やらかしの178
「餅つき大会が開かれると聞いてきたんだが。」冒険者たちが集まってくる。
「あぁ、耳が早いな。」
「餅をつけば、餅を食えるって本当か?」冒険者の一人が聞いてくる。
「あぁ、その通りだ。」
「やった、あれ美味いんだよな~。」
「お前、食ったことがあるのか?」
「あぁ。」
「俺は、前回はダンジョンに潜ってて食ってないんだ、どんな奴なんだ?」
「あぁ、ネチョットしてるんだが、きな粉ってやつをつけて食うと旨いんだ。」
「俺は、断然おろし醤だな。」
「ぜんざいという奴も、甘くて美味かった。」
「くそう、俺も早く食いたいぜ。」
「今準備をしているからな、つき始めるのは後一刻後からだな。」
「くぅ~、待ち遠しいぜ。」
「あぁ、受付は始まっているからな、急げよ。」
「受付?」
「数に限りがあるからな、先着30人だ。」
「なんだと?」
「やばい急げ、受付は何処だ?」
「あそこだ、ずいぶん並んでいるが。」
「あぁ~、間に合うかなぁ。」
「餅をつけなくても、ラガー付きで、好きな食い方ができるセットは100Bだ。」
「まじで?」
「あぁ、今回は、前になかった磯辺巻きも売るぞ。」
「おぉ、それはどんな奴だ?」
「餅を焼いて、醤に漬けてアサクを巻いたものだ、意外とラガーに合うんだよな。」
「くぅ~、腹の虫が止まらねえ!」
「ははは、頑張ってくれ。」
「おぉ。」
「ケイジ様、なんだか凄い事になっているっす。」
「あぁ、前回も盛況だったからな。」
「これを、孤児たちが仕切っているっすか?」
「あぁ。」
「すごいっす。」
「ベカスカの孤児院でも、開催しないとな。」
「そうなんすか?」
「あぁ、此処もそうだけど、一般の住人も楽しみにしているからな。」
「解ったっす。」
「もち米が調達できるのなら、マシゴカでも是非やろう。」
「うっす、嬉しいっす。」
「ははは。」
「ほほほ、楽し気な宴を開くと聞きました。」セリナ様が現れて言う。
「流石はお義母さんです。」
「ほほほ、ケイジ様の開く集会には必ず参加いたします!」
「ありがとうございます。」
「ほほほ。」
「今回は、以前やった餅つき大会です。」
「ほほほ、楽しみです。」
「後暫らくすれば始まりますので。」
「ほほほ。」
「もち米が蒸し上がりました。」孤児の一人が蒸し上がったもち米を運んでくる。
「おぉ、待っていたぜ。」冒険者の一人が声を上げる。
「俺が杵でつくから、誰か返しを頼む。」一人の冒険者が杵を持って言う。
「おぉ、任せろ。」別の冒険者が声を上げる。
「おぉ、宜しく頼むな。」
「あぁ。」冒険者同士が挨拶をして、餅つきが始まる。
「まず、蒸したもち米を杵で潰していくっと。」杵を持った冒険者が、蒸し上がったもち米を杵で潰していく。
「お前、上級者だな。」返しを担当した冒険者が言う。
「ははは、前回教わった。」
「うむ、出来上がりが楽しみだ。」
「よし、潰し終わったから、ついていくぞ。」
「おぉ。」
「返しを任すぞ。」
「任された!」
「そおれ!」ぺったん!
「はっ!」ぺったん!
「もう一丁!」ぺったん!
「それ!」ぺったん!
「まだまだ!」ぺったん!
「ふっ!」ぺったん!
「あちらこちらで、餅つきが始まっているな。」俺はそう思うと、孤児たちのスペースに蒸し上がったもち米を持って行った。
「ナギモとワトリもやってみろ。」俺は蒸したもち米を、臼に入れながら言う。
「うっす!」
「さっきの冒険者がやっていたのを見ていたよな?」
「はいっす。」
「ワトリも良いか?」
「はい!」
「んじゃ、やってみろ。」
「うっす!」
「はい。」
「もち米を杵で潰すっす。」
「はい。」
「んで、ある程度潰したら、杵でつくっす。」
「はい!」
「行くっすよ!」
「はい!」
「それ!」
「はい!」
「それ!」
「はい!」
「それ!」
「はい!」
「それ!」
「はい!」
「それ!」
「はい!」
「ははは、良いコンビだ。」俺は思う。
「ほほほ、ケイジ様、これは何ですか?」セリナ様が磯辺巻きを俺の前に出して言う。
「あぁ、それは磯辺巻きです。」
「ほほほ。」
「ついた餅を、板状にして乾燥させ、切ったものを焼いて、醤に漬けてアサクを巻いたものです。」
「ほほほ、ではこれは?」セリナ様があられ餅を俺の前に出す。
「餅を乾燥させて、砕いたものを油で揚げて醤をかけたものです。」
「これは、前回の時には教えて戴けませんでした。」
「はい、どちらも餅を乾燥する手間がありますから。」
「ほほほ、そう言う事ですか。」
「はい、お義母さん。」俺は最上級の笑顔で言う。
「ほほほ、そう言う事なら。」セリナ様の鉾が収まった。
「今回も、ぜんざいは用意しています。」
「ほほほ、堪能いたしましょう。」
「ぐふふ、ケイジ様、雑煮は良いのですか?」
「しっ! ダンサ、それを口にするな。」
「ぐふふ。」
「次のサプライズだ。」
「ぐふふ。」
今回も、餅つき大会は滞りなく終わった。
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「ケイジ様、もち米はマシゴカでも調達できるんすか?」
「解らない。」
「そうなんすか。」
「あぁ。」
ナギモもワトリも、此処の冒険者たちとうまく交流した。
ここの冒険者と結婚するのも有りじゃないか?
俺は思う。
「よし、定期的に、こんな集会を開こうか。」俺は思う。
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「主様。」
「何だ、ムーニャ。」
「前回の餅つきの時に、ナギモたちも来てたにゃ。」
「覚えてるよ。」
「何で、知らない事にしてるにゃ?」
「ナギモ達も、もう一度餅を食いたかったんだろう。」
「主様。」ムーニャが抱き着いてくる。
「何だ?」
「主様は優しいにゃ。」
「普通だ。」
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「ばれてたっすぅ。」ナギモが頭を抱える。
「大丈夫だよ、ケイジ様はお優しいから。」ワトリがナギモの頭をよしよしと撫でながら言う。
「うっす。」
「でも次からは、ちゃんと言ったほうがいいかもね。」
「そうするっす。」