やらかしの171
『これは、アニザラ将軍とキシロピ将軍、どのような?』城の門番が狼狽えながら言う。
『早馬で、皇帝には連絡が言っているはずだ。』キシロピが言う。
『はぁ、お待ちください、今確認を!』
『なるべく早くしたほうが良いぞ。』アニザラが言う。
「さて、どう出てくるかな?」
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『皆の者、ご苦労であった。』
『なぁ、皇帝が自ら。』
『ありえん!』
『お前達、皇帝の前だぞ、礼はどうした?』40代の女が声を上げる。
『『ははぁ!』』アニザラ、キシロピ以下2万2千人がその場で首を垂れる。
『貴様は、何故礼をしない?』その女が俺に向かって言う。
「あぁ、俺はあんたらの臣下じゃないからな。」
『何だと?』
「お前らが、侵略した『ゾエ』の使いでここに来た。」
『ほぉ。』
「あんたがアシロの宰相か?」
『あぁ、そうだ。』
「そして、其処の少女が皇帝なのか?」
其処には高校生ぐらいのあどけない少女がいた。
『無礼な!』
『ケイジ様、確かにそのお方が皇帝です。』キシロピが首を垂れたまま言う。
「へぇ、他国を侵略するから、老艶な爺さんだと思っていたよ。」
『貴公、先程から無礼が過ぎるぞ。』宰相が声を荒げる。
「は? 何言ってるんだ? 侵略してきた軍を壊滅させたから、賠償を貰いに来たんだぞ。」
『え? 何を言っている?』宰相が狼狽える。
『ケイジ様のお言葉は本当です。』キシロピが言う。
『私も敗北いたしました。』アニザラも同じように言う。
『な!』宰相が狼狽える。
『クッサコ、私達は負けたの?』皇帝が宰相に聞く。
『いえ、その様な事は。』
「何だ、本当に滅亡したいのか?」俺は威圧を込めて言う。
『そんな事が可能なの?』皇帝が俺に問う。
「あぁ、可能だ。」
『どうやって?』
「魔法で、此処を中心に半径500Kmを焦土にする。」
『そんなことが、可能なの?』
「あぁ、俺ならな。」
『クッサコ、だって。』
「ところでクッサコ、お前誰だ?」俺が聞く。
『私は、アシロの宰相、クッサコだ!』
「うん、その個体はな、で、お前は誰だ?」
『ぐははは、簡単にいくと思っていたのに、こんな邪魔が入りますか。』
『クッサコ?』皇帝が怯えて聞く。
『ぐはははは、困ったものです。』宰相が瘴気を放ちながら言う。
『せっかく解き放たれたから、思う通りに行動しようと思ったのですがねぇ。』
『え? 誰?』皇帝が、その場から後ずさる。
『クッサコ、改め『強欲のマモン』とは私の事だ!』
『ひぃ。』皇帝と呼ばれた少女がその場から遠ざかる。
「それがお前の本性か?」俺が一歩前に出て言う。
『なんと、醜悪な。』キシロピが言う。
『我らは、あのような者に騙されていたのか?』アニザラも言う。
『ぐはははは、もっと簡単に事が運ぶと思ったのだがなぁ!』
(ケイジ様、マモンの魂が、本来の彼女の魂と融合しています。)
「え? どういう事?」
(そのままの意味です、マモンは恐らく死者の国からの脱出者です。)
「え? 今回の?」
(違います、その魂はその前からこの世界にいたようです。)
「つまり、このまま彼女を倒すと?」
(マモンの魂が解放され、別の人間に憑依します。)
「何だ、その無理ゲー。」
(あのお方にお願いをすれば良いと思います。)
「あぁ、そうか。」俺はそれを取り出して鳴らす。
「チリン!」
黄泉の鈴だ。
その場の雰囲気が一瞬で変わった。
「くくく、存外に早い呼び出しじゃな。」地面から姿を現しながら黄泉が言う。
「すまないな、黄泉案件だったから、呼んだ。」
「くくく、そうか、そうか。」
『ケイジ様、今現れたそのお方は?』シキロピが震えながら聞く。
「くくく、ケイジ、教えてやれ。」
「あぁ、黄泉だ。」
「くくく、我を呼び捨て、くくく。」
『黄泉様?』キシロピが言う。
『あの、伝説にある黄泉様ですか?』アニザラも言う。
「あぁ、閻魔の使いと言われている存在らしいぞ。」
「くくく、疑問系か?」
『ひぃ!』
『ははぁ!』キシロピとアニザラがその場で奇麗に土下座した。
『!』皇帝と呼ばれた少女もその場で土下座している。
「おや、其処にいるのはマモンかい?」黄泉が宰相を見て言う。
「げぇ、貴様は黄泉か?」
「くくく、儂を呼び捨てにして良いのはケイジだけだ。」そう言いながら黄泉は宰相の魂に引っ付いたマモンの魂を掴む。
「ぐあぁぁぁ、た、魂が剥がされる。」
「くくく、儂にとっては造作もないことよ。」
「くくく、ケイジ、剥がし終わったぞ。」
「そこに置いてくれ、そのまま封じる。」
「くくく、任せるぞ。」
俺はそれに向かって上魔石を投げて、『封魔石』を唱える。
「なぁ、魂が吸われる!」
「メキョ!」
「馬鹿なぁ!」
「ゴキン!」
「嫌だぁ。」
「メキメキメキ!」
「死にた「メキョン!」封魔石が完成した。
「くくく、これは貰っていくぞ。」
「あぁ、勿論良いぞ。」
「くくく、褒美にマスターコカトリスを食わせよ。」黄泉が良い顔で言う。
(これなら、儂に提供出来ぬだろう。)黄泉はほくそ笑む。
「おぉ、あれはヤバいけど、本当にいいのか?」
「うむ。(何がヤバいのじゃ?)」
「俺でも、心して食べないと魂が持っていかれるからな。」
「え?」
「んじゃ、今後の事も話し合うのに付き合って貰おうか。」
「え?」黄泉を虚無の部屋に入れた。
『え? どこに?』キシロピが狼狽える。
「皇帝と宰相、それにキシロピとアニザラも来てもらう。」
4人が一瞬で消えた。
『えぇ? ど、何処に?』
「安心しろ、ちゃんと返す。」
「では、お前らの中で、料理担当は前に出ろ。」
『え?』
「早くしろ!」
『はい!』
約300人が前に出た。
「食材を提供する、それを使って兵達に食事を振舞ってやれ。」俺が言う。
『え? 食事?』
『振舞う?』
俺はロック鶏を1万羽、オーク肉の塊を9000個その場に取り出した。
『なぁ、何処から?』
「足りるか?」
『十分であります!』一人の兵が敬礼して言う。
「よし、頼む。」
『任されたであります。』敬礼のままその兵が言う。
「紫炎、ゾエへ。」
「はい。」
俺はそこを潜った。
『ケイジ様、お帰りなさいです。』そこにいたヌイアが言う。
『お待ちしていました。』ヌイアの父も俺に言う。
「今から、戦後交渉について話し合うから、お前たちも来い。」
「はい、何処へですか?」
「私は、仰せのままに。」ヌイアの父がひれ伏したところで、二人を虚無の部屋にいれる。
「紫炎、華厳の店に。」
「はい。」
俺はそこを潜った。
「ケイジ様、いらっしゃいませ。」華厳が俺を見て言う。
「あぁ、2階を借りるぞ。」
「はい、喜んで。」
「とりあえず、ラガーを8杯とミカンジュースを1杯、パオも全種類8人前頼む。」
「はい、承り。」
俺は、店の2階に上がり全員をそこに出す。
『ここは?』
『お前たちは?』全員が狼狽える。
「全員、今すぐ靴を脱げ!」俺が声を掛ける。
『え?』
『靴?』
「あぁ、この店は土足厳禁だ。」
『え?』
「早くしろ!」
『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』そこにいた全員が靴を脱いだ。
「靴を脱いだら、其処の机に座れ!」
『『『『『『『『『はい!』』』』』』』』』
其処にいた、ヌイア、ヌイアの父、キシロピ、アニザラ、クッサコ、皇帝が席に着いた。
「サラン。」
「はい。」
『なぁ、サラマンダーの主体!』キシロピとアニザラが驚愕する。
「私は、ケイジ様に身も心もささげた者だ。」サランが身にまとった炎のスカートを摘まみながら礼をする。
『け、ケイジ様はどれ程のお方なの?』皇帝も狼狽する。
『私は、何も解らないのですが!』クッサコが叫ぶ。
「紫炎。」
「はい。」黄泉がそこに現れる。
「ここはどこじゃ?」黄泉が周りを見渡して言う。
「げぇ!」
『はははぁ!』そこにいた、皇帝、宰相、キシロピ、アニザラ、何故かヌイアとその父親もその場で平伏している。
「くくく、此処はいつぞやの店じゃな。」
「あぁ、その通りだ。」
『ケイジ様、其のお方は黄泉様です、同じ席に着くなど恐れ多い。』キシロピとアニザラが言う。
「くくく、儂は気分が良い、同じ机に同席することを許してやろう。」
「だってさ。」
『そんな、恐れ多い。』ヌイアとヌイアの父も言う。
「ほぉ、儂が許すと言った事に歯向かうのか?」
『『『『『『『いえ、仰せのままに。』』』』』』』そこにいた全員が机に座った。
「ラガーとオレンジジュースお待ちどうさま。」アヤたちがラガーとオレンジジュースを持ってくる。
「おぉ、其処の女の子にオレンジジュースな、後は全員の前においてくれ。」
「はい解りました。」アヤがラガーとジュースを置いて一階に降りて行く。
「くくく、これは何じゃ?」黄泉が俺に聞く。
「あぁ、ラガーだ。」
「ラガー?」
「ちょっと待ってろ。」
「くくく、儂に待っていろと言うか。」黄泉は相変わらず楽しそうだ。
「焼きパオ、お待たせしました。」アヤ達がその皿を俺たちの前に置く。
「おぉ、お前達、俺がする事を真似しろ。」俺はそう言って、小皿を3枚とって調味料を合わせていく。
酢とラー油っぽい物と醤を入れた物。
酢と胡椒を入れた物。
酢だけを小皿に入れた物。
「そこのパオを、好きな皿に入れて食ってみてくれ。」俺は黄泉に言う。
「どれ?」黄泉は焼きパオをフォークで刺して基本の酢ラー醤の皿に浸して口に入れる。
「ふをぉぉ、これは!(今まで味わったことのない味じゃぁ!)」
「そこで、ラガーを一気にあおるんだ!」
「ぐびぐびぐび、ぷはぁ~。(おぉぉ、これは旨い!)」
「お前たちも、遠慮するな、存分に食っていいぞ。」
『あぁ、解った。』キシロピとアニザラ、クッサコ、ヌイアとその父も黄泉と同じようにパオを口に入れ、ラガーで流し込んで恍惚の表情を浮かべている。
皇帝だけは純粋にパオを味わい、オレンジジュースを楽しんでいるようだ。
「水パオと蒸しパオお待ちどうさま。」アヤ達が次のパオを運んできた。
「くくく、これも同じように食べればいいのか?」
「あぁ、付けダレを変えると3倍楽しめるぞ。」
「くくく、では水パオを酢と胡椒で食してみよう。」そう言いながら水パオをフォークで刺して、酢胡椒の小皿に浸して口に入れる黄泉。
「くくく、此処迄味が違うのか!」そう言いながらラガーをあおる。
「お~い、飲み物お代わりよろ!」
「は~い、承り。」ジョッキを下げに来た孤児が言う。
「蒸しパオ、お待ち!」アヤ達が次の皿を持ってくる。
「くくく、同じ食材を、調理法でここまで違う物にするのか?」黄泉が俺に言う。
「あれ? 何で俺がそうしたと思ったんだ?」
「くくく、すべての料理にお前の臭いがする。」
「え~? ショック!」
「くくく、悪い意味ではない、お前の個性と言う事だ。」
「成程。」
「くくく、儂はマスターコカトリスを食わせよと言った。」
「あぁ。」
「くくく、貴様はそれが用意できるのか?」
「さっきも言ったが、自我を保てよ。」
「何だそれ?」
「作り置きで悪いな、出すぞ。」
「くくく。」
「んじゃ、から揚げを2種類。」ケイジがそれをそこに出す。
「それと、照り焼きな。」
ケイジがそこに出した料理を見て固まった。
(これ、やばい奴だ!)儂は一瞬で気付いた。
しかし、その魅力に抗えなかった。
バク粉のから揚げ、しっとりとした衣の中に広がるマスターコカトリスの旨味。
儂はその場でひれ伏した。
片栗粉のから揚げ、パリッとした衣の中から溢れる肉汁、その味に儂はその場で土下座した。
醤に付け込んで、香草を合わせてオーブンで焼き上げた照り焼き、あれは駄目だ、儂の根底が覆された。
儂は、その場でケイジにひれ伏していた..
その場にいた者たちが驚愕していたが,儂の知ったことではない.