やらかしの86
「もう一度聞いても良いか?」
「あぁ、何度でも言おう、我はバラン様配下、16位剣王シサムと言う、おぬしに立ち合いを挑みに来た。」
「ここで?」
「あぁ、今ここで。」
「状況解ってるか?」
「おぉ、周りには立会人が沢山いるな。」
「いや、これは民衆だ。」
「立会人だな。」
「違うし、彼らは祭りを楽しんでいるだけだ。」
「ん? 祭りとは?」
「五穀豊穣を祝う、神に奉納するものだ。」
「ほぉ。」
「今日は、ヤミノツウで、豊穣祭をやっているんだ。」
「うむ。」
「で、俺は、ここでお好み焼きを焼いて、売っている。」
「うむ。」
「お前と戦っている場合じゃないんだよ。」
「何故だ?」
「あ~、話が分からない奴!」
「はい、ミックスとラガーで1Gですにゃ。」
「おぉ、新しいな。」お好み焼きをモウチクでくるっと撒いて、片手で食べやすくしたものと、木のコップを渡しながら、ムーニャが言う。
「主様、行って来て良いにゃ。」
「ケイジ兄さま、ここは私達で何とかなります。」
「ほほほ、身の程知らずに、お灸を饐えるのも、強者の務めかと。」
「はぁ、解った、シサムだったか、こっちへ来い。」俺は中央広場に設置されている演舞場に向かった。
「おや、ケイジ様、ご出場ですか?」
「いや、そこにいるシサムと言う魔族と、手合わせする。」
「なんと。」
「俺は、魔法を使わない、あと刀はそこに有る刃のないものを使う。」
「う~ん、賭けになりませんよ。」
「一応、魔王16位らしいぞ。」
「おぉ、其れでも1:120ぐらいですか?」
「なんだそれ、俺でも賭けないぞ。」
「ですよねぇ。」
「おい、シサム、なんか俺に通用しそうな技はあるか?」
「うむ、幻影居合術を使う。」
「ほぉ。」
「其れは「いや、俺は初見でやるよ。」シサムの言葉を遮る。
「これならどうだ?」
「それなら1.1:50ぐらいになりますかね?」
「ギリ、成立するかな?」
「どうでしょう?」
「よし、俺は目隠しでどうだ?」
「おぉ、其れなら2:30ぐらいになりますね。」
「んじゃ、其れで行こう、目隠し、魔法無し、練習刀使用のケイジvs魔王16位、真剣使用、幻影居合術使用のシサム。」
「はい、ケイジ様。」
「早速ベットさせろ。」俺が言う。
「さぁさぁ、次の試合は、ケイジ様vs魔王16位、シサムの試合だ。」
「え? そんなの賭けにならないだろう。」
「瞬殺で終わりじゃね。」
「なんと、ケイジ様は、目隠し、魔法無し、練習刀使用、対する魔王シサムは、真剣使用、幻影居合術使用だ。」
「おぉ、面白そうだ。」
「あのケイジ様が、魔法無しで、しかも目隠しかぁ。」
「大穴あるかもなぁ。」
「よし、シサムに10枚。」
「俺もシサムに20枚。」
「俺は、堅実にケイジ様に50枚だ。」
「わはは、お前ギャンブラーじゃないな、俺はシサムに100枚だ。」どこかの貴族が購入する。
「ほほほ、ケイジ様に100枚です。」ヒドラが券を購入する。
「あたしも、主に20枚にゃ。」
「ぐふふ、ご主人様に50枚です。」ヒドラや、ミーニャ、ダンサが券を購入する。
「あんたら、目ざといね。」俺が思う。
「俺は、シサムに50枚賭けるぜ。」カッターが、がははと笑いながら券を購入する。
(カッター、お前は破産するな。)俺が思う。
「ケイジ様が負ける姿が想像できません。」
「ええ、全くですぅ。」アイリーンとモーマも100枚ずつ購入する。
「おぉ、ケイジ君に賭ける以外の答えはないな。」
「わはは、ドレース様、その通りです!」ドレース様と、ダンナー様も100枚ずつ購入。
「おぉ、盛況だな。」俺は、柔軟運動をしながら思う。
「・・・・・。」
「はい、エライーノ様、ケイジ様の券100枚、購入しました。」
「シサムに200枚だ。」どこぞの貴族が言う。
「なんと、貴方が200なら私は300枚買いましょう。」対抗する貴族が張り合う。
「マスター、私はどうすれば?」
「あ~、賭ける金があるなら、俺を買っとけ。」
「解った、マスター。」
「マスターを300枚だ。」サランが言う。
「おぉ、豪気だな、って、サラマンダーの主体?」
「早くしろ。」
「はい、解りました。」
「マスター、今日来れない者達が怒りそうです。」
「何かで埋め合わせするよ。」
カリナとヨイチ達はこの祭りに来ていない。
「まぁ、俺に賭けた奴は、掛け金2倍確定だしな。」俺が独り言を言う。
「ケイジ様、大体のベット終りました。」
「おぉ、掛け率は?」
「ケイジ様3:シサム48です。」
「おぉ、其れは儲かるなぁ。」俺は、悪い顔で言う。
「むふふ、其れもこれも、ケイジ様のおかげです。」胴元もさらに悪い顔で言う。
「よし、茶番をするか。」俺は演舞場に進んだ。
「赤コーナー、ケイジ~。」観客の声援に、俺は手を上げて答える。
「青コーナー、魔王シサム~。」シサムは俺を睨みつける。
「んじゃ、さっさとやるぞ。」そう言いながら、模造刀を持ち演舞場に上がる。
「んじゃ、目隠し宜しく。」俺が言うと、分厚い手拭いを持った女が、俺の後ろに回りそれで俺の目を覆う。その女が、俺の前で手をひらひらしてるらしいが、全く見えない。
「ケイジ様、頑張って。」知らない声が聞こえると、口づけされた。
「ふぅ。」ため息を吐きながら、一歩前に出て臨戦態勢を取る。
「何時でも良いぞ。」俺が言うと、
「では、はじめ!」いきなり開始の合図がかかる。
「うわぁああぁ。」会場では悲鳴に似た怒号が響く。
正直、目隠しされえた状態で、この怒号はきつい。
「・・・」俺は、其れを感じ取る。
「ガキン!」模造刀で、真剣を受け止める。
「な?」シサムが驚愕する。
シサムは、その場を蹴って距離を取る。
「シサム、闘気が見え見えだぞ。」俺が言う
「な。」
「気配はこういう風に消さないとな。」俺は「遮断」を使う。
「な、見えているのに、感じない?」
「おっと。」模造刀で受け止める。
「おいおい、一本調子だな。」又受け止める。
「はぁ、やる気あるのか?」もう一度受け止める。
「はぁ、はぁ。」(何故当たらない)と、シサムは肩で息をしながら考える。
「来ないなら、こっちから行くぞ。」俺はそう言いながら、模造刀を何もない空間にふるう。
「くっ!」シサムがその剣技を受ける。
「ほら、次だ。」俺は再び何もない空間に模造刀を打ち付ける。
「つぅ。」シサムは、辛うじてそれを受ける。
「そこ!」
「く!」
「次!」
「ぬぁ!」俺の攻撃を、シサムは辛うじて止める。
「なぁ、さっきからケイジさん、シサムの処を攻撃してないな。」
「あぁ、しかも攻撃した処にシサムが現れるし。」
(ありゃ、幻影ってそう言う事か、違う場所に幻影を出して、別の処から居合で攻撃するって。)
(目隠ししちゃ駄目じゃん。)俺は思い、さっさと終わらせることにした。
「中々やるな、では速度を上げるぞ。」俺が宣言する。
「な?」
「ほらほら、考えている暇はないぞ。」俺は、シサムが潜んだ空間を切りつける。
その瞬間は、ふいに訪れた。
十数回の打ち込みを躱したシサムがいる場所。
そこに俺は、普通に打ち込んだ。
「そこ!」俺は模造刀でその空間を切る
。
シサムの胴をはらっていた。
「な?」シサムは敗北を感じながらその痛みで蹲る。
「ふ、ふふふ、いっそ清々しいな。」
「ん?」俺は目隠しを取りながらシサムを見る。
そこには、刀を後ろに置き、土下座、いや、平伏したシサムがいた。
「ふふふ、このシサム、感服いたしました!」
「おぉ、納得してくれたか?」
「はい、ケイジ様。」
「うん?」
「今から、このシサム、武者修行にまかり仕る。」
「おぉ。」
「14位、火焔竜マグマを討伐して、階位を上げて再び挑戦させていただきます!」
「いや、5位の暗黒王ボルガ辺りを屠らないと無理かな。」
「おぉ、解りました。」それではごめん。
シサムが消える。
「いや、魔王同士、潰し合うのもどうかと思うぞ。」
「ケイジ様、お見事です。」
「おぉ、賭けの具合は?」
「大穴狙いの客が多かったので、かなり儲かりました。」
「おぉ、其れは良いことだ。」
「で、これがケイジ様の取り分です。」
「おぉ、サンキュウ。」そう言いながら、その袋を虚無の部屋に入れると、お好み焼きの屋台に戻る。
「お疲れ様です、主様。」
「ケイジ兄さま、流石です。」
「ほほほ、鉄槌は下せましたか?」
「あぁ、楽勝だった、これは売り上げにな。」そう言いながら賞金を売り上げの入った箱に出す。
「ケイジ様、粉が足りません!」エヌが言う。
「ケイジ様、卵も出してください!」エルが言う。
「ケイジ様、オーク肉のバラ肉も出してください!」エムも言う。
「おぉ。」俺は言われたものをそこに出す。
(何故、ムーニャやアヤに言わないんだろう?)
(ケイジ様に認められたいのでしょう。)
(紫炎、何故そう思う?)
(鈍感ですね、ケイジ様。)
「え?」
お好み焼きの売り上げは、12G、600Bになった。
原価2G500Bだから、大儲けだ。
次のお祭りには、違う屋台も出そう。
俺は、そう思った。




