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やらかしの161

 何日か後で、俺は再びマシロヒの孤児院に潜った。


「次はサンドウイッチ弁当にゃ!」

「はい。」


「それが終わったら、おにぎり弁当2回にゃ!」

「はい。」


「ははは、凄いな。」


「パンが焼けたから、もう一回サンドウイッチ弁当にゃ!」

「はい。」


 俺は、弁当の製造が落ち着いてから声をかける。

「ニャーミ、凄いな。」


「にゃ、働き甲斐があるにゃ、働いた程、孤児院へのお布施が増えるにゃ。」

「あぁ,凄いな.」


「にゃはは、褒めてほしいにゃ。」


「あぁ、偉いぞ。」俺は、ニャーミの頭を撫でる。

「にゃふふ。」


「主様、ニャーミがいれば、もうこの孤児院は安泰にゃ。」

「そうなのか、ムーニャ。」

「はいにゃ。」


 俺はその日一日、見守ることにした。


 料理の指示、製造の見極め、販売の指示、売り上げの管理、全てが完ぺきだった。


「ニャーミは、私と同じ、料理人のスキルを持ってるにゃ。」

「ほぉ。」

「レベルは20だにゃ。」


「え? ムーニャよりも上か?」

「そうにゃ。」


「更に、レアスキル、『カリスマ』を持っているから、皆指示に従うにゃ。」

「はぁ、凄いんだな。」


「そうにゃ、どこであんな娘を見つけて来たにゃ?」

「俺のカバンに手を突っ込んできた。」


「主様は、女の子ホイホイにゃ。」

「いや、ホイホイって、誰に聞いた?」


「ダンサ姉にゃ。」

「・・・、ダンサ、帰ったらきっちりと躾けよう。」

「にゃ、可哀そうにゃ。」


「なに、ダンサにはご褒美だ。」

「其れなら良いにゃ。」

「良いんだ?」


************


「マシロヒの孤児院はニャーミに任せた。」

「にゃ?」


「何か困ったことが有ったら、ギルドで俺に依頼を出せ。」

「解ったにゃ。」


「んじゃ、ムーニャ、リョウ、イロハ、ここの仕事は終わりだ。」

「はいにゃ。」

「ん!」

「は~い。」


「それでは寮母様、お暇致します。」

「ケイジ様、寄進をありがとうございます。」


「ははは、ちゃんと孤児たちの仕事を回してください。」

「はい、仰せのままに。」


「それでは。」俺は虚無の窓を潜る。


「ありがとうございました。」寮母さんが虚無の窓に消える俺に向かって最敬礼をした。


************


「ケイジ、聞きたい事がある。」

「何だバラン?」


「生牡蠣の味が、違うのはどうしてだ?」


「おぉ、それが解るのか?」


「あぁ、城で食う生牡蠣は味気ない。」


「俺が提供する生食用の牡蠣は、本来生食用ではない牡蠣だ。」

「なぁ、それは我を貶めるためか?」


「あ? 違うよ、俺が魔法で生食を出来る様にしている。」

「そうなのか?」


「疑うなら、二度と牡蠣を渡さないぞ。」

「いや、ケイジの事は信頼している。」:


「バランにだけは教えてやる、加熱用の牡蠣は細菌が多くて、病気の可能性があるんだ。」

「そうなのか?」


「あぁ、だが、クリーンを唱えればそのリスクが消えるんだ。」

「それなら、加熱用の牡蠣にクリーンを唱えれば良いんだろう?」

「其れをしたら、生食用の業者が消えるぞ。」


「あ?」

「うん。」

「そう言う事か。」


「産地が消えるから、止めておけ。」

「解った。」


************


「ケイジ様、お腹減った。」

「俺も~。」

「あたしも。」孤児たちが口々に言う。


「おぉ、そうか、今日は何を喰うかな?」


「ん?」俺は気が付く。


「あんこうを食ってないじゃん。」


「カリナ、セリナ様とダンナーさんを呼んでくれ。」


「お父様も良いのですか?」

「あぁ、呼んでも良いぞ。」


「はい。」


「ぐふふ、今度は何を?」

「あんこう鍋だ。」

「ぐふふふ。」


「ムーニャ、ミーニャや、メームの子供も一緒に読んでやれ。」

「はいにゃ。」


「ローリとシータも、ドレースさんとお義母さんを。」

「「はい。」」


************


「ほほほ、何やら美味しい物をご馳走していただけるようで。」

「おぉ、よおこそ、お義母さん。」

「ほほほ、セリナと呼んでも良いのですよ。」

「ははは、そんな恐れ多い。」


「ケイジ君、呼んでくれてありがとう。」

「いえ、お義父さん、楽しんで行って下さい。」


「おや、ダンナー様もいらっしゃるのか?」

「おぉ、ドレース様、お久しゅう。」


「兄者、来たぞ。」

「私も良いのかにゃ?」


「あぁ、メームとニャニャか、勿論だ。」


「ほほほ、それで、今宵は何を食させてくれるのですか?」


「これです。」俺はあんこうを取り出す。


「おぉ。」

「なんと、醜悪な。」


「ははは、見た目と違ってとても美味しいのですよ。」

「ほほほ、ケイジ様の言う事なら信用いたしましょう。」


「ぐふふ、つるし切りをするのですか?」

「いや、このサイズならまな板で十分。」


「ムーニャ、エス、エル、エヌ、エム、リョウ、サクラ、俺のやる事を見て、後で手伝ってくれ。」

「「「「「「「はい。」」」」」」にゃ。」


「まず、全体をたわしでごしごし洗う、強く洗うと皮が破けるから注意な。」

「はいにゃ。」


「で、邪魔な提灯を切り取る。」俺は包丁で提灯を切り取る。

「何でですか?」

「皮を剥ぐのに邪魔なんだ。」

「へぇ?」


「あぁ、この魚は、この提灯と口、そして骨以外は全部食べられるんだ。」

「本当ですか?」

「あぁ、内臓も、ひれも、少し癖があるがエラもだ。」


「マジにゃ?」


「続けるぞ、最初に内臓を取り出す、肛門から内臓を傷つけないように切って。」俺は実行する。


「良い肝だ。」俺はあん肝を取り出す。

「おぉ~。」


「次に胃袋。」俺は胃袋を切り取る。

「魚がいっぱい入ってるにゃ。」

「もったいないけど、食べないぞ。」

「そんなぁ。」


「エラもここで切り取る。」

「はい。」

「で、口元に切れ目を入れて、皮を剥ぎ取る。」

「おっと、ぬるぬるして剥きにくいな。」俺は手に塩を振りかけて皮を剥く。


「今、何をしたんですか?」

「手が滑ったから、塩を手に振りかけて皮を剥いた。」

「成程にゃ。」


「で、このタイミングで、口を切り落とす。」俺は口の周りを包丁で切っていく。

「歯が鋭いから、気を付けろよ。」

「はいにゃ。」


「後は、お肉を切り分けて終わりだ。」


「で、ひれは塩でもんでぬめりを取る。」

「にゃ?」

「エラは、少しだけ手間をかければ臭みが消えるけど、今回はこのままで。」


「んで、今回はあんこう鍋だ。」

「ぐふふ、楽しみです。」

「溝汁を作ろうと思ったんだけどな。」

「ぐふふ。」

「お義母さん達には刺激が強すぎると思ってな。」

「ぐふふ。」


「普通のあんこう鍋を作ることにした。」

「にゃ?」


「鍋に水を張って、コーブを昨日から入れた物を複数作ってあるぞ。」


「ムーニャが、最初に作るにゃ。」

「よし、任せるぞ。」

「はいにゃ。」


「まず、材料だ。」

「はいにゃ。」


「俺が、最初にすき焼きを作ったのを覚えているか?」

「はいにゃ。」


「んじゃ、白菜、シイタケ、エノキ、それとニンジとダイコを用意しろ。」

「はいにゃ。」


「んで、1日コーブを浸した鍋にあんこうの骨を入れて煮始める。」

「なんで?」

「良い出汁が出るんだ。」

「成程。」


「コーブはいつもの様に、沸騰する前に取り出す。」

「はいにゃ。」


「取り出したコーブは細切りにして、ダイコの皮と、シイタを一緒に炒め煮して佃煮もどきを作る。」

「はい。」エル達が、其れを作り始める。


 コーブとダイコの皮を細く切った物、シイタの軸と傘を細く切った物をゴーマ油で炒め、砂糖多め、酒と醤を加えて炒め煮にした物。


 短時間で作るので、佃煮とは言えないもどき品。


 でも、それなりに美味しい物だ。


「で、骨を取り出すタイミングで、鍋にあんこうの身、内臓各種、食べやすい大きさに切った、白菜、シイタケ、エノキ、ニンジ、ダイコを並べて入れる。」


「ぐふふ、完璧です。」


「鍋が煮える間に、肝を潰して、俺特製のポン酢と合わせる。」

「ぐふふ、ポン酢ですか?」


「あぁ、カボスと柚子が手に入っているからな。」

「ぐふふ、流石はケイジ様です。」


「カボスも柚子も、孤児院の畑で繁殖させたから好きに使って良いぞ。」

「ぐふふ、解りました。」



「さて、鍋が煮えたようなので、私が取り分けます、お義父さん達、お義母さん達は、私が作ったこのたれに漬けてお召し上がりください。」俺はそう言いながら、肝ポン酢を全員に渡し、あんこうの各部位を均等に振り分けた皿を配っていく。


「ほほほ、これは、これは。」

「おぉ、何と芳醇な。」


「このひれや皮が、肌に影響を与えるのですか?」

「はい、お義母さん。」俺はセリナさんに答える。


「成程、此のぬめりがコラーゲンなのですね?」

「はい。」


「ほほほ、お代わりは有りますか?」

「はい、勿論です。」それ以外の言葉は俺には答えられない。


 俺は、鍋に残った具材を器によそい、セリナ様に手渡した。


「では、鍋の全てを食べましょう。」

 ケイジ様がそう言った途端に奥様の雰囲気が変わる。

「まだ何かがあるのですか?」


「雑炊を作ります。」

「雑炊?」


「鍋に残った汁には、あんこうや野菜の良い出汁が出ていますから。」

「じゅるり。」涎を啜ったのは誰なのか。


「鍋に、人数分のライシーを入れて一煮立ちさせ、醤で味を調えて。」

「ごくり。」


「卵を数個溶いて、半熟になったら出来上がりです。」俺はおたまでどんぶりに注ぎ皆の前に置く。


「これでお食べ下さい。」俺はレンゲを取り出す。


「下さい!」

「私にも。」


 全員が、雑炊を口に入れて固まった。


「これは、美味い。」

「ほほほ。」


 全員完食した。


「いや~、満足です。」

「このような食仕方があったとは。」


「庶民の食べ方ですが、乙な物でしょう?」

「ははは、全くだ。」


「鳥鍋や、魚貝の鍋の締めにも良いですよ。」


「ぜひ家でもやってみよう。」


「さぁ、お待たせだ、皆も鍋を作ろう。」俺はそう言って数匹のあんこうを取り出す。


「やるにゃ!」

「ん!」

「はいです!」

「任せて!」


 あんこうパーティ第2部が始まった。



 セリナ様が、こっそり混ざっていたのは見なかった事にしよう。


今年最後の投稿になります。

拙い作品を1年間お読みいただき、ありがとうございます。


皆さま、良いお年をお迎えください。

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