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やらかしの33

「ラヒール。」何十回目になるのか数えていないが、俺は呪文を唱えた。


 途端に周りで起こる、歓喜の声。

「あぁ、息が楽になった。」

「俺の、手が元に戻っている。」

「おぉ、少し前まで死にかけていた子供が走り回っている。」

「あああ、治らないと言われた病気が治ったような気がする。」


「皆のもの、聞け!」

 その声にそこにいた全員が注目する。

「お前達の病や怪我は、此処に居るオッケー神の生まれ変わりのケイジ様が治された。」ヒドラが声高々に宣言する。


 そこにいた者達は、暫く声を失った後、皆歓声を上げる。

「おぉ、ケイジ様。彼方こそ生き神様です!」

「おぉ、貴方様に忠誠を誓います。」

「どうぞ、そのおみ足で私の後頭部を御踏み下さい。」

「いえ、どうぞ私の頭を。」

「いえ、私を汚くなじってください。」




「ヒドラ。」

「はい、ケイジ様。」

「なんか、別方向に向かっている気がするんだが。」

「滅相もございません。」

「お前、俺を貶めようとしてないか?」

「まさか、私はケイジ様に身も心も捧げました。」

「え?」

「は?」

「俺、お前から何も受け取ってないぞ。」

「え?」

「いや、今まで俺に全てを捧げると言った者は、俺に自分の生を渡してきたんだが。」

「な、そそそ、そうでした。」

「へ?」

「ケイジ様のお力が強大なので、そのようなものは必要ないと思っておりました。」

「いや、別に良いけどな。」


「いえ、けじめです。」


「良いよ、ヒドラ、信用する。」


「な、そんな勿体ない。これをお納めください。」そう言ってヒドラが俺に虹色に光る物を差し出す。

「おぉ、綺麗だな。何だ、これ?」

「私の心臓です。」


「おぃおぃ、そんなもの受け取れないぞ!」

「是非お納めください。」

「嫌だ。」

「え?そんな。」

「俺を、鬼畜にしないでくれよ。」


「仲間の心臓を手に握る主って、どんな鬼畜だよ。」

「そんな、繋がりは要らないよ。」


「では、何を?」

「信頼。」

「え?」

「それだけで良いよ。」


「つぅ。」ヒドラは顔を赤くした。

「?」(そう言えば、まともにヒドラの顔を見た事無かったな。)

 俺はそう思いながら、ヒドラを見る。


(おぉ、今まで気が付かなかったが、ヒドラは人間に近い容姿なんだな。)

(きっと、鳥系の魔族なんだろうけど、髪の毛が孔雀の羽に似ている以外は人の女性とあまり変わらないんだな。)俺は思う。


「け、ケイジ様。」

「なんだ?」

「信頼とは?」

「心の繋がりかな?」

「心の繋がり?」


「あぁ。俺はそう思ってる。」

「それは、どのようにすれば?」

「いや、俺にも解んないよ。」



 ヒドラはそこで固まった。

「あれ? フリーズした?」


 俺は気にしない事にして、周りの元患者に手を振る。


「お見事です、ケイジ様。」

「おぉ、イース、ご苦労だったな。」

「いえ、敬愛するケイジ様のお力になれるのであれば、造作もない事です。」

「患者はこれで全部か?」

「はい、感染者は今ので最後です。」


「おぉ、これでお役目御免か。」

「はい。」

「ん?」

「何でしょう?」


「ウヨチクハはどうした?」

「おぉ、彼の者は隔離したままです。」

「いや、駄目だろう、最初に治して、他の奴らの治療にあたらせないと。」

「おぉ、気が付きませんでした。」


「いいよ、其処に連れて行ってくれ。」

「はい、ケイジ様。」

「あの、ヒドラ様は?」

「ん? 固まっているから、放っておこう。」

「御意。」



**********************


「こちらです。」

「何だ此処。」

「は?」

「最低の環境だな。」

 空気が滞留し、じめじめとした湿気が身体に纏わり付く。

「これじゃ、病気が治るどころか,もっと深刻になる!」


「改善しろ。」

「御意。」


 俺は薄暗い廊下を歩き、その部屋の前に着くと、ドアを開けた。


 そこには、明らかに鳥系の魔族であろう者がベットに寝ていた。


「ゲホゲホ、何者だ。」ベットの上にいた魔族が言う。

「おぉ、俺はケイジだ、よろしくな。」

「な、たかが人間風情が、私に声を聞かせるな。」

「ウヨチクハ、このお方に敵意を向けるな!」イースが俺の前に出て言う。


「な、イース様、何故人間などを擁護するのですか?」


「ウヨチクハ、此処に居るケイジ様は最早、我らが叶わぬお方だ。」

「イース様、耄碌なされたか?」

「おぉ、ウヨチクハ、ケイジ様に敵対心を持つんじゃない!」そう言いながらイースはウヨチクハを抱きしめる。

「な、イース様。」

「おぉ、イースよ、俺に敵対心を持って消滅するのは、レベル25までらしいぞ。」

「な、そうなのですか?」

「あぁ、そうらしい、今のところは。」


「まぁ、ウヨチクハ、俺の話を聞く事は出来るか?」

「ウヨチクハ、聞き入れなさい。」イースが言う。

「な、イース様が、そうおっしゃるなら。」


「おぉ、良かった。」俺はにっこりと笑う。

「んじゃ、ウヨチクハって言ったか?」

「な、呼び捨てか?」

「ウヨチクハ、ケイジ様の御前だ。」

「な、イース様?」

「治して良いか?

「は?」

「ん?通じなかったか?」

「ケイジ様、よろしくお願いいたします。」

「イース様? 何を?」


「ウヨチクハ、お前の病を治してやるよ。」

「な?たかが人間が?治す?わははは、良い冗談だ。」

「ウヨチクハ、ケイジ様なら可能だ。」

「はぁ、イース様、貴方までそんな世迷言を。」


「控えよ!」後ろからヒドラが現れた。


「な、ラドーン様。」ベットの上でウヨチクハが首を垂れる。

「此処におられるケイジ様は、我が身も心も捧げたお方だ。」

「な、ラドーン様?」

「ヒドラだ。」

「え?」

「私は、此処に居るケイジ様よりヒドラを拝命した。」

「な、たかが人間に?」

「ウヨチクハ、控えろ!」ヒドラは怒鳴る。

「な、ははぁ。」


「ウヨチクハよ、此処に居るケイジ様は私の夫だ。」

「え?」

「は?」

 ウヨチクハと俺が同時に声を上げる。


「ななな。」混乱するウヨチクハ。

「ちょっと待て、何時からそうなった?」

「何を言う、御主人様、心の繋がりとはそう言う事であろう?」


「おぉ、素晴らしい。」イースが俺を見て破顔の笑顔になる。

 ヒドラは俺の前に来ると、すごく良い笑顔で俺に口付をする。


「・・・・・」俺の感覚がマヒする。

(凄い、カリナやアイリーンの口技が児戯に感じる。)

(口付だけで、この威力か。)俺は思いながら、その技を堪能した。

 

 俺の口から、唇を離すと

「さぁ、この者に癒しを。」ヒドラが言う。

「ラヒール。」俺が唱える。


「ふわぁ。」ヒドラが恍惚の表情を浮かべる。

 この術は俺の周りの全てのものに癒しを与えるらしい。


「おぉぉっぉ。」ウヨチクハも恍惚の表情をしている。

「つぅっぅぅぅ。」イースは何かを耐えているようだ。


 俺の魔法の効果が消えると、其処にウヨチクハが土下座していた。


「数々のご無礼、失礼いたしました。。」

「おぉ、気にしていないから。」

「いえ、この度のご無礼、私もケイジ様の端為としてお傍に。」

「要らぬ!」ヒドラが言う。


「え?でも?」

「私がいる。」

「な、仰せのままに。」


「おい、何仕切ってるんだ?」

「おぉ、ご主人様、妻として当然の務めだ。」

「おい、俺の妻は複数いるぞ。」

「あぁ、大丈夫だ、その辺は弁えておる、先妻様には敬意を払うぞ。」


「いや、そう言う事じゃなくて、何で俺の妻?」

「信頼を得る最良の方法だと認識した。」


「俺の気持ちは?」

「何だそれ?私の愛を受け入れない理由にはならんぞ。」

「何、その重い理由。」


「はぁ、良いよ、ヒドラ、俺に仕えてくれ。」

「はい、ご主人様。」



 色々な展開についていけないと感じた俺は、現状を把握することにした。


 まず、俺のステータスか。

(そう思って、俺は、自分のステータスを見る。)


 名前:タダノケイジ

 レベル:9999+α

 HP:9999/9999

 MP:9998/9999

 力 :9999

 防御:9999+α

 速さ:9999+α

 魔法:全魔法無詠唱可

 スキル:全スキル発動可

 加護:全精霊の加護

 加護:運命神の加護



「はぁ、チートってレベルじゃないよな。」

「結構高位の魔法のラヒールの消費魔力が1って。」


「ヒドラ、お前のレベルはいくつだ?」

「な、ケイジ様ならお見通しだろう。」

「見えるけど、確認だ。」

「はい、私はレベル195です。」


「うん、その通りだな。」

「ご主人様、今は貴方が愛おしく感じます。」ヒドラが妖艶な顔をして俺を抱きしめる。


「ヒドラ。」

「はい、ご主人様。」

「俺の妻達が、お前を受け入れなかったらどうする?」


「その時は。」

「その時は?」

「私は、影に潜り、ご主人様をお守りします。」


「ふふ、ヒドラ。」

「はい、ご主人様。」

「きっと、大丈夫だろう。」

 俺はヒドラの頭を撫でながらそう言った。




「はぁ、何で済し崩しに俺の嫁が増えていくんだ?」

「精霊様のお導きです。」

「悪意しか感じないんだが。」

「精霊様のお導きです。」

「紫炎。」

「はい?」

「棒読みになってるぞ。」

「セイレイサマノオミチビキデス。」

「いや、棒読みしろとは言ってない。」

「気のせいです。」



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