やらかしの7
「で、何でこうなるんですか?」
ギルドの宿泊施設の部屋のベッドには、ミーニャとムーニャ、メームとカリナが座っていた。
「主様の身の回りの世話をしろといわれたにゃ。」
「お、俺もそう言われた。」
「あたしは、主の警護をしろと言われたにゃ。」
「私はご旦那様のお世話をするために此処にいます。」
「え~っと、カリナさん。」
「カリナとお呼びください!」
「では、カリナ、婚礼の議をしていないのに、伴侶になっているんですけど。」
「私は、身も心もケイジ様に捧げました。」
「いや、そう言う事じゃなくて。」
「精霊様が認めて下さったのですわ。」
「精霊さん、何してくれてるの?」
(ケイジ様に有効な事象は、優先的に実行されます!)
「と言うか、この宿、こんだけの人数泊っても同じ料金なのか?」
(部屋の使用料金なので、問題ありません。)
「ベットが狭いんですけど。」
「あたしは慣れてるにゃ。」
「ムーニャも平気にゃ。」
「俺も問題ない。」
「私はケイジさんとくっ付いているの好きです!」
「はぁ、良いです。気にしたら負けって事ですね。」
俺がベットに横たわると、その右側にミーニャ、左にカリナ、足元にメーム、何故か俺の上にムーニャがいる。
「主様、重くないですか。」ムーニャが顔を赤くしながら言う。
「いや、ムーニャは軽いから全然重くないぞ。」
「嬉しいにゃ。」ムーニャは俺の首を抱きしめて、口付してくる。
拙い。だがそれが良い。
口を合わせ、意を決したように舌を入れてくる。
唇の周りをチロチロと舐めてくるのが気持ちいい。
「主様、大好きにゃ!」
「ムーニャだけずるいです!」ミーニャが俺の顔を右に向かせて口付してくる。
ムーニャと違い、俺の口の中を長い舌で嘗め回す。
「やば、凄く気持ちいい!」
「わ、私も負けられないです!」
カリナが俺の口に吸いつくと、舌妓を使ってくる。
(うわぁ、気持ちいい!意識を持っていかれる!)
「お母様から伝授された、技、いかがですか?」
「カリナ、もう一度。」
俺はカリナを抱き寄せると、口付する。
「はい、旦那様。」
意識を持っていかれるほど気持ち良い。
「にゃ、負けてられないにゃ!」
「私達も!」
俺は三人の口撃を甘んじて受けた。
メームが少し不満そうな顔をしていたが、無視しよう。
俺は、ぐっすりと寝ることが出来た。
なんか下半身が軽く感じるが、気のせいだろう.。
「ふわぁ。」俺は欠伸をしながら、身支度をする。
「おはようございます、旦那様。」カリナがおれの装備を渡してくれる。
ムーニャが朝食の用意をしてくれた。
「材料が無かったから、簡単な物にゃ!」
「主様が気に入ってくれたら嬉しいにゃ.」
そこには,トーストとポーチドエッグ、何かのベーコンが並べられていた。
「おぉ、美味そう!」
俺はそう言うと、トーストを手に持ち、ポーチドエッグをその上に乗せた。
トーストを半分に折ると、俺はそれを口の中に入れる。
「美味い!」
「お口に合ってよかったにゃ。」ムーニャがもじもじしている。
「ムーニャ、マジで美味しい!ありがとうな!」
「主様に喜んで貰えて嬉しいにゃ!」
更に、何かのベーコンをトーストに乗せると、その上にポーチドエッグを乗せて頬張る。
俺は、そのトーストを貪り食った。
「凄い、至福だ!」俺は思う。
(ムーニャは料理で天下獲れるな。)俺がそう思い、ムーニャの頭を撫でる。
「えへへ、主様が喜んでくれてよかったにゃ。」
「主様、ムーニャは嬉しいにゃ。」
「ムーニャ、今後、俺の飯を一生作ってくれ!」
「にゃ、主様、本気にゃ?」
「本気だ!」
(その言葉は、尻尾を握るのと同じ求婚の意味があります。)
(え?)
(ムーニャへの求婚行為です。)
(へ。マジで?)
「主様、後6か月したら、あたしも成人するんにゃ。その時には主を受け入れるにゃ!」
「ムーニャ、やったにゃ!」
「うん、ミーニャお姉ちゃんと一緒になったにゃ。」
「ち、俺は置いてきぼりかよ。」メームが不機嫌にしてるが、それはあえて無視する。
(俺は、そっちの気はない。多分、いや絶対!)
ななつ少し前に、ギルドの前に向かう。
そこにはすでに馬車が止まっていた。
「がはは、時間前に来るとは、殊勝な心掛けだ。」
「え?カッターも呼ばれているのか?」
「いや、面白そうだから付いて行く。」
「あ、っそう。」俺は業者に連れがいる事を告げる。
「問題ありません。」とのことなので、俺たちは馬車に乗る。
数十分馬車に揺られると、ある屋敷の前に着いた。
「おぉ、これは凄いな。」
「がはは、ダンナー様の邸宅より立派だな!」
門を入ると、屈強な騎士に止られる。
「ケイジ殿はどなたかな?」
「俺だ。」
「では、此方に。」
「待つにゃ!あたしはケイジの嫁にゃ!」
「あ、あたしもそうです!」
「わ、私はケイジ様の許嫁です!」
「では、お三方もご一緒に。」
「俺はケイジの友だ。」
「俺はケイジの弟だ!」
「お二人はこちらでお待ちください。」
「なんでだよ!」
「ケイジ様のお身内だけをお通しするよう、主より申し使っておりますので!」
「俺はベワカタキのギルマスだぞ!」
「それが何か?」
「此処ベカスカでは、そんな肩書が通用しないのはお判りでしょう!」
「くっ。」
「大人しくここでお待ちください!」
「う~、判ったよ。」カッターがその場に座る。
「さぁ、ケイジ様、マッチーデ・エーラ・イーノ様がお待ちです。」
「はいはい、解ったから案内して。」
俺は、前の男に付いて行く。
長い廊下を何回か曲がると、その部屋の前に着いた。
「大きな扉です!」ミーニャがぽつりと言う。
「くぅ、家の扉より大きいです。」カリナが言う。
(いやカリナさん、何張り合ってるんですか?)
「開門!」扉の前にいた衛兵が扉を開ける。
「どうぞお入りください。」案内役の男が促す。
俺たちは中に入り部屋の中央に進む。
案内役の男はドアの向こうで礼をしている。
そしてドアがゆっくりと閉じられた。
「どんだけ仰々しいんだか!」おれが言葉を発する。
その部屋には御簾があり、その向こうに人の影が見える。
「平安時代かよ。」俺はぼそりと言う。
御簾の前には二人の女性が傅いていた。
「ケイジ様とその御一行様、ようこそお越しいただきました。」
御簾の向こうで女性が言う。
「このような形でお呼び建てしたこと、お許しください。」
「あぁ、気にしてないよ。で。俺を呼んだ理由を教えてくれないか。」
「はい、ケイジ様は白昼堂々、獣人に求婚なさったとお聞きしております。」
「あー、事実です。こちらのミーニャが本人です。」
「えへへ、ケイジ嬉しいにゃ!」ミーニャが俺の首に腕を絡める。
「え~っと、ご用は、あほな事をやらかした男の顔が見たかった、とかですか?」
「違うのです。実は私も求婚されているのです。」
「はぁ?」
「それは、おめでとうご「相手が問題なのです!」
「相手?」
「年が離れすぎてるとか、顔が好みじゃないとかですか?」
「私も貴族の娘です。政略結婚の道具に使われることは覚悟しておりますので、年齢も容姿も問題とは致しません。」
「はぁ。」
「ですが、ダンジョンの主から求婚を受けるとは、思いもしませんでした。」
「はぁ?ダンジョンの主?陸王のダンジョンの主は、アルラウネで雌でしたよ。」
「いえ、この町の北、シハリクの村の傍に最近新しいダンジョンが発生し、たまたまその近くを馬車で走っている時に、私を見初められたとのことでした。」
「そいつの顔見た?」
「いいえ、私は常時御簾の中におりますので。御簾越しですとあまりはっきりとは見えません。」
「ケイジ様のように、獣人を複数人囲っておられる方になら、対処をお聴きできるかもしれないと思い、お越しいただいた次第でございます。」
「んー。マッチーデ様。」
「イーノで結構です。」
「では、イーノ様、その方好きですか?」
「まさか、ダンジョンの主など。」
「意外と良い奴かもしれませんよ!」
「私、嫌です。」
「では、私に討伐してこいと言う事でよろしいですか?」
「お願いできるのですか?」
「そのダンジョンまで送っていただけるのであれば、お受けします。」
「おぉ。恩にきます。」
「では、今から向かいますので、送迎をお願いいたします。」
「解りました、これ、誰ぞある?」
「はは。御前に!」
「こちらのケイジ様ご一行を、例のダンジョンまで送って差し上げてください。」
「御意!では、ケイジ殿こちらへ。」
俺達は、来た道を戻る。途中カッターとメームと合流し、そのダンジョンに向かう事になった。
「何?新しいダンジョンだと?」行きの馬車の中で、カッターが驚く。
「まだ、ギルドにも登録して無いみたいだな。」
「そこの討伐が依頼だ。」
「け、ケイジ、俺にも噛ませてくれよ。」
「別に良いけど。」
「恩に着るぜ!」
「兄貴、俺も行って良いか?」メームが言う。
「良いけど、お前装備ないよな。」
「平気だ。俺は早いから、攻撃は受けないし、この爪があれば裂けない物はない。」
「どれ。俺はメームを看破する。」
名前:メーム
性別:男
年齢:9歳
職業:格闘家レベル12
絆 :ケイジの義弟
(なんか、新しい物が見えるな。絆って何だ?)
(そう言えば、ミーニャも見てなかったな。)
俺はミーニャも看破する。
名前:ミーニャ
性別:女
年齢:12歳
職業:格闘家 レベル15
伴侶:ケイジ
(ちょっと待て、俺の方には従属扱いで、ミーニャは伴侶扱いって変だろう!)
ミーニャが「ん?」って顔をして俺を見てる。
「主、どうかしたにゃ?」
「何でもない。」
(ムーニャはどうだ?)
名前:ムーニャ
性別:女
年齢:11
職業:料理人レベル13
伴侶:ケイジ
(ちょっと待て!まだ結婚もしていないのに伴侶になってるのは何故だ。)
(精霊様のサービスです。)
(ですから、成人前でもあんなことやこんなことがし放題です。)
「紫炎さん、俺を鬼畜にするつもりですか?」
(まさか。わたしがですかぁ~。) 古いネタをぶっこんでくるね。
数十分馬車に揺られると、そのダンジョンに着いたようだ。
「2刻ほど待ってもらえないですか。俺は業者に頼む。
「2刻待っても戻らなければ、帰って結構ですから。」俺はカードで10Gを払いながら言う。
「いえいえ、お戻りになるまで待っておりますよ。」
「いや、日が暮れれば魔物も出るだろう。では、4っつまで待っててくれ。それを過ぎたら帰ってくれ。」
「へい、判りました!」
今が9このつだから、7刻ある。
深さが判らないが、俺なら制覇できる。気がする。
(だって、カンストしてるからな。)
「ムーニャはここで待っててくれ!」
「にゃ、足手まといになるのは嫌だから、待ってるニャ!」
「ありがとう!」俺はムーニャを抱きしめて、頬にキスする。
「にゃ、主様、嬉しいにゃ!」
「んじゃ、行くか!」
「カッターも準備は良いか?」
「がはは、俺はいつでも全開だぜ!」
俺たちはダンジョンの中に入った。
このダンジョンも扉で階層が区切られているようだ。
「主、扉の向こう、結構な数の気配があるにゃ。」
「一階層だからな、たいしたことないだろう。」俺は無造作に扉を開ける。
「「「「ぎやぁぁ」」」」途端に響き渡る断末魔の声。
「はぁ、やっぱりそうなるよな。」そう言いながら俺は扉を潜る。
その一瞬でその階層の魔物たちはドロップ品に変わる。
「ケイジ何をやった?」カッターが驚愕して言う。
「この刀の力で、レベルが低い魔物たちは殲滅してくれるんだ!」
「何だそれ。」
「主、全部集めたぜ。」メームとミーニャがドロップ品を俺に渡す。
「さんきゅ。」そう言いながらそのドロップ品を虚無の部屋に入れる。
「な、いきなり消えたな、ケイジ何やった?」
「魔法だ。納得しろ!」
「がはは、やっぱりお前色々規格外だな!」
俺は、ドロップ品にある物を見付けた。
俺はそれを虚無の部屋から取り出すと、鑑定する。
打撃のナックル
打撃による攻撃に、5の攻撃補正
一定条件でクリティカル発生
妖精の小手
打撃、突撃、切断を防御
1刻でHP30回復
「なんだそりゃ、極レアアイテムじゃないか。何でそんなもんがダンジョンの一階でドロップするんだよ。」カッターが叫ぶ。
(解、ケイジ様の「ドロップアイテムレア度UP」の恩恵です。)
「俺の、精霊様の加護のせいらしい。」
「なんだと、か~、ケイジ。本当に羨ましい奴だな!」
俺の肩を叩こうとするので、回避だ。
カッターがそのまま回転する。
「何故避ける?」
「何故受けないと駄目なんだ?」
「がはは、それもそうか。」
(おぉ、納得してくれたみたいだな。)
「メーム、ナックルはお前が使え。」
「え?良いのか?」
「勿論だ!」
「兄者!かたじけない!」
「ん、言葉が変になってるぞ。」
「俺も、兄者に身も心も捧げるぞ。」
「え、お、おぉ、よろしくな。」
「で、小手はミーニャが使え。」
「え?必要ないにゃ!」
「かわし切れない攻撃が来たらどうするんだ?」
「え?」
「ミーニャが傷つくと俺は悲しい。」
「にゃぁ。主。」ミーニャが俺に抱き着く。
「喜んで使わせてもらうにゃ。」
「あー、ケイジ。いちゃいちゃしているとこすまんが、先に進もうか。」
「あぁ、判ったよ。」
俺たちは2階層の扉に向かった。
「おいおい、いきなり殲滅するとどんなモンスターや魔物がいるか解らんじゃないか。」
「浅い場所のモンスター達は、コアが無くなってダンジョンが死んでも、周りの瘴気でリポップするんだろう?」
「それはそうだが。」
「若い冒険者たちに、仕事をしてもらえばいいじゃないか。」
「因みに、どの位のレベルまで殲滅するんだ?」
「さぁ。」
「さぁって、それじゃ解らんじゃないか。」
「前の時は、レッサーデーモンはレジストしてたな。」
「れ、レッサーデーモン? そりゃ、最低レベルで20は有る奴だぞ。」
「ふ~ん。」
「いや、ふ~んって、がはは、流石ケイジだな。」
「そういや、レッサーデーモンもアルラウネも看破しなかったな~。」
「次に会ったら、看破してギルドに報告するよ。」
「がはは、そうしてくれ。」
「さて、次の階に行くか。」