やらかしの8
「さて2階層に着いたな。」カッターが言う。
「そうか、カッターが先に行けば、情報が集まるんじゃないか?」
「俺は、カッターの後から入るよ。」
「俺はケイジの盾か?」
「いや、違うな。ただの露払い?」
「おいおい、扱い酷くないか?」
「いや、俺は通常運転だな。」
「カッターが行かないなら、俺が行くぞ。」
「解った、俺が行くよ!」カッターがしぶしぶ答える。
「オッケー、色々識別が終わったら、声をかけてくれ。」
「判ったよ。」そう言いながら、カッターがドアを開ける。
「直線の廊下と、その両脇に扉が全部で10あるな。」
「廊下には魔物はいないようだ。」
「では、最初の部屋を。」カッターが右の部屋を開ける。
その部屋にカッターが引きずり込まれた。
「うぁあおあおあおあお。」カッターが悲鳴をあげる。
「あー、カッター。手助けいるかぁ?」俺が声をかける。
「た、た、助けてくれ、ケイジ!」
「あー、解った。」俺が前に進む。
「「「「「「「「「ぎはぁうぎゃぁぁぁ。」」」」」」」」」悲鳴が聞こえる。
その瞬間、そこはただの広間になり、ドロップ品が10個存在していた。
「何だこりゃ?」
(マンイータールームと言う魔物です。)
「え?部屋に擬態する魔物?」
(ミミックの上位バージョンです。)
「へー。」
ふと見ると、カッターが呆けている。
「おい、カッター、無事か?」
「へへへ、ケイジ、お花畑が見えたぜ。」
(マンイータールームは部屋に入った瞬間にドアを閉じ、催眠ガスで獲物を眠らせた後、じわじわと獲物を吸収していく魔物です。)
「ほぉ。」
(吸収されている獲物は、その間、至高の快感を得ると言われています。)
「苦しまずに死ねるんだ。」
(はい、その御趣味の方々には、最後の快楽として認識されています。)
「兄者、ドロップ品だ。」
「ミーニャも集めたにゃ。」
ミーニャとメームが俺にドロップ品を渡す。
「おや、これは。」俺が気に留めたのは防具数種。
見守りの皮鎧。
愛するものを守る鎧。
渡した者の愛情度により防御力+5×愛情度
加護の腕輪
渡した相手の愛情度により防御力+6×愛黄度
最愛のローブ
渡された者に渡した者の愛情度×5の防御力
なんだか、色々試されている気がするのは俺だけか?
見守りの皮鎧。はカリナに渡す。
「旦那様、ありがとうございます。旦那様の愛を感じます。」
防御力は+40だった。
(俺、カリナを凄く愛してるんだな。)
加護の腕輪は、ミーニャに渡す。
「主、嬉しいにゃ、愛してるにゃ。」
防御力は+42だった。
(基準が判らないが、きっと愛されているんだろうな。)
最愛のローブ
(これはムーニャに渡そう。)
他にめぼしい物もないので、残りは虚無の部屋に入れて先を進む。
3階層への階段が見つかった。
「なぁ、ケイジ。さっき思ったんだが、お前、ダンジョン情報看破してないか?」
「え?、いや、そう言えばそうかも。」
(全魔物、把握できてます。)
「ケイジ、ギルドで買うから、全情報渡せ!」
「え?お。あぁ。この依頼が片付いたら考えるよ。」
「じゃ、カッター、行ってくれ!」
「なんでだよ!看破してるんなら、ケイジが行った方が安全じゃないか!」
「何言ってるんだ、一番槍は譲るよ。」
「な、確かに最初に入った奴の名前が付く層もあるな。」
「カッター、チャンスだぞ!」
「お、おぉ、行くぜ!」
(ふ、ちょろいな。)
「どりゃ!」カッターが3階層の扉を開ける。
「ん?真っ暗だな。」
「ん~?」カッターがそこを覗こうとすると、巨大な手がカッターを掴み引きずり込んだ。
「ぐわぁぁぁぁぁ。」カッターの悲鳴が遠のいていく。
「旦那様、まずそうですけど。」
「そうだなぁ。」
「にゃ?助けないにゃ?」
「いや、そんなことはない。」俺はそう言うとドアの前に立つ。
「カッター、助けいるかぁ?」
「た、助けてくれぇぇぇ。」
「兄者、助けを求めてるぞ。」
「また虐殺か。」
「肯定します。」
「声に出して言うなよ。」
「旦那様、今の声は?」
「あぁ、精霊様が俺に与えてくれた、サポートしてくれる存在の紫炎だ。」
「紫炎です。カリナ様、ミーニャ様、メーム様よろしくお願い申し上げます。」
「まぁ、旦那様をお守りくださいましね。」
「にゃ、よろしくにゃ。」
「よ、よろしく頼む。」
(あんたら、全員受け入れるんかい?)
「私は、ケイジ様の伴侶の方々にも、ケイジ様と同じようにサポートいたします。」
「まぁ、それは素敵です。」
「宜しくだにゃ。」
「うむ、兄者のために頼むぞ!」
「但し、勿論ケイジ様が傍にいないと、皆様に私の声は聞こえませんので、ご注意ください。」
「わかりました。」
「解ったにゃ。」
「了解した!」
俺をのけ者にして、紫炎と俺の周りの人間の意思疎通が終わったようだ。
(おい、さらっとメームまで伴侶枠に入れてんじゃない!)
(誰も気づいてませんから平気です。)
(俺が平気じゃない!)
(ケイジ様、カッター様の生命反応が消えそうですが?)
「え?やば、忘れてた!」俺は一歩前にでる。
途端に聞こえる断末魔。
「もう、俺、魔王認定じゃね?」
(・・・。)
「おい、黙るなよ、なんか言えよ!」
「兄者、あそこにカッターが倒れてるぞ。」
俺たちがそこに近ずくと、半分ミイラ化したカッターがいた。
(レイスに引き込まれ、生命力を吸われたようです。)
(この階の魔物のレベルは?)
(最大20でした。)
「ふむ、じゃあ次の階辺りから、やばくなるな。」
(肯定します。)
「んじゃ、行こうか。」
(ケイジ様、もう少しでカッター様がアンデットになります。)
「お、忘れてたよ。ライフをかければいいんだな。」
(はい。)
「んじゃ、ライフっと。」
カッターの身体が淡く光り、顔に生気が戻ってくる。
「お、おぉ、川の向こうで、死んだ親父とお袋が手を振っていたぜ。」
「この階は死霊の巣窟だったみたいだ。」
「俺は引かれたのか?」
「レイスに魂を吸われてたってさ。」
「またケイジに助けられたのか?」
「なに、ついでさ。」
「兄者、ドロップ品が多かったぞ。」
「30はあったにゃ!」
「ミーニャーとメーム、ありがとな。」
「当然の事をしたまでだ。」
「主の為なら平気にゃ。」
「おや、一個だけ凄いのがあるな。」
拒絶の皮鎧。
全ての物理攻撃、魔法攻撃、精神攻撃を反射する鎧。
愛する者から与えられた時のみ効果発動。
「何か、一線を超えそうな気がするが、メームお前が使え。」
「兄者!」
俺がメームに鎧を渡すと、鎧が紫色に包まれた。
(え?メームって俺を愛してるって事?)
「兄者、一生尽くすことを約束する!」
(って、頬を染めるな~~。)
(なんで、そっちに持っていこうとするかな!)
(需要です!)
(いらんわ、そんな需要!)
「旦那様、此方に4階層への階段があります。」
「にゃ。凄い数の魔物の存在を感じるにゃ!」
(レベル25クラスの魔物がいます。)
(刀の恩恵ある?)
(入り口付近は瞬殺できます。)
(刀さん、優秀ですね。)
(それ以降は普通の対処が必要です。)
(解った。)
(カッターとメームはこの先は無理です。)
(え?カッターってレベルいくつ?)
(剣士レベル14です。)
(え?そんなに低いの?)
(ケイジ様。この世界ではレベル13がマスタークラスになります。)
(マスタークラス?)
(やっと一丁前になるクラスって事です、)
(え?ギルマスってそんなんでなれるんだ。)
(本来なら、人族が50年かけて到達するレベルです。)
(え?カッターっていくつだ?)
(28です。)
(凄いじゃないか!)
(って待てよ、ミーニャはレベル15じゃなかったか?)
(獣人は、戦士、格闘系では、人族の3倍の経験値になります。)
(そう言う事か。)
「カッター、メーム、この先は無理みたいだ!」
「兄者、俺はまだいける。」
「がはは、何を根拠に!」
「この先の魔物、レベル25以上らしい。」
「な。」
「うぉ。」
「対応できるレベル差っていくつだ?」
「レベル×1.7だ」
「つまりカッターは?」
「無理だ。」
「兄者、俺も無理だ。」
「んじゃ、ここで待っててくれ。」
「う、む、解った!」
「兄者、俺は待ってるからな!。」
(なんで、そんなフラグ立てること言うかな!)
(ケイジ様、あちらが4階層への階段のようです。)
「なぁ、このダンジョンの最深階はいくつだ?」
(出来たばかりなので、6階層が最深部です。)
「なら、後2階層か。」
(はい。)
「んじゃ、ちゃっちゃと攻略するぞ。」
(了。)
4階層の扉の前に来た。
「主、数は少ないけど強そうなのがいるにゃ。」
「ミーニャありがとな。」
「にゃ?当然にゃ。」ミーニャが顔を赤くする。
俺は勢いよく扉を開け、一歩踏み出す。
「「「ぎゃぁぁぁ」」」扉周辺で起こる虐殺。
「はぁ、俺、悪者だよな。」
「いえ、旦那様は正義です。」
「主の御心のままに!」
(とりあえず進むか。)
「主、ドロップ品にゃ!」
「ご主人様、此方も。」
「あ、あぁ、ありがとう。」俺は虚無の部屋を開く。
ふと思って、紫炎に聞く。
「虚無の部屋って、皆使えるようにならないかな?」
「可能です。」
「私が制御していますので、ケイジ様の目の届く範囲なら皆様、使用可能です。」
「だそうだから、今後はそこに入れてくれ。」
「主、どうやって?」
「私の名を呼んでいただき、「預かって」と言って頂ければ大丈夫です。」
「因みに、取り出す際も同じように、私の名を呼んでいただき、必要な物をおっしゃっていただければお手元にお届け致します。」
「はい、判りました。」
「もっと、主の役に立てるにゃ!」
そして、、また、俺が気付く。
死霊の鎧
全ての物理攻撃、魔法攻撃、精神攻撃を吸収し装備者のHPに還元する。
「呪いのアイテムのような気がするのは?」
「気のせいです!」
おぉぉ、紫炎さん声に出てるよ。
「じゃぁ、これは俺が装備するよ。」
(了!)
「そして、あいつが階層主か?」
(はい、サラマンダー、レベル27.炎の守護者です。)
「炎って事は、水が弱点?」
(了。)
「はぁ、解りやすい。」
「でっかいトカゲにしか見えないな。」
「しかし、なんか普通の魔物と違うな?」
(ダンジョンの影響下にありません。)
「え?じゃあ、説得出来るってことか?」
(可能です。)
俺は前に出て、サラマンダーに言う。
「俺に仕える気はあるか?」
「何?くははは、たかが人間が私を従える?くははは、何の冗談だ?」
「見ろ!」俺は水系の最上級魔法の「アクアワールド」を最小限の力で唱える、
俺の目の前には小さな水の玉が浮遊している。
「な、それは。」
「この程度でもお前には脅威だろう?」
「な、馬鹿な、この私が?」
「んじゃ、さようなら。」俺はアクアワールドをサラマンダーに投げる。
「ちょ、待ってください!」サラマンダーが何かを言うが、手遅れだ・
「あぎゃぁぁぁ。」
(これ、蹂躙ってレベルだよな。)
「肯定します。」
「否定してくれぇ。」
見ると、サラマンダーはまだ命があった。
人型で全身が淡い炎に包まれた美少女だった。
「それが正体か?」
「んじゃ、排除「待ってくれ!」割り込んできた。
「今更だが、貴方に忠誠を誓う。」
「え~今更?」
「わ、私の認識が間違っていた!主様は私の主君に相応しい。」
「なんか、まだ上から目線だな。」
「な。いや、私を主様の端為として傍において欲しい。」
「間に合ってるかな。」
「な、私はきっと主様の役に立つ!」
「ほぉ、その根拠は?」
「私の性妓は絶品だ!」
「さようなら。」
「あ~待て待て、魔王の軍勢の情報なら渡せる。」
「魔王?」
「あぁ、近々シハリクの村を襲う計画がある。」
「うわ、嫌な情報だな。」
「命にかけて誓う!」
「んじゃ、お前、このダンジョン攻略を手伝え!」
「え?わ、解ったマスター。」
「誰がマスターじゃ?」
「え?、我が主となるのであろう?では、我がマスターだ。」
「主、ドロップ品を集めたにゃ。」
「旦那様、虚無の部屋は凄く便利です!」
「何だこれ?」
サラマンダーの指輪
炎、火、マグマその他すべての火属性吸収。サラマンダーの愛の証。
「主様への忠誠の証です。」
「俺に付けろ、と。」
「仰せのままに。」
(装備しても害はありません。)
俺はため息をつきながら、その指輪を右手の中指に付ける。
途端に、サラマンダーと意識が繋がる。
「あぁ、マスター素敵です。」
(何だこれ?)
(ケイジ様の魔力がサラマンダーに流れています。)
(害あるじゃん!)
(微々たるものです。)
「マスター、一生お傍に!」
俺は指輪を外そうとする、
「な、外れない!」
「種の誓いの指輪なので、その種が裏切らない限り外れません!」
「な、一種の呪いだろそれ。」
「種の忠誠を勝ち取る物です。呪いと考えるのはいかがなものかと。」
「マスター、誰の声か分からないが、その言葉通り、一生の忠誠を誓う。」
「いいよ、考えたら負けって事だな!」
「先に進むぞ。」
そして5階層の扉の前に進む。
「主、気配は2体しかいないにゃ。」
(レベル30のゴーレムがいます。)
「ゴーレム?」
(魔法が効かない、プラチナゴーレムです。)
「え?それって。物理もダメじゃん?」
(肯定!)
「主、私なら攻撃を入れられるにゃ。」
「反撃確率は?」
「100%だにゃ。」
「却下だ!」
「紫炎、俺の刀に氷魔法を纏わせて突っ込んだら、勝率いくつだ?」
(一体には100%です。)
「では、もう一体には?」
「80%補足され、握りつぶされます。」
「なに、その末路。」
「何か対応は?」
「まず、囮で左側に一人が走ります。」
「おぉ。」
「その隙に一体を屠れば、もう一体も楽勝です。」
「良いね!」
「主、あたしがそっちに行くにゃ!」
「お、おぁ、ミーニャ。死ぬのは許さないぞ。」
「当たり前にゃ!」
「よしそれで行く!。」
俺は扉を開く。
ミーニャが目の前のゴーレムの左に飛ぶ。
目の前のゴーレムはそれに反応して左に向かう
俺はその後ろのゴーレムに飛んだ。
刀に氷魔法(氷の嵐)を乗せて飛ぶ!
「ぎみゃぁぁぁ」
瞬殺って言葉は俺の為にある!
目の前の個体が塵になる
(もう一体には、炎が有効です!)
「解った!」
ミーニャが、引き付けてくれているので、楽に後ろをとれる。
「煉獄!」俺は刀に炎を纏わせゴーレムに飛ぶ。
「お、おぉぉぉ、炎系最上魔法を容易く!」サラマンダーがうっとりとして俺を見る。
「ぎゃぁぁぁ。」ゴーレムが塵になる。
「旦那様、剣と盾にゃ!」
「こっちは、アイテムと護符にゃ。」
「おぁ、サンキュウな。」
「剣は倍速の剣か、盾は守りの盾+2か。」
「護符は?生命の護符?」
生命の護符
持った者のHPを一歩歩く毎に1回復する。
何気に言いアイテムだ。
「カリナ、君が持て!」
「はい、旦那様!光栄です!」
「さて、最下層か。」
「ミーニャ、カッターとメームを呼んできてくれ。」
「解ったにゃ。」
(ケイジ様、最下層はレベル60の魔物です。死亡フラグですが。)
「俺が何とかするよ。」
(解りました、仰せのままに。)
「がはは、最下層か!」
「兄者、俺は足手まといではないのか?」
「この先にいるのは、レベル60の魔物らしい。」
「おい、俺は瞬殺されるぞ。」
「兄者、俺もだ。」
「旦那様、私も無理です。」
「主、ミーニャも瞬殺にゃ、」
「安心しろ、俺が守る。」
そう言うと、最下層の扉を開いた。
「私何をすれば良いですか?}
「とりあえず、何もない。」
「え~?」
「そうか、火か。」
「はい?」
「風呂の管理を任せる!」
「は?」
「俺が、何時でも風呂に入れるように、温度管理をしてくれ。」
「はい。」
「ちなみに、俺の好みは41度だ。」
「はい、マスター、りっぱに努めます!」
「頼む!」
良いのかよそれで!