表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
31/203

やらかしの31

俺は、いつものように俺にまとわりつく嫁達の中で目覚めた。

(今は、気温が低いから気持ち良いけど、夏になったら地獄になりそうだな。)

 そう思いながら、身支度を整える。

 嫁さん達も、もそもそと起きだし、身支度を整え始めた。


(少し早いが、華厳の事だ、もう準備万端だろう。)そう思いながら、嫁さん達と華厳の店に行く。


「おはようございます!」

「お疲れ様です。」

「ケイジ様、お早うございます。」

 店にいた魔族たちが、元気に挨拶してくる。

「おぉ、おはよう。今日も励めよ!」

「「「「はい!」」」」

 うん、元気な事は良い事だ。

 厨房に入ると、華厳が麺を仕込んでいた。

 俺は、昨日仕込んだ鍋を確認する。

 豚骨スープには、油が固まって浮かんでいたので、そっと取り除いた。

 チャーシューと煮卵を漬けた鍋を見ると、良い具合に浸かったようだ。

「うん、これなら美味いラメーンが食えそうだ。」


 暫くすると、華厳が俺に気付き挨拶してくる。

「おぉ、ケイジ様、お声をかけてくれれば宜しいのに。」

「いや、お前が真剣に麺を打っていたから、邪魔したくなかったんだよ。」

「おぉ、お心遣い痛み入ります。」

「麺は出来たか?」

「はい、此方に。」

「うん、美味そうだ。それを固めに茹でるとどのぐらいだ?」

「二呼吸です。」

「よし、今、スープとたれを用意するから、合図したら麺を茹でてくれ。」

「御意。」

 俺はチャーシューを取り出すと、1cmの厚さで切り分ける。

 そして、豚骨を仕込んだ鍋を沸騰させる。


「華厳、麺を頼む。」

「御意。」

「俺の嫁達と、店の従業員の分でよろしくな!」

「御意。」

俺は、バーナーに火を付けると網を乗せ、チャーシューをその上に乗せた。

 俺の横では、ムーニャが、興味深そうに見ている」

「主様、そのお肉を焼くのは何故ですか?」

「少し焦がすと、味に深みが出るんだ。」そう言いながら、焙っていないチャーシューをつまみ、ムーニャの口に入れる。

「これは、美味しいです。」ムーニャがうっとりとして言う。

 俺は、チャーシューの端を少し切って、網に乗せ焦げ目をつけた。

 そして、それをムーニャに食べさせる。

「にゃ、さっき感じた脂っこさが無くなって、香ばしさが鼻に抜けます。」

「そう言う事だ。」

「さ、流石、主様です。」

「ムーニャばかりずるいです。」

「いや、もう少しすればラメーンが完成するんだが。」

 頬をぷぅっと膨らますミーニャの顔を見ると、俺はなんだか可笑しくなって、チャーシューの切れ端を網にの推せた。

「ほれ、お前達も食ってみろ。」

 そう言いながら、嫁達の口の中に焙ったチャーシューを放り込む。

「にゃ、美味しいにゃ。」

「旦那様、是非作り方を教えてください。」

「兄者、美味い。」

「ケイジ兄さま、アヤも作り方を知りたいです。」

「おぉ、後でな。」


鍋が沸騰したので、チャーシューの鍋から煮汁をおたまですくい、どんぶりに入れる。

 更に、沸騰したスープの鍋からスープをおたまですくい、網でこしながらどんぶりに入れる。

「良し華厳、麺を湯切りして、どんぶりに入れろ!」

「御意。」

 そうして、此処に居る人数分のラメーンを作った。

「あぶったチャーシューは2枚ずつな。」

「あと、煮卵もトッピングだ。」


「さぁ、試食するぞ。」

 いつの間にか集まってきた魔族たちに言う。

「いただきます。」そう言って俺は麺を啜る。

「おぉ、それなりに食える味だな。」

「おぉ、ケイジ様、これは美味いです。」

「卵はどうだ?」俺は卵を箸で割る。

 卵の表面は薄っすらと茶色みがかっており、割った卵の黄身は半熟であった。

 その卵を口にすると、薄っすらと黄身に味が染みていた。

「うほ、美味い。」

 チャーシューも良い具合に味が染みていた。

「いやぁ、これは美味いなぁ。」

「はい、ケイジ様、これは至極です。」

「おぉ、マジで美味い。」

「これ、賄いなら倍働けるよ。」

「いや、これが賄いなら給料要らないから、終日働く。」

「いや、お前ら、ちゃんと休めよ。」

「主様。美味しいです。」

「にゃ、主、マジ神にゃ。」

「兄者、美味い。」

「はぁ、孤児院の皆に申し訳ないです。」

「だ、旦那様、当家の料理人にもご指導ください。」

「カリナは何時でも食えるぞ。」

「父や母にもこの味を味わって頂きたいのです。」

「カリナは優しいな。」

「いえ、そんな。」カリナが頬を染める。

(まぁ、異世界の暴力的な味だもんな。)俺が思う。



「たれをチャーシューの煮汁だけじゃなく、別の物も考えれば勝負できそうだな。」

「ははぁ、調理担当の者たちと考えます。」

「ふふ、華厳、塩や噌の味も、期待しているぞ。」

「おぉ、ケイジ様の味覚に合うものを考えます。」

「華厳、期待しているよ。」

「御意。」


「ちょっと出てくる、皆はここで待っててくれ。」

「はい、主様。」

「はいにゃ。」

「お待ちしています、旦那様。」

「ケイジ兄さま、アヤは孤児院のお手伝いに行きます。」

「兄者、俺も孤児院を手伝いに行く。」

「おぉ、よろしくな。」





 さて、ずっと引っかかっていた課題を片付ける事にしよう。

 俺はそう思いながら、孤児院の裏の広場の隅っこに行く。

 その奥は森と言っても良いほど、樹木が密集している場所だった。

 俺はそこに足を踏み入れた。

 俺の鼻を森林特有の匂いが刺激する。

 しばらく歩くと一本の太い木の前に出る。

 その木は、樹齢1000年を軽く超えているだろう。

 その幹は、大人数人で囲まなければ届かない程の太さであった。


 俺はその木に向かい言う。

「そこにいるんだろう、出てこい。」






暫くすると、その木の後ろから影が現れた。

「マスター。」

 そこにはサラマンダーの主体がいた。

 その顔は涙で濡れ、本来変わらぬはずの姿は、なぜかやつれたようになっていた。

「あれからずっと着かず離れず着いてきていたな。」

「マスター、あの時から私の心はぽっかりと穴が開いたままだ。」

「私は喪失感で、自分が削れていくのを感じた。」

「マスター。」

「・・・・」

「マスター、貴方は魔族に試しの機会を与えています。」

「あぁ。」

「マスター、私に、今一度試しを与えてください。」そう言ってサラマンダーは首を垂れる。







「・・・・、ふ、良いよ。許す。」

「おぉ、マスター、ありがとうございます。」

「で、どうするんだ。」

 サラマンダーは俺に近づく。

 そして、俺に口付をしながら、俺の指に指輪をはめた。

「なっ。」

「ふふふ、マスター、愛しています。」涙を流しながらサラマンダーが言う。

 俺は、指輪を外そうとしたが、外れる気配は無かった。

「ふぅ。」

「マスター。」

「お前の愛は呪か?」

「いえ、忠誠の証です。」

「またお前が、俺の睡眠中にガードをしてくれるのか?」

「はい、マスター。」

「そのガードを破る者がいたら?」

「き、」

「き?」

「きっと、マスターと共に散ります。」

「ふ。」

「マスター?」

「負けたよ。」

「マスター?」

「サラン、その時は俺が守ってやるよ。」

「な?」

(ケイジ様、精霊種への求婚確認しました。)


「お帰り、サラン。」

「あぁぁ、マスター。」サランは涙を流しながら俺に何度も何度も濃厚な口付をする。

 今気づいた、サランの口付も、物凄く甘い。

(なんだ、サランも俺の、魔力に適合しているんだな。)そう思いながらサランの口中を堪能した。






「マスター。」俺の胸の上でサランが言う。

「ん?」

「頼みがある。」

「何だ?」

「あの時、マスターが縁を切った者達に、試しを許してやってくれ。」

「あいつらがそう望むならな。」

「マスター。」

「何だ?」

「望まない訳がない。」

「だが、俺からは行かないぞ。」

「マスター。」

「うん?」

「ツンデレ?」

「絶対に違う!」

「ふふふ。」

「?」

「マスター。」

「何だ?」

「愛している!」

「知ってる。」

「ふふふ。」

「?」

「嬉しい。」サランは俺に濃厚な口付をした。


「マスター、お慕いしております。」

「あぁ、サラン、今まで通りで良いぞ。」

「いえ、そう言う訳には。」


「あぁ、お前の気持ちが重いよ。」

「ふふふ、マスター、次元にも干渉を。」

「いや、サラン、怖い。」

「ふふふ。二度と切れません。」


「おぉ、サラン、お手柔らかに。」

「いえ、全力で行きます!」

「おぉ、サラン、適当にな。」

「いえ、全力で行きます!」

「おぉ、よろしくな。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ