やらかしの34
「主様、ムーニャはベカスカに行きたいです。」
ムーニャが俺に唐突に言ってきた。
「ベカスカ? 何故?」
「あそこでしか手に入らない紅茶が欲しいのと。」
「と?」
「孤児院に行きたいなって。」
「あぁ、良いよ。」アイリーンの事を思って少し躊躇したが、ムーニャの願いは純粋だった。
「旦那様、私も一度家に顔を見せに行きたいです。」
「おぉ、カリナ、親孝行してくると良い。」
「ミーニャも付いて行くにゃ。」
「兄者、俺も行く。」
「ケイジ兄さま、アヤは孤児院のお手伝いをします。」
「おぉ、アヤ、頑張れ。」
「はい、ケイジ兄さま。」
「紫炎。」
「はい、仰せのままに。」カリナの自宅前に繋がった。
「後で挨拶に行くと伝えてくれ。」そう言いながらカリナに口付する。
「・・はい、旦那様。」上気した顔でカリナが答える。
「紫炎、武器屋の前に。」
「はい。」
俺達はギルド横の武器屋の前に着いた。
「ムーニャ達、ちょっと待っててくれないか?」
「にゃ、主様、大丈夫にゃ!」
俺は、ギルド横の武器屋に入る。
「買い取りを頼む。」
「おぉ、ケイジ様、この度はどのような物でしょう?」
「おぉ、これだ。」俺は虚無の部屋からそれを取り出してカウンターに置く。
「おぉ倍速の剣と守りの盾+2、それに歌姫の指輪ですか?」
「あぁ、買取を頼む。」
「な、ダンジョン産のレア装備、初めて見ました。」
「査定よろしく頼む。」
「ははぁ。」
しばらく掛かりそうなので、ミーニャに紅茶を煎れてもらった。
「ミーニャの煎れる紅茶は本当に美味いな。」俺は紅茶を口にしながら言う。
「にゃ、主の為に精進してるニャ。」
「おぉ、ありがとうな。」そう言いながら俺はミーニャの頭を撫でる。
「にゃぁぁ、気持ち良いにゃぁぁぁ。」ミーニャが恍惚の表情になる。
「そうか、ほれ、ほれ、幾らでも撫でてやるぞ。」
俺はミーニャで暫く楽しんだ。
「ケイジ様。鑑定終わりました。」
「おお。」
「倍速の剣は200Gです。」
「うん。」
「守りの盾+2は、150Gです。」
「おぉ。」
「歌姫の指輪は、200Gになります。」
「全部で550Gでした。」
「良いよそれで。」俺は言う。
「んじゃ200GはBでよろしく、残りはカードに入れてくれ。」
「はい、仰せのままに。」
「お待たせしました、ご確認ください。」
「あぁ、信用してるから良いよ。」カードを受け取り、大きな袋を20袋、虚無の部屋に入れる。
「え? 袋が消えましたな?」店の親父が驚く。
「あぁ、俺の魔法だ。」
「おぉ、流石ケイジ様です。」
「んじゃ、また来るな。」
「ありがとうございました。」親父は深々と頭を下げる。
「ムーニャ、もう一軒付き合ってくれ。」
「はいにゃ、何も問題ないにゃ。」
俺達は魔石を扱う店に入る。
「おぉ、ケイジ様、お久しぶりです。」
「おぉ、また、魔石の買取を頼むよ。」
「おぉ、ケイジ様の魔石は上質ですので、何時でも買い取ります!」
「おぉ、嬉しいねぇ。」そう言いながらカウンターの上に魔石を出す。
「うわ、ちょっとお待ちください、受け皿を出します。」男が言いながらお盆のような物をカウンターに置く。
俺はその上に持っていた屑魔石を出す。
案の定、魔石はそこに乗らず周囲に零れ落ちる。
「これは、数のわりに金額になりませんが。」
「良いよ。ゼロ査定でも良い。」
「な、いえ、そう言う訳には。」
「で、これからが本番だ。」
「え?」
「受け皿は良いか?」
「は、ちょ、お待ちください。」そう言いながら新たな受け皿を出してくる。
俺はそこに普通の魔石を流しだす。。」
数百個の魔石がやはりお盆に乗らずに零れる。
「おぉ、これは凄い!」
「あと、これはボーナスで良いな。」そう言いながら上級魔石(実は特上)魔石をカウンターに置く。
「な!」
「あの、ケイジ様、これも買い取れるのですか?」
「おぉ、値段が折り合うのなら良いぞ。」
「頑張ります!」
魔石の鑑定を待ちながら俺は思う.
(上級魔石はあと数百個あるんだが、これは見せない方が良いだろうな。)
俺は、またミーニャが煎れてくれた紅茶を楽しんでいた。
「ケイジ様、お待たせしました。」
「おぉ、早かったな。」
「ふふふ、頑張りました。」
「おぉ、流石だな。」
「で、まず、屑魔石ですが、数が2135個でした。」
「おぉ、その倍以上は捨ててきたな。」
「な、勿体ないですね。」
「いや、別に良いよ。」
「おぉ、流石ケイジ様です。」
「さすがにこの数です、1060Gになりました。」
「おぉ、凄いな。」
「いえ、凄いのはこれからです。」
「魔石は976個ありました。」
「おぉ、結構あったな。」
「こちらが、3560Gになります。」
「はぁ?」
「どれもこれも、最高級以上の物でした。」
「お、おぉ、そうか。」
「そして、最後に出された物ですが。」
「うん?」
「通常の魔石5000個以上の魔力を含んだものでした。」
「ほぉ。」
「お売りいただけるのなら17000G支払います。」
「法外な額だな。」
「私も、今までにない取引額です。」
俺は、悪戯心を出してしまった。
「おっと。」そう言いながら魔石をカウンターに転がす。
「な、」店主が驚愕する。
「おぉ、すまない、手が滑った。」
「い、今のは、先ほどとは違う特上魔石ですよね。」
「え?そうだったか?」
「えぇ、ケイジ様も人が悪い、もう一個お持ちであれば、合わせて36000Gで買わせていただきます。」
「後数百個。」
「え?、ケイジ様、今何か言いました?」
「いや、200GはBでくれ。残りはカードに。」
「はい、仰せのままに!」
「お待たせしました。」そう言いながら店主が20袋を俺の前に出す。
「そして、こちらがカードです、お確かめください。」
「いいよ、信用している!」
「な、勿体ないお言葉。」
「じゃ、またよろしくな。」
「はい、お待ちしております。」
「ムーニャ、待たせたな。」
「いえ、主様、全然待っていないです。」
「んじゃ、ムーニャの好きなように買い物していいぞ。」そう言いながらギルドカードをムーニャに渡す。
「何を、どんだけ買ってもいいからな。」
「にゃ、主様、ムーニャはうれしいにゃ。」
「ここで待ってるからな、あと紫炎の加護もこの市場の中なら使えるらしい。」
「はい、主様、いっぱい仕入れてきます!」
「おぉ、メーム、ガードは任せるぞ。」
「な、兄者、請け負った!」
「さて、屋台を冷やかすか。」そう言いながら俺は目の前の屋台に向かう。
「ここは何の屋台だ?」
「おぉ、うちは唐揚げの専門店だ。」
「おぉ、唐揚げか。」
「突撃鳥のもも肉だが、ジューシーで美味いぞ。」
「おぉ、その心意気、良いね、1人前くれ。」
「あいよ。」即座に俺の前に数個の揚げた肉の塊が提供される。
「おぉ、4個もあるな。」
「それで60Bだ。」
「おぉ、良心的だな。」そう言いながら俺は60Bをカウンターに置く。
「ありがとうよ。」
「ラガーはいくらだ?」
「おぉ、20Bだ。」
(すごく良心的な店だな。)
そう思いながら20Bをカウンターに置く。
俺はその唐揚げを口にする。
(おぉ、生姜のような香辛料が効いて美味いな。)
(攻撃力が1上がりました。)
「な、これもか?」
「ん?なんだ兄ちゃん?」
「え?いや、美味いなって。」
「へへへ、ありがとうよ。」
「いや、50個ほど包んでくれ。」
「え?」
「無理か?」
「いや、750Bだぞ。」
「おぉ、此処に置くぞ。」
「な。」
「ちょっと他も見てくるから、用意しておいてくれ。」
「おぉ、ありがとうな。」
「串焼きの店はあっちか。」
相変わらず鼻を衝くいい匂いだ。
「おぉ、兄ちゃん、食っていくか?」
「いや、50本ほど包んでくれ。」
「え?500Bだぞ。」
「おぉ、此処に置くぞ。」
「おぉ、暫くかかるぞ。」
「あぁ、少し他の店を見てくるから、用意しておいてくれ。」
「おぉ。わかった。」
「さて、ほかにめぼしい屋台は。」俺はその屋台に気が付く。
「おぉ、あそこはクッキーの屋台だな。」
そう思いながら、その屋台に行く。
「いらっしゃいませぇ。」屋台の店主が言う。
「おぉ、試食は出来るか?」
「はい、こちらに。」そう言いながらクッキーの破片が入った器を露店の店主が出してくる。
「おぉ、どれどれ。」俺はそれを口にする。
「美味いな。」
「ありがとうございます。」
「店主。」
「はい?」
「これを100個くれ。」
「え?」
「いくらになる?」
「は、え、200Bですが。少しお時間をください。」
「どのくらい掛かる?」
「今からなら1刻です。」
「んじゃ、ここに代金は置くぞ、一刻したら貰いに来る。」
「へい、お待ちしておりやす。」
「主様。買い物終わりました。」ムーニャがおれの前に来ていう。
「おぉ、ムーニャが欲しいものも買えたのか?」
「え?いぇ、あの」
「ん? ムーニャが欲しいものは買えなかったのか?」
「私の我儘ですから。」
「おいおい、ムーニャ、俺は誰だ?」
「え? あの? ケイジ様です。」
「んで、ムーニャが欲しいものは何だ?」
「バ、バハローのお肉です。」
「それ、いくらだ?」
「1kgで1Gします。」
「ほしいだけ買っていいぞ。」
「え?主様。」
「たとえ1000Gでも大丈夫だ。」
「にゃ?」
「好きなだけ買っていいぞ。」
「え?大丈夫にゃ?」
「ムーニャだけに教えるけど、今回の魔石の買取額は、40620Gだ。
「にゃ?すごい。」
「だから、遠慮しないで良いぞ。」
「主様。」
「ん?」
「大好きにゃ。」ムーニャは飛びついてきて、俺のほほに口付すると店に戻っていった。
「ミーニャ。」
「はいにゃ。」
「紅茶をくれ。」
「任せるにゃ。」
俺は周りを見渡す。
(すごい活気だな。)俺は思う。
「主、お待たせにゃ。」
「おぉ、ミーニャ、サンキュウな。」
「主の為にゃ。」
俺はミーニャが煎れてくれた紅茶を飲む。」
「ふわぁ、美味いな。」
俺はミーニャの頭を撫でる。
「うにゃ、気持ちいいにゃ。
「ミーニャ、そのまま頑張れ。」
俺は、ミーニャの頭を撫でまわした。
「うにゃにゃ。」
ミーニャは恍惚の表情を浮かべていた。
「さて、色々準備は終わったかな。」俺はそう言うと、屋台に向かった。
「おぉ、兄ちゃん、これだ。」
「おぉ、サンキュウな。」
「今後ともごひいきに。」
「おぉ。」俺はその包みを虚無の部屋に入れる。
「おぉ、兄ちゃん、用意できてるぜ。」
「おぉ、ありがとうな。」その前にあった包みも虚無の部屋に入れる。
「おぉ、用意できてますよ。」
「あぁ。ありがとうな。」
「さて、孤児院に行くか。」
「主様、ご案内します。」ムーニャが俺の前を歩く。
「あ、ミーニャ姉ちゃんとムーニャ姉ちゃんだ。」
「げ、メームも居やがる。」
「おまえら!。」
「ケイジ兄ちゃん、待ってた!」
「お土産何?」
「おぉ、まず寮母さんに挨拶してからな。」
「こっちだよ。」
「あたしが案内する。」
「いや、俺が案内する。」
「おいおい、喧嘩するな。」俺は目の前の子供の頭を撫でる。
広い場所ではないので、すぐ寮母さんたちがいる部屋に到着する。
「こんにちは~。」
「あら、ケイジ様。」
「お久しぶりです、ケイジ様。」
「あたしをお嫁にもらってください。」
なんか、雑音が聞こえるが、俺はそれを無視した。
「とりあえず、子供たちに餌、ゴホン、食事を。」
そう言いながら、目の前の机に唐揚げや串焼きを出す。
「すげぇぇ、美味そうだ。」
「マジでケイジ兄ちゃん神!」
「食べていいの?」
「おぉ、いいぞ。」
「やったー!」孤児たちがそれに群がる。
「仲良く食べろよ。」
「ケイジ様、施し感謝いたします。」
「いや、この程度。」
「シスター達にはこれを。」そう言いながらクッキーを渡す。
「子供たちに見つかるとなんですから。」
「ありがとうございます。」
「それと、これも。」俺は虚無の部屋から200G分のビットコインが入った袋を出す。
「どうぞ、お納めください。」
「ケイジ様、いつもいつも普請をありがとうございます。」
「なに。これくらい。」
「よろしければ、わたくしたちを夜伽に使ってくださいませ。」
「いや、ありがたい申し出ですが、間に合ってますので。」
「え~残念です。」
「こいつら、あわよくば俺の嫁になろうとしてるな。」
「ケイジ様、いつでも申し出てくださいませ。」
「はい、絶対にしません。」
「あん、いけず。」
「いけずじゃねーよ。」