やらかしの40
「次で何階層だ?」
「14階です。」
「しかし、まだその部屋に入った瞬間に虐殺するレベルなんだな。」
「はい。」
「広さもそれほど広くないし、意外と低レベルのダンジョンなのかな?」
「ミノタウロスが凶悪なだけで、他は脅威ではありません。」
「そうだよなぁ。」
「さてこの階層も虐殺かな。」
「肯定します。」
「はぁ。」俺はため息をつきながらそこに足を踏み入れる。
「「「「「「「「「ふぎゃぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」」」
「バハローの亡骸を確認しました。」
「それは虚無の部屋に入れろ。」
「はい。」
「良魔石は17個です。」
「其れも虚無の部屋に。」
「はい。」
「確認だ。」
「魔石、バハロー、ミノタウルスはいくつだ?」
「はい、魔石は149個です。」
「バハローは今ので7個体になります。」
「ミノタウルスは3体分を捕獲しています。」
(う~ん、どうなんだろう?出てきたバハローは14階で300越え、残ったお肉は7個。)
(めちゃめちゃ高級な気がする。)
(ミノタウルスも偶数階で遭遇してるけど、5分の2でしかお肉にならない。)
「ケイジ様、ミノタウルスのレベルが抜けています。」
「あぁ、ミノタウルスのレベルは100近かったけど、楽勝だった。」
「そうか、一般の人間は無理か?」
「はい。」
「ケイジ様、この部屋のフロアボスはミノタウルスです。」
「おぉ、4体目になるかな。」
「どうでしょうか、このフロアのミノタウルスは102レベルです。」
「ふと思ったんだが、今までミノタウルスを刀で討伐してたが、肉質を落としてないか?」
「主に下半身が食に適しているので、問題ないと思いますが。」
「ミノタウルスって、魔法耐性あるのか?」
「ほぼありません。」
「凍らせれば良くないか?」
「マスター、やってみる価値はあると思う。」
「ケイジ様、私も推奨します。」
「おぉ、紫炎も推奨してくれるのなら、やってみるか。」
「この奥か?」
「はい、マスター。気配を感じます。」
「レベル100を超えるのか。」
「御意。」
意を決して足を踏み入れる。
その瞬間、入った空間が遮断される。
「な。」
そして吹き荒れる暴風に似た敵意。
「これは、やばい奴かな?」
「どうでしょうか?」
「おぉ、紫炎さんは通常営業だな。」
「マスター、レベルが92になった私でも狩れる。」
「な、その程度?」身構えた自分が恥ずかしくなった。
「一応聞くぞ。俺の言ってる事理解できるか?」
「ぶひぃぃぃ!」
「理解してないと判断するぞ!」
「違ってたら後で申告しろよ。」
「最もその時は、お肉になってるけどな。」
俺は、そのお肉、いやミノタウルスに冷却魔法を唱えた。
「フローズ!」
マイナス5度の冷気がミノタウルスの上半身を凍らせた。
「ブモ、ブモォォ。」ミノタウルスが咆哮する。
「とりあえず、実験に協力してもらうか。」
ミノタウルスは氷の拘束を解く。
「ふむ、マイナス5度じゃ駄目か。」俺はそう思うと、その先を唱える。
「ツンドラ。」フローズの10倍の冷気がミノタウロスを襲う。
先ほどよりも厚い氷が、ミノタウルスの上半身を拘束する。
「ぶもぉぉ。」
「おっ、効いてるみたいだな、動きが鈍くなってきた。」
「ぶもぉぉ・・・。」ズシ~ン!
ミノタウロスは一声泣いて、後ろに倒れた。
そしてそのまま、魔石を残して消滅した。
「あ~、残んなかったか。」
「マスター、これは上級魔石だ。」
「おぉ、良いものが手に入ったな。」
「次は15階層か。」
「とりあえず魔法が効くのは判ったから、後は殲滅だな。」
「15階層の階段です。」
「まだ、殲滅レベルか?」
「はい。」
「ちなみに、15階層の魔物のレベルはいくつだ?」
「15です。」
「・・・」
「ケイジさま?」
「俺、23階層までフリーパス?」
「そのようですね。」
「紫炎、他人事だな。」
「ははは、ま・さ・か・ぁ。」
「紫炎、その棒読みは何かな?」
「はぁ、何のことでしょう?」
「はぁ、まぁいいや、行くぞ。」
「はい。」
俺は15階層に足を踏み入れる。
「「「「「「うぎゃぁぁぁぁぁぁ」」」」」」
「はぁ、なんか自分が悪者になった気がするよ。」
「ケイジ様、この階は魔石だけです。」
「虚無の部屋に。」
「13個を収納しました。」
「もう、サクサク行こう、次の16階層はどんなだ?」
「おや?今までと違います。」
「ほぉ、どんなふうに?」
「フロアボス。いえ、ルームボスが多数います。」
「ルームボス?」
「はい、部屋ごとのボスです。」
「なんか、いきなり胡散臭くなってるな。」
「しかも、その存在は今までのフロアボス以上です。」
「おぉ、それは楽しみだな。俺の魔法の威力を試させてもらおうか。」
俺はそこに踏み込む。
「「「「「「「「あぎゃぁぁぁぁぁ」」」」」」」
「うん、通常運転だな。」
「マスター、魔石が12個、バハローはありません。」
「うん、で、目の前に廊下が見えるが、扉が8個見える。」
「それぞれの扉ごとにルームボスがいます。」
「ちなみに、全部ミノタウルスか?」
「いえ、マスターバハローです。」
「なんだそれ?」
「バハローの上位種で、バハローより美味い肉が採れます。」
「おぉ、ボーナスステージじゃないか。」
「肯定します。」
「ははは、じゃぁサクサク攻略するか。」
「はい。」
俺は最初の扉を開ける。
「「「「「「「みぎゃぁぁぁぁぁ」」」」」」」」
「あぁ、心が痛い。」
「マスター、マスターバハローの屍一頭と魔石が13個です。」
「虚無の部屋に。」
「はい。」
「サラン。」
「はい、マスター。」
「これ以降は、虚無の部屋に入れたものだけ報告してくれ。」
「御意。」
そして、残り7個の部屋を蹂躙して最後のフロアボスに向かった。
「マスターバハローは全部で3頭だけで、魔石が45個か。」
「多いんだか、少ないんだか。」
「フロアボスがいます。」
「俺意外には、凶悪なフロアだな。」
「御意。」
「最も、俺にはボーナスステージだけどな。」
「御意。」
「さて、またミノタウルスかな?」
「はい。」
「あ~。言葉通じないよな?」
「ブモッモモオォぉっぉ。」
「通じてないでいいんだよな?」
「ぶもぅ。」ミノタウロスが持った斧で攻撃をしてくる。
どごぉぉっぉぉんっんん
撃ちつけられた地面が炸裂する。
「おいおい、世界にやさしくしろよ。」
「フローズ」
「ぶひゃ、ぶにゃ。」
「おぉ、速攻かよ。」
「ミノタウロスの死体が残りました。」
「死体って言うなぁ。」
そう言いながら、俺は首を切り落とし、舌を切る。
その瞬間、首が魔石に代わる。
「そして、胴体を切断っと。」
下半身は紫炎が虚無の部屋にいれる。
「そして魔石が転がるっと。」俺はそれを虚無の部屋に入れながら言う。
「マジでミノさん、美味しいな。」
「さて、今何時ごろだ?」
「ケイジ様の世界で、夕方6時ごろです。」
「おぉ、随分時間が経っていたんだな。」
「はい。」
「一度戻るか、紫炎、此処から華厳の店に繋げるか?」
「いえ、一度ダンジョンを出ないと無理です。」
「では、ダンジョンの出口には?」
「繋ぎました。」
「おぉ、仕事が早いね。」そう言いながら、そこに潜った。
「ぷは~、空気がうまいなぁ。」俺はダンジョンの外の空気を吸いながら言う。
「こんにちは。」いきなり声をかけられた。
「あぁ、こんにちは。」
「どうでした?」
「おぉ、バハローは採れたよ。」
「おぉ、羨ましい。」
そこにいたのは、男二人、女二人のパーティーだった。
「これからか?」
「はい。」
「二階のフロアボスはミノタウルスだったぞ。」
「え? 2階で?」
「あぁ。」
「ま、まさか、それを見て帰って来たのですか?」
「いや、倒した。」
「は?」
「ん?」
「いや、ミノタウルスを倒した?」
「あぁ。」
「いやいやいや、ミノタウルスですよ、普通人間は倒せませんよ。」
「魔法が効いたぞ。」
「え?」
「氷系で、マイナス50度を胴体、特に心臓に近い所を凍らせれば一発だったぞ。」
「どんな魔法ですかそれ?」魔法使いらしい女が聞いてくる。
「俺の場合、ツンドラかな。」
「な、最上級魔法!」
「え? 中級だろ。」
「マスター、只の人間にはその魔法は難しいかと。」
「え? な、サラマンダー? 主体?」パーティーのリーダーらしき男が言う。
「おぉ、良く分かったな。」
「は、は、初めて見た。」
「私はマスターの僕、サランという。」
「は、は、はい、よろしくお願いします。」
「リーダー、鼻の下のびてるよ。」
(ケイジ様、フローズを10回重ね掛けすれば、ぎりぎり倒せるかもしれません。)
「おぉ、そうなのか?」
「え? 何がですか?」
「そこの魔法使いの君、フローズは使えるか?」
「え?それなら。」
「何回唱えられる?」
「え? 魔力残によりますが、12回ほどは。」
「おぉ、フローズを10回重ね掛けすればミノタウルスを撃破できるかもな。」
「え? あの、そんな情報、信用していいんですか?」
「あぁ、名乗ってなかったな、俺はケイジだ。」
「ケイジ?」
「あぁ、思い出した、サラマンダーを従属させた、精霊様の加護を貰った男!」
「あぁ、それ、俺だ。」
「うおぉぉ、感激っす、精霊様の加護を貰った人に出会えるとは。」
「あ、良かったな。」
「握手してください。」
「おぉ、良いぞ。」
「おぉぉ、俺、もう手を洗わないぞ!」
「いや、洗おう!」
「ああああ、あの、なでなでしてもらっていいですか?」
「え? いや、良いけど。」
「お願いします。」
俺はその女の頭を撫でる。
「これで良いか?」
「はい、あたし一生頭を洗いません。」
「マジで洗え!」
「ミノタウルスは、フローズを10回以上重ね掛けをすれば倒せる情報は、お前たちがギルドに報告して良いからな。」
「あの、ケイジ様、その情報はきっと1000G以上の価値があると思いますが。」
「袖すり合うも他生の縁だ、お前たちにやるよ。報告するのも、お前たちで秘匿するのも好きにしていいぞ。」
「マジですか?」
「マジだ。」
「あの、聞いていいですか?」パーティーの中のシーフらしき女が言う。
「ケイジ様は、ミノタウロスを狩ったのですか?」
「8体ほどな。」
「マジですか!」
「めちゃくちゃレベルが上がったんじゃ?」
「いや、全然、俺はカンストしてるらしいからな。」
「はぁ、本当に凄いのですね。」
「じゃ、俺達は帰るよ、君たちの健闘を祈る。」
「ありがとうございます。」
「紫炎、華厳の店に。」
「はい。」
「じゃあな。」俺は潜る。
「な、一瞬で消えた。」
「きっと、ケイジ様が言った事は本当だ。」
「俺達でも、ミノタウロスを狩れるんだ。」
「魔力回復薬は3本ある。」
「ケイト、行けるか?」魔法誓いの少女に、リーダーの男が聞く。
「やってみる。」
そして、とある冒険者のパーティーがミノタウルスを狩った事が、この町で話題になるのは少し後の事だった。