やらかしの174
残酷な描写があります。
苦手な方はお戻りください。
「よう、其処のあんた。」
道を歩いていると、数人の男に声を掛けられた。
「なんだ?」
「俺たちは、金に困っているんだ。」
「ほぉ。」
「有り金を全部、俺たちにくれよ。」一人の男がにやにやしながら俺に言う。
「あ?」俺は、その男をゴミを見る目で見る。
「解らないやつだな、有り金を全部ここに置いて行けって言ってるんだ。」その男が言う。
「あぁ金に困っているのか?」俺は、あえてその言葉を無視して言う。
「あ?」その男が何を言っているんだって顔をして俺を見る。
「それなら、その向こうに見えているギルドに行って、登録をしてクエストを受けろ!」俺は良い顔でそいつらに言う。
「お前、馬鹿か!」男の一人が激高して俺に詰め寄る。
「うん?」俺は涼しい顔で答える。
「俺は、お前に有り金をよこせと言っているんだ。」その男が、獲物を取り出して言う。
「はぁ、なんだ、単なる物とりか。」俺は、やれやれと肩を窄めながら言う。
「理解したなら、お前の財布をよこせ。」その男が俺に凄む。
「はぁ? ケイジさんをカツアゲしようとしている奴がいる。」俺たちを見た、ある冒険者が言う。
「まじかぁ、あいつら死んだな。」隣の冒険者が言う。
「何だ、俺の財布が欲しいのか?」俺は、財布を取り出して言う。
「がははは、良い心がけだ、財布を置いていけば痛い目に合わなくて済むぞ。」その男はにやついて言う。
「ははは、俺の財布か、ほれ。」俺は財布をその男に放り投げる。
「おぉ、良い心がけだ。」その男が財布を取って言う。
「な、空じゃないか!」
「お前達は馬鹿か、ギルドカードで決済が済むのに、財布に金を入れていると思うのか?」
「え?」
(本当は、虚無の部屋に数万Bを入れてるけどな。)
「ギルティ!」俺は其の男たちに宣言する。
「何だって?」男の一人が問う。
「お前らは、只の害悪だ。」俺はそう言うと、其処にいた男達を刈取る事にした。
最初に、目の前の男の鳩尾を軽く殴った。
「ぶべぇ!」その男は変な悲鳴を上げ、口から胃液を吐きながら前のめりに道に倒れこんだ。
「貴様!」
「舐めるな!」
「この野郎!」
その男の仲間の3人の男が、俺に向かって来た。
「死ね!」男の一人は角材を振り下ろしてくる。
俺は、左腕でそれを受けた。
「メキョ!」という音と同時に角材が真っ二つになった。
「なぁ!」その男が驚愕するが、俺の腕は何ともない。
「何ともないけど、痛いのは痛いんだよ!」そう言いながら、その男の股間を蹴り上げる。
「ふぎゅ!」白目をむいて、男がその場にしゃがみ込む。
「この野郎!」俺に殴りかかってきた男の手を掴んで、もう一人の男に投げつける。
「うぎゃぁぁぁ!」叫びながら仲間を巻き込んで飛んでいく.
「ふぅ!」俺は呼吸を整える。
「舐めるな!」そう言って俺に殴りかかってきた男を、軽く平手打ちした。
「みぎゃ!」その男が軽く意識を飛ばす。
「紫炎。」
「はい。」
其処に転がっていた男たちが消える。
「スナの例の場所に。」俺が言う。
(はい。)
「あいつら、終わったな。」
「あぁ、確実に。」それを見ていた冒険者が震えながら言う。
**********
「さて、意識が有る奴はいるか?」俺は、そいつらに問う。
「う、あ、ここはどこだ?」一人の男が、それに答えた。
「お前たちの処刑場だ。」俺はぶっきらぼうに言う。
「なぁ?」その男が驚愕する。
「あぁ、片足の健は切らしてもらった、更にその辺の木に刺さっている剣は好きに使っていいぞ。」俺はそいつらに死刑宣告をした。
「何を言ってる?」その男が俺に問う。
「あぁ、魔獣が集まってきたな。」俺は其の質問を無視して言う。
「え?」
「お前らは、俺の逆鱗に触れた、人から物を奪う行為は罪悪だ! あぁ、だが、明日まで生き延びる事ができるなら助けてやるよ。」
「!」そこにいた男達の目が一瞬で荒む。
「んじゃぁな。」ケイジが消える。
「なぁ、ま、魔獣がそこまで来ている!」その男は、腱が切れていないほうの足を踏ん張って、木を這い上がる。
そして、刺さっていた剣を抜こうとした。
「何だこれ? 抜けないほど強く刺さっていやがる。」その男が絶望したとき、視界が地面まで下がった。
「なぁ?」男は驚愕するが、それを知る。
魔獣が、男の足をかみ砕いていた。
「ぎやぁぁぁぁ、痛い痛い痛い!」俺は、魔獣の目に人差し指を差し込んだ。
『ぐあぁ!』魔獣が一瞬だけひるんだ。
「武器は、何か、武器は」俺は周りを見回す。
そして、見る。
魔獣に食い荒らされた、元仲間を。
「なぁ?」その一瞬で理解した。
(俺も死ぬんだ。)そう思った時、魔獣の開いた口が目元に見えた。
勿論、次の日まで生き残っている者はいなかった。
**********
「さて、ゾエアシロか。」俺はそう思いながら、虚無の窓を潜る。
潜った先は、ゾアとアシロの兵が交戦していた門だ。
『おぉ、ケイジ様、ようこそいらっしゃいました。』門番が俺に傅く。
(やめてくれ。)俺は思う。
『おい、馬車を用意しろ、それと早馬を王宮に!』その門番が、そばにいた若い兵士に命令する。
『はい!』若い兵士が厩舎に向かって走っていく。
『しばらくお待ちください!』門番はその場で俺に向かって礼を取る。
「普通にして良いぞ。」俺は其の男に言う。
『いえ、そう言う訳には。』
「普通にしないと、この場で首を落とすぞ。」
『ひぃ!』男が直立する。
『お待たせいたしました。』馬車が近づいてきて、其の馬車の御者が言う。
「乗ればいいのか?」
『はい!』門番が馬車の扉を開けて言う。
「はぁ。」俺はため息をつきながら、馬車に乗り込んだ。
『では、出します。』御者の男が言う。
「あぁ、頼む。」俺は椅子に座って言う。
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『お待ちしておりました、ケイジ様。』馬車を降りた俺を、ヌイアが出迎える。
『おぉ、御尊顔を拝し、至極光栄です。』ヌイアの父も、その場でひざまずいている。
「あぁ、そう言えば、お前の名前を聞いていなかったな。」
『おぉ、恐れ多い、私は『ヌイア』の父、『オナハ』と申します。』
「そうか、オナハ、で、なんで、お前らもいるんだ。」
『我らは、国を統合し、この場所を首都とした故、いるのは当然の事。』
その場には、アシロの皇帝をはじめ、宰相の『クッサコ』、将軍の『アニザラ』、『キシロピ』が俺に傅いていた。
「何でお前たち迄?」
『ははは、ケイジ様の居住地に近い、此処『ゾエ』を拠点にするのは当然の事。』クッサコが涼しい顔をして言う。
『その通りです、最早、アシロ本土は只のおまけ。』アニザラが良い顔で言う。
『がはは、その通りです!』キシロピも同じように頷く。
『私は、ケイジ様に添い遂げるなの。』皇帝が拳を握って言う。
「はぁ。」俺は更に深い溜息をついた。
「俺は、お前らの王に成った積もりはない。」
『勿論でございます!』クッサコ以下そこにいた全員がその場でひれ伏す。
「え?」
『ケイジ様の自由を奪う気は毛頭ございません!』クッサコがひれ伏しながら言う。
「は?」
『ケイジ様は、今まで通りお過ごしください。』オナハも良い顔で言う。
「おぉ。」
『私たちは、ケイジ様のお言葉に従い、ケイジ様が進むまま、その後をついていきます。』アニザラも続いていう。
「何だよ、その公然ストーカー!」
『いえいえ、当然の事かと。』キシロピが右手を胸に当て、傅いて言う。
『私は、添い遂げるなの!』皇帝が言う。
「誰か、まともな奴はいないのか。」と思った時、俺は気が付いた。
「俺は、ゾエとアシロに、俺の作った料理を広めたい!」
『おぉ、それは恐れ多い。』クッサコが言う。
『それはどのような?』キシロピも食いつく。
「あぁ、これだ。」俺は、其処にライシーとカレー、福神漬けとラッキョウを取り出した。
『これは?』アニザラが疑問に思う。
「あぁ、今振舞やるよ。」俺はそう言って人数分の皿を取り出し、ライシーをよそう。
そして、其の皿にカレーをかける。
『何それ? 美味しいに決まってるじゃない!』クッサコが叫ぶ。
「おやおや、この料理の破壊力を知っているのか?」
『少し前に、ある国の孤児院の店で食べた!』
「おや、お客様だったのか?」
『でもこの程度では!』クッサコが抵抗する。
「オークカツも付けちゃおうかな!」俺は微笑んで言う。
『なぁ』クッサコの顔がゆがむ。
「あぁ、オークカツが乗ったカツカレーはどうかな?」俺は良い顔で尋ねる。
『ぐぬぬ、抗えない。』
『ぐはぁ!』
『これは?』
『駄目だ、意識が持っていかれる!』
「お前たちには、これを民族料理にまで昇華してもらおうか。」俺は、にやにやしながら言う。
『はい、仰せのままに。』クッサコ以下、皇帝以外の者が平伏す。
「おや、皇帝様は不服か?」
『・・・なの。』
「ん?」
『辛くて、食べられないなの!』
「あ~、お子様舌か~。」
『お子さまじゃないなの。』
「ほれ、これを食え。」俺はムーニャが作ったお子さまカレーを取り出す。
『これは・・・美味しいの。』
「そうか、そうか。」俺はにんまりする。
「これを、ゾエに広めてみろ。」
『ははぁ。』その場にいた全員が平伏した。
俺は、話を逸らした事に満足してその場を坐した。
『ところで、これは何だ?』アニザラが言う。
『貴公は、食べたことがあると言っていたな?』シキロピがクッサコに問う。
『ケイジ様が作り出し、ヒノモトで流行っているカリーというものだ。』
『何と。』
『これが?』
『これを、この地に広めればいいのですね?』