やらかしの81
ちょっと実験。
どうなるかな?
ケイジ様ぁ、色々やらかしましたぁ。」モーマが虚無の窓から現れて言う。
「何だろう?」
「結婚式に出した料理や貢物が、やらかしています。」アイリーンも言う。
「はぁ?」
「コカトリスやミノタウルスの料理が20000Gで食べられることに気づいた貴族がちらほら、更にミスリルの剣と、ミスリルの食器の数々の納品もあると。」
「いや、20000Gって、日本円で2億だよ、そうそう払える金額じゃないよな?」
「一部の貴族には、可能な金額です。」
「あ~、やらかしたな。」
「やらかしてますね。」
「ケイジ様、指名発注が。」アイリーンが俺に言う。
「全部、キャンセルな!」
「え?」
「そのクエストを受ける場合、マヤオのダンジョンの試しを受けた者のみ依頼を受けるよ。」
「え~、ケイジ様の出した魔石に血を注ぎ、マヤオのダンジョンの3階層からその魔石を3人パーティーで持ち帰ったら、と言う事ですか?」
「あぁ。」
「無理ゲーですね。」アイリーンが言うが、
「一人だけは、攻略可能だな。」俺が言う。
「さて、誰が気が付くかな。」俺はそう言いながら奥の部屋に消える。
「アイリーン、お茶を頼む。」俺がそう言うと、アイリーンがいそいそとお茶を入れ始める。
「ケイジ様、一人だけとは?」
「あぁ、レイドで行って、そこで解散すれば取れるだろう。」
「あぁ、なるほど。」アイリーンが納得する。
「でも、一人が其れを攻略したら、次は4階にする。」
「え?」
「さらに無理ゲーですね。」
「いや、此処もレイド戦で何とかなるな。」
「それを突破したら?」
「オカタの9階層にするか?」
「いえ、其れは人間では。」
「んじゃ、料金を30000Gにするか?」
「あぁ、其れよりも、ケイジ様が認めた者だけとすれば宜しいのでは?」
「おぉ、其れ良いな、流石アイリーンだ。」
「誉めても何も、いえ、今夜の夜伽でサービスするだけですよ。」
「な、怖いな其れ。」
「ふふふ、今夜が私の番で良かったです。」
「俺基準なら、俺が勝手に決められるな。」
「そうですね。」アイリーンが良い顔で言う。
「其れなら、今後は問題ないか。」俺が言う。
「よし、結婚式を受ける場合、俺が精査して俺が認めた者以外は受けないと周知してくれ。」
「はい、解りましたぁ。」
「俺の気分を害したものは、家を潰すと、追記でな。」
「はい。」
「で、ケイジ様。」
「何だ?」
「緊急クエストを受けてください。」アイリーンが言う。
「はぁ、今度は何だ?」
「はい、ここから南西に7日ほどのカオズシと言う国の、ダンジョンで高レベルのパーティが消息を絶ち、そのパーティを探索に言ったパーティも消息不明になりました。」
「それって、もう生きていないよな。」
「多分。」
「受けたくないなぁ。」
「でも、ケイジ様以外は攻略不可のクエストかと。」
「あぁ、そう言う事。」俺が言う。
「今回は、俺一人で行くか。」
「それが良いかと。」アイリーンが答える。
「なぁ、アイリーン。」
「はい、何ですか、ケイジ様。」
「その依頼って、俺以外無理な奴じゃないか?」
「え? あ、 あ~、そうかもです。」挙動不審になるアイリーン。
「受けるのやめようかな~。」
「え? それではギルドの。」
「ギルドの?」俺はアイリーンを睨む。
「ケイジ様のお力を見せてください!」
「アイリーン。」
「はひぃ。」噛んだな。
「俺は、本気で対応すればいいんだな?」
「え? いや、其れは。」
「あぁ? 手加減しろと?」
「いえ、ご存分に!」
「よ~し、言質とったぞ。」
俺はフルパワーでそれに挑むことを決めた。
なに、広島に落ちた原爆程度の被害だろう、しかも被ばくは無しで。
「ふふふ。」俺はジフまで虚無の窓を潜る。
「さて、ここからカオズシのダンジョンまでどの位だ?」
「34kmです。」
「一跳躍か?」
「はい。」
「よし。」
「わははは!」
「あ~、楽しかった。」俺はそう言いながらカオズシの門の前に行く。
「身分を証明するものを。」そこにいた門番が跳んで来た俺を見ても躊躇せず言う。
「あぁ。」俺はギルドカードを見せる。
「おぉ、Aランク、ようこそカオズシへ。」門番は俺を街中に入れてくれる。
「ギルドは何処だ?」俺が聞く。
「はい、目の前に見えている建物がそうです。」門番がその建物を指さしながら答える。
「おぉ、ありがとうな。」
「いえ。」
俺は、ギルドの入り口を潜った。
カランカラン、ドアに付いたベルが来訪者を告げる音を鳴らす。
中にいた冒険者たちが俺を一瞥すると、そのまま元の作業に戻った。
俺は、カウンターに行き、ギルドカードを出す。
「ダンジョンで遭難したパーティの捜索依頼を受けて来た。」
「え?」受付嬢が固まる。
そこにいた冒険者たちも、遠慮なしに俺を見る。
「ほとんど指名クエストみたいなんだが、違うのか?」俺が言う。
「は、え? あの ケイジ様ですか?」受付嬢が言う。
「え? あぁ、そうだ。」
「あぁ、お願いします、ダンジョンで消息を絶ったパーティの救助を!」
「いや、落ち着け、情報を頼む。」
「あぁ、すみませんでした。」受付嬢が言う。
「詳細を。」
「はい、三日前に、ここカオズシから数刻行ったところにダンジョンが発見され、調査にBランク1名、Cランク5名のパーティーが潜り、消息を絶ちました。」
「あぁ、それで?」
「昨日、Bランク3名、Cランク4名のパーティが捜索に行き、同じく消息を絶ちました。」
「消息を絶った階層と、ダンジョンの規模は?」
「不明です。」
「何もわからない、で良いか?」
「はい。」
「報奨金はどうなっている?」
「各パーティ、保護は各200Gです。」
「各パーティの情報はそれぞれ10Gです。」
「遺品、その他係る物の納品は、其の物で変動します。」
「あぁ、解った。」
「ダンジョンに入る許可は?」
「はい、これをお持ちください。」そう言いながらギルド職員がアミュレットを差し出した。
「これを見せれば、ダンジョンはフリーパス、その後の精算にも色が付きます。」
「他にはないか」俺が聞く。
「個人的に、私の夫の情報をいただければ、私個人がお支払いします。」
「ふぅ、重い内容だな。」俺はギルドカードを受け取りながら言う。
「ダンジョンの場所は?」
「はい、北西に数刻です。」
「解った、すぐに出発する。」
「紫炎、何キロだ?」
「35kmです。」
「一跳躍だな、方向はこっちで良いか?」その方向に指を指して俺が言う。
「はい。」
「わはははは。」
跳んだ先には、何人かが集まっていた。
「あ~、パーティが消息不明になったダンジョンは、ここで良いのか?」俺がそこにいた者に尋ねる。
「あぁ、そうだ、貴方が息子を助けてくれるのか?」
「私の娘も、帰ってこない、お願いだから連れてきて。」
「俺の、娘もだ。」
「あ~、あんたら、ギルドに依頼はしてるんだろうな?」
「あ? ギルドの依頼で帰ってこないんだぞ。」
「そうよ、ギルドが負担するのは当然よ!」
「帰った来なかったら、ギルドに損害賠償を突きつけるぞ。」
「はぁ。」俺はため息をつく。
「お前ら。」俺は最大限の威圧を込めて言う。
「なっ。」そこにいた者達が尻餠をつく。
「冒険者になった時点で、その命は自己責任だ。」
「はぅぅ。」
「しかも、自分の力量以上の依頼を受ける?」
「うっ。」
「馬鹿なのか?」俺は更に級の威圧を込めて言う。
「う、あ、判った、わが娘の捜索を依頼する。」
「私も、息子の捜索を。」
そこにいた貴族らしい者が、ダンジョンの傍のギルド支部に入る。
少し待って、俺はギルドに行く。
カウンターに行くと、受付のお姉さんが、追加依頼を受注してくれた。
「まぁ、これぐらいで勘弁してやるか。」
カオズシのダンジョンの攻略開始だ。