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やらかしの56

「まず、ライシーを炊く。」

「ムーニャ。」

「はいにゃ。」


「こいつらに、説明し、いや、やって見せろ。」

「はいにゃ。」


「魔導コンロに行くにゃ。」


「さっき研いだ、ライシーの入った土鍋を中火にかけるにゃ。」

「中火?」

「土鍋は中火にゃ。鉄のお鍋の場合は、弱火で始めるにゃ。」

「ふ~ん」

「主様、中火ってどう調整するにゃ?」

「あぁ、横にある火のマークのつまみを回すらしいぞ。」

「これにゃ?」ムーニャがつまみを回すと、魔導コンロの鉱石の熱量が変化する。

「主様、此のコンロ凄いにゃ、つまみが4個あって、4か所別々に熱量が変えられるにゃ。」

「ほぉ、4種類を一緒に調理できるのか。」


「中火は、此の位かにゃ。」

「お前ら、覚えろ~。」

 エス、エル、エヌ、エムがつまみの位置や、鉱石の具合を確かめる。

「暫くすると、沸騰してぐつぐついって来るにゃ。」ムーニャが続ける。

「そうなったら、火を弱くして、一刻の半分の半分煮て、火を止めるにゃ。」


「え~っと、よく分かんない。」エスが言う。

「頭の中で、お歌を歌うと良いにゃ。」

「成程~。」

「沸騰したから、一刻の半分の半分を、皆数えるにゃ。」弱火にしながらムーニャが言う。

「・・・・」四人は黙り込んだ。

 頭の中で、歌を歌っているのだろう。


手持無沙汰になった俺は、コンロの端っこで、たらこや塩サケを焼き始める。

そしてアサクを取り出し、他の孤児を呼んで大きさを合わせて切らせる。

「これを、この位の大きさに切る。」俺は見本を見せてやる。

「端の方から、こうやって指で折って行って、端まで来たら、反対側に折って、ゆっくりと両方に引っ張るんだ。」

「え~っと、こうかな?」孤児の持ったアサクが、綺麗に切れていく。

「おぉ、お前、上手いな。名前は?」

「リノ。」

「ふ~ん、サンドウィッチに参加してなかったな。」

「よくわからなかった。」

「そうか。じゃぁ、リノはおにぎり担当な。」

「え?」

「大丈夫、ちゃんと教えるから。」

「うん。」

「あぁ、そうだ、具の用意だな。」俺は虚無の部屋から、梅干し、高菜、沢庵を取り出す。

「種は取っておいた方が良いかな。」俺はそう言うと、小皿を取り出し、また孤児を呼ぶ。

「この赤い実を、こうやって割って、中の種を取って置いてくれ。」

「うえぇ、酸っぱい匂い。」

「これは、梅干しと言って、酸っぱいが、疲れた時に食べると疲れが取れるし、これをお湯に入れて潰し、醤を少し入れると、お腹が痛いのも治るんだ。」

「へぇ~。」


「ケイジ兄ちゃん、このしなびたダイコは?」


「漬物だ。」

「ツケモノ?」

「あぁ、そのうち説明するが、さっきライシーを剥いた皮に野菜を漬けるんだ。」

「美味しいの?」

「少し癖があるが、慣れればライシーと食べると至極だぞ。」

「へぇ~。」


「食べたいって顔だな。」

「えへへ。」

「んじゃ。」俺は虚無の部屋から、机の上にまな板を出す。

 そして、沢庵をまな板に載せて、虚無の部屋から取り出した包丁で、1cm位に切っていく。

そして、切り終わった沢庵を、そこにいた孤児の口に入れてやる。

「しょっぱい! でも美味しい!」ポリポリと良い音をさせて孤児が沢庵を食べる。


「そして、高菜も刻んでおくか。」俺は高菜を微塵切りにして、深めの皿に入れる。


「おっと、忘れてた。」良い具合に焼けたたらこと塩サケをコンロから降ろす。

 たらこは2cm位に輪切りにし、塩サケは箸で適当にほぐす。


「主様、ライシー炊けました。」


「おぉ、今行く。」

「ムーニャ、華厳から蒸らしは教わったか?」

「いえ?」

「華厳め、いや、知らないのか?」


「まず、炊けたライシーを蒸らす。俺は土鍋の蓋を開けて、ライシーをしゃもじで底から返す。」そして再び蓋をする。

「このまま、また一刻の半分の半分待つ。」

「え~。」

「おぉ、これが必要なことなのですか?」エスが俺に言う。

「ライシーは、炊き上がったら、蒸らさないとな。」


「おぉ、これをすれば、ライシーが、もっと旨くなるぞ。」

「はい、ケイジ様、仰せのままに。」

「美味い物を食うのには、手間がかかるんだよ。」


「あぁ、エス、土鍋はまだあるからな、後4個ライシーを炊いてくれ。」

「はい、ケイジ様。」

「フウ、ウイン、ライシー剥いて。」エスが、風魔法が得意と言っていた二人を呼ぶ。

「へぇ、そんな名前だったんだ。」俺は思う。

「ケイジ様、ライシーは?」

「おぉ、そこに出すぞ、終わったら口を縛って、冷暗所にしまえ。」俺は、虚無の部屋からライシーの入った俵を出す。


「ケイジ様、冷暗所とは?」

「あれ? 寮母先生、ありますか?」

「はい、有りますよ。」

「だそうだ。」

「判りました。」


「ケイジ様、どの位炊きますか?」

「そうだなぁ、各鍋、コップ3杯分で良いぞ。」

「判りました。」

「あぁ、剥いた皮はこの網でふるって、此の入れ物に集めてくれ。」俺は、大きな樽を虚無の部屋から出して、エスに言う。

「判りました。」

 エス監督のもと、無事に土鍋4個分のライシーが研ぎ終わった。


「さて、蒸らしたライシーは。」俺は土鍋のふたを開ける。」

「良し、良い具合だ。」


「エル、エヌ、エム、これを水でよく洗ってきてくれ。」そう言いながら木工所で買った道具を出す。

「うん、判った~。」3人は道具を持って流しに走る。


 暫くしたら、3人が戻ってきた。

「洗ってきたよ。」

「良し。」それを受け取ると、綺麗な布で軽くふく。


「これから、おにぎりを作る。」

「は~い。」


「本当は、ライシーを手で握るんだが、炊きたてのライシーは熱いし、お前らの手の大きさがバラバラだから、これを使う。」そう言って、3人が洗ってきた道具を示す。

「まず、下にこのヒノの板を置く。」

「うん。」

「軽く水をふったら、その上に穴の開いたヒノの板を置く。」

「その穴の中に、軽く塩を振る。」

「うん。」

「そして穴の中に、この位のライシーを入れて、箸で平らにする。」そう言いながら、穴の中に半分位の高さまでライシーを入れて箸で均す。

「そして、これで少し押す。」そう言って、穴の形のヒノに棒を付けた物を水に浸けて、穴に入れて押す。

「あんまり強く押すと固くなるから、各自自分で加減を見極めろ。」

「うん。」

「返事は、ハイだ。」

「ハイ!」

「良し、いい返事だ。」

「で、押したら、棒を取り出して、ライシーのまん中辺に具を乗せる。」

「ぐ?」

「おにぎりの中身だ。 今回はタラコだ。」そう言って、さっき用意したタラコを乗せる。

「そして、またライシーだ。」と言って、穴の中にライシーを入れて、さっきと同じように箸で均す。

「そして、もう一回これで押す。」さっきと同じように水に浸けた穴の形の棒で押す。

「そして、ライシーの上に塩を軽く振る。」

「で、この穴の開いたヒノの板を取って、中のライシーを、さっき切ったアサクで包む。」

「これで完成だ。」


「よし、リノ、やってみろ。」

「え?あたし?」

「見てたよな?」

「見てたけど。」

「教えるから、やってみろ。」

「っ、はい。」

「まず、ヒノの板を水で濡らして、穴の開いたヒノの板をその上に置き、穴の中に塩を振る。」

「はい。」そう言って、ぎこちない手つきで、リノが作業する。

「上手いぞ、次はライシーを穴の中に半分ぐらい入れる。」

「ライシーを入れる。」リノがライシーを入れるが、少し足りない。

「あぁ、足りなかった。」

「あぁ、もう一回入れればいいんだ。」

「え?」

「何回入れても良いんだぞ。」

「そうなの?」

「最後に、その形にいなってれば良いんだ。」

「うん、判った。」そう言って、リノがもう一度ライシーを入れる。

 俺は気が付く。

(リノの何かの呪縛が解けたな。)口元をにやけさせながら、俺は思う。


「今度は、塩サケを入れよう。」そう言って、リノが形成したライシーのまん中に塩サケの切り身を置く。

「この上に、ライシーをかぶせるんですね。」リノが目を輝かせて言う。

「おぉ、そうだ。」

「やります!」

リノは、その後立派におにぎりを完成させた。

「もっと作って良いですか?」

「おぉ、良いぞ。 あぁ、そこの赤い実もぜひ使ってくれ。」

「判りました。」そう言って、リノはおにぎりを作る。


「もう一つ。」俺はぼそりと言いながら、ライシーを桶に入れる。



「主様、それは?」

「ふふ、ムーニャ見てろ。」俺は、そう言うと、ライシーにさっき刻んだ高菜を混ぜ込む。

「今回だけ、特別だ!」そう言うと、俺は手に水をつけ、高菜を混ぜ込んだライシーを握る。

「それそれそれ。」都合6個、小ぶりなおにぎりを作った。


「エス、エル、エヌ、エム、リノ、こっちに来い。」

 5人が集まる。

「何ですか、ケイジ様。」エスが言う。

「おぉ、これがおにぎりだ、握り具合を確かめろ。」そう言って高菜おにぎりを目の前に出す。

「え?」

「あれ、これ、形が違う。」

「あぁ、俺が手で握ったからな。」

「こっちの方が、あったかく感じる。」

「ゆくゆくは、其れでも良いか、と思うが、今はまだ技術不足だ。」

「はい。」しゅんとするリノ。

「まぁ、食ってみろ。」

「はい。」と言いながら5人の手が伸びる。

「ムーニャも。」

「はい、主様。」


 それぞれが口にする。

「こ、これが、おにぎり。」エスが言う。

「あの道具で、これを再現・・」リノも何かを考えこんで言う。

「む、難しそうにゃ。」ムーニャも頭を抱える。


「なに、大丈夫だ、此処の奴らはおにぎりを知らないから、最初は味が良ければどうにかなるぞ。」

「主様、色々ダメにゃ。」


「最初から気を張ると、上手く行く物も、駄目になるぞ。」

「まず、売れる物を作るんだ。」


「はい。」

「判りました。」

「とりあえず、さっき出したパンと、今炊いているライシーでサンドウィッチとおにぎりを出来るだけ作れ。」


「判りました。」エスが、覚悟した顔をして言う。


休日更新おつ。

と、自分に激励したり。。。

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