やらかしの26
「全ては、ラドーンに会ってからか。」
「御意。」
それから数刻、食事を堪能した。
「さて、お前達、腹は一杯になったか?」
「はい、ケイジ様、私もここにいる者も皆満腹です。」
「では、ヨイチ。先ほど言ったように、スナに子供たちが遊べる施設を作れ。」そう言って俺は紫炎に虚無の部屋を繋げさせる。
「はい、ケイジ様」そう言いながら、ヨイチは俺に口付する。
「今は、これでフル充電です。」そう言いながらヨイチが虚無の部屋を渡る。
「この場にいる者を代表して、某がお暇の挨拶をつかまります。」
水龍と同じ龍族の男が言う。
「お前は地龍か?」
「ふふふ、流石はケイジ様、隠蔽など通用しないのですね。」
「地龍なら都合がいい。ヨイチを助けてやってくれ。」
「な、拝命いたしました。」
「では、スナの管理任せるぞ。」
「御意。」
そう言うと、其処にいた25人が虚無の部屋を渡った。
「ふ、意外と心に来るんだな。」俺は去った4人を思って言う。
「あぁ、華厳、これは今日の飲み代な。」
「な、そんな、頂けません。」
「何言ってるんだ、商売だろう。取れ。」
「ですが。」
「良いから取れ。」
「は、ではありがたく。」俺は華厳に200G分のBが入って袋を渡す。
「さて、ラドーンに合うにはどうすれば良い?」俺は華厳に尋ねる。
「いえ、ラドーン様の城の前で受付をすれば、何時でもお会いできます。」
「は?」
「事実です。」
「ちょっと気が抜けた。」
「華厳。」
「はい、ケイジ様。」
「俺が本気出したら、ラドーンはどの位持つ?」
「え?」
「ん?」
「ケイジ様の本気ですか?」
「あぁ。」
「2秒ぐらいかと。」
「おぉ、それが判る華厳も凄いな。」
「いえ、ケイジ様のお力の片鱗が判るにすぎません。」
「いや、華厳、凄いよ。」
「お褒めにあずかり光栄です。」
「華厳。」
「は。」
「お前が今後、道を違えないように教えておくよ。」
「はい、ケイジ様。」
「俺のレベルは9999だ。」
「は?」
「9999だ。」
「それは、人族、いえ、全ての種族を超えています。」
「精霊様が気まぐれで、与えてくれた。」
「なんと。」
「そう言う事だから、よろしくな。」
「な。」
「あぁ、出来れば、普通に接してくれ。」
「は、はい、仰せのままに。」
「で、ラドーンの受付はどこでやってるんだ?」
「ヤミノツウ城の正門です。」
「ふ~ん、今からでも間に合うのか?」
「いえ、受付は朝7刻から半刻で満杯になります。」
「え~じゃぁ今日は無理か。」
「ケイジ様、今から我が部下を並ばせますので、明日、朝一で謁見が可能かと。」
「おぉ、華厳、流石だな。」
「いえ、全てはケイジ様の為に。」
「んじゃ、このままここで待たせてもらうか。」
「いえ、ケイジ様、此処では碌な歓待が出来ません。ラバオシで温泉を堪能された方が良いかと。」
「ラバオシか。」
「は。」
「紫炎、ラバオシに繋げ。」
「御意。」
俺は嫁さん達を連れて、ラバオシの温泉宿に入った。
俺は宿のカウンターで露天風呂の貸し切りを申し込み、男二人、女4人の料金と、お子様2人、大人4人のお楽しみの料金を支払う。
「ふいー。極楽だ。」俺は温泉に浸かる。
ミーニャとメームは躊躇なく温泉に入った。
意外な事にアヤも躊躇しなかった。
「スラムのお風呂事情を考えたら楽勝です。」と言っていたが気にしないでおこう。
問題はカリナさんだった。
貴族のお姫様で、お世話にメイドが付く存在。
きっと躊躇するんだろうなと思ったが、彼女も何の躊躇もなく生まれたままの姿で温泉に浸かり、俺の傍に来た。
「カリナ、平気なのか?」
「凄く恥ずかしいですが、ケイジ様の嫁の務めです。」気丈に言うカリナを俺は抱き、口付をする。「あ、ぁ、旦那様。」
俺は、カリナの口の中を堪能する。
「カリナの唾液は凄く甘い。」
(いや、変態って言うな、事実だ。)
(魔力を持った者の体液は、適合する者にとって、その魔力が直接流れ込んでくるものだ。)
(それは、味に変化されて、感じることになる。)
(甘く感じるのは、その物の魔力が、俺に適合しているからだ。)
「あぁ、主様のお力になれるのは本望です。」
カリナは更に俺の口を吸う。
「あぁ、カリナ。お前の愛を感じるよ。」
「今、此処に居る不穏分子を、粛清できるよ。」
「え?」
「そこにいる奴、出てこい。」
「おや、私の隠蔽を看破できるとは。」鳥に似た魔族が現れる。
「俺に用か?」
「お初にお目通り致します、ラドーン様配下、末席の風王カスリーと申します。」
「おぉ、何の用だ?」
「この度ケイジ様のうわさを聞き、御身のお力を確認する為まかり越しました。」
「おぉ、ご苦労だな。」
「いえ、私の隠蔽は破られたことがありません。」
「へぇ。」
「ケイジ様の実力は相当な物かと感じます。」
「んじゃ、帰ってラドーンにそう報告しろ。」
「いえ、不躾ながらお試しします!」そう言うと、自分の羽を音速で俺に打ち込んだ。
俺は、その羽を人差し指と中指で挟むと、軽く投げ返す。
同じ速さで、その鳥魔族の頬を掠りながら、後ろの壁に刺さる。
「な。」鳥魔族は驚愕した顔をする。
「投げやすい羽だ、全力なら音速の10倍ぐらい出るかな。」
「御見それいたしました。どのような罰でも。」
「あー、良いよ、試したいと言った奴には、一回だけ不問にすると公言してるからな。」
「あ、ありがとうございます。」
「ラドーン様に、ご報告させていただきます。では、これにて失礼。」
そう言うと鳥魔族は飛び立った。
「ふふふ、ラドーンか、会うのが楽しみだ。」そう言うと熱燗を手酌で飲んだ。
「主~、これ美味しいにゃ。」
「兄者。このジュースも美味い。」
「ケイジ様、どうぞ。」カリナが俺の盃に酒を注ぐ。
「おぉ、カリナも飲め。」俺はカリナの盃に酒を注ぐ。
「乾杯だ。」俺はカリナと盃を合わせ酒を煽る。
「あぁ、美味いな。」
『あぁ、マスター美味い酒だ。』
『マスター殿、こんなに美味い酒は初めてだよ。』サランとリアンの声が聞こえた気がした。
(ふ、未練だな。)
「旦那様?」
「あぁ、カリナ、何でもない。飲もう。」
「はい、旦那様。」
俺達は温泉を堪能した。
結局、俺達は、その宿に一泊する事にした。
「おひとり様2食付きで、1G2500Bです。」
「んじゃ、決済宜しく。」
「はい、承りました。」
「その日の晩飯はとても美味かった。」
「主、美味しいにゃ。」
「旦那様、とても美味しかったです。」
「カリナの口にも合ったのか?」
「えぇ、素敵でした。」
「そうか。」
「兄者、俺は美味い物が食えて幸せだ。」
「ケイジ兄さま、アヤは幸せです。」
「主様、ムーニャは味を盗んできます。」そう言うとムーニャは調理場に突入していった。
さて、明日の会見に供えて、英気を養うか。
俺は布団に入り意識を飛ばした。
「さて、ラドーンか。」
「旦那様、話が通じる方でしょうか?」
「華厳の話ではそうらしいが。」
「何か不都合が?」
「宗教への勧誘がなぁ。」
「あぁ、キーリスト教ですか。」
「それを強要するなら、う~ん、どうしたもんか。」
「華厳様は洗礼を勧められたけど断ったと仰っていましたけど。」
「誰かに仕えたものを、その仕えを反故にして回教させるって言うのが引っかかるんだよ。」
「とにかく、話してみないと駄目だって事だな。」
「はい、旦那様。」
「あぁ、んじゃカリナ、魔力の補給を頼む。」
「ふえ?な、ケイジ様、うぅ。」
「あぁ、やっぱりカリナの唾液は甘い。」
「け、ケイジ様の唾液も凄く甘いのです。」
「おぉ、相思相愛だな。」
「馬に蹴られろ。とか思うなよ。」