やらかしの59
「ケイジ様、用意出来ました。」エスの言葉で、俺が反応する。
「おぉ、鍋は3個用意できてるぞ。」
「ありがとうございます。」エスがにっこりと微笑む。
「まず、コロッケな。」
「はい。」
「中身には火が通っているから、きつね色になったら取り出して良い。」
「きつね?」
「あぁ、此の位の色だ。」そう言って、俺は鍋から取り出し、紙を引いた皿に乗せる。
「判りました。」
すごい速さで、コロッケが作られていく。
それを、良い具合でサンドウイッチに仕上げていく孤児達。
「うん、うん、頼もしいねぇ。」
「ケイジ様、コロッケ終わりました。」
「よし、次はとんかつだ。」
「はい。」
「これは、ちゃんと火を通さないと良くないからな。」そう言いながら俺は用意された物を油に入れる。
エスをはじめとした、料理大好き~ズは鍋を見つめる。
「ちょっと火を弱めて、ゆっくり揚げる。」俺はそう言って、つまみを調節する。
「泡の状態と音を見極めるんだ。」俺はそう言いながら、ひっくり返すタイミングを見計る。
「泡がぼこぼこからちりちりになったらひっくり返す。」
「主様、よく分かりませんにゃ。」
「鍋を見ろ。」
「はいにゃ。」
「今はぼこぼこだ。」
「はい。」
「はいにゃ。」
暫くすると、泡の状態が変わる。
「今がちりちりだ。」そう言いながら俺はとんかつを裏返す。
「あぁ、主様、良く解ったにゃ。」
「はい、理解しました。」
「まだだ、まだ終わらんよ。」
「え?」
「主様?」
「中が赤かったら駄目だからな。」
「え?」
「しかし、揚げすぎると味が悪くなる。」
「にゃ?」
「余熱で火を通す。」
「ケイジ様?」
「鍋から揚げるタイミングが良くないと駄目だ。」
「たいみ?」
「主様、判らない言葉だらけです。」
「ムーニャ、見て覚えろ。」
「にゃ、はいにゃ。」
泡の状態が変わる。
「此処だ。」そう言いながら俺は、鍋から「とんかつ」を取り出し、紙を引いた皿に乗せる。
「一回、鍋を虚無の部屋に入れて、火の通りを確認する。」そう言うと俺はコンロの上の鍋を虚無の部屋にしまう。
「ケイジ様?」エスが心配そうに俺に呟く。
「最後の調整だ、余熱で、とんかつに火が通るのを待つんだ。」
「はい。」
数分の後、俺は虚無の部屋からまな板と包丁を取り出して、とんかつを切った。
「おぉ、これなら大丈夫だ。」そう言いながら、虚無の部屋から鍋をコンロに出す。
「エス、残りも揚げろ。」
「はい、ケイジ様。」
「ムーニャも頑張るにゃ。」
とんかつも、すごい勢いで仕上がった。
「ケイジ様、サンドウイッチも完成しました。」エスが凄く良い笑顔で言う。
「よし、じゃぁ、ベカスカのギルドに行くぞ。」
「はい。」おにぎりと、サンドウイッチが乗った、薄い木の箱を持った孤児たちが返事をする。
「あぁ、机も持ってるか?」俺が聞くと。
「持ってる。」孤児の一人が答える。
「んじゃ、行くぞ。」
「紫炎。」
「御意。」
虚無の窓が開かれる。
「おや、何だこの人だかりは?」俺はギルド前の人間達を見て言う。
「おぉ、やっと来た。」
「待ってたんだよ。」
「は、早く、あれを頂戴!」
「おい、お前らどうしたんだ?」俺が目の前の冒険者に聞く。
「何を言ってるんだ、ケイジさん。」
「おぉ。」
「ライシーをアサクで包んで、その中に焼いた魚が入ったおにぎり。」
「おぉ、それがどうした?」
「もう一度食いたい!」
「俺は、魚の卵が入った奴を。」
「あの赤い酸っぱい実が後を引く!」
「何言ってるの、柔らかいバゲのトマと、レタにオークのお肉が挟んであった物の、ソースの味がたまらないのよ。」
「オーク肉の挟んであった、バゲももう一度食いたい!」
「あ~、お前ら落ち着け、今から売るから順番に並べ。」
「一番は俺だった。」
「あ? 俺の方が早かったよな。」
「はぁ、ギルドが開く前から待ってるんだけどぉ。」
「お前ら、喧嘩するなら一番後ろな。」
「あぁ、そう言えば、お前が早かったな。」
「いや、そこの姉さんが先に来てたよな。」
「いえいえ、そこのお兄さんが私より早くいたわね。」
「良いから、並べ~。」俺がそう言うと、孤児が置いた机の前に列ができる。
「どれでも120Bだ、カードは使えないからギルドで換金よろしくな。」俺がそう言うと、一番前にいた男が声を出す。
「おにぎりと、サンドウイッチを一個ずつ。」
「ありがとうございます。」エスがBと弁当を交換する。
「サンドウイッチを2個。」
「ありがとうにゃ。」
「順調だな。」俺がそう思った時、ギルドから出てきた男が列の横に来て言う。
「おぉ、これが昨日配られた弁当と言う奴か、一個貰うぞ。」そう言いながら男が手を伸ばす。
その手を、列の一番前にいた男が掴む。
「え?」
「お前、何やってんだ?」
「え?只なんだろう?」
「それは、昨日だけだ。」
「え?」
「今日からは、有料だとケイジさんが言っただろう。」
「え? でも俺、昨日貰ってないから、貰う権利あるよな?」
「あるわけないだろ!」そう言いながら男が掴んだ手を払う。
「おいおい、お前、俺の弁当を横取りするのか?」後ろの男が言う。
「はぁ、信じられない、あたしのお昼ご飯を横取りするとかぁ。」その後ろの女が言う。
「え? でも俺、昨日貰ってないし。」
「運が無かったな!」
「あきらめろ。」
「欲しかったら、一番後ろに並べ!」
「身の程を知れ、糞豚!」
一斉に浴びせられる怒号、
「すびばぜんでじだ~。」泣きながらその男が走り去った。
「おぉ、どんまい!」俺は呟く。
その後も順調に売れ、用意した分は完売してしまった。
「え~、楽しみにしてたのに。」
「お、俺の昼めしが!」
「マジか、俺はこの後どう生きれば良いんだ。」
「ケイジ様、お昼まであと3刻もあります。」
「おぉ。」
「バゲは無理ですが、おにぎりはまだ作れます。」エスが言う。
「あぁ、そうだな。」俺はそう言うと、ベカスカの孤児院に虚無の窓を繋いだ。
「皆、ライシーでおにぎり、目いっぱい作るよ!」エスの言葉に、やる気を出す孤児達。
(良い傾向だな。)俺はそう思い、虚無の窓を潜ろうと、
「主様、何、良いい状況で逃げようとしてるにゃ?」
「いや、ムーニャ、俺もう要らないよな?」
「何言ってるにゃ、早く沢庵を出してにゃ。」
「おぉ。」
「それと、高菜もにゃ!。」
「はい。」俺は高菜を出す。
「たらこと、シャケの塩漬けもあるだけ出すにゃ!」
「はい。」ムーニャ怖い、そう思いながらたらことシャケを取り出す。
暫く後で、俺が呆けていると、ムーニャがベカスカのギルド前に繋げと言ってきた。
俺は、言われるまま、そこに繋ぐ。
俺は、ベカスカの孤児院で呆けていた。
「主様、ムーニャは頑張ったにゃ。」そう言いながら、虚無の窓を潜ってきたムーニャが俺に口付する。
「おぉ、ムーニャ、お帰り。」俺は気を取り直して言う。
「ケイジ様、今日の売り上げです。」そう言いながらエスが俺の前に袋を取り出す。
「初日なので、売り上げが多かったみたいです、あぁ、ギルドには1割払ってきました。」
「おぉ、エス頑張ったな。」
「はい。」エスはにっこりと微笑んだ。
「ケイジ様、確認してください。」エスが言う。
「おぉ。」俺はその袋を開ける。
「な?」
「流石、ケイジ様です!」エスがにっこりと笑う。
「主様、最強にゃ。」ムーニャもサムズアップして言う。
「これは、凄いな。」そこにはおよそ3GほどのBが入っていた。
「うん、最初は様子を見ようと思ったが、これを続けよう。」
「はい。」エスが良い顔で言う。
「よし、今日は俺が晩飯をおごるぞ!」
「やった~、俺シャオマ!」
「あたし、焼肉!」
「俺、マスターバハロー食べたい。」
「え~。マスターバハローも良いの?」
「あぁ、今日は良いぞ!」
「じゃぁ、焼肉一択!」
「えぇ、ケイジ兄ちゃんの新作が良い!」
「え?新作?」
「ベカスカの華厳さんの店のメニューにない奴!」
「おぉ、良いぞ。」
「え?マジ!」
「ムーニャもそれが良いにゃ。」
「あぁ、判った。」
「にゃ、嬉しいにゃ。お魚だったらもっと嬉しいにゃ!」
「あー、それは無理かな。」
「にゃ~、ケイジ様のいけず~。」
「とりあえず、ヤミノツウの華厳の店に。」
「御意。」
「華厳~。」
「おわぁ、は、はい、ケイジ様。」
「2階貸し切りヨロ。」
「え?、はい、承りましたぁ。」
「んじゃ、お前ら、向こうに行って待ってろ。」
「はいにゃ。」ムーニャが一番に潜る。
「いきます。」エスもそれに続く。
その後に孤児たちが続く。
「おや、寮母先生たちは来ないのですか?」俺が問う?
「ほほほ、行きますとも。」
「ケイジ様の新作!」
「ふふふ、何故行かないと言う選択肢があると?」
「それを食べない未来が解りません。」
「おぉ、色々言いたい事はありますが、さっさと潜ってください。」
「はい。」
「おほほ。」
「行きますとも。」
「当然。」
「いや、最後の奴、当然ってなんだ!」
「ケイジ様?」ツキミが心配そうに俺の顔を覗く。
「いや、問題ないから、ツキミもさっさと潜れ。」
「はい、ケイジ様。」ツキミも潜る。
「ふぅ。」俺はため息をつきながら紫炎に命じる。
「すべての嫁に、ヤミノツウに来るように伝えろ。」
「御意。」
「で、スナに繋げ。」
「御意。」
俺は潜る。
「此処がスナか。」俺は周りを見渡して言う。
「ん~、ヨイチに子供が楽しめる施設を作れと言ったが、何もないな。」
「それどころか、いまだに魔物と戦っているのか?」俺はその周りを見て言う。
いたるところで、魔物と戦う魔族を感じる。
「これは、施設を作るとかの話じゃないな。」
俺はそう思いながら、ヨイチの反応が有った所に跳ぶ。
「とりゃぁぁ。」ヨイチが目の前にいた魔物を消す。
「おいおい、これは酷いな。」
「な、ケイジ様、何故このような場所に。」
「ヨイチの所に来ただけだ。」
「なぁ、恐れ多い。」
「なんだ、嫁がいる処に来ちゃダメなのか?」
「ままま、まさか、嬉しいに決まっています!」
「おぉ、んじゃ、良いじゃないか!」
「なな、ケイジ様、此処は危険です。」
「ん~、見た限り、苦労してるかな?」
「うっ、違います、と言いたいのですが苦労しております。」
「駄目だよ、もっと早く報告しないと。」
「申し訳ありま「次はもっと早く教えてね。」そう言いながら、目の前にいた魔物たちを瞬殺する。
「今日は、色々忘れて良いから、宴会に参加しようか?」
「え? ケイジ様?」
「今日ぐらいは良いよ。」そう言いながらヨイチを抱っこして虚無の窓を潜った。
あれ? 終わってない?
いや。
此処からは違う話だ。
うん。
多分。




