やらかしの43
あけましておめでとうございます。
の~~んびりしたお正月でした。
今年もよろしくお願い申し上げますねぇ。
「おや、ケイジ様、お帰りなさいませ。」
「おぉ、モブ、久しぶりだな。」
「はい、お久しぶりです。」
「ん? 店は閉店か?」
「はい、今日の分のスープが終わりましたので。」
「おぉ、この時間でか、凄いな。」
「華厳様はご一緒では?」
「あぁ、いるよ。」そう言いながら、華厳とムーニャを畳の部屋に出す。
「うぅ、腹が苦しい。」
「ムーニャもです。」
「華厳、学習しようぜ。」
「面目ありません。」
「華厳様、今日の分のスープが終わりました。」
「うぅ、では、明日の仕込みを。」華厳が腹をさすりながら言う。
「オークの骨が足りないのですが。」モブが言う。
「あぁ、忘れていました。」華厳が頭を抱える。
「なんだ、さっきの店に頼めばいいんだろう?」
「いえ、ケイジ様、オーク関係は、ヤミノツウでは朝一ですべて終わるのです。」
「あぁ、そう言う事か。」
「紫炎、オーク関係はどこに行けば良い?」
「はい、リキードが管理するマヤオのダンジョンの3階層です。」
「おぉ、んじゃ、ちゃっちゃと行ってくるか。」
「御意。」
「んじゃ、そこに繋いでくれ。」
「はい。」
俺はそれを潜る。
「ここか?」
「はい。」
「なんか、ダンジョンが荒れてるようにに見えるが。」
「リキードの怠慢かと。」
「ほぉ。」
「リキードは、すべてのダンジョンを管理しきれてません。」
「あぁ、キャパオーバーか。」
「はい。」
「出来ないなら、出来ないと言えばいいのにな。」
「出来ないことが理解できないのでしょう。」
「はぁ。それは駄目だな?」
「御意。」
「
「とりあえず、ダンジョンを攻略するぞ。」
「はい。」
「と言っても、何時もの虐殺か。」
「はい。」
「あぁ、心が痛い。」そう言いながら一階層に踏み込む。
「「「「「「「へぎゃぁぁぁぁ」」」」」」」」いつものように断末魔が響く。
「マスター、屑魔石だけです。」
「いらな、いや、すべて虚無の部屋に。」
「はい。」
「サクサク行くぞ!」
そう言いながら2階層に足を踏み入れる。
「「「「「「「「みぎゃああああっぁぁ」」」」」」」
「もう慣れた。」
「マスター拾いますか?」
「サラン、紫炎に全部虚無の部屋に入れろと言えば終わる。」
「はい、マスター。紫炎殿、すべてを虚無の部屋に。」
「了。」
「はぁ、次が最後か?」
「はい。」
「じゃあ、サクッと行くか。」
「「「「「「「はぎゃぁあぁぁ」」」」」」」
「マジで心が痛い。」
「ケイジ様、オークの死体が2体あります。」
「だから、死体って言うな。」
「マスター、フロアボスが残っています。」
「おぉ、ドロップ品はすべて虚無の部屋に入れてくれ。」
「で、フロアボスは何だ?」
「オークロードです。」
「オークロード?」
「オークを統べる能力を持った魔物です。」
「おぉ、強そうだな。」
「肉を採るなら、耐性がありますが、氷系の魔法が良いでしょう。」
「紫炎、判ってるな。」
「学習しました。」
「又、首を一撃で落とせば、良好な状態で肉を確保できます。」
「おぉ、そっちの方が楽だな。」
「マスター、周りにオークが数体いる。」
「サランに任せると、炎で一発か?」
「はい。」
「あ~、お肉が欲しいから、サランは手を出さなくていいぞ。」
「な、判りました。」
「んじゃ、俺が狩る。」そういながら腰の刀を抜く。
「まったく気づいていないな。」
「ケイジ様の隠蔽は、見破れる者はほぼいません。」
「これも虐殺か~。」
「・・・。」
「紫炎さん、なんか言って。」
(ケイジ様の仰せのままに。)
「そこで、言葉を出さないのは何で?」
(さっさと狩って、帰りましょう。)
「だから、何で言葉に出さないかな?」
「ふぅ、俺、完全に悪者だよな。」
(御意!)
「否定してくれ。」
「?」オークロードがきょろきょろと周りを見る。
「!」次の瞬間、オークロードの頭が地面に落ちる。
周りにいたオークが、それを見て驚愕したが、一瞬後に同じ状態になった。
「紫炎、こいつらの舌は?」
「食べられますが、臭みが酷く美味しくないようです。」
「マスター、オークは魔石に代わってしまった。」
「ロードが残って良かった。」
「紫炎、食えないのはどの部分だ?」
「腕と踝から下です。」
「豚足はないのかぁ。じゃ、そこは切り落として、虚無の部屋に。」
「はい。」
「んじゃ、帰ろう。紫炎、頼む。」
「繋ぎました。」
「いや、華厳の店じゃなく、肉屋の前にしてくれ。」
「御意。」
「マスター。コアは破壊しないのですか?」
「あぁ、 良い牧場だからな。」
「牧場?」
「肉を食べるために、獲物を育てる場所だ。」
「なるほど。」
「んじゃ、さっさと用事を済まそう。」そう言って俺は潜った。
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「おやじさん。」
「うわぁ、どこから現れた?」
「オークの捌き方を教えてくれないか?」
「あ? オークか、良いぜ、持ってきてるんだろう?」
「あぁ、そこの机で良いか?」
「良いぞ。」
俺はオークをその机に出す。
「おぉ、これも傷一つないな。」
「頭と腕、其れと踝から下は食えないんだよな。」
「あぁ、その通りだ。だからサクサクと切り落とす。」
「うん、成程。」
「んで、腹を裂いて内臓を引き出す。」
「あ、ケイジさん、この内臓をくれるなら、解体は只で良いぞ。」
「あぁ、良いぞ。」
「うひょー、今晩のあてが出来たぜ。」
そう言いながら、胃と腸をそばにあった容器に移す。
「おや、おやじ、心臓とか肝臓とか他の部位は要らないのか?」
「え?」
「其れと、マメとかはどうするんだ?」
「まさか。」
「え? 普通に食えるぞ。」
「まじかぁ。」おやじさんが魂の抜けた声で言う。
「ははは、もちろん有料な情報だぞ。」
「ふ、ふふふ、ケイジさん、自分で色々試してみるよ。」
「おぉ、頑張ってな。」
「とりあえず、解体を進めるよ。」
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「これで終わりだ。」
「おぉ、判った、ありがとうな。」
「俺はこれから、内蔵を食う研究だ。」
「ははは、頑張ってくれ。」そう言いながら、オークの肉と骨を虚無の部屋に入れた。
「では、また頼むよ。」そう言いながら虚無の部屋を渡る。
「まいど。」後ろでおやじさんの声が聞こえた。
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「戻ったぞ。」華厳の店に戻った俺が言う。
「お帰りなさい、ケイジ様。」
「おぉ、モブ、骨はどこに出せば良い?」
「え? ではこちらに。」調理室の机を示す。
「ほれ。」
俺は、一頭分のオークの骨をそこに出す。
「おぉ、助かります。」そう言うとモブは鍋を持ってきて、オークの骨をハンマーで割りながら鍋に入れていく。
「後は、お任せください。」そう言ってモブが調理場に消えていった。
俺は、それを見送ると、店の片隅でお腹を抱えているムーニャに言う。
「ムーニャ、これから晩御飯にするが、もつ鍋と、串カツだ。」
「うぅ、串カツ?」
「シュリプや、白身の魚を揚げたものをソースに漬けて喰うんだ。」
「にゃー、主様、後生にゃ、ムーニャの分残しておいてにゃ!」
「いや、俺は構わないけど、あいつらの食欲の前で、どうなるかな?」
「にゃ~、いけづにゃ。」
「ふふ、安心しろ、明日連れてってやるよ。」ムーニャの頬に口付しながら言う。
「主様、約束にゃ。」
「ふふ、ムーニャは可愛いな。」俺はムーニャの髪を手で撫でながら言う。
そして、バハローのモツを使った鍋パーティーが始まった。
カリナさんは、内蔵料理が気に入りましたか? そうですか、メモとかしなくても教えてあげますから。
銘家のお嬢さんが、其れで良いのでしょうか?
えっと、アヤさん、その食いつきは何ですか? 孤児たちにも振舞いたい?
いや、下の部屋で食べてますけど。
ちょ、ヒドラさん、何時現れました? いや、なんで普通に鍋を突っついてるんですか?
あと、ウヨチクハさんとイースさんも、何で普通に食べてるんですか?
「おぉ、ケイジ様、今宵の宴のご招待感謝いたします。」
「おぉ、イース、何処からその情報を?」
「ミーニャ様が、触れ回っていました。」
「はい、私も聞きました、ケイジ様が関係各位に、今まで見た事もない鍋料理を振舞うと。」ヒドラが破顔の笑顔で言う。
「主が、今までにない鍋料理を食べさせてくれるって聞いたから、嫁ネットワークに流したにゃ。」
「はぁ、ヨイチとかはどうするんだ?」
「え? 後で主がフォローするんだにゃ。」
「ミーニャ。」
「うにゃ?」
「明日の朝飯無しな。」
「にゃ? 主、それは酷いにゃ。」
「ミーニャ、最初に俺に相談しろ!」
「うっ。」
「俺にも都合がある。」
「あう、主ごめんにゃ。」
「だから、明日の朝飯で勘弁してやる。」
「にゃ~、酷いにゃ。」
「今晩のおかずをこっそり持って行っても判らないけどな。」
「にゃ?」
「明日、ムーニャだけ串カツの店に連れて行くのは秘密だ。」
「主、酷い。」
「今日の内に充分食っとけよ。」
「にゃぁ~、主が優しいのか、いけずなのか良くわからないにゃ。」
「ははは。楽しめ、ミーニャ。」
「うにゃぁ。」ミーニャが、恨めしそうに俺を見ながら串カツを食べると、目を輝かせて串カツの皿に突進していった。
俺はそれを眺めながら、ラガーのジョッキを口にした。
ここ最近、食うだけの話になっているような。
次くらいで、少し流れを変えましょうか?