やらかしの173
『ずびばぜんでじたぁぁぁ。』皇帝が凄い勢いでその場で土下座した。
「ふぅ。」俺は抜いた刀を収めた。
「食に対する反応だと理解する。」俺は冷たく言う。
「次はないからな。」
『はひぃ!』
『で、ケイジ様。』ヌイアの父が俺に問う。
「なんだ?」
『ヌイアとの挙式はいつにするのだ?』
「はぁ?」
『ヌイアと添い遂げて、ゾエの国王になってくれるのだろう?』
「何でそうなる?」
『ケイジ様が、我々を凌駕したから?』
「何で疑問系なんだよ! と言うか、なんでそんな流れになっているんだよ!」
『我々は、ケイジ様に敗北した。』
「あぁ。」
『だから、我が娘ヌイアを嫁に差し出して、ケイジ様の庇護に入る。』
「あぁ、そう言う事か、って、そうじゃねえ!」
『?』
『あぁ、そう言う事でしたら、アシロも今の皇帝をケイジ様の伴侶にいたします。』宰相がにっこり微笑んで言う。
「決定事項にするなぁ!」
『何故ですか?』宰相が俺に聞く。
「俺は、既に複数の嫁を貰っている。」
『はぁ。』
「何だよその反応?」
『強者のお方が、複数の嫁を娶るなぞ、普通の事ではないですか。』宰相が何を言っているんだこいつという顔で俺に言う。
『ゾエとアシロの姫をケイジ様が娶れば、我々は二度と争いません。』ヌイアの父も良い顔で言う。
「何だよ其れ。」
『ケイジ様は、私が嫌いですか?』ヌイアが俺に問う。
「解らん!」
『え?』
「会って数時間、お前のすべてが解らん。」
『はぅぅ。』
『ケイジは我を嫌いか?』皇帝も俺を見て言う。
「解んないから! というか、お前何歳だよ? 幼すぎるだろう!」
『我は10歳じゃ。』
「あ~、この件は、保留だ、考えておく!」
『はい、御心のままに。』宰相がその場でひれ伏す。
だが、その受け答えが後になって、凄いことになるのを俺はまだ知らなかった。
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「ははは、ケイジ、凄いことになっているな。」数日後、華厳の店に来たバランが俺に言って来た。
「何がだ?」
「おいおい、張本人は知らん顔かよ。」
「だから、何の事だ?」
「おぅ、ラガー2こな。」バランはそこにいた店員に注文する。
「はい、承り!」
注文をすましたバランは、いつもの席に陣取る。
「ははは、ケイジも座れ!」良い顔で、俺に言ってくる。
「おい、答えになってないぞ、何が凄いことなんだ?」俺はバランの差し向かいに座りながら聞く。
「なんだ、本当に知らないのか?」
「だから、何をだよ?」
「ゾエとアシロが合併して新たな国になり、その国王がお前だと言う事だ。」
「はぁ?」
「なんだ、本当に知らないのか?」
「寝耳に水だよ。」
「ラガーお待ち。」店員がラガーを俺達の前に置く。
「ははは、まぁ、細かいことは置いておいて乾杯だ!」バランがジョッキを持ち上げる。
「はぁ。」俺はため息をつきながらジョッキを合わせる。
「カキン!」乾いた音をさせ、俺はジョッキを呷った。
「ははは、ケイジ、とうとう我と同じ立場になったな。」
「同じ立場?」
「国王だ。」
「はぁ?」
「なんだよ、その顔は?」バランがあきれた顔で言う。
「いや、実際に訳が分からない。」
「この間のあれだろう。」バランがカツカレーを注文しながら言う。
「いや、それしか無いっていうのは解るがな。」
「いったい何をしたんだ?」
「ゾエと、アシロの軍隊を行動不能にして、軍隊を率いていた将軍を屈服させた。」
「わははは、なんだそれ、わはははは。」
「そこまで笑う事か?」
「軍隊を行動不能? わはははは、何をやった?」
「スタンの魔法だ。」
「わははは、いったい何人いたんだ?」
「合わせて、1万8000人らしい。」
「それは凄いな。」今まで笑っていたバランが真顔になる。
「そうか?」
「それをやられたら、我でも降参する。」
「まぁ、ゆっくり全員の首を切っていけば全滅させられるからなぁ。」
「怖いことを、真顔で言うな。」
「ははは。」
「新しい国は、ゾエアシロ国という名前で、国王がケイジとなっている。」
「いや、なっているじゃなくて。」
「何で、俺が知らないところで。」
「おぉ、ケイジは相変わらずやらかしてるようだな。」ザードが店に入ってきて言う。
「やらかしてるつもりはないんだがなぁ。」
「ははは、ご謙遜だな、おい、ラガー3個な。」ザードが席に座りながら注文する。
「はい、承り!」
「ふふふ、聞きましたよぉ、流石はケイジ様ですね。」
「こらこら、ターコいきなりそれはないだろう。」ガランとターニャもやってきた。
「ははは、もう訳が分からん。」俺はジョッキを呷って言う。
「わははは、飲め飲め、飲めば解決するぞ。」バランが出来上がっている。
「はぁ、仕方がない、明日出向いてみるか。」俺はそう言って、目の前のラガーを飲み干した。