やらかしの27
窓から入る朝日を受けて俺は目覚める。
相変わらず、嫁達が俺の周りにいる。
いつもと違うのは、サランがいない事だ。
いや、サランは何時も指輪に入っていたから、体勢は変わらない。
しかし、俺はそう感じた。
俺は、朝風呂を楽しむ事にした。
嫁さんずはまだ寝ているから、一人で温泉を味わう。
「ふぃ~、朝風呂は良いねぇ。」温泉に浸かりながら俺は独り言を言う。
「それはようございます。」風呂場に声が響く。
「何だ、カスリーと言ったか?」
「はい、御前に。」
「何だよ、こんな朝っぱらから。」
「ラドーン様がお待ちです。」
「おぉ、こんな朝っぱらから会ってくれるのか。」
「はい、ヤミノツウ城でお待ちしております。」
「いや、判ったよ、今すぐ準備をする。」
俺は風呂から上がり、身支度を整えた。
「カスリー、お前も来い。」
そう言って、俺はヤミノツウまで虚無の部屋を繋ぐ。
「な、これは。」
「俺の能力だ。」
「な、ケイジ様はこれ程の能力が・・・」
「さて、ひとつ警告がある。」
「警告ですか?」
「あぁ。レベル30以下の者が俺に敵意を向けたら、その場で消滅するから、それを周知してほしい。」
「いや、無理そうですけど、一応伝えます。」
「あぁ、又虐殺になるのか。」
俺達はヤミノツウ城に入った。
そこには、数多くの魔族がいた。
「お前達、此処に居るケイジ様は、盟主のお客様だ、何があってもこのお方に敵意を向けるな。」カスリーが、其処にいる者達に伝える。
「がはは、カスリーお前、臆したか。」
「な、カトル様、控えてください!」
「がはは、たかが人間に控える?わはは、ありえんな!」
「カトル様、このケイジ様は・・」
「わははは、俺の激流に捕まえたぞ。」俺の身体を風の激流で捕らえたカトルが言う。
「あー、カトルだったか?」
「何だ?」
「今なら、全てを不問にする。」
「俺を開放しろ。」
「わははは、命乞いか?」
「いや、最後通告だ!」
「わははは、俺の激流に捕まってそれを言うのか?」
「ふう、ラドーンの教育もたかが知れるな、カスリー、もう良いか。」
「な、ケイジ様、今暫く、お慈悲を。」
「ふぅ。早くしてくれ。」
「御意。」
「カトル様。此処に居るケイジ様は、シンを滅したお方です。」
「はぁ?たかが人間がか?」
「カトル様、このお方は、隠蔽を使っておりません。」
「それがどうした。」
「このお方のレベルが判りますか?」
「ふん、そんな物。」
「な、見えん。」
「な、何故だ?」
「ケイジ様のレベルは、我々を凌駕しています。」
「な、そんなことはありえん。たかが人間だぞ!」
「カトル様、このお方は、精霊様のご加護を賜っています。」
「な、精霊様の?」
「ふはは、ただ隠蔽が得意な、人間風情だろう。」
「カトル様、今一度お願いいたします。ケイジ様への敵意をお納め下さい。」
「カスリー。」
「な、はいケイジ様。」
「俺がこいつを滅したら、ラドーンは俺に敵対するかな?」
「いえ、ラドーン様はこの光景をご覧になっておりますので、恐らくそれはないかと。」
「そうか。」
「カトルと言ったか?」
「何だ人間。」
「俺はケイジだ。よろしくな。」
「人間如きが、俺に口をきくな。」
「ふぅ、では、10秒やる。己の人生を悔め。」
「はぁ、何を言ってる?」
「10、9、8,7」
「何をカウントしているんだ?お前の死か?」
「ふぅ、カウントを止めてやるよ、俺の死じゃない、お前の確実な死だ。」
「カトル様、最後のチャンスです!ケイジ様に謝罪を。」
「ふふ、カスリー、お前に免じて、今、俺に謝罪したなら、カトルの無礼を不問にしてやるよ。」
「おぉ、ケイジ様、恩にきます。」
「カトル様、いや、カトル。今すぐ此処におわす、ケイジ様にひれ伏し、謝罪しろ!」
「な、カスリー、貴様!」
「カトル、最後のチャンスだと知れ、お前の命は、此処に居るケイジ様に握られている事を解れ!」
「ふははは、たかが人間にか?」
「あぁ、カトル、わが友よ、現実を理解しろ!」
「・・・」
「カトル。」
「ふははは、カスリー、あり得ないだろう?たかが、たかが人間だぞ!」
「我ら魔王は、レベル80を超えるのだぞ!」
「人間どもは、精々レベル13前後で頭打ちではないか!」
「特異な者でも精々レベル20だ。」
「たかが人間、我らのレベルを超えるなぞありえん。」
「その為に、俺に対する力の試しを一回だけ許してるんだがな。」
「カトルと言ったか?一度俺の試しを受けたらどうだ?」
「カトル・様、お受けになった方が、いえ、是非お受け下さい!」
「カスリー、何でこんな人間の肩を持つのだ?」
「カトルと言ったか?」
「何だ、人間。」
「カスリーは、お前が好きだから、死んでほしくないんだと思うぞ。」
「な、ケイジ様!」
「ふははは、俺はカスリーなどなんとも思っていないぞ。」
「うわぁ、今此処でそれを言う?」
「カトル、私は貴方を愛している。」
「おぉ、カスリー、俺はお前など愛する事はない。」
「そうか。残念だ。」
「おぉ、カスリー、其処にいる人間に愛を誓えば良いんじゃないか?」
「つぅ。」
「お似合いだぞ。」
「カトルお前最低だな。」
「な?未だ俺の激流に捕らえられたままのお前が言うか?」
「あ?これか?」
「解!」
「激流が霧散する。」
「な、何が?」
「捕縛って言うのはな、こうやるんだよ。」
「縛!」
カトルの前に複数の捕縛陣が現れる。
「な~。」カトルが捕縛される。
肉体を捕縛する、肉欲の陣
精神を捕縛する、魂喰いの陣
時間を捕縛する、時喰いの陣
存在を捕縛する,暇の陣。
それらの陣がカトルの存在を消す。
「お前は、存在が、存在しない処に行き、未来永劫苦しむ、頑張れよ。」
「それをクリアしたら、きっとオッケー神に近い存在になれるんじゃね。」
「な、な、な、カスリー、愛しているから、其処にいるケイジを止めてくれ。」
「ふふふ、カトル、安らかに!」
「な、カスリー、カスリー」
「私に愛を教えてくれて、ありがとう。」
「カスリィィィィィィ。」
長い絶叫を残し、カトルは異次元に消えて行った。
「ラドーンの配下を滅して、問題ないのかな?」
「ラドーン様は全てを把握していらっしゃるので大丈夫かと。」
「まぁ良いや、面倒くさかったら、滅ぼせば。」