やらかしの63
「お待ちしておりました。」その奥にいた者が声を発する。」
「おぉ、懐かしいですね。」ヒドラが言う。
「おぉ、お久しぶりです。」そこにいたのは蝶王モズラの人間形態。
「この有様は一体どうしたのですか?」ヒドラが一歩前に出て言う。
「おぉ、ラドーン様が、寺院を閉鎖されてしまわれたので、行く場所が無くなってしまい、我の魔力の消費のためにこれを作りました。」
「おほほ、それは申し訳ありませんでした、私はこちらにいらっしゃる、ケイジ様に添い遂げましたので、閉鎖したのです。」
「あの、ラドーン様?」
「ヒドラです。」
「は?」
「私は、此方にいらっしゃるケイジ様よりヒドラを拝命致しました。」
「おぉ、おぉぉ、お噂は本当だったのですね?」モズラは手で顔を覆って言う。
「おい、大丈夫か?」俺が声をかける。
「くふふ。」モズラが顔を手で覆ったまま声を出す。
「ケイジと言いましたか。」
「おぉ、呼び捨てか?」
「我が敬愛する、ラドーン様を奪った存在。」
「モズラ、我はヒドラです。」
「ふふふ、我が敬愛するのは、崇高な御身!」
「誇り高き、ラドーン様(♂)のみ!」
「ほほほ、モズラ、それは今後一切あり得ません。」
「我は、ケイジ様に身も心も捧げ、そのご寵愛に預かるべく、女子に我の身体を変質させました。」
「なぁ。」モズラが顔を歪ませる。
「ここにいる、我は、唯一、ケイジ様に身も心も捧げた存在。」ヒドラは両手を広げモズラに言う。
「ふふふ。」モズラはどこから出したのか、白い手袋を俺に投げ付ける。
「ケイジ! 我と決闘しろ!」
「はぁ?」
「我が勝ったら、ラドーン様を開放しろ!」
「え~っと?」
「な、貴様! 白い手袋を投げるのは決闘の流儀であろう?」
「そうなの?」
「一部の貴族階級の流儀です。」紫炎が言う。
「パス。」俺が言う。
「な、貴様、決闘を拒否するのか?」
「ん~、モズラって言ったか?」
「おぉ。」
「ここにいるヒドラは、俺の横にいたいと自分から言っている。」
「はい、その通りです。」そう言いながらヒドラは俺の腕に纏い付く。
「この状態を見て、開放しろとかマジで言ってるのか?」
「きっと、お前に洗脳されているのだ!」
「あ~、だってさ、ヒドラ。」
「我のレベルは今は190になっている。」
「おぉ、流石ラドーン様です。」
「ふふふ、モズラよ。」
「はい、ラドーン様。」
「そろそろ、我の怒りを堪えられないレベルじゃ。」
「え?」
「我はヒドラ! 此処に居られるケイジ様よりその名を拝命した。」
「な?」
「次に我をラドーンと呼んだら、我がお前を滅してやろう!」
「くぅ。」
「我をこのレベルまで引き上げて頂けたのが、ケイジ様の御業!」
「洗脳などされるはずもない、このお方はその様な事をしなくても我らを一瞬で殲滅できる。」
「意に添わなければ、瞬時に滅せられる。」
「おい、ヒドラ、俺はどんだけ鬼畜なんだよ?」
「ほほほ、ケイジ様、御前の権利でございます。」
「あ~、モズラって言ったか?」
「な、我を呼び捨てか?」
「お前も俺を呼び捨ててるよな、お相子だ。」
「ちっ、で、何だ?」
「しょうがないから、決闘受けてやるよ。」
「ほぉ、お前を殺す権利をくれると言う訳か。」モズラが口の端を上げながら言う。
「いや、この世には越えられない壁があることを教えてやる。」俺は答える。
「ははは、大きく出たな。」モズラが俺を見下した態度で言う。
「で、何で決闘するんだ?」俺はそれを無視して言う。
「剣だ!」モズラは腰の剣を抜きながら言う。
「はぁ。」俺は落胆する。
「モズラ。」
「なんだ?」
「お前、力量って判るか?」
「何を言っている?」
「判らないかぁ。」俺はため息をつく。
「今から、実践する。」そう言いながら、腰の刀を抜く。
「モズラ。」
「何だ?」
「行くぞ!」
「なぁ!」モズラが驚愕した顔で固まる。
モズラの首に、俺の刀が当てられていた。
「力量、判るか?」
「ななな、不意を突いただけだ!」モズラが俺から離れる。
「はぁ、じゃぁ、お前から攻撃してこい。」俺が言う。
「なめるな!」そう言いながらモズラが突っ込んでくるが、圧倒的に遅い。
俺は、モズラの手にした刃物を奪い、モズラの突進力を受け流して突進力を床に変換してモズラに渡す。
「ぐはぁぁ。」モズラが床に叩き付けられながら声を上げる。
「まだやるなら、刀を返すぞ。」俺が言う。
「くっ。」モズラは叩き付けられた地面で涙を流す。
「お~い。」俺が声をかける。
「ふ。」
「?」
「ふふふふ。」
「?」
「このモズラ、感服いたしました!」
「おぉ。」
「ケイジ様、我も貴方に下りましょう。」
「あぁ、宜しくな。」
「んじゃ、このダンジョンは潰して良いか?」
「ご自由に。」
「んじゃ、コアを破壊して、一階を土魔法で埋める。」俺はそ通りに実行する。
「ケイジ様、我はどうすれば?」
「あぁ、とりあえず一緒に来い。」
「仰せのままに。」
「んじゃ、ヤミノツウの華厳の店に。」
「はい。」
俺達はそこを潜る。
「がははは、ケイジ待ってたぜぃ。」そこにはカッターが待っていた。