やらかしの71
気が付けば1周年、いつもお読みいただきありがとうございます。
「マスター、凄い力を感じる。」
「ぐふふ、鳥肌が立ちます!」
「あぁ、少しだけプレッシャーを感じるな。」俺はそう言って一歩前に踏み出した。
「「「「「ひぎゃあああぁぁ」」」」」
「あぁ、最下層でも通用するんだ。」
「上魔石23、特上魔石2、アダマンタイト40重、ヒヒイロカネ20重、オリハルコン10重虚無の部屋に。」
「ケイジ様、あそこに居るのは、レベル200、青龍です。」
「うわぁ、レベル200とか、普通の人間じゃ到達できないじゃん。」
「マスター、魔王の6人パーティーなら辛うじて攻略可能かと思います。」
「何のためのダンジョンだよ!」そう言いながら、俺達は前に進む。
「おぉ、ここに誰かが来るのは初めてだ、歓迎するよ!」青龍が上から見下ろして言う。
「あぁ、俺はケイジだ、宜しくな。」俺は一歩前に出て言う。
「おや、そこにいるのは白虎かい?」
「あぁ。」
「8階層の守りを放棄したのかい?」
「ここにいるケイジ様に名を貰ったら、ダンジョンから切り離された。」
「おぉ、其れは羨ましい。」
「青龍といったか、俺は穏便にすましたいんだが、見逃してくれないか?」
「ん~、条件次第かな。」
「条件?」
「ダンジョンのコアを破壊しない事。」
「あぁ、約束する、ここを管理している者にそう言われた。」
「あはは、其れなら良いよ。」
「軽いな?」
「ダンジョンのコアは、僕だから。」
「は?」
「正確には、僕が持ってるこの球がコアなんだ。」
「竜玉ってやつか?」
「よく知ってるね、その通りだよ。」
「一応聞くよ、お前がこのダンジョンから切り離されたら、このダンジョンはどうなるんだ?」
「さぁ、よくわからないや。」
「そうだよなぁ。」
「青龍、お前名前は?」俺が聞く。
「ん、僕は青龍だよ。」
「それは、種だよ!」
「ん~。」
「其の括りなら、俺は人間だ。」
「ぐふふ、疑わしいですが。」
「ズビシ!」ダンサに俺のデコピンが炸裂する。
「ぐふふ、ご主人様の愛を感じます!」そう言いながらダンサは反対側の壁まで飛んで悶絶する。
「僕に名前を付けたらダメな気がするから、つけないでね。」
「あぁ、その方がよさそうだな。」
「あぁ、青龍、お前は人の形態はとれないのか?」
「できるよ。」そう言いながら青龍が白虎と同じように人の形を取り、千早を着た巫女さんの姿になる。
「おぉ、美人さんだな。」俺が素で言う。
「な、僕を誉めても何も出ないよ。」
「いや、素直な感想だ。」俺がそう言うと、サランが俺の腕をつねって言う。
「マスター、私はそんなこと言われたことがない!」
「痛いから、サランはそう言う次元にいないだろう?」
「?」
「お前は、人とは違う次元の美貌だろう!」
「な!」サランがもじもじしながら指輪に消えた。
「何だったんだ?」
「ぐふふ、ご主人様の天然は最早最強ですね。」
「で、僕を人の形態にしてどうするの?」
「あぁ、宴だ。」
「え?」
「ぐふふ、流石です!」
俺は、虚無の部屋から机を取り出すと、その上に各種の酒を取り出した。
そして、今まで集めた肴も机に並べる。
「な!」白虎と青龍も驚いていた。
「さて、サランも出てこい!」
「はい。」
「さて、お前達、好みの酒は何だ?」
「僕は、清酒だ!」ハクが言う。
「おぉ、燗か冷か?」
「え? 燗? 冷? 何それ?」
「冷たいのか、温かいのかだ。」
「冷たいのしか飲んだことないから、温かいので!」
「おぉ。」俺は燗に適した清酒を魔法で温める。
そして、虚無の部屋から、いつものようにコップと升を取り出し、そこに温めた清酒を注ぐ。
「え。あ、零れ。」ハクが動揺するが、いつものようにコップから溢れさせる。
「奉納は?」
「いや、要らない。」
「んじゃ、飲め!」俺はそう言いながら、コップに入った燗酒をハクの前に出す。
「さて、青龍はどうする?」
「僕も、温かい酒が良い。」
「おぉ、良いぞ。」
俺は、ハクと同じように燗酒を用意すると青龍の前に置く。
「奉納は?」
「要らない!」
「んじゃ、飲め!」
「マスター、私は冷を。」
「おぉ、サランに奉納を。」そう言いながらコップに冷やした酒を注ぐ。
「ぐふふ、ご主人様、くさやは駄目です!」そう言いながら、ダンサは冷酒を飲みながらくさやの干物を貪っていた。
「おぉ、流石ダンサだな、くさやの干物の良さを分かるとは。」
「しかも、マヨネーズを再現しますか?」
「ダンサのケチャップも凄いと思うぞ。」
「ぐふふ、流石はご主人様です、嫁にもらってください!」
「却下だ!」
「ぐふふ、心地よい!」
「ケイジ様、この干物と言うものは、臭いけど美味しい。」
「いや、干物のすべてが臭いわけじゃないけどな。」
「これは俺が作った塩辛だ、燗に合うぞ。」そう言って、秘かに作っておいた塩辛を取り出す。
「本当だ、燗が進む!」ハクが塩辛を口に入れて燗を煽る。
「ぐふふ、この世界に烏賊があるのは知っていましたが、生で食べられるものは初めてです。」
「あぁ、海辺の町にイーカという名前で売っていたぞ。」
「ぐふふ、この世界は流通というものが発達していないので、ラバハキアでは干物しか手に入らないのですよ。」
「そうなのか?」
「ぐふふ、ケイジ様、烏賊リングをメニューに増やしたいので連れて行ってくださいませんか?」
「烏賊リング?」
「はい。」
「ダンサ、ここにソースもあるのは知っているか?」
「え? 自作しようと思ってました。」
「これだ。」そう言いながら虚無の部屋からソースを数種類取り出す。
「おぉ。」
「お好み焼きにはこれだ、とんかつにはこっちが合う、焼きそばはこいつが良い。」
「ぐふふ、とんかつに合うものが良さそうですね、揚げ立てにレモンを絞ってソースでパクっと!」
「よし、ダンサ、明日行こう!」俺は生唾を飲み込みながらダンサの肩を抱いて言う。
実は、烏賊リングは好物なんだよ。
「ケイジ様、夫婦で会話するのは止めて、お酒無いよ!」
「ぐふふ、ハク様、ありがとうございます!」
「ハク、違うからな!」そう言いながら、ハクのコップに燗を注ぐ。
「あぁ、こんなのも有った。」俺はそう言いながら、以前買った川魚の塩焼きを取り出す。
「これも燗に合うぞ。」
「へぇ?」青龍が口に入れる。
「あふい(熱い)。」
「あぁ、作り立てだからな。」
「ケイジ様のマジックバックはすごい性能なんだね」ハクが言う。
「あ~、俺のはマジックバックじゃないんだ。」
「俺に力を貸してくれている精霊様のご加護なんだ。」
「へ?」
「精霊様?」
「はい、私はケイジ様をサポートする紫炎と申します。以後お見知りおきを。」
「あれ? 声だけが聞こえる?」ハクは辺りをきょろきょろ見回す。
「ぐふふ、私はダンサと申します、ケイジ様の妻の座を狙っておりますので、宜しくお願い申し上げます。」
「はい、ダンサ様、申請登録完了いたしました。」
「おい、紫炎、何を勝手に!」
「全ては、ケイジ様のムハムハ、ハーレム計画のために!」
「勝手に変な計画を進めてんじゃねーよ!」
「ケイジ様、先日作られていた卵の燻製も燗には合うと思うのですが。」紫炎が言う。
「おぉ、忘れていたぜ、じゃなくて、紫炎、なんだその計画は!」
「奥様達が、いえ、何でもありません!」
「はぁ。」俺はため息をつきながら、虚無の部屋から卵の燻製を取り出す。
(ミーニャやムーニャの差し金だろうな。)
「旨~い!」それを食べた青龍が声を上げる。
「本当だ!」ハクも同じように声を上げる。
「ぐふふ、これはこれは。」ダンサはそれを半分口に入れ、燗で流し込む。
「ま、マスター、私も食べたい!」サランが俺の膝に手を置き懇願する。
「サランに奉納を!」
「あぁぁ、マスター、冷もください!」
「サランに奉納を!」
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「ぷっはー、堪能した!」青龍が言う。
「おぉ、其れはよかった、んじゃ、俺達は帰るな。」
「え? もお?」
「お前の魔力も削れてるだろう。」
「うん、そうだけど。」
「俺らがいたら、お前死ぬよな。」
「・・・うん。」
「んじゃ、又来るから、今回は帰るぞ!」
「解った。」
「最後に教えてくれ。」
「このダンジョンを作ったのは、誰だ?」
「暗黒王ボルガ様だよ。」
「ボルガ?」
「ぐふふ、第5位の魔王です。」
「何のために?」
「成り上がるために、強力な装備がいるって言ってたけど、半年ぐらいで出て行っちゃった。」
「そうか。」
「紫炎、最上階に繋げるか?」
「御意。」
一階層の門の奥に出た。
「おぉ。戻ってきたのか。」ギルド職員が言う。
「あぁ、階層の情報が欲しいって顔だな。」
「あぁ、その通りだ。」
「今回の階層毎のドロップと、階層主の種族とレベルなら提供できるぞ。」
「ぜひ頼む!」
「一階層は鉄30重だった。」
「うん、その程度だな。」
「二階層は鉄60重だった。」
「それも、いつも通りだな。」
「三階層は鉄100重、ミスリル20重だ。」
「おぉ、ミスリルが出たか。」
「四階層はミスリル30重だ。」
「おぉ、ミスリルだけか。」
「さて、問題の五階層だが、ミスリル60重、フロアボスはレベル32のガーゴイル、ドロップはミスリル100重だった。」
「レベル32のガーゴイル?」
「あんた、よく生きて帰って来たな。」
「そして、六階層だ。」
「え?まだ下に行ったのか?」
「あぁ、六階層は、ミスリル100重、アダマンタイト10重、フロアボスはレベル五〇のミスリルゴーレム、ドロップはミスリル50重だった。」
「ボスは五階層よりドロップがひどいのか。」
「しかし、アダマンタイトが出るのは本当だったのか。」ギルド職員がうなる。
「七階層は、フロアボスだけだった。」
「は? まだ下に行ったのか?」
「あぁ、最下層まで行ってきたぞ。」
「な、噂には聞いていたが、本当に規格外なんだな、君は。」
「続けるぞ、七階層はレベル120の玄武、ドロップは玄武の盾とアダマンタイト40重だ。」
「なぁ、疑うわけじゃないが、証明するものは?」
「あぁ、これで良いか?」俺は玄武の盾を取り出す。
「こ、これは。」
「玄武の盾だ。」
「ちょっと見せてくれ、俺は鑑定ができる。」
「あぁ、良いぞ。」俺はその男に盾を渡す。
「どうだ?」別のギルド職員が男に聞く。
「まて、今見る。」そう言って何かの呪文を唱える。
「マジかぁ。」その男が興奮して言う。
「どうなんだ?」別の男が聞く。
「本物だ。」
「欲しけりゃ売るぞ。」俺が言う。
「買いたい。買いたいが、最低でも5000Gからのオークションになる。資金がないよ。」そう言って盾を渡してきた。
「んじゃ、八階層だな。」俺は盾をしまいながら言う。
「まだ続くんだな?」
「八階層は、鉄500重、ミスリル200重、アダマンタイト50重、ヒヒイロカネ10重で、フロアボスがレベル150の鳳凰、ドロップが鳳凰の鉾とアダマンタイト70重だ。」
「ヒヒイロカネ。」
「あぁ。」
「見せてくれないか?」
「あぁ。」俺はヒヒイロカネを取り出す。
「おぉ、これが。」
「初めて見た。」
「売っても良いぞ。」
「ははは、1重3000Gだ、無理だ。」
「では、続けるぞ。」
「待ってくれ、ケイジさん!」
「あぁ、何だ?」
「今の情報だけで、支払いが予算を超えた!」
「え? たった八階層だぞ?」
「おいおい、其れだけで5〇〇〇Gの価値があるんだが。」
「後2階層なんだが。」
「いや、申し訳ないが、後はベカスカのギルドで報告してくれないか?」
「あぁ、解った。」
「勿論、今までの分はここで決済するよ。」
「カードを。」
「あぁ。」俺はギルドの職員にカードを渡す。
「確認してくれ!」ギルド職員は俺にカードを渡して言う。
「ああ、照会!」
カード所有者:ケイジ
ギルドランク:A 87,606G
伴 侶:獣人:ミーニャ
伴 侶:人 :カリナ・ゴウショーノ
伴 侶:獣人:ムーニャ
伴 侶(血族):サラン(サラマンダー)
伴 侶(血族):リアン(リバイアサン)
伴 侶:エルフ:アイリーン
伴 侶:ノーム:モーマ
伴 侶:人 :アヤ・ミカンナ
伴 侶:魔族:ヨイチ
伴 侶:魔族:ヒドラ
義 弟:獣人:メーム
隷 属:四獣:ハク
「げ、ハクが隷属してる。」
「え? 何か不味かった?」
「いや、別にいいよ。」
「よかった。」
「ぐふふ、まだ其処には行けないのですねぇ。」
「来なくていいから。」
「ぐふふ、諦めませんよ!」
「紫炎、ラバハキアのダンサの店に。」
「御意。」
俺達はそこを潜った。
「ダンサ、明日朝一番で迎えに来る、用意しておけ。」
「ぐふふ、解りました。」
「紫炎、ベカスカのギルド前に。」
「御意。」
「あ、ケイジ兄ちゃんだ。」孤児の一人がギルド前に着いた俺を見て声を上げる。
「おぉ、お前らどうだ?」
「今日3回目。」とリノが答える。
「おぉ、何よりだ。」
「でも、もうパンがなくなった。」
「げぇ、想定より早いな。」
「よし、ギルドの用を済ませたら仕入れに行くぞ。」
「解ったぁ。」
「調査報告を頼む。」俺はカウンターにいた獣人のお姉さんに言う。
「はい、どのような?」
「オカタのダンジョンの、踏破記録とドロップ情報だ。」
「な、あの、ギルドマスターのお部屋にご案内します。」
「あぁ、宜しく。」俺はその後に続いた。
アイリーンの部屋に入ると、モーマとカッターがいた。
「ケイジ様ぁ、お久しぶりですぅ。」
「がはは、ケイジ、ベワカタキのダンジョンで儲かってるぜ!」
「あぁ、お久です、モーマさん、カッターもよかったな。」
「ケイジ様、今回はオカタのダンジョンを踏破したとか?」アイリーンがいつもの甘いお茶を俺の前に置きながら言う。
「オカタのギルドは、8階層の情報だけで資金が枯渇したとさ。」
「はぁ、あそこはローカルですからねぇ。」アイリーンがため息をつきながら言う。
「その後はここで開示してくれだとさ。」
「あぁ、はい、承りますよ。」アイリーンが何故か疲れた顔をして言う。
「アイリーン、疲れてるのか?」
「いえいえ、ケイジ様のおかげで、儲かって儲かって、忙しいだけです、主にお肉関係で。」
「あ~、肉ダンジョンのせい?」
「えぇ、でも、実際儲かっているので。」
「あ~、今度温泉にでも行くか。」俺の不用意な一言で、アイリーンが豹変する。
「本当ですね、言質とりましたよ! モーマも聞きましたね!」俺の両肩をガッシと掴んでアイリーンが言う。
「はい、聞き届けましたぁ。」モーマが言う。
「アイリーン、痛いよ。」
「はっ、失礼しました、ケイジ様。」アイリーンが俺の肩から手を放す。
「で、オカタのダンジョンの情報だ。」
「一階層は鉄30重だった。」
「「二階層は鉄60重だった。」
*******************
「で、8階層だが、フロアボスがレベル150の鳳凰でドロップが鉄500重、ミスリル200重、アダマンタイト50重、ヒヒイロカネ10重だった。」
「で、9階層はドロップなしだ。」
「フロアボスは討伐しなかったのですか?」アイリーンが言う。
「あぁ、名前を与えたら隷属した。」
「へ?」アイリーンが腑抜けた声を出す。
「元9階層のフロアボス、レベル180の白虎、今の名は「ハク」挨拶しろ。」
「ご主人様に名前を貰って、ダンジョンのフロアボスから切り離された白虎こと「ハク」と言います以後お見知りおきを。」巫女装束の僕っ子娘が優雅にお辞儀をする。
「ケイジ様、ダンジョンのフロアボスを隷属させるなど、前例がありません!」
「んじゃ、今回が初めてって事で、良しなに処理してくれ!」
「はぁ、ケイジ様ですものね。」
「がはは、ケイジだもんな。」
「ケイジ様ぁ、流石ですぅ。」
何だろう、3人のギルマスが残念オーラを出している気がする。
「最後に。」気を取り直して俺が言う。
「10階層のドロップだが、アダマンタイト40重、ヒヒイロカネ20重、オリハルコン10重だった。」
「フロアボスは?」アイリーンが聞く。
「レベル200の青龍、ダンジョンコアは青龍が持った竜玉だ。」俺が答える。
「なんと言うか。」
「流石ですぅ。」
「がはは、マジで俺はケイジの友達であることを誇りに思うぜぇ。」
「なんだよ、お前ら、その反応。」
「ケイジ様の情報の濃さですよ。」
「うん?」
「ダンジョンの情報はそのレベルの高さで変わります。」
「ふ~ん。」
「フロアボスがレベル200は、前例がないですが、一般にフロアボスのレベル×100G×階層が相場です。」
「ほぉ。」
「いや、良いですか、今の情報だけで、180×100×9+200×100×10=342000Gの価値があるんですよ!」
「へぇ。」俺は興味なさげに言う。
「ケイジ様、決済に数日かかります。アイリーンが更に辛そうな顔をして言う。
「おぉ、宜しくな。」
「ふふふ、ケイジ様、温泉楽しみにしています。」アイリーンから嫌な重圧を感じるがとりあえず無視しよう。
「さて、パンの仕入れだ。」俺は気持ちを切り替えて言う。
ギルド前に行くと、既に売り切れになった状態の孤児達がいた。
「ベカスカの孤児院に。」
「御意。」
最早符丁に近い言葉で、紫炎がベカスカの孤児院に繋いでくれる。
俺達はそこを潜る。
「おにぎりの最終分いくよ!」エスが音頭を取っていた。
「おぉ、エス、好調だな!」
「あ、ケイジ様、パンが足りません!」
「あぁ、聞いた、仕入れに行くぞ!」
「はい、あ、エル、エヌ調整ヨロ!」
「アイアイさー」
「任せて!」元気な声が買える。
「よし、エス行くぞ。」紫炎にパン屋の前に繋いでもらい、俺達はそこを潜る。
「おぉ、いらっしゃいませ、お待ちしておりました。」店主が言う。
「今回はどの位だ?」俺が言う。
「はい、こちらに。」そこには10日以上の売り上げに匹敵する在庫があった。
「おいおい、これはどうした?」俺が店主に聞く。
「はい、パンに合うコボを見つけました。」
「なに?」
「そのパンにぴったりのコボを見つけました。」
「そうか、では、ここ居あるパンを全部もらうよ、幾らだ?」
「3Gです。」
「んじゃ、決済して。」
「はい。」俺はカードを渡し、店主が決裁を完了する。
「おやじ。」
「はい、何でしょう?」
「そのコボ幾らだ?」
「は? いえいえ、進呈しますよ。」
「おぉ、悪いな。」そう言って俺は虚無の部屋から小皿を取り出して店主に渡す。
店主は店の奥に入ると、小皿にコボを乗せて出てきて、其れを俺に渡してきた。
俺は、それを受け取ると店を出た。
「さて、バク粉も買っていこう。」
「ケイジ様、バク粉って?」
「あぁ、エス。」
「はい。」
「パンを作ろう。」
「はい?」
「パンを作るんだ。」
「作れるんですか?」
「勿論だ。」
俺達は、バク粉とブッターを手に入れ、ベカスカに戻った。
「ケイジ様、パンなんて作れるんですか?」
「おぉ、エス、簡単だぞ。」
「感激です。」
「干しブドウをラム酒に漬けたものを、生地に混ぜて焼いたブドウパンは絶品だぞ。」
「何ですかそれ、美味しいに決まっていますよね!」
「あぁ、エス、おいおいにやっていこうな。」
「はい、ケイジ様!」