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やらかしの41

 店に帰ってきた俺は、華厳とミーニャを虚無の部屋から出す。


「主、お腹が苦しい。」

「ケイジ様、私も駄目です。」

 虚無の部屋は時間が止まっているので、二人とも消化していないようだ。


「主様、お帰りなさいです。」

「旦那様、お怪我はありませんか?」

「ケイジ兄さま、お疲れ様です。」

 嫁達が集まってくる。

「おぉ、何も問題ないぞ。」

「主様、姉様達は何か美味しい物を食べたのですか?」

「おぉ、ちゃんとお土産を持ってきたぞ。」

「にゃ、楽しみにゃ。」

「いや、ちょっと待てよ、此処に何人いる?」

「え~っと、店員さん6人と、私たち4人、それに孤児が17人にゃ。」

「27人か。」

「おい、カウンターにいる奴、お前シャオマ作れるか?」

「はい、大丈夫です!」

「おぉ、シャオマ27人前作ってくれ。」

「判りました。」

「それと、アヤ。」

「はい、ケイジ兄さま。」

「お前は、シャオマの皮を作れるか?」

「はい、できます。」

「おぉ、では、シャオマの皮をできるだけ作り、それに玉葱を刻んだ物に片栗粉をまぶした物を包んでシャオマにするんだ。」

「え?」

「出来るか?」

「はい、ケイジ兄さま。」

「うぐぐ、ケイジ様、それは?」華厳が辛そうに言う。

「シャオマの新作だ。」

「な?」

「これが、サッパリしてて美味いんだ。」


「ケイジ兄さま、こんな感じですか?」

「おぉ、良いな。」

「頑張りました、ご褒美を。」アヤが言う。

「あぁ、アヤ、良くやった。」俺はそう言いながらアヤを抱き、口付をする。

「ふわぁぁ。」

「アヤ、愛しているぞ。」

「ふにゃぁぁ。」アヤは部屋の隅で撃沈した。


「よし、用意はできたか?」

「はい。」


「よし、皆食え!」

 俺は大皿を取り出す。


「にゃ~、お魚!」ムーニャとメームが物凄い反応をする。


「そこの生魚は、山葵醤油な。」

「鯉の餡掛けは、餡も一緒に食うんだぞ。」


「ミーニャも行きたいけど無理にゃ。」

「ケイジ様、食べられないのが悔しいです。」

「おぉ、華厳、腹がこなれたら食ってみろ。」

「御意。」


「主様、この刺身は凄いです。」

「兄者、俺もこれの為なら死ねる。」

「ふわぁ、旦那様、此の餡というものは至極です。」

「ケイジ兄ちゃん、この塩焼き凄い。」

「おぉ、お前ら、ライシーも一緒に食えよ!」

「ケイジ様。俺、一生お供します。」

「おぉ、俺もです。」

「いや、良いから食え。」



「なんか、いつも食事風景が戦場だな。」

「御意。」



「あ、そういえば。ケイジ兄さま。」

「ん? 何だアヤ?」

 みんなの食事が終わり、食器をかたずけながらアヤが言う。

「孤児院のお風呂が完成しました。」

「おぉ、それはよかったな。」

「皆で入りましょう。」

「おぉ、それも良いな。」、


「ケイジ様、及ばずながら私も協力させていただきました。」華厳が腹をさすりながら言う。

「ほぉ。」

「湯の供給が難しいとの事でしたので、私の力で温泉を掘り当てました。」

「おぉ、流石は華厳だ!」

「な、お褒めいただき光栄です。」


「良いねぇ、温泉かけ流しか?」

「はい。」

「楽しみだ。」

「御意。」

「見せてもらうぞ。」そう言って、風呂に向かう。

「おぉ、本格的だな。」

 そう言いながら俺はそこに入る。

「おぉ、脱衣所も広いな。」

「しかも、シャワーが全ての洗い場に付いてるのか。」

「うん、これは良い。」

 


***************


「んで、なんで、俺は女湯に入っているのかな?」

「ケイジ兄さまだからです。」


「いや、しかしアヤ。」

「嫁さん達は良いとして、何で他の孤児の女の子たちも一緒に入っているんだ?」

「え? 私たち気にしませんけど。」

「えぇ、ケイジ様になら見られても別に。」

「ケイジ様ですから。」


「俺が気にするんですが。」

「ケイジ兄さまなら、裸を見られても平気です。」


「いや、いや、色々駄目だろう。」


「俺は、男湯に戻るよ。」

「え~、駄目ですよぉ、アヤにお背中流させて下さい。」

「いや、それは、また今度な。」


「ぶぅ。」アヤが口をとがらせるが今回は無視だ。


 俺は、軽く体をふいて男湯に行く。

「うん、作りは変わらないんだな。」

 俺は、そのまま湯につかる。

「ふいぃ~、沁みるな。」

「我ながら、いい仕事をしました。」

「おぉ、華厳、腹はこなれたのか?」

「はい、ケイジ様、何とか。」

「華厳、明日、お前の懇意にしている肉屋に案内頼むぞ。」

「はい、判りました、朝7時にお迎えに上がります。」

「おぉ、頼む。」

「御意。」


その夜、俺はいつものポジションで寝る。

いや、アヤが加わったので、さらに込み合った。

「ベットも新調しないと駄目か。」そう思いながら俺は落ちた。



**************


「ケイジ様、おはようございます。」

「おぉ、華厳、暫く待ってくれ。」

「はい。」

「とりあえず、朝飯はそこに置いたから、皆で分けるように。」

「はいにゃ。」

「はい旦那様。」

「判った、兄者。」


「主様、ムーニャも連れて行ってください。」

「おぉ、では、5分で支度しろ。」

「3分でやるにゃ!」そう言ってムーニャは、朝飯に出したサンドイッチを頬張りながら、着替える。


「いや、分が判るのか?」俺は心で突っ込みを入れる。




「こちらです。」華厳の案内で活気がある店に着いた。

「おやじさん、おはよう!」

「お?おぉ、華厳さん、おはよう!」

「今日は、私の主を連れて来たので、紹介したい。」

「おぉ、あのケイジさんかい?」

「あぁ、このお方がケイジ様だ。」


「おぉ、俺がケイジだ、よろしくな。」

「あぁ、お若いのだな、よろしく頼むよ。」


「今日は、オークの内臓を見せてもらいに来た。」

「あ? オークの内臓?」

「あぁ、そうだ。」

「そんなものどうするんだ?」

「いや、旨いと思うが。」

「はぁ、お前さん、あれを食うのか?」

「そのつもりだが。」


「いやいや、あんた、あれは臭くて食えたもんじゃないよ。」

「おぉ、今までに食ったやつがいるんだな。」

「俺が、昔食ったが。」

「まずかった?」

「あぁ、食えたもんじゃない。」


「で、あるか?」

「あぁ、さっき処理した奴がそこのバケツに入っているよ。」

「これは、貰って良いか?」

「好きにしていいぞ。」

「おぉ、んじゃ、貰う。あぁ、そこの机借りていいか?」

「あ? おぉ、好きに使っていいぞ。」

「ついでに、窯も借りていいか?」

「あぁ、良いぞ。」

「おぉ、サンキュウな。」


「ケイジ様、そのようなものが食べられるのでしょうか?」

「あぁ、旨いぞ。」

「まぁ、見ていろ。」


(普通に入っているな。)

(胃袋から小腸までか、大腸部分は、おぉ、切り取られて別にあった。)


「まず、胃袋から処理するか。」

 俺はそれに塩を大量に振りかけると、揉みしだいた。

 暫くするとぬめりが取れて、ピンク色になってきた。

「よし、これは煮こぼす。」そう言いながら胃袋を水で洗うと、沸騰した鍋に葱、生姜と一緒に入れる。

 小腸と大腸は、それぞれに小麦粉をまぶして良く揉みこんで流水で洗う。

「主様、何で小麦粉を使うにゃ?」

「おぉ、腸には細かいヒダがあるから、その間にある汚れを落とすんだ。」

「成程にゃ。」


処理が終わると、胃袋と同じように、小腸も大腸もピンク色に輝いていた。

「これは適当な大きさに切ってと。」

「胃袋と同じように、葱と生姜を入れて煮こぼす。」

「それぞれをとろ火にして、次だな。」



「おやじさん。」

「あ? 何だ?」

「捌き方を教えてほしいんだが。」

「なんだ、何を裁くんだ?」


「どこに出せば良い?」

「持ってきてるのか? そうだな、そこの机の上で良い。」


「んじゃ、ほいっと。」


「な! バハローか?」

「あぁ。」

「け、ケイジさん。」

「ん?」

「これ、買い取らせてくれないか? 300G出すよ。」

「あぁ、まだあるから良いぞ。」

「おぉ、恩に着るぜ。 じゃぁ解体するから、見ててくれ。」


「おぉ。頼むよ。」

「しかし、傷一つない物は初めてだ。」

「そうなのか?」

「倒すのに手間取るんだろうな、傷だらけが普通だよ。」

「ふ~ん。」


「おぉ、解体だったな、まず頭は食う所がないから廃棄だ。」

「え? 舌は?」

「え? 舌なんか食えないだろう?」

「マジか?」

(紫炎、食えないの?)

(いえ、希少部位です。)

(だよなぁ。)

「なぁ、窯もう一個借りていいか?」


「あぁ、良いぞ。」

「んじゃ、舌を根元から切ってくれないか?」

「ん? こうか?」


「さんきゅ、ちょっと解体待っててくれ。」俺はそう言うと、舌を鍋に入れて煮始める。

「鍋が沸騰したら、暫く煮て湯でこぼして皮をむく、あちあちあち。」

「ケイジ様、私がやります。」

「熱いぞ、華厳。」

「私は大丈夫です。」と言いながら見事に皮をはぐ。

「おぉ、良い具合だ。」

 俺は虚無の部屋から葱とまな板と包丁を取り出して、葱を微塵切りにする。

「おぉ、見事な包丁さばきだな。」

「本当は、網で焼くんだがな。」そう言いながらこの世界のフライパンに似た調理器具を虚無の部屋から取り出す。

虚無の部屋を探すと、やっぱりあった。

「ムーニャ、凄いな。」

「にゃ、それを使いこなすケイジ様は更にすごいにゃ。」

 俺はフライパンに油をひくと、厚めに切った舌を焼き始める。

 片面が良い具合いなったら、裏返して塩と胡椒を振りかけ、葱を乗せる。

「おぉ、良い匂いですな。」店のおやじがその匂いにつられてこっちに来た。


「おぉ、ちょうど焼きあがったぞ、食ってみろ。」そう言いながら、それを小皿に取る。


「舌ですよね?」

「舌だ。」

「ケイジ様、私にもいただけますか?」

「もちろんだ、ムーニャも食え。」

「はい、主様。」


「まず俺が試食するよ。」躊躇してる皆を見て言う。

「どれ?」フライパンから直接、箸でつまんで口に入れる。

 シャク、ジュワ~、「タン」の旨味が口に広がり、葱の香りとのハーモニーがその後を追う。

「美味い!」

「おぉ、ケイジ様がそう仰るのなら。」華厳は躊躇せず口にする。

「はぅぅぅ。」華厳がフリーズした。

「主様の妻として、主様の食する物を理解するのは妻の務めにゃ。」ムーニャがそう言って「タン」を口に入れる。

「ムーニャ、何気に俺をディスってるな。」

「うにゃ!」ムーニャもフリーズした。


「な、二人とも動きが止まったな、まさか毒か?」

「んなわけないだろう、俺はぴんぴんしてるだろう?」

「おぉ、そう言えば、じゃ、何でだ?」

「食えば判るよ。」


「な、そうか。」意を決しておやじさんが「タン」を口に入れた。

 そして一噛みして目を見開く。

 そのまま咀嚼、そして飲み込み、俺の肩を持って言う。

「何でもっと早く教えてくれないんだ!」

「いや、知らないよ。」


「今まで、どんだけ損してきたんだ俺は。」


 俺は、肩を落としてるおやじを無視して、モツの煮込みを続けた。


「煮こぼした胃袋は笊で冷ましておくか。」


「腸は笊に受けて、葱と生姜は捨てるっと。」

そして、腸を鍋に入れると、生姜を追加で入れ、砂糖、酒、醤を入れ、モツがひたひたに浸かる量の水を入れる。


「ムーニャ、味醂はないか?」

「にゃ、主様、味醂て何ですか?」

「おぉ、意味が解ると良いが、モチ米で作った甘い酒だ。」

「蜜酒ですか?」

「悪い、それを知らない。」

「虚無の部屋にあるにゃ。」

「おぉ。」

「これか。」俺はそれを舐める。

「おぉ、これだよ。」

 俺は鍋に蜜酒を少し入れて、弱火で煮始める。

 暫く放って置いて良いか。


 そして、バハローの解体の続き。

 皮を剥がれたバハローは部位ごとに解体されていった。

「主様、覚えました。ネック、肩、トンビ、ミスジ、肩ロース、リブロース、サーロイン、ヒレ、バラ、うちもも、しんたま、そくもも、ランプ、イチボ、すね、完璧です。」

「おい、横隔膜周りはどうした?」

「え?そんなところも食べるのですか?」

「それに、くらしたは?」

「ケイジ様、感服いたしました。」

「おやじ、まさか俺を試していたのか?」

「な? おやじ、我が主を試していたのか?」

「いや、普通の人間はその存在を知らないんだ。」

「しかも、横隔膜付近は俺らも食わない。」

「え~、おやじ、人生損したな。」

「な? またか?」

「ケイジ様だぞ。」 

「それに、内蔵もないな、やっぱり内臓は使わないか?」

「まさか、これも食えるのか?」


「当然だ、だがこれ以上は有料だな。」

「むぅ。」おやじが考え込む。


「で、おやじ、もう一体頼んで良いか?」

「え? おぉ、良いぞ。」


「もう一度出せば良いか?」

「おぉ、良いぞ。」


「んじゃ、ほい。」


「な、マスターバハロー?」

「あぁ。」


「しかも、これも傷一つない。」


「これも卸そうか?」

「ケイジさん、これを買う資金は流石に用意できないよ。」

「おぉ、んじゃ、一回だけバハローと同じ値段で良いぞ。」

「な、バハローの20倍の価値があるマスターバハローをか?」

「おぉ、良いぞ。」

「買った!」

「捌き方は?」

「え? おぉ、バハローと一緒だ。」

「おぉ、それは良かった。」

「最後にもう一個、捌き方を教えてくれないか?」

「まだなんかあるのか?」

「あぁ、これだ。」

「な、ミノタウルス?」

「あぁ、上半身は食えないと言われたから下半身だけな。」

「流石にこれは卸してもらえませんよね。」

「いくら出す?」

「な、卸していただけるのですか?」

「あぁ。」

「2000Gでは?」

「今回だけは、其れで良いよ。色々使わせてもらってるからな。」

(ケイジ様、相場の4分のⅠです。)

(今回だけな。)

(御意。)

「ミノタウルスも内臓は食えるはずだ。」


「主様、オークの内臓を煮込んだ鍋が、干上がりそうです。」

「おぉ、さし水をして、此処で味噌を入れるのが俺の秘伝だ。」

「にゃ。判ったにゃ。」

「で、ここで葱の白い所とキャベツのざく切りを入れる。」

「え? ここで? 主様なんで?」

「食えば判る。」


「そして、沸騰したらとろ火にして少し煮込む。」

「にゃ~、凄くいい匂いにゃ。」

「モツから出汁が出るし、野菜からも旨味が出るからな。」


「ケイジさん、ミノタウルスは皮と蹄を道具屋か雑貨屋に持っていけば買い取ってくれるよ。」

「おぉ、そうなのか? おやじ金払うから皮剥ぎと蹄落とし頼んで良いか?」

「何言ってるんだ、只で良いに決まってるだろう。」

「おぉ、悪いな。」そう言って、ミノタウルスを全部取りだしたらおやじが固まってた。たった4体じゃないか。


「主様、鍋が良い具合です。」

「おぉ、火を止めてくれ。」

「はいにゃ。」


「どれどれ?」俺はおたまを虚無の部屋から取り出すと、鍋の汁をすくって口に入れる。

 口の中に広がる、味噌と野菜の風味。

「うん、旨い。少し冷ましてもう一度加熱すればいい具合だ。」

「主様、それは何でにゃ?」

「うん? 煮物は冷めるときに具材に味が染みるんだ。」

「にゃ~、勉強になるにゃ。」


「さて、その間に味見をするか。」

「にゃ?」

「おやじさん、肉の端切れを味見して良いか?」

「え? あぁ、良いぞ。」

 俺は、解体された、バハロー、マスターバハロー、ミノタウルスの肉を少しだけナイフで切り取るとフライパンに入れて焼く。

 それぞれの肉を口に入れて思う。

「バハローは普通の牛肉って感じだな。」

「マスターバハローのロースはすき焼きで食うと旨そうだ。」

「ミノタウルスは、ローストビーフや煮込みが良いな。」


「主様、聞いたことのない料理ばかりにゃ。」

「あぁ、後で作り方教えるからな。」

「にゃ~、楽しみにゃ~。」


「ケイジさん、ミノタウルスの処理終わったぜ。」

「おぉ、ありがとうな。」俺はそこにあったミノタウルスの皮と蹄、肉を虚無の部屋にしまう。


「お、鍋が良い具合に冷めてるな。」俺はそう言うと、窯に火をつける。

 そして、ぐつぐつ言い出す寸前で火を止めた。

「どれ?」そう言うと、俺は鍋の中身を箸でつまんで口に入れる。

「うん、まぁまぁだな。」


「主様、ムーニャにも。」

「ケイジ様、私にも。」

「おぉ、待ってろ。」そう言いながら、深い皿を出しておたまでよそう。

「ほれ。」俺は机にそれを置く。


「にゃ~美味しそうな匂いにゃ。」

「よだれが出そうです。」

「唐辛子の粉があると良いんだが。」

「主様、あるにゃ。」

「え?おぉ、これか。」虚無の部屋をのぞいて俺が言う。

「これを少し振りかけると、味のアクセントになるぞ。」

「いただきますにゃ。」そう言いながらムーニャがモツを口に入れる。

「うにゃ~、これは美味しいにゃ~。」

「これは、ラガーや酒のあてに良いですな。」華厳もバクバク食べながら言う。


「け、ケイジさん、俺にも味見させてくれないか?」

「おぉ、おやじさんも食べてみてくれ。」そう言って、モツを皿によそう。


「オークの内臓だよな。」

「あぁ、見てただろう?」

「どれ?」おやじさんは恐る恐るモツを口に入れる。

「ふわぁ。」おやじさんが固まる。

「なっなっなっ、何だこりゃ!」そう言うとモツを続けて口に入れる。


「ラガーが欲しくなるだろう?」

「ちょっと待て、持ってくる。」そう言いながら、店の奥におやじさんが引っ込んだ。

「おっと、胃袋もあったんだな。」そう言いながら俺は胃袋をまな板に載せ、細切りにする。

「葱も微塵切りにしてと。」

 フライパンに油をひき、細切りにした胃袋を炒める。

「塩コショウを振りかけて、葱を入れる。」

「ふにゃ~、良い匂いにゃ。」

「独特の匂いだよな。これはガツって言うんだ。」

「にゃ~。」


「よし、出来たぞ。」俺はフライパンから少し大きめの皿にガツを移す。

「どれ?」俺は味見をする。

「うん、大丈夫だな。」

「ムーニャも食べて良い?」

「おぉ。良いぞ。」

「ケイジ様、私も良いですか?」

「おぉ、どんどん食え。」


「主様、コリコリしてて美味しいにゃ。」

「食感が良いですな。」


「お前たち、お待たせだ。」おやじさんがラガーを持ってくる。


「おぉ、気が利くな。」

「お嬢さんにはこれな。」ムーニャの前にオレンジジュースが置かれる。

「にゃ、ありがとうにゃ。」


「おいおい、一品増えてるじゃないか。」

「あぁ、これはガツだ。」

「食って良いか?」

「おぉ、どんどんやってくれ。」

「どれ。」

「どうだ?」

「く~、ラガーに合うなぁ。」


「調理次第で此処まで美味くなるのか。」

「いや、下処理をきちんとすればだ。」


「バハローの内臓もこれになるのか?」

「バハローはこれとは違う食い方だな。」

「それは?」

「さっきも言ったじゃないか、これ以上は有料だ。」

「ケイジ様、モツに唐辛子を振りかけると、ますますラガーに合います。」

「主様、ガツも味が変わっていけるにゃ。」


「内臓がここまで美味いとは、舌と言い、俺は今までどれだけ損をしていたんだ。」

「判ってよかったな。」

「ケイジさん、ありがとうな。」

「いやいや、どういたしまして。」

「あ、支払するよ、カードを貸してくれ。」

「あぁ、よろしくな。」

「おぉ。」


 俺は、モツを口に入れると、それをラガーで流し込んだ。

「く~、沁みる。」

「主様、箸が止まらないにゃ。」

「おぅ、ラガーが無くなってしまった。」


「お待たせ、色を付けて3000G入れておいたぜ。」

「おぉ、さんきゅうな。」

「バハローの内臓の食い方も教えてくれ。」


「はは、良いぜ。」

「おやじさん、ラガーを貰えないか?」

「おいおい、華厳、店はどうするんだ?」

「今日は、仲間に任せます!」


 そして、プチ宴会が始まった。


「まだ午前中なのにな。」


ちなみに、もつ煮のレシピは、通常私が作っているものです。

ご希望の方は、メールをくだされば詳細をお教えします。

ちなみに、COOKPADの「ころりんMK―2」は私です。

美味しい物は正義!


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