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やらかしの163

「確かに居ます。」


「おぉ、そうなのか? 紫炎。」

「はい。」


「俺にも見えるか?」

「現状では無理ですが、とある魔法を唱えれば目視可能です。」


「へぇ?」

「霊視魔法『スピリチアル・ピーク』を唱えてください。」


「スピリチアル・ピーク?」

「疑問形ですが、魔法が発動しました。」


「へぇ、おぉ!」俺は驚愕する。


 そこには、ただの少女がいた。

 いや、少女なのか?

目はうつろに開き、中空を見ている。

 しかし、生気が感じられない。


「会話は可能かな?」


「どうでしょうか?」


「なぁ、俺の言葉が解るか?」



『アナタ、ワタシガミエルノ?』その存在が、光のない瞳で俺を見て言う。


『トテモ、カワイテイルノ。』一歩一歩、俺に近づきながら言う。


『ダカラ。』俺の直ぐ傍に来て、俺を見上げて言う。


『ツカマエタ!』その少女が俺に抱き着く。


『スワセテ、アナタノイノチヲ!』


 その瞬間に、俺は背中に冷や汗を感じる。


吸命ドレインをレジストしました。」


「こいつ!」


『ツカマエタカラ、ニドトハナレナイ。』


「つぅ、こいつ、掴めない。」


「精神体です、物理的には掴めません。」


「それは、掴む方法があるって事だな?」

「はい。」


「どうすれば良い? とりあえずこいつを剥がしたい。」

「聖魔法、『ホーリー』を唱えてから、物理的に剥がしてください。」

「結局物理かよ!」


「はい。」


「ホーリー!」俺はその魔法を唱える。


『ヒギャァァァァァァァァァアァァ。』少女が聖なる炎に焼かれていく。


「え?」


「思った以上に効果的です。」

「これ、俺が悪者認定されないか?」


「誰も見ていないので、大丈夫です。」

「いや、絵面が良くないよな。」


「所詮悪霊の類です。」


「え~?」


『イタイ、イタイ、イタイ!』


「悪いな、それはお前の業だ。」


『ワタシハワルクナイ、ワタシハワルクナイ!』


「お前が死の世界に入れられた原因だ。」


『ワカラナイ、ナゼヒトノイノチヲスッチャイケナイノ?』


「え?」


『ワタシハゴハンヲ、タベチャダメナノ?』


「いや、駄目だろう。」


『ナンデ?』


「あ?」


『アナタタチモ、ホカノセイブツノイノチヲタベテイルジャナイ!』


「うぐ!」


『ナンデダメナノ?』


「生きるための意思と意味を持っているからだ!」


『エ?』


「人は、生きるための意思を持っている、だから捕食しては駄目だ!」


『ナンデ?』


「生きる意味があるからだ!」


『エ?』


「お前は、何のために人の命を奪っているんだ?」


『ワタシガ、イキルタメ。』


「お前は、人以外の命を吸えないのか?」


『オイシクナイ。』


「つまり、他の動物の命も吸えるが、美味しくないから吸わないと?」


『ウン。』


「はぁ、ギルティ! だな。」


『エ?』


「それで人を襲っていたなら、死者の世界に閉じ込められるよ。」


『イヤ、モドリタクナイ!』


「んじゃ、消滅するか?」


『ソレモイヤ!』そう言うと、少女が後ろを向いて走り始める。


「スタン!」俺は呪文を唱える。


『エ? カラダガウゴカナイ。』


「ははは、零体にも効くんだな。」俺はそう言いながら少女に近づく。


『イヤァァ!』少女が叫ぶ。


「おいおい、あんた、何してるんだ?」恐らく霊感が有るのだろう、見知らぬ男が俺と少女の間に入ってきた。


「こんな小さな女の子に、何をしてるんだ、あんた。」


「おい、そいつに近づくな。」


「はぁ、何を言ってるんだあんた、あぁ、怖かったよなぁ、もう大丈夫だぞ。」そう言いながらその男は少女を抱き上げた。


「おい、待て!」俺は声を上げる。


『スワセテクレルノネ。』少女が、男を見て言う。

「え?」何を言われたか判らない男が、次の瞬間に驚愕する。


『アァ、オイシイワ。』

「ふぎゃぁぁぁあぁぁぁあぁ。」その男が、ミイラ化する。


「やはり、最凶の存在と同じ輩か。」

「その様です。」


「やはり、封印しかないか?」

「はい。」


「実体のない奴を、どうやって封印するんだ?」

「方法は、最凶の存在と同じです。」


「つまり、上魔石を媒体として封印する?」

「はい。」


「なぁ、もう一度聞くぞ、死者の国に戻る気は無いか?」


『イヤ。』


「そうか。」


『アソコデ、ワタシハソコニイルダケ。』


『ソウ、ナニモノデモナイ、ワタシガタダソコニイルダケ。』


『ダカラ、カエリタクナイ。』


「ふぅ。」俺はため息をつく。


「今回の俺は、悪者確定だな。」

「いいえ。」


「ははは、紫炎は優しいなぁ。」

「いえ。」


「なぁ。」


『ナニ?』


「お前に、名は有るのか?」


『パンシー、ソレガワタシノナマエ。』


「そうか、パンシー。」


『ナニ?』


「生まれ変わったら、友達になろうな。」

『エ?』


 俺は上魔石をパンシーに向かって投げる。

「封魔石!」


 其の途端に、パンシーの周りに魔法陣が現れる。


「おや、前回とは違うのか?」


「前回は、肉体がある存在でしたので。」

「そう言う事か。」


『アアアア、イヤァァア!』上魔石にパンシーが吸われていく。


『アァァァァァァ!』


「いや、長いな。」


「それだけ、あの存在がこの世に執着していたのでしょう。」


『アァァァ、アァァ。』


「心が痛い。」


『アァァ。』封魔石が完成する。


 大き目の石が、其処に転がった。


 俺はそれを無造作に拾う。


「後何人、処理すれば良いんだろう?」


「解りません。」


「黄泉は、本当に厄介な事を押し付けやがったな。」


「はい。」



作中で「男が少女を抱き上げた」となっていますが、実際には少女が飛びついたが正解です。

そして、少女の問い「貴方たちだって、他の生物の命を食べているじゃない?」に対して、皆さんならどう答えますか?

うちの家族は、誰も答えられませんでした。

良かったら、教えて下さい。

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