やらかしの4
「主様がお待ちです。」門の前で完全武装の騎士が言う。
俺はその騎士のレベルを把握する。
(え?騎士レベル10?)
(こんな低レベルの騎士で護衛務まるのかな?)
(騎士レベル10であれば、通常のもめごとであれば鎮圧可能です。)
(え?そんなに凄いの?)
(騎士は上級職なので、レベル10であれば一般職の50レベルに相当します。)
(なんか、俺には一瞬で倒せそうだけど。)
(当然です、ケイジ様はこの世界のスキル、職業、その他の要因すべてカンストしていますから。)
(なにそれ?チートってレベルじゃないよね。)
(主からのプレゼントです。)
(え~、タイトルが変わりそうな事実だね。)
(大丈夫です、心おきなくやらかしてください。)
俺とカッターは、目の前にある、まるで某D国のNシュタイン城のような建物に入っていった。
玄関と言うにはあまりに立派な扉をくぐると、ダンナーさんが満面の笑みで出迎えてくれた。
「お待ちしておりました、カッター様、ケイジ様。」
「どうぞ、こちらへ。」ダンナーさんは、長い廊下を案内してくれて、豪華な部屋へ案内してくれた。
「うわぁ、俺、なんて場違い。」
テニスコートと同じような広さの部屋の中央には、卓球台が10個あるのと同じような大きさのテーブルがあり、その上には豪華な食事が並べられていた。
テーブルの周りには10人ほどのメイドさんが待機しており、テーブルの端には、ダンナーさんの奥さんと、その娘さんが座っていた。
「さぁ、此方へ。」ダンナーさんが、奥さんたちが座るテーブルの向かいに俺たちを案内する。
ダンナーさんは、テーブルの端に座った。
俺と、カッターは奥さんと娘さんの前に座る。
ダンナーさんが合図をすると、メイドさんが俺たちの前にあるグラスに酒を注ぐ。
(俺の個体19歳なんだけど、酒飲めるの?)
(ここでは成人年齢は18なので問題ありません。)
「では、生有る再会に乾杯しましょう。」ダンナーさんが言う。
俺とカッターは、グラスを持って立ち上る。
テーブルの向こうでは、奥さんと娘さんも立ち上がっていた。
「精霊様に感謝を!」ダンナーさんの言葉で、全員がグラスをあおる。
メイドたちは、空いたグラスに酒を注ぐと、料理を取り分けてくれる。
「お好みがありましたら、そばのメイドに申し付けて下さい。」ダンナーさんが言う。
「がはは、ではお言葉に甘えて。」カッターが傍のメイドに言う。
「もっと強い酒をくれ。」
「かしこまりました。」カッターの傍にいたメイドが礼をすると、ドアの向こうに消えた。
暫くすると戻って来て、カッターのグラスを変える。
少し小さめのグラスに、持ってきた酒を注ぐ。
「この城で最高のアルコール度数を持つ物です。」メイドが表情を変えずに言う。
「どれ?」カッターはそのグラスを一息で飲み干す。
「くわー、これだよこれ!」カッターはグラスをテーブルに置いて言う。
メイドがカッターのグラスに注ぐ瓶のラベルを見ると、アルコール77%と書いてあるのが見える。
「ケイジ様もいかがですか?」
「いやー。あまり強くないので結構です。」
(飲んだ瞬間に分解が可能です。)
(それじゃぁ、つまん無いでしょ。)
「あの、ケイジ様。」向かいに座っていた娘が俺に話かけてきた。」
「はい、何でしょう?」
「私、ダンナーの娘、カリナと申します。以後お見知りおきを。」
「ケイジ様、私はダンナーの伴侶、セリナと申します。」
「カリナ様と、セリナ様、お二人とも好しくお願い申し上げます。」俺は深々と頭を下げる。
「どうぞ、頭をお上げください。」セリナさんが言う。
「この度は、私達の道中を守っていただき、感謝の極みです。」セリナが言う。
「いや~、襲撃を受けた時は、肝を冷やしましたよ。」ダンナーが笑いながら言う。
(いや、あの場所に俺がいなかったら、あんたら全員、鬼籍に入ってるよ。)俺は思うが、にっこりとしながら言う。
「いえいえ、ダンナー様の、精霊様への信仰の証でしょう。」俺はにこやかに答える。
「精霊様は、我々を守ってくださいますからな!」カッターが赤い顔で言う。
「ははは、これは、これは、精霊協会に寄進をしないといけませんねぇ。」ダンナーがにこやかに言う。
「あの、ケイジ様。」カリナが俺を見て言う。
「はい、何でしょうか?」
「け、ケイジ様は、その、心に決めた方はいらっしゃるのでしょうか?」
「え?それは、どういう?」
「がはは、ケイジは今さっき、獣人の嫁を貰ったばかりですよ。」カッターが言う。
「いや、それは、誤解と言うか。」
「そうなんですか。」悲しそうにカリナが言う。
「私は、そんなつもりは無いのですけど。」
「でも、それでもかまいません!」カリナが言う。
「私を貰って頂けませんか?」
「おぉ、それは良い提案だ!」ダンナーが言う。
(おい、おっさん、いきなり何言いだした)
「あら、素敵な提案です。」セリナも言う。
(ちょ、あんたら何言ってるんだ!)
「あの日から、私にはケイジ様と添い遂げる未来しか見えないのです。」キラキラした目でカリナが言う。
「がははは、カリナさんは見る目がある!ケイジなら、嫁の二人や十人、面倒みられますよ!」
(おい。カッター、何適当な事言ってるんだ!)
「おぉ、それでは早速、婚姻の準備をしなければ。」ダンナーが言う。
「これ、誰ぞある。」
「はは、おそばに。」
「聞いていたな、早速婚姻の準備をせよ。」
「御意。」
「あんたら、可笑しいだろ!」
「ケイジ様、娘をお願いいたします。」セリナさんが三つ指をついて俺に礼をする。
「だから、展開早すぎるって!」
「ケイジ様は私がお嫌いで?」カリナがウルウルした目で俺を見る。
「え?いや。」
(凄く俺好みです!)
「・・・・」
「わ、私がお嫌いなのですね。」カリナがよよっと突っ伏す。
「いや、カリナさん・・」
カリナは突っ伏しながら上目遣いで俺を見る。
(ぐわ、それ反則だよ!)
「わ、私で良ければお傍に。」
途端にカリナが破顔で俺に抱きつく。
「ケイジ様、末永く愛してくださいませ。」
「おぉ、めでたい!」ダンナーが言う。
「いや、何がどうしてそうなった!」
「カリナ。正妻の座を射止めるのですよ!」セリナさんがニコニコしながら言う。
「えぇ、獣人なんかに負けません!」
(いや、カリナさんも、何で好戦的?)
(と言うか、あんたら、自分の娘を訳解んない男に嫁がせて良いの?)
「いやー、ケイジさんが私たちの息子になるのか。」
「えぇ、本当に光栄なことですね。」
「カリナ、英雄の子を授かることを祈るぞ。」ダンナーさんが本音を言う。
(な、結局英雄の血かよ。)
おれは、カリナを離して言う。
「カリナさん其れで良いんですか?」
「ケイジ様のお嫁さんになれるなら。」
(あぁ、目がハートになってるよ。)
「貴女を守ります。」
「おぉぉ、ケイジ殿、娘をお願いいたします!」
「ケイジ様、私からもお願いいたします!」
(あんたらねぇ。)
「がははは、めでたいなぁ!」
(おっさん、絶対他人事だよなぁ!)
「ケイジ殿、今宵はここまでと言う事で。」ダンナーが言う。
「えぇ、婚礼の準備をしなければなりませんので。」セリナさんも続ける。
「がはは、ではお暇するとしますか!」
「ケイジ様、お名残り惜しゅう思います。」カリナさんが目をウルウルしながら言う。
「後程使いを出しますので、今宵は失礼いたします。」ダンナーが深々と礼をする。
「がはは、では、失礼いたします。」カッターが俺の腕をとって屋敷を出る。
「ケイジ、美味いことやったな、ダンナーさんは名うての資産家だ。」
「逆玉だな、逆玉!」
「いや、わけわかんないです!」
「がはは、羨ましいぜ!」
「マジでわけわかんないです!」
しばらく歩くと、ギルドの前に着いた。
「がはは、じゃぁ、俺はここで!」カッターがそう言うと街の雑踏に消えた。
「ふぅ。」俺はため息をつくと、ギルドのカウンターに向かう。
「お帰りなさい、ケイジ様」さっきとは違う獣人が出迎えてくれた。
「泊まれるところを教えてください。」
「はい、このギルドの上が宿泊場所になっています。」
「一泊幾らですか?」
「800Bです。」
「では、決済を。」そう言ってカードを渡す。
「はい、301号室にお向かい下さい。」受付の獣人がカギを渡してくれながら言う。
俺は、奥の階段でその部屋に向かった。
その部屋は、セミダブルのベットと、簡単なシャワーとトイレが備え付けられていた。
俺は、装備を外すと、シャワーを浴びた。
熱めのお湯で身体を洗う。
「ふぅ。」
(俺の能力はカンストしてるって言ってたよな。)そう思い自分の身体に乾燥の魔法をかける。
一瞬で水気が無くなる。
髪の毛も乾いているようだ。
俺は、ベットに置いてあったバスローブを着ると、そのままベットにダイブした。
(なんか疲れた。)
俺はそのまま眠りについた。
********
随分寝たような気がする。
俺はゆっくりと目を覚ます。
「うん、なんだこの暖かい物は?」
俺は、俺が抱いている柔らかな物を見る。
その物は少し身じろいで、俺に言う。
「主、おはよう。」
俺はミーニャを抱きしめていた。
「な、な、な、お前、何処から入った!」
「んー、主の名前を言ったら、鍵を開けてくれたにゃ。」
「主、あったかいにゃ。」ミーニャはそう言うと俺の身体を抱きしめる。
「ちょ、お前、裸か?」
「そうだにゃ。」
バスローブ越しにミーニャの身体を感じる。
「何やってるんだ。」俺はミーニャの身体を離しながら言う。
「え~、夫婦なら普通だにゃ。」
そう言いながら、ミーニャが更に俺に抱き着く。
(いや、あったかいし、ミーニャの肌の感触は嫌いじゃない。)
「いやいや、駄目だろう。」
「何が?あたしは全然かまわないにゃ。」
「いや、俺が構うんだよ!」
「あたしは主に身も心も捧げたんだから、あたしに何しても良いにゃ。」
そう言いながら、ミーニャは俺を抱きしめる。
「いや、そう言う事じゃ。」
しかし、ミーニャの暖かな体温が、俺を眠りに誘う。
「いや、そう・・」やばいと思いながら俺は意識を手放してしまった。
(暖かいなぁ。)
はっと目覚めると、ミーニャは俺を抱きしめたままにっこりと微笑んで言う。
「主、おはようにゃ。」
「お、おはよう。」
そう言うとミーニャが俺に口づけをしてくる。
咄嗟の事で、俺は逃げれなかった。
ミーニャは俺の口の中を長い舌で嘗め回す。
「う。う~。」その気持ちよさに一瞬自我が飛ぶが、俺はミーニャの身体を離す。
「主、酷いにゃ!」
「いや、気持ちよかったけど、今はやめろ。」
「え~。」
「朝っぱらから、何やってんだ!」
「夫婦に朝も夜もないにゃ。」
「いつ夫婦になった。」
「昨日、あんなに情熱的なプロポーズしてくれたにゃ。」
「それは、ご・・
(誤解と言ったら、貴方は殺されます。)
(え?)
(獣人の尻尾を持つことは、それだけ神聖な意味を持ちます。)
(俺、こいつを嫁に貰わないと駄目なの?)
(肯定します。)
(マジかぁ。)
(更に言えば、昨夜カリナ様の求婚も受け入れています。)
(げ。)
(重婚って罪にならないの?)
(本人とその家族が認めていれば大丈夫です。)
(マジかぁ)
(ただし、周りのリア充爆発しろ!と言う攻撃はある可能性があります。)
(なんだそれ!)
その隙に、ミーニャに攻撃される。
(くそ、マジで気持ちいい。)
俺は反撃を試みる。
(スキルカンストを舐めるな!)
ミーニャの頭を押さえると、俺はミーニャの口の中を嘗め回す。
歯茎の裏表、舌の裏側、上顎を時にやさしく、時に強く舐めた。
「ふにゃー。」恍惚の表情を浮かべながらミーニャが黙る。
「ふ、勝ったな。」
そう思った時、いきなりドアが開いてカリナが入って来た。
「ケイジ様、おはようござ・・」
カリナは俺とミーニャを見て固まる。
(なんで鍵空いてるんだよ。)俺は思うが、きっとミーニャが閉めなかったんだろうと考えた。
「お、」
「お?」
「おはようございます、ケイジ様。」カリナが再起動して、何事もなかったようにベットに近づいてくる。
「カリナさん、おはようござ・・」
いう前にカリナの口で俺の口が塞がれた。
「うぅ。」
カリナさんは申し訳程度に、舌を俺の口に差し入れる。
チロチロと唇を舐めるのが、妙に気持ちいい。
「いや、そうじゃなくて。カリナさん何してるんですか。」
俺はカリナさんを離して言う。
「旦那様に朝の御挨拶を。」
「主、あたしにももっと。」ミーニャが俺の首を引き寄せる。
「だあ!」俺はベットから飛び起きた。
「あんたら、何朝から盛ってるんですか。」
「んー妻の務め。」
「旦那様のご寵愛を受けるため。」
二人はそう言うと、左右から襲ってきた。
俺はその勢いで、ベットに倒される。
二人が俺に抱き着いてきたとき、ドアがノックされカッターが入って来た。
「ケイジ起きてるか、お前に頼み・・・」
カッターが俺たちを見て固まる。
「いや、その、邪魔して悪かったな。続けてくれ。」そう言いながらカッターがドアから出て行こうとする。
「いやいや、待て待て、良いから、此処にいてくれ。」
「なに?お前、見られながらだと興奮する癖の持ち主か?」カッターが汚物を見る目で言う。
「いや、誤解だから!」
「お前ら、そう言う事だから離れろ。」
「「は~い」だにゃ。」ミーニャはそのまま毛布を纏う。
カリナさんは傍の椅子にちょこんと座った。
俺はバスローブを脱ぐと、いつもの服に着替えて、ベットに腰かけた。
「で、頼みって何だ?」
「あぁ、実はこの町の北、数キロ離れたところに「陸王のダンジョン」があるんだが、一昨日そこに入ったパーティが帰ってこないんだ。」
「ダンジョン?深いのか?」
「いや、三層しかない初級ダンジョンで、普通なら半日ぐらいで攻略出来るところだ。」
「入ったパーティのレベルと人数は?」
「リーダーがレベル12で、後はレベル10が3人だ。」
「ダンジョンの攻略に足りてるのか?」
「レベル7が適正だ。」
「で、何で俺に?」
「実は、3層以上あるって噂があるんだよ。」
「ん?」
「3層の奥に、下に続く階段があるのを見たとか言う奴がいるらしい。」
「ほぉ。」
「それに、ダンジョンコアも見つかっていないから、信ぴょう性が高い。」
「成程、それで精霊の加護持ちの俺にお株が回ってきたってところか?」
「あぁ、否定しない。」
「はぁ、しゃぁないな。」
「おぉ、受けてくれるか?」
「ギルドの正式な依頼なんだろう?」
「あぁ、もちろんだ。」
「分ったよ。」
「おぉ、感謝するぞ。ではギルドでパーティーメンバーを集めないとな。」
「主、あたしが行くにゃ。」
「ん、ミーニャはダンジョンに入れる年齢なのか?」
「え?あたしは12歳だから立派な大人にゃ。」
「12歳、そりゃ子供だろう。」
「いや、ケイジ、獣人の成人年齢は10歳だ。」
「マジ?」
「ダンジョンは各種族で、成人に達していれば入れるからな。」
[ご主人様,私もお供いたします.]カリナが言う。
「いやいや、カリナさんはさすがに。」
「こう見えて、私、16歳でございます。」
俺はカッターを見る。
「可能だ。」
「いやいや、年齢に達していてもそれなりのスキルがないと。」
「主、あたしの体術は見たにゃ。」
「うっ。」
「通用しないかにゃ?」
「いや、充分だろう。」
「では、決まったにゃ。」
「ご主人様、私のステータスをご覧ください。」カリナが俺に言う。
俺はカリナさんを看破する。
名前:カリナ・ゴウショーノ
性別:女
年齢:16
職業:治癒師 レベル15
伴侶:ケイジ
(ちょ、伴侶に俺の名前入ってるし。)
「外堀埋められてる。」俺がぼそりと言う。
「旦那様、いかがでしたか?」カリナさんが言う。
「ダンジョンに入れるレベルでした。」
「おぉ、4人連れ帰るには、3人パーティーでなきゃだめだから、丁度良いな。」カッターががははと笑いながら言う。
「はあ、では、町で準備をしたら行きましょうか。」俺はあきらめて言う。
「では、頼んだぞ、吉報を待ってる!」カッターはそう言うと部屋を出てった。
「はぁ、厄介な。」俺は自分の装備を確認した。
なまくらな剣、皮の鎧、駄目だこれ、スライムと互角だ。
「ミーニャ、服を着なさい。」
「はいにゃ。」
ミーニャは毛布を脱ぐと素早く服を着る。
「準備出来たにゃ。」
「はぁ、じゃ行きますよ。」
俺とミーニャ、カリナの3人は町の売店に向かった。
「ご主人様、私にもミーニャさんが失神する技をお与えください。」
「あなたの年齢の方に、そう言う事をすると、私の世界では犯罪です。」
「え?でもミーニャさんは12歳でしたよね。」
「い、犬や猫に顔を舐められても犯罪になりません。」
「にゃ、差別だにゃ、抗議するにゃ!」
「いや、獣人と犬猫は違うでしょ。」
「あたしを猫扱いしてるにゃ。」
「いや、ミーニャは俺の抱き枕・・げふんげふん。」
「猫扱いじゃないにゃ?」
「ミーニャは俺専用の抱き枕だ。(ヤケ)」
「嬉しいにゃ!。」
「え?それで良いの?」
「うにゃ~。」
「あの~私に答えていませんよ~。」
「嬉しいにゃ、嬉しいにゃ。」
「えっと、もし、も~し。」
「うにゃにゃ。」
「私、無視ですか。」