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やらかしの167


「あぁ、オカタのギルマスに報告しておくか。」俺はそう思ったが、思い直した。


「報告しても、意味がないか。」


 ダンジョンマスターが変わっただけで、ダンジョンに変わりがない。

 普通の人間は、そもそも行けない。


「うん、帰ろう。」俺はそう思って紫炎に頼む。


「紫炎、ヤミノツウの自宅へ。」

「はい。」


 虚無の窓が開く。


アイ行くぞ。」

「は~い。」


 俺たちはそこを潜った。


**********


「あっ! 青龍だ!」門の所にいたハクが叫ぶ。

「あはは、白虎! 久しぶり!」


「僕は、ハクという名前を貰ったから、ハクだ!」

「あぁ、ごめんハク、僕はアイって名前を貰った。」


「ふ~ん、良かったね。」

「うん。」


「他の皆は?」

「家の中で寛いでいるよ、今日は僕が守護の当番なんだ。」


「何それ?」

「僕と、ミドリとエンが交代でこの家に敵意を向けるものから守っているんだ。」

「じゃぁ、僕もそれに加わるよ。」

「解ったぁ、宜しくね!」

「うん。」


「ははは、4神獣が守る家か、無敵だな。」


「さぁ、今日はアイの合流祝いのパーティーだ、アイは何が食べたい?」俺が聞く。

「え?」アイが困った顔をする。


「ケイジ様、僕は暖かいお酒が飲めれば何でもいいよ。」

「アイ、其れじゃ駄目だよ、ちゃんと自分の好みを主張しないと。」

「え?」


「僕は、お魚の鍋! アンコウのお鍋が良いな!」ハクが大声で答える。


「おぉ。」

「ちょっと待って! 僕はバハローのお肉のすき焼きが良い。」ミドリが元気に手を挙げながら言う。

「僕は、カレーが良い。」エンも手を挙げて主張する。


「こらこら、アイの合流祝いだって言っただろう、アイに決めさせてやれ。」

「は~い。」

「うん。」

「解ったぁ。」


「で、どうする?」俺はアイに聞く。


「さっきも言ったけど、暖かいお酒が飲めればそれでいい。」

「ふむ。」俺は考えた。


「ムーニャに任せよう。」



「任せるにゃ!」腕まくりをしたムーニャは、料理ができる他の嫁さんたちと厨房に消えた。



「こうなると思った。」

 テーブルの上には、鍋をはじめいろいろな料理が所狭しと並べてあった。


 歓迎会は大盛況のうちに終わった。


 余談だが、アイは我が家自慢のお風呂に、いたく感動したらしい。


**********


 次の日、俺は町の外に嫌な感覚を感じた。

 俺は、ある種の予感を感じながらそこに向かった。


**********


 そこには、パンシーと同じような霊がいた。

「ここは、どこだ?」

「俺は、何をしている?」


「そうだ、思い出した、俺は「お前が、英雄王と呼ばれた男か?」俺はその男の前に言って言う。

「はぁ? 英雄王? なんだそれ?」


「あんたは、精霊の加護を貰ったのではないのか?」

「ひひひ、確かに、かってその加護を受けていた。」


「やっぱり。」

「ひひひ、酒池肉林の毎日、楽しかったなぁ。」


「はぁ?」

「ぐへへ、あの快感が忘れられねえぜ。」


「?」

「と、言うことで、お前の体を俺にくれや。」


「レジストしました。」

「な、こいつは英雄王なんかじゃないな!」


「ひひひ、逃げるなよ、俺にお前の身体をよこせや。」


「ちぃ、ホーリー!」


「ひぎゃぁぁぁぁ!」


「こいつは、害悪だな!」

「肯定します。」


 俺は、上魔石をそいつに向かって投げた。

「封魔石!」


「なぁ? ひぎゃぁぁぁぁあぁぁぁあぁあぁ!」そいつが石に吸われていく。


「おぉ、まったく心が痛まないな。」

「・・・。」


「紫炎さん、黙るのは止めてくれ、俺が鬼畜に見えるじゃないか。」

「はい。」

「いや、それはどんな意味の『はい。』なのかな?」


「・・・。」

「紫炎~。」


「封魔石が完成します。」

「メキョ!」という音と共にそこに封魔石が転がった。


 俺はそれを拾い、華厳の店に潜った。


**********


「おぉ、ケイジ、先にやっているぞ。」

いつものようにバランが、華厳の店のいつもの席で飲んでいる。

「バラン。ちょっと聞いていいか?」


「おぉ、なんだ?」


「120年前に現れた、精霊の加護を貰ったものについてだ。」


「あぁ、其れな。」バランが目をそらす。


「当時の魔神を討伐して、英雄王になったというのは嘘だな。」

「なぁ? どこでそれを、いや、その通りだ。」


「さっき封じた。」

「え?」


「どうしようもない糞だった。」


「あ~、そうだろうな。」

「何で、そんな糞野郎が、魔神を討ち取って英雄王になったというデマを流したんだ?」


「あぁ、我が50歳位の時に、我の城にやってきて、下っ端の者にボコボコにされてな。」

「その後、何回もボコボコにしてやったが、100回目記念として、我が討伐されたことにして帰らせたのだ。」


「ほぉ。」


「我を討伐したと勘違いして凱旋したその男は、目についた女を犯し始めた。」


「はぁ?」


「ひどい有様だったぞ。」


「?」


「女であれば、未婚既婚一切構わず、その場で犯した。」


「最低だな。」


「年端もいかない、幼女を手籠めにしたとき、精霊様がその男に罰を与えた。」


「一切の加護を消して、その男に試練となる業を与えた。」


「食べることを禁じられた。」


「おう。」


「子孫を残すことを禁じられた。」


「うわぁ。」


「そして、寝ることを禁じられた。」


「3大欲求を禁じられたのか。」


「そうだ。」


「地獄だな。」


「そうして、その男は死者の世界に旅立ったが、その時に英雄王になったと言う事になった。」


「あ~、そうなんだ。」


「ケイジ、お前は今回のことに係わっているのか?」


「あ~、気にするな。」


「うむ、そう言うことか。」


**********


「ははは、ケイジ、旨い酒だ。」


「ははは、ケイジ殿、私もいますぞ。」

 珍しく、ボルガもそこにいた。


「おぉ、ボルガも来ていたのか!」

「ははは、旨い具合に仕事がひと段落つきましたので。」

「それはよかったな。」


「ケイジ、俺も、奥さんもいるぞ。」

「おぉ、ガランとターニャさんも、よく来てくれた。」


「あたしだけ、仲間外れですの?」ターニャさんが俺に絡む。

「はぁ?」


「あたしも呼び捨てにして下さい。」


「いや、人の奥様を呼び捨てには。」

「あなた!」ターニャさんが、ガランを睨む。


「い、いや、ケイジ、ターコも呼び捨てにしてやってくれないか?」ガランが狼狽えながら言う。


 俺は、残念な目でガランを見る。


(頼むよ!)ガランが俺に目で訴える。


「はぁ、解りました、ターニャもよく来てくれた。」

「はい!」満面の笑みでターニャさんが答える。


「ははは、ケイジも大変だな。」ザードが俺を見て言う。


「そう思うなら、代わってくれ。」

「絶対に嫌だ。」


「そうだよなぁ。」


「くふふふ、皆、仲良しじゃのう。」


 其処に黄泉が現れた。


「「「「「!!!!!」」」」」そこにいた魔族が全員ひれ伏した。


「おぉ、黄泉じゃないか、よく来たな。」

「くくく、貴様は相変わらずじゃのう。」


「おい、ケイジ、其処におわすのは黄泉様だぞ。」バランがひれ伏しながら言う。


「知ってるよ。」


「おい。」バランが俺に言う。


「あぁ、良い良い、儂はこの男を気に入った、儂に対する普通の態度を許してやろう。」

「おぉ、お前良い奴だな。」俺は黄泉の肩を抱く。


「ひぃ!」バラン以下、其処にいた魔族が身を縮める。


「何か食うか? 何でも奢ってやるぞ。」

「ほぉ、では、マスターミノタウルスのステーキを所望するぞ。」


「あぁ、良いぞ。」

「え?」


「マスターミノタウルスのステーキならもも肉が良いかな、いや、やっぱりロースだな。」俺はそう言いながら、ステーキの用意をする。


「なんと、それを用意するか?」黄泉が少したじろぐ。

「ん? 食いたいんだろう?」


「いや、お前を試したというか・・・。」


「焼き加減をどうする、レアか、ミディアムか、ウェルダンか?」

「焼き加減?」


「あぁ、ブルーレアや、ミディアムウェルとかはよく分らんから大体で頼む。」

「いや、知らん言葉だ。」


「あれぇ?」


「お任せで頼む。」

「よし、任された。」


 ケイジがコンロを用意すると、何処からともなくその周りに人が集まってきた。


「今回は、ミディアムで提供しよう。」

「おおぉ。」周りにいる者たちがメモを用意する。

「メモなんか取る必要はないぞ、室温に戻した肉の表面を焼しめて、肉の内部温度が50度になったものだ。」俺がフライパンで焼き始める。


「室温ってなんだ?」

「肉の内部温度?」


「ははは、ブッタを溶かして表面を焦がし、ブランデーをかけてフランベする!」

「味付けは、塩胡椒のみ!」


「お待たせだ。」俺は黄泉の前にそれを置く。


「ほぉ。」黄泉はナイフとフォークを持ち、その肉をナイフで切ってフォークで刺し口に入れる。


 そして、その肉を咀嚼する。


 ごくりと飲んで言う。

「旨い。」


「そうだろう、そうだろう。」俺がほくそ笑む。


「ここ迄旨い物だったのか。」


「ははは、めったに食えないものだからな。」


「うむ、ケイジの言う通りだな。」そう言いながら黄泉はもう一度ステーキを口にする。


「ははぁ。」相変わらず、魔族はひれ伏したままだ。


「なぁ、黄泉。」俺は黄泉を呼び捨てる。


「ひぃ!」バランが悲鳴を上げる。


「何で、魔族の連中は、ひれ伏したままなんだ?」


「儂を敬っておるんじゃよ。」

「へぇ。」


「あわわ。」ボルガが俺の言葉に驚愕する。


「そうなのか、お前凄い奴なんだな。」

「ケイジ様、そのような。」ボルガがひれ伏しながら言う。


「くくく、儂は凄いんだぞ。」

「あぁ、そうか。」


「くくく、やはりケイジは面白いのぉ。」


「いや、だって、今でも一瞬で消せるよな。」俺が冷たく言う。


「くくく、その通りだな。」


「な?」

「そこまで?」


 魔族の者たちが驚愕する。


「くくく、儂でもお前には敵わぬ。」


「ははは。」


「くくく、で、守備はどうじゃ?」


「あぁ、4匹を捕まえた。」


「くくく、逃げ出した数と合うぞ。」

「それは良かった。」


「だが、二人は俺が貰って良いか?」


「くくく、構わんよ。」


「んじゃ、残りは渡すよ。」


 俺は、パンシーと、偽勇者の封魔石を渡す。


「くくく、これはこれは。」


「出来ればパンシーは穏便にしてほしい。」


「くくく、自分で何とかすれば良いものを。」

「いや、出来るけど、駄目だよな。」


「くくく、儂が便宜を図ってやろう。」


「おぉ、是非に頼む。」

「くくく。」


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