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やらかしの5

町に出た俺たちは、ギルド横の武器屋に入る。

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件で。」店の主人がにこやかに話しかけてくる。

「これの買取と、適応する武器を見せてくれ。」

 俺はなまくらな剣と皮鎧をカウンターに置いて言う。

「こちらの買取額は2Gです。」

「それで良い。」

「はい承りました。」

「こちらが、今のお客様方のレベルに合った最大レベルの防具と剣です。」

 店の主人がカウンターに剣や鎧などを並べる。

俺はまずカリナの武器と防具を選ぶ。

「ふむ、知力の杖、乙女の鎧、聖女の小手、守りの腕輪。こんなもんか。」

「全部で80Gになります。」

「ん、これで決済してくれ。」俺はカードを渡す。。

「ありがとうございます。決済終わりました。」

「旦那様ありがとうございます。」すべてを装備したカリナが言う。

「次はミーニャか。」

「ミーニャには、カイザーナックル右とギャラクシーナックル左、獣魔の鎧、獣魔のブーツかな。」

「こちらは80G200Bです。」俺は再びカードを渡す。

「ありがとうにゃ。」それを装備したミーニャが言う。


最後は俺の装備だ。

「守りの鎧、守りの小手、守りの盾、守りのブーツは決まった。」

「全部で80Gですがいろいろ買って頂いたので60Gにおまけします。」

 しかし、剣が見つからない。

 防具はそれなりでも大丈夫だが、剣は今の俺のレベルに見合った物でないと一撃で壊れてしまう。

「あぁ、お待ちください。良いものが有ります。」店主はそう言うと店の奥に入っていった。

 暫くして出てきた店主の手には一振りの刀が握られていた。

「どくん」俺の身体が反応した。

「こちらは、一点物の技物ですが、刀が使える主を選ぶとされています。」

「つまり?」

「資格のない者がこの刀を抜くと、抜いた本人が大けがを負います。」

「でも、あなた様ならば資格があるかと。」

「ふふふ、俺を試すのか。」

「いえ。めっそうもございません。」

「その刀がお認めになるのであれば、今までの支払いはすべてご返却いたします。」

「よ~し、その試し、受けた。」

 

俺はゆっくりと刀に近づくと、その柄に手を添えた。

そしてゆっくりと刀を抜いた。

「何も起こらないにゃ。」

「何も起こりませんね。」

 その瞬間,刀がまばゆい光を放つ。

 俺は目を細めて刀を見る。

 何かが俺に流れ込んできた。

「これは、この刀の能力か。」

「おぉ、今までの者たちは、抜いた瞬間に全身を切り刻まれたのに、何も起こらん。」店主が驚愕している。

「なに?そんな物騒な物を出してきたのか。」

「店主、良い度胸してるにゃ。主は怖いにゃ~。」

「いや、何もしないって。この刀貰おう。」

「はい、お約束通り、代金はお返しいたします。」

「いいよ、店主。」

「いえ、それでは私の信用が。」

「んじゃ、俺の防具とこの刀だけ貰うよ。彼女たちの分はそのままで良い。」

「でないと、俺からのプレゼントにならないからな。」

「主、優しい。」

「流石は旦那様です。」


「え?、では承ります。その代わり、ダンジョン産の武器防具は、ギルドより高価で買い取らせていただきます。」

「ふふふ、それでは俺のギルドランクが上がらないじゃないか。」

「お客様は既にAランクではないですか、その上のSランクに上るには、ダンジョン産の装備をいくら納品しても上がれません。」

「ほぉ、そうなのか?」

「はい、ギルドの特別クエストをクリアしないと無理です。」

「成程、WINWINって事だな。」

「ウインウインとは。」

「お互いに利益があるって事だ。」

「うふふ、お客様は博識なのですね。」

「オッケー、んじゃその際にはよろしく頼む。」

「はい、喜んで。」

「んじゃ、とっととダンジョンに行くか。」

「はいにゃ!」

「はい旦那様。」

「しかし、北に数キロって言ってたよな。」

「はいにゃ。」

「歩いていくの辛いな。」

「旦那様、村の端からダンジョン行きの馬車が、一刻おきに出ています。」

「何?そうなの?」

「この村の重要な資源なので。」

「そう言う事か。じゃあその馬車で行くとしよう。」

「乗り場はこちらです。」カリナが案内をしてくれる。

「丁度馬車が出るところだったので、俺たちはその馬車に飛び乗った。」

「あんたら、ダンジョンは初めてか?」

 目の前にいたドワーフが話し掛けてきた。

「え?あぁ、初めてだ。」

「3人パーティで初ダンジョンは無理があるぞ。」

「あぁ、それは大丈夫だ。俺が規格外だから。」

「わははは、たまにいるんだよな、自分の力量が判らない奴が。」

「俺がお前達の護衛をしてやって良いんだぜ。」

 俺はその男を看破する。

 名前:ザコ・ドワフ

 性別:男

年齢:120

職業:戦士レベル10


「あー、要らない。」

「なに、俺は使えるぞ。」

「うちらのパーティの誰よりもレベル低いから。」

「何だと。」

「だから要らない。」

「貴様、優しくしてやっていれば調子に乗って。」ドワーフが敵意を向けてきた。

「はぁ、じゃあテストしても良いか?」

「テストとは何だ?」

「このパーティに入れる資格があるかを判断するものだ。」

「むははは、良いだろう。」


「んじゃ、これ抜いて。」俺は腰の刀を渡す。

「ただし、力量足りないとひどい目に合うよ。その覚悟があるならやってみて。」

「むははは、それだけでいいのか?」

「止めるなら今だよ。」

「笑止!こんなもの!」

 ドワーフが刀を抜いた。

「わはは、抜けたぞ。」

 その瞬間に刀身が輝いた。

「ぐわあはぁぁぁ。」

 ドワーフの全身が切り刻まれる。

「一応、最低限の治療はしてやるよ。」俺はドワーフにヒールを唱える。

 ドワーフの出血は止まった。

「主、やっぱり優しいです。」

「旦那様の慈愛を感じます。」

「いや、本当に助けたいときは、「ライフ」を唱えるよ。

「ヒールならせいぜい傷口が塞がる程度だ、後は自己責任だ。」


 程なくして、ダンジョンの入り口に着いた。


「これが陸王のダンジョンか。」

 ダンジョンの入り口には衛兵も門番もいない。

「本当に、低級ダンジョンと思われているんだな。」

「主、行くにゃ。」

「あぁ、カリナさんも良いかな?」

「旦那様、私の事はカリナと呼び捨てでお願いします。」

「え?あぁ、ではカリナ!行くぞ。」

何故かカリナは一瞬身もだえしながら、「はい旦那様。」と答える。

「何だろう、なんか危ない箱のふたを開けたように感じるが、今は、気にしないでおこう。」

 ダンジョンに入る。

「うん?瘴気が凄いな。」

「何も感じないにゃ。」

「私も感じません。」

 ダンジョンの拒絶を感じるのは俺だけか。


「とりあえず最下層を目指そう。」

「「はい。」にゃ。」

 一階では魔物の遭遇は無かった。

「なんだよ、酷くないか、これ?」

「ダンジョンは入る者のレベルで変わるらしいですにゃ。」

「らしいって言うのは?」

「このダンジョンは低レベルのパーティーしか入らないらしいにゃ。」


「成程、カンストした俺なら真の姿を現すって事か。」

「主、2階層への階段だにゃ。」

「ミーニャ、俺が先に行く。」

「え?主?」

「大丈夫だ。」

 案の定、ダンジョンは何も反応しない。

 俺は3階層の最奥を目指した。

「此処まで攻撃が無いのは不気味ですね。」

「にゃ、本当だにゃ。」


 ダンジョンの最深部の部屋に入る。

「此処か。」

 その部屋には隠し扉があった。

「これが下への階段か。」

「主、あたしそれ解るよ。」

「どうして?」

「壁の音の反響が違う。」

「このダンジョンに獣人は、入らなかったんだな。」

そう思うと、俺は躊躇せずその扉を開き、中に入った。

 ダンジョン4階層が存在した。

「主、部屋の前に凄い獲物の反応があるにゃ。」

「成程、では全開で行こうか。」俺はそう言いながらその扉を開ける。

 しかし、その扉の前にいた者達は一瞬で塵になる。

「何が起こった?」

(刀の力です。)

(刀の?)

(レベルが低い物と戦わなくても良いように、刀が魔者たちのコアを破壊しました。)

(あの一瞬で。)


「いや?4階層にいる奴らレベル、低!」俺が思うが、「主様、流石です!」ミーニャがひれ伏す。

「いや、これ成敗じゃなくて、只の虐殺だよね。」俺がぽつりとつぶやくが、俺の思惑とは別に目の前の敵が全て塵になっていく。

「えっと、俺魔王?」

「いえ、生き神にゃ。」

「はい、旦那様はこの世の神です、」カルナもひれ伏す。

「いや、そんな存在に色仕掛けするのはどうなの?」

 俺たちは魔物のドロップ品を拾った。

「なんか火事場泥棒みたいな気がしてきた。」

「主の当然の権利ですにゃ。」

「ご主人様がわざわざ足を運んだ見返りです。」

(いや、俺何者だよ。)


 4階層の最奥に行くと、更に下への階段がある。

「なぁ、陸のダンジョンって初級レベルで討伐できるダンジョンじゃないんじゃないか。」

「そのようですね。」カリナが言う。

「主、また魔物の反応があるにゃ。」

「今度は少しは抗って欲しいよな。」

「主、楽出来たほうが良いにゃ。」

「はい、私もそう思います。」

「いやいや、色々違うよね。」

 そう言いながら、俺は5階層の扉を開ける。

「レッサーデーモンの群れが襲い掛かってきた。」

「任せるにゃ。」

 その言葉と共に、ミーニャが攻撃を仕掛ける。

 一撃で一体が塵になる。

「ミーニャさん、穏便に。」と言う間もなく、部屋の中の魔物はドロップ品になっていた。

 俺とカリナがそれを拾い集めていると、ミーニャが言う。

「あそこに扉があるにゃ。」


 その奥に扉があった。  

 その向こうに、ひときわ大きな存在が感じられた。

「こ、これは凄いにゃ。」

「わ、私は足手まといですね。」

「んじゃ、俺がやるわ。」

「ミーニャ、カッターを連れてきてくれないか。」

「主、解ったにゃ。」ミーニャが出口に向かう。

「カリナ、その岩陰に隠れてください。」

「はい、解りました。」カリナが岩陰に隠れた場所に、俺は隠蔽の魔法をかける。

「んじゃ、いくか。」

 そこには巨大な蜘蛛。いや、アウラウネがいた。

「おほほ、獲物が自らやってくるとは。」

 俺は、アウラウネの足元に転がる。

「おや、一瞬で見えなくなるとは、愉快な事ですね。」

「悪いな、遊びはな無しだ。」

「アースジャベリン!」俺は地面に手を置いて唱える。

地面から直径30㎝の棘が生えて、アウラウネの下腹部を突き刺す。

「うぎゃぁぁぁ。」アウラウネの下腹部から青い体液が飛び散る。

 俺はその隙に、壁際まで転がり出る。

「ふしゅー、獲物と思っていましたが、害虫でしたか。」アウラウネが俺を見て言う。

「害虫はお前だろう!」

 俺は壁に手を置く。

「プッシュウォール!」

 途端に壁が10m程飛び出し、アウラウネを跳ね飛ばす。

「ぎやぁぁぁ。」アウラウネは反対側の壁まで飛ばされ、更に体液を流す。

「おのれ。口惜しや。」アウラウネがもがきながら言う。

「チェックメイトだ!」

「俺は地面に手を当てて「突き上げろ!」と言う。

 アウラウネのいる地面が隆起してアウラウネを天井に打ち付けた。

「!!」アウラウネはもう声も出せない。

アウラウネは天井に貼りついたが、重力にひかれて地面に落ちる。

「う、あ、」まだ息があるようだ。

 俺は、アウラウネに近づき言う。

「楽になりたいなら、そう言え。」

「ぐふふふ、お前は優しいのだな。」

「気のせいだ!」

「楽にさせてくれ。」

「解った。」俺が手をあげると天井が下りてきてアウラウネを潰す。


「終わったか。」

「旦那様、お見事です。」いつの間にかカリナが傍に来て言う。

「冒険者を探してください。」

「あちらに気配を感じます。」カリナが階層の奥を指さして言う。

 俺とカリナはその場所に向かう。

「おっと、これは。」

「禍々しいですね。」

そこには、薄紫に光る玉と、その周りに4人の人間が置かれていた。

「これが行方不明の冒険者か。」

「ご主人様、皆首のあたりに卵が産みつけられています。」

「うわぁ、アウラウネの寄生卵か。」

「カリナ、剥がせるか?」

「やってみます。」

 カリナは一つずつ卵を剥がす。

 俺は剥がれた卵を剣で刺して止めを刺す。

 すべての卵が剥がされた後、俺は紫色に光る玉を剣で突く。


 キシャアアアアと言う音と共に、玉が粉々になる。

 そこには、玉と同じような紫色の勾玉が転がっていた。

「ダンジョンを滅ぼしちゃったな。」

「お見事です、旦那様。」

「まぁ、何日かすれば上の階は復活するだろうけどな。」

「はい、でもこの階は二度と復活しませんね。」

「普通の野良ダンジョンになったって事だな。」


そこでカリナと話していると、カッターがギルドの職員を連れてやってきた。

「主、連れて来たにゃ。」

「ミーニャご苦労さん。」俺はそう言って、ミーニャの頭を撫でる。

「ケイジ、首尾はどうだ?」

「あぁ、行方不明の冒険者はそっちに全員いるよ。」

「おぉ。」

「でも、全員、首にアウラウネの卵が産みつけられていたから、要観察だな。」

「なんだと。」

「此処にいるカリナが全部剥がしてくれたから、大丈夫だと思うけど、潜伏期の一週間は隔離した方が良いな。」

「あ、ああ、解った。」

「それと、コアは破壊した!」

「おぉ。そうか。」

「だから、三階層までは、今まで通り魔物が発生するが、4階層より下は死滅した。」

「このダンジョンは、本当の低レベルのダンジョンになった。」

「流石はケイジだ。」カッターは俺の肩を叩こうとするが、俺はそれをスルーする。

「ギルドに帰るぞ!」俺はダンジョンの出口を目指しながら言う。

「はいにゃ。」

「はい旦那様。」

 ミーニャとカリナが俺に続く。

「ちょ、ちょっと待て。」その後にカッターと、冒険者4人を担いだギルド職人が続いた。


「あたしお役に立てましたか。

「えぇ、カリナ。」

「嬉しい。」

「にゃ、主、あたしは?」

「えぇ、ミーニャもご苦労様でした。」


「ご褒美は主の子種で良いにゃ。」

「私もお情けを頂ければ。」

「いえ、その対価はまだ与えられません。」

「にゃ、厳しいにゃ。」

「私も体技に磨きをかけないと。」

「カリナさん、私引きますよ。」

「え?あの、いや、何でもないです。」


「なんなんだよ、この肉食女子の集団!」



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