものでは?」ドワーフが言う。


「ワシカのダンジョンでいくらでも捕れるぞ。」

「え?」

「あと、バハローの焼肉だ。」そう言いながら、俺はコンロを取り出す。

 コンロに魔石をセットして起動する。

 そして、タレに漬けたバハローの肉を取り出して並べる。


「そして、オークのカツだ。」俺はオークで作ったオークカツを別の机に並べる。

「これはソースをかけて食ってくれ。」そう言ってカツに合うソースを机に置く。


「で、酒はここに置くぞ。」そう言って、色々な酒を並べる。

「冷たいラガーはこっちに置くぞ。」別の机に置く。


「おいおい、何だこれは?」さっきのドワーフが混乱している。

「あぁ、判っている。」俺はそう言いながら、酒精が90のスピリを取り出してドワーフに渡す。


「な、これは?」

「好きだろう?」

「がはは、判ってるな、お前!」そう言いながらドワーフは蓋を開けて飲み始める。

「「「おぉ。」」」冒険者達が、酒とつまみに群がる。

「おぉ、美味い。」

「なんだこの肉!」

「おぉ、カツって、サクサクして美味いな!」

「唐揚げって、こんなもの食ったことないぞ」


 冒険者達は、酒とつまみを堪能している。


************


「さて、聞こうか。」俺はザードに向かって言う。

「あぁ。」

「お前が治める町が、盗賊の手によって滅ぼされた。」

「あぁ。」

「で、その盗賊の親玉が、魔王第1位バランの加護を受けたと言った。」

「あぁ。」

「で、お前は盗賊を撃った後、バランを撃つために挙兵した。」

「あぁ。」


「では聞こう。」

「本当にバランの加護があったのか?」

「え?」

「何をもってバランの加護だと?」

「うぅ。」


「つい最近、エゴワカで蛇王ナーガの加護を持ったと言った者を滅ぼしたが、全くの出鱈目だった。」

「え?」

「ナーガは、加護を与えて、後は放ったらかしだった。」

「な?」

「バランの加護が本当にあったのか?」


「う、分らない。」


「そんな曖昧な状況で、お前は挙兵したのか?」

「う!」


「はぁ、魔王ってこんな奴ばかりなのか?」

「ほほほ。ご主人様、魔王と呼ばれるものは、周りにおのが力に匹敵するものが存在しないので、おのが力を過信するのです。」ヒドラが虚無の部屋から出てきて言う。


(あんたら、マジで紫炎を使いこなしてるね?)


「おぉ、ラドーン様ですか?」

「いえ、こちらにいるご主人様にヒドラを拝命しました、私の名はヒドラです。」

「おぉ、失礼いたしました、ヒドラ様。」

「いえ、不問にします、我がご主人様に従いなさい!」

「ははぁ。」


「色々後回しにしていたけど、魔王第一位バラン、会ってみるか。」

「ほほほ、ご主人様のお目にかなうと良いですね。」

「あの、俺はどうすれば?」ザードが言う。


「あ? 好きにすれば?」俺が言う。

「え?」

「俺の邪魔をしたり、俺に害なすなら消すけどな。」

「ほほほ、その通りですね。」


「バランに会いに行くつもりだから、付いてきたければそれで良いぞ。」俺が言う。


「貴方は、私を滅ぼせるのか?」

「あ?」

「私を滅ぼせるのか?」

「今、やってみようか?」

「いや、やめてくれ。」


「ん~、俺を殴っとく?」

「は?」

「魔族って、そういうもんだろう?」

「いや、やめておこう。」


「おぉ、初めての反応だ。」

「?」


「あぁ、んじゃ、手を出せ。」

「え?」

「手を前に出せ。」

「こうか?」そう言いながら、ザードが手を出す。

 俺は、その手を軽く払う。


「スパン!」小気味いい音とともに、ザードの手が肘から無くなる。


「うぎゃぁぁぁぁ。」ザードが叫ぶ。

「ヒール!」

「うぎゃぁぁ、あれ?」ザードの手は何事も無かったかのように、元に戻る。


「うん、新鮮だ!」

「私は、レベル180だ。」元に戻った手を見ながら、ザードが言う。

「あぁ、そうだな。」

「な、看破されるのか?」

「あぁ、楽勝だ。」


「そうか、俺には、貴方のレベルは見えない。」


「だろうな。」

「それだけのレベル差があるのだな。」

「あぁ。」


 冒険者たちを見ると、つまみも酒も無くなっているようだ。


「あんたら、俺はもう行くよ。」そう言いながら、机とコンロを虚無の部屋に回収する。


「おぉ、ケイジさん、堪能したぜ!」

「あの、また食わせてくれないか?」

「あぁ、俺ももう一度食いたい。」

「俺もだ。」


「あぁ、それなら、ヤミノツウにある「水龍」と言う店に行ってくれ。」

「え? ヤミノツウの水龍?」

「あぁ、俺の料理はそこで提供している。」


「おぉ、解った、水龍だな。」

「よし、次のクエストが終わったら遠征だ!」

「おぉ、合同クエストにして、ちゃっちゃっと終わらせないか?」

「乗った!」

「よし、ギルドで依頼を物色しよう。」

「おぉ。」


「この辺りのギルドは何処にあるんだ?」

「あぁ、テダだ。」

「ありがとう。」俺は返して言う。



「聞きたい。」

「ん?」

「何故我が領は、盗賊の遊撃を防げなかったのだろう?」


「さて、お前の領がどの様なものか分からないから、何とも言えん。」

「うむ。」

(紫炎。)

(はい、ここから北に80長です。)

「北に80長か。」

「え?」


「見に行くか。」俺はそう言うとザードを虚無の部屋に入れる。


「2跳躍だな。」

「はい。」


「わははははは。」

「ぬほほほほほ。」


 ついた場所は、いかにも農村という場所だった。


 街道からは、門もなくそのまま領に入れる。

 領を守る城壁も無し。

 街道から領に入る関所も無し。


 俺は、虚無の部屋からザードを出して説教した。


************


「お前、危機管理能力無さ過ぎだ!」

「面目ない!」

「面目ないじゃねーよ、お前の領地、ざるだよ、俺なら一刻で落とせる!」


「俺は、領主に向いていないのだろうな。」ザードが下を向きながら言う。

「その通りだ!」俺は一刀両断してやった。


「お前のような領主に仕えた領民は不幸だ、いや、今回はお前がすべての元凶だ! バラン云々ではないな。」

「つぅ。」


************


「いや、お前は私が恐ろしくはないのか?」

「はい? 領主さまがですか?」少女は首をかしげる。

「あぁ。」

「全然怖くありません、お優しいことも分かっていますから。」


************


「ああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。」ザードが叫ぶ。

「この襲撃の責は、すべて我か!」

「その通りだな。」俺は冷たく言う。

「あの少女も、俺のせいで死んだのか?」

「あぁ、そうだ。」あの少女が誰だか判らないが、俺はそう答える。

「領民も、すべて俺の?」


「あぁ、その通りだ!」


「俺はどうすれば良い?」


「その教訓を生かして、もう一度領土を守れ!」

「え?」

「失敗した。その教訓を生かせ!」

「え?」

「今度は、領民を守るために壁を作り、領内に悪を入れないように門を作り、領民を守る衛兵を作れ!」

「あぁ、ケイジ様、判りました。」


「ザード、今度失敗したら、俺が滅するぞ。」


「な、心に刻みました。」ザードが深々と礼をする。



数年後、そこはあの少女が愛した領地に戻った、いや、それ以上の場所に変わったのは別の話だ。



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