やらかしの197
今日は、俺の復活記念祭を行うことになった。
ヤミノツウの元領主城、ヤミノツウ城の広場で開催する事となった。
「皆、頑張るよ。」オードリーが、料理が得意な孤児たちの前で言う。
「「「「「お~!」」」」」
「餅つきの予約は、此処です! 後10名で締め切りです。」孤児が声を上げる。
「おぉ、間に合った、俺がつく!」
「俺もだ!」
「はい、参加券です、無くさないで下さいね。」孤児の女の子が券を渡しながらが言う。
「おおぉ。」もうすぐ卒院が近い女の子で、可愛い顔だったので、冒険者が挙動る。
「何だよお前、見惚れてるのか?」
「いや、違うぞ、全然違うぞ。」
「そうかぁ?」
「いやぁ、懐かしいな、孤児院時代は見ているだけだったが、今は参加できるな。」
「おぉ、流石に、子供には杵は無理だったからな。」
「つき終わったら、餅が食えるんだよな。」
「あぁ、昔からそういう約束だ。」
「俺、きな粉餅が好きなんだ。」
「あぁ、それも美味いが、俺はダイコおろしが好きだ。」
「かぁ、お前、通だな。」
「リョウ姉ちゃんが好きだったんだ。」
「あぁ、お前、リョウ姉ちゃんが好きだったもんな。」
「ケイジ様の奥さんだったからな、諦めたよ。」
「懸命だな。」
「ケイジさんの嫁さんの略奪は無いよな。」
「あぁ、無理だ、嫁さんが全員ケイジさんラブだったからな。」
「それな。」
「だが、今日は餅を食う!」
「おし、餅つきに全霊を込めるか。」
「あぁ。」
「ラガー1杯30Bで~す。」
「ランナー鶏のから揚げ、4個で50Bで~す。」孤児たちが、酒やあてを売り始める。
「さぁ、つき始めろ!」
「「「「「「「「おおお!」」」」」」」」」俺の声で、冒険者たちが一斉に餅をつき始めた。
「ぐふふ、盛況ですね。」
「あぁ、ダンサは何も売らないのか?」
「ぐふふ、隅の方で焼きそばを売ってます。」
「ははは、売れてるか?」
「ぼちぼちです。」
「ははは、ってメイド服で売っているのか?」
「ぐふふ、売り上げに応じて、ボーナスを払うと言ったら、店の子が全員来ました。」
「おいおい。」
「わははは、生き返ったと思ったら、又祭りをやっているのか?」
「おぉ、バラン、嫁さん達が張り切ってな。」
「わははは、我に餅を食わせよ。」
「お~い、オードリー。」
「は~い、お父様、お呼び?」
「あぁ、バランに餅を食わせてやってくれ。」
「あら、バランおじ様、ごきげんよう、こちらへどうぞ。」オードリーがバランを席に案内する。
「うむ、では、ケイジ後でな。」
「あぁ。」
「ほほほ、ケイジ様、寂しそうですね。」
「あぁ、ヒドラ、色々思い出していた。」
「おや?」
「このような祭りを開いたら、活躍したのは、ムーニャや、リョウや、サクラ達。」
「ほほほ、懐かしいお名前。」
「そこに、エス、エル、エヌ、エムと、イロハ。」
「ぐふふ、感傷に浸っているのですか?」
「少しだけな。」
「ぐふふ。」
「お~、やってるやってる!」
「これが、お祖母ちゃんの言っていた、餅つき大会か。」二人の冒険者が会場に来てそう言った。
「おい、お前たち!」俺は二人に声を掛ける。
「はい、何でしょう?」
「俺はケイジだ、宜しくな。」
「え? お祖母ちゃんに聞いた、あの?」
「どのあのか知らないが、お前たちのお祖母ちゃんの名は何と言うんだ?」
「えっと、ニホです。」
「ニホか、元気なのか?」
「いえ、数年前に亡くなりました。」
「そうか、すまなかった。」
「いえ、大丈夫です。」
「今日は、楽しんでいってくれ。」
「「はい!」」
「ぐふふ、懐かしい名前が出ましたね。」
「あぁ。」
祭りは、夜遅くまで続いた。
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「ただいま、母さん。」一人の男の子が家に帰って来た。
「おや、お帰り。」母と呼ばれた女が出迎える。
「腹減った~、今日のご飯は何?」
「お~い、今帰ったぞ。」息子の声に被るように、父親が仕事から帰って来た。
「お帰りなさい、あなた。」
「おう、ただいま。」
「今日は、あなたの好きな、サンマの塩焼きですよ。」
「おぉ、やった!」父親のテンションが上がる。
「え~、あれ、腹の所が苦くってな~。」息子は落ち込む。
「わはは、俺も子供の時はそうだったが、あの苦い所が美味いんだよ!」父親が息子の肩を叩く。
「ふふふ、現地ではサマって言うそうですが、ケイジ様がサンマだサンマだと騒ぐので、サンマになったそうですね。」
「わはは、ミーニャ姉やムーニャ姉、それとメームががっついていたよなぁ。」
「ふふふ、懐かしいですね。」
「またその話? 孤児院時代って辛くなかったの?」
「「全然。」」
「おう。」息子が少し引く。
「ケイジ様が、美味い物をたくさん食べさせてくれてな。」
「そう、このサンマもそう。」
「ダイコおろしはあるのか?」
「勿論、カボもありますよ。」
「やったぁ、一本付けてくれ。」
「ちゃんと用意してありますよ。」
「流石、我妻!」
「明日は、今日仕込んだおでんですからね。」
「おでん、やったぁ!」息子がガッツポーズをする。
「おでんも、ケイジ様が作り方を教えてくれたよな。」
「ふふふ、そうね、ダイコの見分け方とか、本当に色々と。」
「お元気なのかな?」
「風の噂で、死んだけど復活したって聞いたわよ。」
「何だよ其れ?」息子が息をのむ。
「わははは、ケイジ様だからなぁ。」父親が笑う。
「ふふふ、ケイジ様ですからねぇ。」母親も笑う。
「「あの人なら、何でもありだ。」」
「そうなの?」
「興味があるなら、お会いしてくればいい。」
「え?」
「俺たちの名前を言えば、良くしてくれると思うぞ。」
「ふ~ん、考えておくよ。」
「このサンマも、安く買えるようになったのはケイジ様のおかげなのよ。」
「へぇ。」
「ケイジ様のお子さんたちは、ケイジ様と同じように『虚無の部屋』が使えるの。」
「虚無の部屋?」
「何でも仕舞っておける亜空間よ。」
「亜空間。」
「遠く離れていても、入れたものを出し入れ出来るから。」
「あぁ、そうか、ケイジさんの子供が現地にいれば、こっちでそれを取り出せるんだ。」
「正解。」
「昨日食べたカキフライも、本当なら此処では食べられないんだよね。」
「そうよぉ、すべてケイジ様のおかげ。」
「わはは、そろそろ飯にしよう。」
「あらあら、そうね。」
「わははは、サンマだ、サンマだ。」父親が嬉しそうに食卓に着く。
「親父、腹の所取って良いぞ。」息子がサンマの乗った皿を差し出す。
「おぉ、良いのか?」嬉しそうに父親が其れを取る。
「ケイジ様直伝の食べ方だ、サンマの身を開いて、ダイコおろしを乗せて、醤かポン酢をかけて身を掻き込む。」
「おぉ。」息子はジト目だ。
「そして、燗!」父親が猪口を煽る。
「ワタの所にも、同じようにダイコおろしを乗せてポン酢をかけて、口にする。」父親は再び同じようにする。
「そして、燗!」父親が猪口を煽る。
「ふふふ、お父さん美味しそうに食べるわね。」
「あぁ。」
「ムーニャ姉が好きだったものねえ。」
「え? いや、 そうだったけど、今更だろう。」
「ふふふ、私もケイジ様を好きでしたから、お相子ですよ。」
「な、そうだったのか?」
「ふふふ、良い思い出です。」
「わはは、そうだな。」
「はいはい、御馳走様。」息子が二人をジト目で見る。
「ケイジ様のおかげで、私たちのように普通に生活できている孤児が何人もいるの。」
「あぁ、素晴らしいお人だよな。」
「えぇ、本当に。」
一家の団欒は続いた。