やらかしの198
「ケイジ様、ウナギが食べたいです。」イーノが腕に抱き着きながら言う。
「おぉ、たまには良いな、他に行きたい奴挙手!」
「行くにゃ!」
「勿論にゃ!」
「行く~。」
「ん!」
「連れていってください。」
「ぐふふ。」
「ほほほ。」
「ウナギはあまりおいしいと思えないので。」
「私もです。」
「んじゃ、ミーニャ、ムーニャ、サクラ、リョウ、エス、それにダンサとヒドラだな。」
俺は全員を虚無の部屋に、いやいや、虚無の窓をエゴワカに繋ぐ。
「んじゃ、潜れ。」
「はいにゃ!」
「はいにゃ!」
「は~い。」
「ん。」
「行きます。」
「ぐふふ。」
「ほほほ。」
「はぁ。」俺はみんなの後に続いた。
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「エゴワカにようこそ、通行料は一人100Bです。」門番が言う。
「商売をするのなら、更に100Bが必要です。」
「あぁ、商売はしないよ。」俺が言う。
俺は900Bを門番に払う
俺達は、前回と同じマルイチに向かって、店に入った。
「いらっしゃいませ、何名様でしょうか?」
「サラン。」
「はい。」サランが出てくる。
「10人だ。」
「はい、こちらのお席にどうぞ。」
また、庭園が見える席に案内された。
「毎回、良い席に案内してくれるな。」
「ぐふふ、ご主人様の人徳でしょう。」
「ほほほ、同意します。」
「お~い、注文良いか?」
「はい。」
「まず、熱燗8個、オレンジジュース2個。」俺はわざと元の世界の注文をする。
「はい、熱燗8個とオレンジジュース2個、承りました。」
「うな重24個、その前に、白焼き15人前、肝焼き15人前な、あと、うな巻10個。」
「え? うな重24個、白焼き15人前、肝焼き15人前、うな巻10個ですか?」
「あぁ、そうだ。」
「はい、解りました。」狼狽えながら厨房に入っていく。
この注文だとそう思うよな。
「いつ見ても、見事な庭園ですね。」イーノが庭園を見てしみじみと言う。
「俺にはわからないがな。」
「ぐふふ、そう言えば、山椒の木はここで貰ったんでしたね。」
「あぁ、そうだったな。」
「ぐふふ、3代前の店主に会いたかったですね。」
「今では敵わない夢だな。」
「何の話をしているにゃ?」
「あぁ、ごめんな、昔話だ。」
「そうにゃ?」
「あぁ、気にしなくて良いぞ。」
「解ったにゃ。」
「はい、お待ちどうさま、白焼きと肝焼き、それとうな玉です。」3人がかりでそれが机に並べられる。
「さぁ、イーノ、存分に食べろ。」
「ありがとうございます、ケイジ様。」そう言ってイーノが箸を持ち端から食べ始める。
「私達も食べるにゃ。」
「はいにゃ。」他の者達も食べ始める。
俺は、白焼きを一切れ、山葵醤で食べ、熱燗を口にする。
「美味いなぁ。」
「ほほほ、どうぞ。」ヒドラが俺に酌をする。
「おぉ、ありがとうな。」
「ほほほ、妻の務めです。」
「ほれ、御返杯だ。」俺はヒドラに徳利を向ける。
「ほほほ、お受けします。」ヒドラが猪口でそれを受ける。
「ケイジ様、足りません。」イーノが俺に言う。
「え?」俺は机を見て驚愕する。
全部なくなっていた。
「ぐふふ、食べる前に無くなっていました。」
「イーノ、皆が食べてから食べようか?」
「ごめんなさい。」
「おーい、注文良いか?」
「はい、どうぞ。」
「白焼きと、肝焼きを20人、うな巻10個前追加な。」
「え?」
「白焼きと、肝焼きを20人、うな巻10個前追加な。」俺はもう一回言った。
「はい、解りました。」
「イーノ、鰻の時は凄いな。」
「えへへへ、つい本性が。」
「まぁ、良いけどな。」
「はい、お待ちどうさま、白焼きと肝焼き、それとうな玉です。」3人がかりでそれが机に並べられる。
「さて、イーノが食べきる前に、皆食べろ!」
「はいにゃ。」
「ん!」
「わかったぁ。」
「皆さん、食べ終わりましたか?」イーノが言う。
「全員食べたにゃ。」
「では。」イーノがそこに有った食材を食べ尽くす。
「うわぁ、少し引くわぁ。」俺が言う。
「え? ケイジ様、駄目でしたか?」
「うん、もう少しセーブしようか?」
「え? え? 解りました、今後は少しセーブします。」
「少しかよ。」俺は心で突っ込む。
イーノはもうエゴワカには連れてこない。
俺は心に誓った。
「ケイジ様、鰻丼はまだですか?」
「今焼いてるから。」
「は~い。」
絶対に連れてこない。 俺はもう一度心に誓った。
「鰻丼24個です。」店の人間がそれを持ってきた。
「あぁ、その子の前に10個置いて、後は皆の前に。」俺はイーノを指しながら言う。
「はい、解りました。」
「では、いただこう。」俺は鰻丼に山椒をかけて、口に入れる。
「あぁ、美味いなぁ。」
「痺れがたまらん!」
「ぐふふ、鰻の力ですね。」
「あぁ、そうだな。」俺は鰻丼を満喫した。
「あぁ、美味かった!」俺は満足して天井を見上げた。
「ケイジ様、足りません!」
鰻丼10個を平らげたイーノが言う。
「げ、10個じゃ足りなかったか?」
「おーい、注文頼む。」
「はい~。」
「あぁ、追加で、鰻丼20な。」
「え? ・・・はい、鰻丼20承り。」疲れ切った店員が言う。
「ぐふふ、最早人のレベルを超えていますね。」
「あぁ、そうだな。」
「もっと食べさせてください!」イーノが暴走寸前になる。
「後20個来るから.待ってろ!」
「はい。」
「ちょっと御不浄に行って来る。」そう言って俺は席を立った。
席に帰ってきたら、誰もいない。
「おい、皆、何処に行った?」
「おい、店員さん・・。」
其処には誰もいなかった。
「おい、嘘だろう、皆、何処に行ったんだ。」
俺は、その場に立ち尽くした。
(みんな? あれ、ミーニャとムーニャ、イーノ?)
(サクラ、リョウ、エス?)
(みんな、俺より先に死んで・・)
俺は、ベットで起き上がった。
「みんな。」俺は自分が涙を流していることに気が付いた。
「ぐふふ、どうしました、ご主人様。」
「起こしてしまったか、すまない。」
「ぐふふ、良いのですよ、ご主人様。」
「ふぅ。」
「どうしたのですか、ご主人様。」
「あぁ、夢を見ていた。」
「ぐふふ、どのような?」
「あぁ、ムーニャや、イーノ達とエゴワカのうなぎ屋に行った夢だった。」
「ぐふふ、私はいましたか、ご主人様。」
「あぁ、ダンサもいた。」
「ぐふふ、嬉しいです。」
「はぁ、本当に皆いないのだな。」俺が言う。
「ぐふふ、私はここにいます。」そう言いながらダンサが俺を素肌の胸に抱きしめる。
「あぁ。」
「ぐふふ、そろそろ、オードリの弟か妹が欲しいです。」
「あぁ、それも良いかな。」
俺はダンサを今日2回目の欲望の対象にした。
「ぐふふ、嬉しいです。」