↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
79/203

やらかしの78

「おぉ、方向も、距離もばっちりだな。」そう言いながら、小屋の前に降りる。

「もどったぞ。」そう言いながら小屋に入ると、3人の男に出迎えられた。


「ど、どうでした?」

「何か、進展は?」

「どんな情報でも。」


「あぁ、待て、待て、終わったから。」

「え? 何がです?」

「全部。」


「どういう意味ですか?」男が詰め寄ってくる。

「だから、待てって、男に詰め寄られても困るよ。」

「あ、す、すみません。」男が離れる。

「紫炎、3人を。」

「はい。」

 そこに、ラメガ、スライバ、ロギンが現れる。


「おぉ、お前ら、無事だったのか!」

「いや、今どこから?」

「え? なぜ小屋に?」

 そこにいた全員が、混乱する。


「お前ら、とりあえず落ち着け~。」気の抜けた声で俺が言うと、とりあえず静かになった。


「俺の受けた依頼は二つ、「聖リロスゴ学院の生徒達の消息確認」と「ドレース姉妹の保護」だ。」

「あぁ、聖リロスゴ学院の生徒達の消息確認は、俺達が依頼した。」男の一人が言う。

「依頼達成は、どこでやれば良い?」

「え? どういう事だ?」

「ここで出せば良いか?」

「何を?」

「生徒達。」

「は?」


「ちょっと待って。」ロギンが声を上げる。

「貴方、全員収納しているの?」ロギンが俺に言う。

「あぁ、お前達もそうやってここまで運んだ。」

「な?」ロギンが固まる。


「ちょ、ちょっと待ってくれ、俺も空間魔法が使えるが、人間を20人も入れられる収納は無理だ。」

「いや、俺が、たまたま出来るだけだろう?」

「いや、それに俺達3人か?」ラメガも震えた声で言う。


「で、ここで出せば良いか?」

「いや、ちょっと待ってくれ。」そこにいた男が考える。


「ケイジさん、頼みごとがある。」

「なんだ?」

「俺を、ジフのギルドまで連れて行ってくれないか?」

「は?」

「いや、説明が足りなかった、俺はゴルンバと言う、ここのリーダーだ。」

「あぁ、それで?」

「依頼はジフのギルドで行ったから、そこで生徒を開放してくれ。」

「なんか、俺が拉致したみたいな言い方だな。」

「依頼完遂の確認が一発で出来るからな。」


「あぁ、そう言う事なら。」俺は快諾する。

「んじゃ、お前を収納して跳ぶから、今から、あ~、時間の単位は無いのか?」

「時間の単位?」

「一刻は判るんだろう?」

「あぁ。」

「其れの下の基準は?」

「え? 一刻は、六0薄で一薄は六〇瞬という奴か?」

「あるんじゃん、何で孤児院の奴ら、あ~、教育がないのか。」

「10薄で着く。」俺が言うと、ロギンが食いつく。

「ここからジフまで40距離ある、其れをどうやって10薄で移動するんです? 魔法ですか?」

「いや、物理だ。」

「え?」

「跳ぶんだ。」

「はぁ、40距離を?」

「あぁ。」

「10薄で?」

「あぁ。」


「あははは、何それ、ねぇ、あたしを抱えても跳べる?」ロギンが言う。

「あぁ、問題ない。」

「じゃぁ、あたしもジフに連れて行って。」ロギンが言う。


「あぁ、其れは良いが対価は?」

「え?」

「ゴルンバの移送は、依頼に含まれる内容だ、だが君の移送はそれに含まれないよな。」


「あ。」納得したような顔をしたロギン。

「では、私をジフまで護衛してくれ、対価は1Gだ。」ロギンが言う。

「あぁ、請け負った。」俺が言うと何故かロギンが嬉しそうに俺に近づいてくる。


「あぁ、ケイジさんと言ったか?」

「あぁ。」

「商人の婿になる気はないか?」

「あぁ、悪いが、俺には今、11人の妻がいる。」

「は?」

「だから、これ以上嫁はいらない。」


「な、え? 11人?」ロギンがうろたえる。

「で、ジフまで送るのはどうするんだ?」


「え? あぁ、お願いする。」そう言いながらロギンは俺に皮袋に入ったビットを渡してくる。

「んじゃ、いくか、ゴルンバは収納と、抱っこのどっちが良い?」

「収納で頼む。」

「おぉ、で、ロギンは?」


「抱っこで。」

「え?」

「抱っこで。」

「お勧めしないぞ。」

「抱っこで。」


「はぁ。」俺はため息をついて、ロギンをお姫様抱っこする。

「後悔しないな?」

「えぇ。」


「んじゃ、跳ぶぞ。」

「わはははは。」

「んぎゃぁぁぁぁぁ。」


「ここがジフか?」俺は周りを見て言う。

 俺がいきなり跳んで来たことに、うろたえる門番。

 腕の中では、泡を吹いて、下半身を黄金色の液体で汚すロギン


 俺は、ロギンに浄化魔法をかけて、ヒールを唱える。

 その場で放心するロギン。

「はぁ。」俺は、ため息をつきながら、ゴルンバを虚無の部屋から出す。

 そこにいた門番は、更に固まる。

「な、ここは?」ゴルンバは一瞬固まるが、門番を見て状況を把握する。

「あぁ、俺は、ランクBのゴルンバだ。」ゴルンバがギルドカードを示す。

「あたしは、同じくランクBのロギンだ。」

惚けていた、ロギンも同じようにカードを示す。

 んじゃ、俺もやっておくか。そう思いながら、ギルドカードを見せる。

「ベカスカ、Aランクのケイジだ。」

「な!」

「あれ? 何で固まる?」俺がそう思うが、門番がざわついている。


「な、え? Aランク?」ロギンが固まる。

「あれ? まずかった?」俺はそう思うが

「ようこそジフへ。」

 そこにいた門番の態度が変わる。

「ははは、Aランクの方の入国、歴史に残ります。」別の門番が言う。

「え?」

「いや、ケイジさん、マジで凄いですね。」ゴルンバが俺に言う。

「Aランクに上がるには、ダンジョンを何個か攻略するか、魔王を討伐するかそれ以上の功績を上げないと無理ですからね。」

「ほほほ、人間では到達できないレベルでないと言われています。」ロギンも続く。

「え? 俺、最初からAランクだったぞ。」

「え?」

「は?」

「ダンジョンも、何個か攻略したし、魔王も討伐したけど。」


「はぁ?」

「ほぇ?」

「何か、失礼な対応だと思っちゃ駄目か?」

「いや、ケイジさん、其れマジで言ってますか?」

「お前は、我マスターを侮辱するのか?」

「サラン、良いから。」

「でも。」

「そうだな、これを見せれば納得するか?」そう言いながら、孔雀の肉を取り出す。

「え? 何ですか其れは?」

「孔雀の肉だ。」

「はい? 孔雀?」

「マヤオのダンジョンで捕れる、最高級の肉らしいぞ、あ、その上にコカトリスがいるらしいけどな。」

「コカトリス?」

「おぉ、これだ。」俺はコカトリスの肉を取り出す。


「あいや~、そ、そ、そ、それは、こ、こ、こ、コカトリスの肉ですか?」そこにいた商人が反応する。

「え? ああそうだ。」俺が答えると、

「お譲りいただけないでしょうか?」

「はぁ、コカトリスを?」

「はい。」

「相場は知ってるか?」

「はい、1重10000G、あるいはそれ以上。」


「一応聞こう、なんでだ?」

「はい、この度、わが娘の輿入れが成立しました。」

「つまり、娘さんが結婚する、その嫁ぎ先が高貴なお方って事か?」

「はい、その通りです、そこにコカトリスの料理を出せば、娘への対応も変わると思いまして。」


「ん~。 婚礼は何時だ?」

「明後日です。」

「何の料理を作るつもりだ?」

「いえ、何も考えては。」


「これを食ってみてくれ。」

 俺は、金鶏の唐揚げを一つ取り出す。

「え、今どこから、そしてこれは?」

「金鶏の唐揚げだ。」俺は皿に乗せたそれを差し出す。


「金鶏、幻の、では。」そう言うと、その商人は唐揚げを摘まみ口に入れる。

「あふぃ。」そう言うと唐揚げを口から出し、ふうふうと冷まして、もう一度口に入れる。

「な、こ、これは。」商人はうっとりとした表情をする。


「これで良ければ、俺が作ってやるが、報酬はいくら払う?」


「コカトリスでこれを?」


「あぁ。」


「判りました、コカトリスの肉1重、この料理で20000Gで。」

「前払いでも良いか?」

「はい。」

「俺は、招待客と言う事になるのか?」

「はい、そうなります。」

「領主前婚か?」

「はい。」

「どこでやるんだ?」

「はい、ここジフの領主様、破壊神ガラン様の御前で。」


(第8位、バランの派閥です。)

(まぁ、こっちから仕掛けなければ、問題ないだろう?)


「よし、ギルドに行って、指名クエストを出してくれ。」

「はい、判りました。」


「あぁ、ゴルンバとロギン悪かったな、早速ギルドに行こう。」

「いや、今後絶対見られない依頼内容に立ち会えたことを幸運と思うよ。」

「ほほほ、この話だけで、子や孫に話す内容になるわ。」


「そうか? いや、この後のことを話す方が盛り上がると思うぞ。」


 ジフのギルドに着いた。

「ギルマスを呼んでくれ、きっとこのギルドで語り草になる内容だ。」ゴルンバが受付でそう言う。

「いや、そんな大ごとかよ。」俺は思う。

 受付の獣人が二階への階段を上がった。



************



「どうしたゴルンバ、俺も暇じゃないんだぞ。」不機嫌そうな顔をした男が階段を下りてくる。

「ここにいる、ケイジさんが俺の依頼を達成してくれた。」

「なに、不明の生徒が見つかったのか?」

「あぁ、其れだけじゃない、ラメガ以下3名の引率も保護してくれた。」

「おぉ、俺はケイジだ、宜しくな、ここで出せば良いか?」

「おぉ、お願いします、ケイジさん。」ゴルンバがそういうので、俺は、聖リロスゴ学院の生徒達をそこに出す。

「え? 此処何処?」

「あれ? ケイジ様?」

「森にいたはずなのに?」


「な、これは?」ギルマス以下、ゴルンバとロギン以外の者達が固まる。

「あぁ、ロギン、手を出せ。

「え?」そう言いながら手を出すロギン。

「両手で持った方がいいかな?」俺の言葉に両手を出すロギン。

 俺は、そこにキメラの魔石を取り出す。

「え、え?」ロギンがうろたえる。


「お前たちが、生徒を守るために戦っていたキメラの魔石だ。」

「なぁ?」ギルドマスターが声を上げる。

「じ、じ、上級魔石?」

「いや、倒したのはケイジさんじゃないですか。」ロギンが叫ぶ。

「いやいや、生徒を守り、一日以上戦って時間を稼いでくれたじゃないか、当然の権利だ。」

「ろ、ロギン、一個5000Gで買うぞ。」ギルドマスターがにじり寄ってくるが、

「ちゃんと、魔石専門の店に行って鑑定してもらった方が良いぞ、俺は前に一個17000Gのを売ったことがある。」俺がそう言うと、

「はぁ? 17000G?」ギルドマスターが固まる。

「そ、そ、そ、そんな法外な・・」

「え~? 法外とか、魔石ごとに宿った魔力量が違うらしいから、鑑定した方が良いと思うんだがなぁ。」

(ケイジ様、鑑定可能です。)

「あぁ、んじゃ、俺がちゃちゃっと鑑定してみるか。」そう言いながらそれらしいポーズをとって、魔石を鑑定したふりをする。

(紫炎。)

(はい、3個とも12000Gです。)

「これは、どれも魔石3500個分だ、一個12000Gが妥当だろうな。」


「おい、お前、何を根拠に言ってるんだ?」ギルマスが俺に詰め寄る。

「おい、ギルマス、そこにいるケイジさんはAランクだぞ。」ゴルンバが言う。

「な? Aランク?」ギルマスが固まる。


「あぁ、ベカスカのカードが通用するならな。」そう言いながら俺はカードを見せる。


「う、あ。」ギルマスが沈黙した。


「じゃぁ、決済を宜しく。」そう言いながら、受付の女性にカードを渡す。

「はい、聖リロスゴ学院の生徒達の保護、確認しました。」受付嬢は機械的に読み上げる。

「緊急クエスト、ドレース姉妹保護確認しました。」同じように機械的に読み上げる受付嬢。

「この受付嬢出来るな!」


「全てのクエスト、確認、支払いは1000Gです。」

「あぁ、決済ヨロ。」俺が言う。

「キメラ討伐、3体確認しました、300Gです。」


「ほらぁ、あんたの手柄じゃない!」ロギンが騒ぐが無視だ。 


「ケイジ様、指名クエストが入っています。」

「おぉ、受けた。」

「え?」

「内容も聞かずにですか?」

「コカトリスの肉で、料理を作れ、だろう?」

「え、あ、はい、そうです。」

「受けるよ!」


「では、前払い20000Gをお支払いします。」


「はぁ、なんだそりゃ。」そこにいた、ロギンとゴルンバ以外全員がフリーズした。


「その依頼内容を聞いても良いか?」傍にいた冒険者の一人が俺に尋ねる。

「明後日までに、コカトリスの唐揚げを納品すればオッケーな楽なお仕事。」

「は?」

「え?」

「こ、コカトリス?」

「あぁ、そうみたいだな。」

「いや、他人事みたいに。」

「マヤオのダンジョンで普通にドロッ、いや、ギルドで聞いてくれ、因みにフロアボスは、マスター、悪いなこれもギルドで聞いてくれ。」俺は情報を漏らすのを止めた。

「ダンジョンの情報は、ギルドの資金源だったな。」そう思いながら、その場を濁した。


「ふふふ、うちのギルドの儲けを阻むもの。」ギルマスが俺を睨む。

「おい、ギルマス、ケイジさんがどうやってキメラを屠ったか知りたくないか?」

「何だその情報?」ギルマスがロギンを睨む。

 ロギンは、俺の方を見る。

 俺は、こくりと頷く。

「ケイジさんが、キメラを倒した方法は。」

「方法は?」ギルマスが、面倒くさそうに言う。

「素手で殴った。」

「あぁ? ロギン、俺を馬鹿にしているのか?」ギルマスが激高する。

「事実だ!」

「は?」

「そして、その後、ケイジさんを敵だと認識したキメラが、魔石に変わった。」

「え?」

「ケイジさんに敵対心を持ったものは、その場で破滅するらしい。」

「な?」


「事実だ。」

「ケイジさん、其れは人間にも?」ロギンが聞く。

「あぁ、俺に敵対心を持った馬鹿な冒険者がいたな。」俺は事実を告げる。


「あ~、今日はもう休むか~。」そう言いながらギルマスが消える。


「おい、魔石屋は何処にある?」俺が受付嬢に聞くと、ここのすぐ前がそうだと答える。


「ロギン、行くぞ。」ゴルンバがそう言うと、ロギン以下、そこにいた冒険者がそれに続く。



「鑑定を頼む。」そう言ってなだれ込んできた冒険者に一瞬おびえるが、その店の者は平静を装った。

「はい、どのようなものを?」

「これだ。」ロギンが手に持った魔石をカウンターに置く。


「おぉ、上魔石ですね、しばらくお待ちください。」そう言いながら店員は魔石を持って店の奥に引っ込んだ。

「お待たせしました。」そう言いながら店員はカウンターに戻る。

「一個12000Gで、引き取らせていただきます。」その言葉に、そこにいた全員が叫ぶ。

「おぉぉぉ、流石Aランクだ!」

「完璧な査定じゃないか!」

「それを、5000Gで引き取る?」

「酷すぎる!」

「畜生、今までも、査定が違ったんじゃないか?」

「あぁ、割に合わないと思ったことがあるな。」

「お前もか、俺もだ。」

「くそ、あの野郎、いい加減な査定で今まで俺達の稼ぎをむしり取っていたんだな。」

「ギルマスの不信任案を出すぞ。」

「「「「おぉ!」」」」

「あら~、でも、自業自得だな。」俺は無視することにした。


「ケイジ様、これで、冒険者を引退して、ラメガと店を出すことができます!」ロギンが俺の前に来て嬉しそうに言う。

「な、ロギン、俺と田舎で隠居すると言ってくれたのは?」スライバが言うと、

「え~、ラメガの方がイケメンだし~、話も合うし~、あんたおっさんだし~。」ロギンが毒を吐く。

「な?」


「こっちも修羅場か。」俺はそう思いながらそこから、そっといなくなった。

「何の問題もない。」

「無いよな?」

 その後、ジフのギルマスが犯罪奴隷になったとかなんとか、俺、関係ないよね、ね?



************



「エス、手伝ってくれないか?」

「はい、ケイジ様!」二つ返事で答えてくれる。

「1重分の唐揚げを作りたい。」

「はい、問題なく。」

「コカトリスで。」

「は?」

「コカトリスで。」

「ケイジ様、すっごく高い、高級なお肉ですよそれ。」

「らしいな。」

「そんな、高級なお肉で、唐揚げですか?」

「え?」

「コカトリスですよ、普通なら、コカトリスのもも肉の丸焼きとか、蒸しコカトリスとか、素材の味が判る物を作るべきです。」

「あ~、俺が勧めた。」

「え?」

「まったく考えてなかったわ。」

「あ~。」

「では、それも作りましょう!」エスが言う。

「それも?」

「はい、唐揚げもです。」

「それ以外の料理も作りましょう。」

「あぁ、そうだな、サプライズ!と言えば良いか。」

「さぷらいずって何ですか?」エスが聞いてくるが、

「お前らの知らないことで、祝ってやるぞ!」って答えたら、納得してくれた。

 え? 間違っていないよな?

「なんで、エスはコカトリスの料理のことを知っているんだ?」

「いえ、普通の鶏料理です。」

「え?」


「ランナー鶏とか、ロック鶏の唐揚げは美味しかったです。」エスが言う。

「金鶏の唐揚げを食べてなければ。」エスは頬を膨らませる。

「あ~、俺が悪かった。」とりあえず謝る。


 そう言えば、最初に金鶏を使ったな。

 その後で、ランナー鶏やロック鶏のお肉をムーニャに孤児院で使う許可を出したな。


 最初に金鶏の味を知っちゃったら、ランナー鶏やロック鶏のお肉はきついよなぁ。

「いえ、ケイジ様、普通に美味しいんですよ、でもそれ以上の味を知ってしまっては。」


「それは、解るよ、一つ上の味を知ったら、その前には戻れないってやつだな。」


「あ~、これ以降、俺はそれ以上の食材を供給しないって事で良いか?」

「はぁ? 何言ってるんですか、ケイジ様!」


「私たちに死ねと?」エスが俺ににじり寄る。

 あぁ、エス、其れは一番やっちゃ駄目な行為だ。


「エス。」俺は静かに目の前の少女に聞く。

「はい、何でしょう?」

「死ね。」冷たい目で俺が言う。


「え?」エスが絶望を目に宿して俺を見る。

「たった今から、俺は、お前達に一切、食い物を供給しない!」

「え?ケイジ様?」

「知るか、 ちょっと良い食材の供給を受けたから、自分が特権階級だと思う奴らは勝手に死ね!」

「え?」

「あ?」

「ケイジ様、嘘ですよね?」エスが俺に言う。

「は?」更に冷たい目でエスを見る。


「お前ら、甘えすぎじゃね?」俺は更に冷たい目で目の前の女を見る。

「紫炎!」

「はい。」

 そこに有った、コカトリスの肉がすべて消滅する。


「シスター。」俺は苛ついて言う。

「はい、ケイジ様、何でしょう?」そこにいたシスターが俺の前に来る。

「今まで寄付をした、コンロや、オーブンは好きに使ってください。」

「え?はい判りました。」

「今後、この孤児院に、私が寄付などを行う事は一切ありません!」

「え?」シスターが固まる。

「え?ケイジ様?」エスが俺を見る。


「エス、お前は俺の逆鱗に触れた。」

「え?」

「勝手に死ね!」


「待ってください!」エスが俺の足にしがみつく。

「何だ?」

「こ、こんな生活を教えたのはケイジ様ではないですか。」

「あぁ、だから?」

「最後まで、面倒を見て下さい。」

「はぁ?」

「お願いします!」

「ここの孤児院は、ミーニャやムーニャ、ついでにメームを育ててくれたから肩入れしていたんだ。」

「え?」

「もっと言えば、お前や、エル、エヌ,エム達には店を持たせてやろうかと思っていたんだがな。」


「え?」

「お前、この孤児院を潰したな。」俺はそう言いながら、エスの手を払い、虚無の窓を潜る。

 その場で、何かを考えていたムーニャも、俺に続いた。


「あぁぁ、ケイジ様ぁぁ。」エスがその場で崩れ落ちた。

 

エル、エヌ、エムはお互いが顔を見合わせ、旅の準備を始める。


「あぁ、この後どうすれば。」シスターが狼狽えるが、普通に考えれば元に戻っただけだ。

 しかし、それ以上の生活を知ってしまったときにそこに戻れるかどうかは、そこにいる者たちの努力次第だ。

 そう、コンロやオーブンはそこに有り、元種もあるのだから。

 しかも、バク粉やブッターもそこに有る。

 ライシーも、おにぎりの型もある。

 そこにいる者達がそれに気づけば、そう、何も変わっていない。

 原料の供給ルートさえ確立すれば。


 孤児院が消えるか、存続するかはエスの力量次第だ。


「主様、良いんでしょうかにゃ?」

「何が?」

「見捨てて・・」

「はて、あんだけ回ってれば、俺の力はもういらないだろう。」

「それは。」

「ようは、自立するのが早かったって事だ。」

「はぁ。」

「いつまでもグジグジしてるエスでもないだろ、きっと。」

「はぁ。」

「まぁ、気にするなら、時々見に行ってやれば良いんじゃないか?」

「え?」

「あぁ、高級食材の提供は禁止な。」

「良いんですにゃ?」

「は、俺はもう手を出さないよ。俺は。」

「流石、主様ですにゃ。」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。