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やらかしの177

「ケイジ殿、その、色々とすまなかった。」アイリーンの父、エトランゼが俺に言って来る。

「別に。」俺はそっけなく答える。


「母が、帰省中で挨拶ができなかったのが心残りです。」アイリーンが拗ねて言う。

「また来ればいいさ。」俺がそう言うと、アイリーンが嬉しそうに俺の腕に絡んでくる。


「では、ミリミストさん、お暇します。」

「ふぉ、ふぉ、ふぉ、又何時でもおいで。」

「はい。」


 俺は、そう言うと、虚無の窓を潜った。


「ふむ、我らエルフ族でも使えぬ魔法か。」エトランゼが考え込む。


「ふぉ、ふぉ、ふぉ、流石は精霊様のご加護を受けたお方と言う事じゃ。」

「むぅ!」エトランゼが何かを考える。


**********


 エルフの森での宴の次の日、俺は、ワシカとマシクフのダンジョンを数百回分周回した。

 勿論、お肉の在庫が減っていたからだ。


 数トン分の各種お肉を虚無の部屋に入れた俺は、満足して家へと戻った。



「ケイジ様、ナギモから救援要請が入っています。」アイリーンが虚無の窓の向こうから言って来る。

「え? ナギモから?」

「はい。」


「何だろう?」俺は怪訝に思いながら虚無の窓を潜った。


**********


「ケイジ様!」ナギモが抱き着いてくる。

「おぉ、何だ、どうした?」


「私達、卒院するっす。」

「あぁ、そんな歳になったのか、おめでとう。」


「卒院したら、この店で働けないっす!


「え? なんで?」

「孤児院の孤児を雇うって規定だったっす。」


「あぁ、其れな。」

「ケイジ様、新しい就職先を教えてください!」


「何だそんな事か。」

「え?」


「お前らが卒院したら、この店はどうなるんだ?」

「うっす、うちらの後輩が引き継ぐっす。」


「そうか。」

「はいっす。」



「卒院するのは誰だ?」

「はいっす、あたしとワトリ、シーヘとネーカとサクラっす。」


「サクラは問題ないな。」

「そうっすね。」


「で、お前たちはどんな職に就きたいんだ?」


「うっす、あたしは、将来店を持ちたいっす。」

「そうか、ナギモは華厳の店で修行な。」

「うっす!」


「あたしも、店を持ちたい。」

「ワトリも、華厳の店で修行!」

「はい!」


「私は、私を雇ってくれるところで就職したいです!」

「私も同じです。」


「よし、シーへとネーカは、俺のお義父さんの店で修行だな。」

「「はい!」」


**********


「ははは、良いよ、ケイジ君、うちの店で預かろう。」ドレースさんが言う。

「ありがとうございます、お義父さん。」


「ははは、何を言うんだ、可愛い息子のためだ。」


「と言う事だから、お前たちは、ドレース商会のヤミノツウ支店で住み込みで働け。」シーへとネーカに言う。


「ありがとうございます、ケイジ様。」

「感謝します。」


「あぁ、心して働け! だが辛かったら、俺の家に来い。」


「「はい!」」シーへとネーカが元気よく答える。


(うん、うん、大丈夫そうだな。)俺が思う。


「では、私が寮に案内しよう。」ドレースさんが席を立つ。

「え? お義父さん?」


「ははは、私の所で働く者はみんな私の子供と同じだよ。」

「あぁ、流石はお義父さんです。」俺が言う。


「ははは、ケイジ君、もっと言って!」

「残念です、お義父さん。」


「あれ~?」


**********


「んじゃ、ナギモとワトリはベカスカに引っ越す用意をしろ。」

「はいっす。 でも私物はほとんどないっす。」

「あたしもです、全部置いていくので、残った皆で使ってくれると良いです。」


「そうか、んじゃ、寮母先生に挨拶してから行こうか。」

「はいっす。」

「はい。」




「寮母先生、お世話になったっす。」

「お世話になりました。」


「はい、次の場所でも頑張ってください。」


「うっす!」

「はい。」


「では、これをお納めください。」俺は、100G分のBが入った袋をそこに置く。


「まぁ、何時も何時もありがとうございます。」

「いえ、この子達を育てていただいたお礼です。」


「ありがとうございます。」寮母先生が深々と頭を下げる。


「ははは、気にしないでください、お前達、行くぞ。」

「はいっす!」

「はい。」


 俺たちは虚無の窓を潜った。


**********


「と、言う訳で、此処にいるナギモとワトリが働くことになった。」


「お任せください、ケイジ様。」華厳が良い顔で俺に言う。


「んじゃ、細かいことはムーニャやイロハ達に聞いてくれ。」


「解ったっす。」

「はい。」


「ムーニャ、イロハ、宜しくな。」

「はいにゃ!」

「解りましたぁ。」


「何か困ったことが有ったら、俺に言ってこい。」

「うっす!」

「はい。」


**********


 ナギモたちが来てから数日が過ぎた。


「ケイジ様、餅って何ですか?」

「は?」


「ぜんざいって何なんすか?」


「あぁ、其れな。」

「其れな、じゃないっす。」


「何で、マシゴカの孤児院には教えてくれなかったんすか?」


「マシゴカで、それの材料が調達が出来るか分からなかったんだ。」


「つまり?」

「面倒くさかった?」


「酷いっす!」

「怒るなよ、俺がやっていることはボランティアだからな。」


「何すか、ボランティアって?」

「無償で、施しをする?」


「つ!」


「俺のエゴだけどな。」


「解ったっす。」

「おぉ。」


「でも教えてほしいっす。」

「良いぞ。」


「へ?」

「ナギモ、ケイジ様はすべて教えてくれるにゃ。」ムーニャが良い顔で言う。


「いや、知っていることだけだがな。」

「そうなんすか?」


「あぁ。」


「んじゃ、餅つきを教えてほしいっす。」

「良いぞ。」


「へ?」

「何でそこで呆ける?」


「いや、そんなに簡単に教えてくれないかと思っていたっす。」


「なんでだ?」

「ケイジ様だから?」


「何だそれ!

「ナギモはケイジ様を誤解してるんだにゃ。」


「ほぉ?」

「ナギモは孤児特有の誤解をしているにゃ。」

「何だそれ?」


「対価を払わないと、それが貰えない。」

「おぅ。」ムーニャの表情で俺は理解する。

「うっす、理解したっす。」


「ナギモ。」

「はいっす。」


「俺は、お前に対価を求めないぞ。」

「っ!」


「ケイジ様は、嘘をつかないにゃ。」

「そうなんすか?」

「あぁ。」


「ふぐぅ。」ナギモが固まる。


「よし、久しぶりに餅つき大会をするか!」俺が宣言する。


「やった!」その言葉にイロハが反応する。

「アズ(小豆)を煮なくっちゃ。」ニホが言う。


「ダイコを用意しないと。」テトも反応する。


「え?」ナギモが狼狽える。


「何が始まるんすか?」


「お前が望んだものだ。」

「え?」


「餅つき大会だ。」


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