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やらかしの36

 カリナの屋敷の前にいた門番が、俺の顔を見て言う。

「いきなり現れたので、何事かと思いましたが、流石ケイジ様です。」

「おぉ、驚かせてすまないな。」

「いえ、旦那様達がお待ちでございます。」そう言うと、門番が門の中に合図をする。

その後暫くして、中から門が開けられた。

「ん? いやに厳重だな?」

「此の所、この近辺の貴族の屋敷に賊が入り込むという被害が増えていますので、用心のために。」

「ほぉ、物騒だな。」

「まったくです。」

「ご苦労だな、これ、後で皆で飲んでくれ。」そう言いながら酒の瓶を数本取り出して、門番に渡す。

「な、私達にまでお気遣いを。」

「仕事中に飲むなよ。」

「な、もちろんです。」そう言いながら門を通り抜けると、その後ろで門が閉まる。


「本当に、厳重だな。」そう言いながら玄関に向かうと、玄関の前にはカリナとその両親が待っていた。


「おぉ、ケイジ君、久しぶりだな。」

「ケイジ様、お元気そうで、何よりです。」

「ダンナーさんと、セリナさんもお元気そうで何よりです。」

「ケイジ君、私の事は父と呼んでくれても良いのだよ。」

「私の事はママと、甘えていいのですよ。」そう言いながらセリナさんが俺の腕をとってくる。

「いや、ママは、ではお義父さん(おとうさん)、お義母さん(おかあさん)と呼ばせて頂きます。」

「おぉ、嬉しいよ。」

「さぁ、ケイジ君、詳しいことは中でな。」ダンナーはそう言いながら、屋敷の玄関を潜った。

「おほほ、さぁ、こちらに宴の用意がしてありますよ。」そう言いながら、セリナさんが俺の腕に絡めようとした手を、カリナが払い除ける。

「旦那様のエスコートは私がやります。」


「おい、カリナ。」

「良いのです、お母様は旦那様にべたべたしすぎです。」


「あらあら、カリナったら。」


「おいおい。」

「良いのです。さぁ、こちらへ。」



「まぁ、食事をしながら話そうじゃないか。さぁ、君たちも遠慮なく座りなさい。」ダンナーさんはカリナ以外の嫁達も受け入れてくれているようだ。

「あら、そういえばお嫁さん、増えてますね?」セリナがニコニコしながら言う。


「あぁ、なんかなし崩しに増えてしまって、皆、挨拶しろ。」


「はい、主、あたしはミーニャ、主に最初に見初められたにゃ。」

「え、と、私、ムーニャです。ミーニャの妹です。」

「俺はメー「メームは良いから。」

「ちぇ、兄者は薄情だな。」

「私は、サラン、マスターに尽くすもの。」


「な、なぁ、ケイジ君、サ、サ、サ、サランと言うのはまさか。」

「サラマンダーの主体です。」


 サランは身にまとった炎の裾をつまみ、優雅にお辞儀する。


「お、おぉ、私は初めて見る。美しいのだな。」

「ありがとうございます、すべてはマスターの為。」

「貴方、鼻の下が伸びていますよ。」

「な、いや、そんなことはないぞ、さ、さぁ食事にしよう。」ダンナーが少し挙動不審になりながら言う。


 周りにいたメイドが、料理を取り分け始める。


「あ、忘れていた、カリナに土産がある。」そう言って俺は、虚無の部屋からパオとシャオマ、煮卵とチャーシューを取り出して机に置く。


 途端に、カリナの顔がパァっと明るくなる。

「旦那様、ありがとうございます。」


「んん? それはルズイやノサで流行っているパオかい?」

「えぇ、お父様、それを旦那様がアレンジした、海老パオです。」

「海老パオ?」

「それと、パオを旦那様が変化させたシャオマです。」


「そして、この卵とチャーシューは、本来ラメーンに入れるものですが、このまま食べても美味しいのです。」

「お父様と、お母様に食べて頂きたくて、旦那様にお願いしましたの。」


「おぉ、カリナ、嬉しいよ、では早速。」

「お待ちください、お父様、今カリナが付けダレを作ります。」

「付けダレ?」

「はい、パオは醤と酢とラー油で食すのが一般的ですが、旦那様が後2種類考案しましたの。」


「おぉ。それは興味深い。」

 カリナは、俺が出した酢と胡椒、醤、辛子を使って付けダレを作っていく。」


「こちらでパオを召し上がってください。」

「これは、シャオマ用です。」


「では、いただこうか。」

「えぇ、とても美味しそうです。」ダンナーとセリナはパオをフォークで刺し、付けタレに漬けて口に入れる。

「おほぉ、熱い!」

「あぁ、熱いですが、これは美味しい!」


 虚無の部屋は時間が止まっているからな、出来立てを提供できる。

「ケ、ケイジ君はマジックバックも持っているのか?」

 俺は、ちらりとカリナを見ると「少し違いますが、そのようなものです。」と答えた。

「おぉ、流石はケイジ君だ。」


「シャオマも食べてください。」カリナが嬉しそうに言う。


「この辛子が入ったものに漬けるのか?」

「はい。」

「これも熱そうだな。」

「ふぅふぅ、どれ?」

 途端に、口の中に肉汁が広がった。

 その後に、醤と辛子の風味が鼻に抜ける。

 咀嚼する度に、肉汁が口の中に広がる。


「これは、凄い。」ダンナーが脱力して言う。

「こちらの煮卵と、チャーシューも食べてください。」

「まて、料理長を呼べ。」


「カリナ、いつもこのような物を食べているのですか?」セリナさんがゆらりと立ち上がりながら言う。

「はい、お母様、旦那様は毎回これ以上のものを食べさせてくださいます。」


「ケイジ様、いっそ私を貰ってくださいませ。」セリナが恍惚の表情で言う.

「お母様、駄目です.」

「くっ。」セリナが凄く悲しそうな顔をする。


(それをやったら、親子丼、げふんげふん。)

 自重、自重。


 パオやシャオマ、煮卵とチャーシューの味と作り方は、無事、ゴーショウノ家の料理長に伝わったようだ。


 一通りの食事を終えて、俺は、やれやれと思いながらお茶を啜る。

「で、お義父さん、厳重な警備の意味は何なのですか?」

「あぁ、門番に何か聞いていないかい?」


「近辺の貴族の屋敷に、賊が入ったとか?」


「実は、ここ数週間の間に、この近所で何件も賊が侵入しているんだ。」

「何件も?」

「それも、娘がいる処ばかりでな。殆どが未遂で終わっているんだが。」

「?」

「一昨日、2軒先の織物問屋の家が襲われて、姉妹が攫われたそうなんだ。」

「営利目的ですか?」

「良くわからんが、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。」

「ん? 何か心当たりがあるのですか?」

「この町の遥か西に、エゴワカという皇都があるのだが、その第2皇子が、一般の者から妃を娶る

と御触れを出したと聞いている。」

「はぁ。」

「そこに、女子を連れていき、見初められたら、連れて来た者にも恩賞を与えるとかなんとか。」

「人迷惑な話ですね。」

「その通りなんだが、それが原因ではないかと思っているんだよ。」

「なるほど。」

「うちには、カリナがいる事になっているから、ここ数日中に狙われると考えているんだよ。」


「なるほど、理解しました、お義父さん。」


「ふふふ、ケイジ君がいると頼もしいね。」

「では、暫く滞在させてください、お義父さん。」

「何を言う、何時まで居ても構わないぞ。」

「えぇ、その間、ケイジ様の未知の味を堪能させて下さい。」

「お義母さん、色々危ない発言ですが?」

「ケイジ様は、私たちの知らない未知の味を知っているのでしょう?」

「え? と、お義母さん? 目が怖いです。」

「カリナに聞きました。」

「え? 何を?」

「オムライスとは何ですか?」

 俺はカリナを見る。

 しかしカリナは、思いっきり目を逸らした。


「お、お義母さん、賊の問題が片付いたら、ご案内します。」

「本当ですね、ケイジ様。」セリナさんはニコニコと笑いかけるが、目が笑ってない。

(怖えええええええ。)

「任せてください。お義母さん。」


「おほほ、楽しみです。」


 宴が終わり、俺たちは客室で寛いていた。

 

「俺の感だが、今夜、賊の襲撃がありそうだ。」


「主、どのタイミングで仕掛けるにゃ?」

「屋敷に入ろうとした瞬間かな。」

「全員、殺さないで無力化する。」

「判ったにゃ。」

「兄者、了解した。」

「マスターの仰せのままに。」


「んじゃ、襲撃されるまで寝るか。」

「はいにゃ。」

「にゃ。」

「判った兄者。」

「マスターの為に。」

「判りました、旦那様。」

 そして、いつも通りの寝姿を再現した。



「ケイジ様、屋敷に侵入者を確認しました。」紫炎の声で目が覚めた。

「あぁ、感じてる。何人だ?」

「5人です。」

「さて、ネズミ狩りと行くか。」


今日中にもう一話投稿できるかな?

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