やらかしの69
暑いですね、溶けそうです。
「ここがオカタのダンジョンか。」
目の前には、立派な門があり、ギルドの職員が二人立っていた。
「おぉ、ここは管理されているんだな。」そう言いながら門に近づく。
「ここはどんなシステムなんだ?」俺はそこにいたギルド職員の一人に聞く。
「あぁ、ここは鉱物ダンジョンでな、最低でもランクBがメンバーにいないとは入れない。」
「今入っているチームは、5階層辺りにいるから、そろそろ戻ってくるよ。」
「んで、ダンジョンに入るには、一人100Bだ。」
「中で採掘、というか手に入れた鉱物はここでも買い取るが、持ち帰っても構わない。」
「ふ~ん、買取の相場は?」
「鉄で1重1Gだな。」
(紫炎、1重とは?)
(10kgです。)
「ミスリルは?」
「1重30Gだ。」
「アダマンタイトやヒヒイロカネも採れるのかい?」
「過去に6階層で出たらしい。」
「らしい?」
「6階層の魔物のレベルは30を超える、その時はたまたま低いレベルのモンスターが出たらしい。」
「ふ~ん。」
「おい、まさか行くつもりなのか?」
「あぁ。」
「おい、悪いことは言わない、止めた方が良い。」
「あと、コアは破壊しない方が良いんだよな?」
「はぁ? いや、破壊しない方が良いが、お前死ぬぞ。」
「大丈夫だよ。」
「いや、まぁ、自己責任だしな。」
その時、門の裏が騒がしくなった。
「誰か、上級ポーションを持っていないか!」門の奥から冒険者が転がり出てきた。
「ど、どうした?」ギルド職員が対応する。
「な、仲間が、重症なんだ!上級ポーションを!」
「すまない、ここにあるのは普通のポーションだけだ。」
「あぁ、そこのあんた、上級ポーションを持っていたら譲ってくれ!」その冒険者が俺に言ってくる。
「どんなケガだ?」俺が前に出る。
「あ、あぁ、あっちだ。」その男が門の奥に行く。
ギルド職員と、俺がその男に続いた。
「おい、上級ポーションを持っている人はいたか?」そこにいる男女達が言う。
そこには、左手と、右の脇腹の殆どを失った女性の冒険者が横たわっていた。
まだ、息はあるが、それでも時間の問題だろう。
(ケイジ様、助けるにはライフをかけるしかありません。)紫炎から伝わってくる。
「頼む、上級ポーションを譲ってくれ、これと交換してくれ!」そう言いながらミスリルの塊を数個出してくる。
「悪いな、ポーションは無い。」俺が言う。
「そんな。」その男はその場でがっくりと跪く。
「ポーションはないが、助けてやるよ。」俺はそう言って前に出る。
「え?」その男がうつろな目で俺を見る。
「ライフ!」俺が唱えると、女性の冒険者の欠損していた部分が瞬時に治り、普通に目覚めた。
「おぉ、き、奇跡だ!」ギルド職員が目を見張る。
「ぐふふ、流石はご主人様です。」ダンサがうっとりとしながら言う。
「んじゃ、これは貰っとくな。」そう言いながらミスリルの塊を虚無の部屋に入れる。
「あ。」
「ん?」
「ありがとうございます!」そう言いながら俺に助けを求めた男が俺の前で土下座する。
「いや、運がよかったな、俺がいて。」
「宜しければ、お名前を教えてください!」
「あぁ、俺はケイジだ。」
「ケイジ?」
「あぁ。」
「あ、あの、ベカスカの?」
「ん?」
「精霊様のご加護を持った?」
「あぁ、俺のことらしいな。」
「きゃ~~~~。」死にかけていた女が悲鳴を上げた。
「おぉ、どうしたんだ?」俺が問うと、その女が俺に抱き着いてきた。
「あ、あたし、精霊様のご加護を持った人に助けられちゃった!」
「あぁ、運がよかったな。」俺が言う。
「ケイジ様、俺達もうすぐ結婚するんです。」
「おぉ、それはおめでとう!」
「よ、よかったら、式に出ていただけませんか?」
「あぁ、都合が合ったらな。」
「やったー。」
「いや、都合が合えばだからな!」
「俺らが合わせます!」
「あぁ、んじゃ、ベカスカのギルドに連絡しておいてくれ、都合が合ったら行ってやるよ!」
「おぉ、ありがとうございます。」
「因みに、何階層で、何にやられたんだ?」
「5階層のフロアボスに。」
「どんな?」
「レベルは判りませんが、ガーゴイルでした。」
「素早い奴で、いきなり後衛にいた彼女が襲われました。」
「おぉ、情報サンキュウな。」
「どういたしまして。」
「んじゃ、ダンジョンに潜って良いか?」
「え?」ギルド職員が言う。
「ほれ。」俺はギルドカードを職員に見せる。
「おぉ、Aランク!久々に見ました、お二人ですか?」
「いや、3人だ、まぁ、実質俺一人だがな。」そう言いながら300Bを払う。
「え? 何処にもう一人が?」ギルド職員が辺りを見回す。
「サラン。」
「はい。」サランが指輪から姿を現す。
「げぇ! サラマンダーの主体!」ギルド職員が腰を抜かす。
そこにいた冒険者たちも、口をパクパクしていた。
「んじゃ、ちゃっ、ちゃっと行くか。」そう言いながら門をくぐった。
「ぐふふ、平常運転ですね。」
「あぁ、其れが俺だ。」
「ぐふふ、惚れ直しました。」ダンサが顔を赤くしながら言う。
「1階には、階段で行くのか。」俺はダンサを無視して階段を下りた。
「さて、又虐殺か。」
「ぐふふ、ご主人様、虐殺とは?」
「あぁ、ダンサ、今解るよ。」俺はそう言いながら、一階の扉を開いて一歩踏み出す。
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」いつも通りの悲鳴。
「おぉ、そう言う事ですか。」ダンサが言う。
「この階層の魔物は全滅したよ。」俺が言う。
「流石、ご主人様ですね。」
「さっきの話だと、6階までこの状態だ。」
「おぉ、それは楽ですね。」
「ダンサ、俺は心が削れるんだが。」
「おや、ご主人様は、魔物たちに思い入れが有るのですか?」
「いや、無いが?」
「ご主人様は、歩いていて、蟻を踏んで悲しまれるのですか?」
「いや、申し訳ないが悲しまない。」
「では、そう言う事です。」
「つまり、蟻と同じだと?」
「はい。」
「はぁ。」俺はため息をつく。
「ダンサ。」
「はい、ご主人さま?」
「吹っ切れた。」
「おぉ、それはようございました。」
「お前、良い奴だな!」
「なぁ、其れは私に対する求婚ですか? お受けします!」
「いや、違う!」
「ぐふふ、拒絶も気持ち良い!」
「この階は、葛魔石48、魔石12、鉄30重でした。」
「よし、サクサク行こう!」
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」
「この階は、葛魔石28、魔石22、鉄60重でした。」
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」
「この階は、葛魔石32、魔石36、鉄100重、ミスリル20重でした。」
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」
「この階は、葛魔石12、魔石45、ミスリル30重でした。」
「おい、手抜きに見えるぞ。」
「ぐふふ、ご主人様、どなたとお話で?」
「いや、良いよ。」
「さて、問題の5階層か。」
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」
「この階は、魔石62、ミスリル60重、フロアボスガーゴイル、レベル32ドロップはミスリル100重です。」
「まだ蹂躙か。」
「さて、アダマンタイトが出たという6階か、どんだ具合だろうな?」
「ぐふふ、ギルド職員の話の通りなら、ここも虐殺でしょう。」
「だよなぁ。」そう言いながら、6階に足を踏み入れる。
「「「「「「「「「ぎゃぁぁああぁぁぁ!」」」」」」」」」」
「はぁ。」
「ぐふふ、流石ご主人様です。」
「魔石62、ミスリル100重、アダマンタイト10重です。」
「おぉ、出たな。」
「フロアボスがいます。」
「お、やっと生き残りが出たか。」
「ミスリルゴーレム、レベル50です。」
「なんだ、ミスリルゴーレムか。」途端にテンションが下がる。
「ぐふふ、ケイジ様、ドロップ品は、ミスリルとは限らないですよ。」
「あぁ、其れもそうか、ダンサ。」
「ぐふふ、何でしょう?」
「やっぱり、お前、良い奴だな。」
「ぐふふ、手籠めにしたいと、喜んで!」
「いや、要らない!」
「ぐふふ、癖になりそうな拒絶です!」
「ぐふふ、因みにミスリルゴーレムは物理攻撃無効、魔法攻撃半減ですが、どのように屠るのですか?」
「あぁ、面倒くさいから、物理だ。」
「え?」
「物理攻撃無効なのですが?」
「それは、属性や、魔法が付随しない物理攻撃という意味だ。」
「あぁ、なるほど。」
「剣や槍に魔法を付随するか、剣や槍そのものにそういう効果が付いていれば、攻撃は普通に通る。」
「因みに、俺の剣なら瞬殺だ。」
「ぐふふ、ご主人様が凄いのか、その剣が凄いのか。」
「両方だ。」
「ぐふふ、その高慢な自信も至極!」両手で両肩を抱いて悶絶しているダンサを無視して奥に進む。
「何だあれ?」俺はフロアボスを見て声を上げる。
そこにいたのは、身長が10mを超えるミスリルゴーレムだった。
「おいおい、ゴーレムはこんなにデカいのか?」
「ぐふふ、ダンジョンですから。」
「普通は、2m位のゴーレムが現れて、額のEMETHの文字から最初の1文字のEを消せば良いんじゃやなかったか?」
「ぐふふ、それはどうでしょうか?」
「ダンサ、通常営業だな。」
「ぐふふ、ご主人様が負ける未来が想像できません。」
「とりあえず、処理しよう。そう言いながら俺は跳ぶ。
「まず、アキレス腱の場所を切る。」そう言いながら、ゴーレムの足をまるで豆腐を切るように切断する。
「ぼぁ!」ミスリルゴーレムが、信じられないという顔をしながら膝をつく。
俺は、それを見逃すほど馬鹿じゃない。
ミスリルゴーレムの頭の前に飛び、Eを削る。
「ごあぁ!」一声発して、ミスリルゴーレムが爆散する。
「おぉ、派手だな。」
そこには、宝箱と、ミスリルの塊50重が落ちていた。
「マスター、罠はない!」サランが宝箱を鑑定して言う。
「おぉ、そうか。」そう言いながら俺は宝箱を開ける。
「シュート!」俺の顔をめがけて毒針が放たれる。
俺は、その針を掴む。
「おい、サラン、俺を殺そうとしてるのか?」
「なぁ、マスター、鑑定を誤っただけだ、マスターに害する気はない!」
「本当だな?」俺はサランをジト目で睨む。
「な、マスター、指輪の試しを!」サランが慌てて言う。
「サラン、指輪が外れたらどうする?」
「ななな、そそそ、そんなことはあり得ない。」
「サラン、思いっきり動揺してないか?」
「私はマスターと供に死ぬ覚悟だ!」
「ほぉ。」そう言いながら指輪に手をかける。
「つぅ!」サランがひきつった顔でその指先を見る。
「ちっ、外れないか!」
「マスター、其れは酷くないか?」
「俺は平常営業だ。」そう言いながら7階層へ歩を進める。
「また扉か。」俺はふてくされて言う。
「マスター、この階層は今までとは違う。」サランが畏怖を込めて言う。
「ぐふふ、これは駄目ですね。」ダンサも同じ反応をする。
「紫炎、何がいる?」
「レベル120の玄武種です。」
「え~っと。」
「マスター、あれは刀の力は通じない。」
「ふ~ん。」
「俺の力は?」
「瞬殺かと。」
「なんだ、俺が頑張ればいいんだ?」
「御意。」
「だが、なんか違和感があるな。」
「マスター次第です。」
「おぉ、」そう言いながらその階に一歩踏み出す。
「ははは、よく来たな。」そこにいた者が声を出す。
そこにいたのは「玄武」亀の星獣だった。
「え~っと、俺の邪魔する?」
「次の階に行くなら阻止するよ!」
「あ~、俺とのレベル差判る?」
「うん、僕は瞬殺されるね。」
「でも邪魔するのか?」
「うん、定めだから。」
「はぁ。」俺は前に出て言う。
「見逃してくれないか?」
「ごめん、駄目。」
「はぁ、首を出せ。」俺が言う。
「痛くないんだよね?」玄武が言う。
「あぁ。」そう言いながら、俺は玄武の首を切る。
目の前にあった脅威が一瞬で消える。
「玄武の盾と特上魔石1個、アダマンタイト40重を虚無の部屋に入れました。」
「あぁ、心が痛い。」
「まさか、あと3回続くのか?」
「あぁ、そうですね。」サランが言う。
「なぁ、俺悪人じゃん。」
「ぐふふ、お慕いしております。
「僕は、時間がたてばリポップするからまた会えるよ。」
「だそうです、マスター。」
「このダンジョン作った奴、最低だな。」




