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やらかしの158

「わはははは!」


「くはははは!」

(あの。)


「ぬほほほ!」

(ケイジ様。)


「なんだ、紫炎。」俺は跳ぶのを止めて言う。


「前に、そのすぐ傍まで跳んでいるので、其処からなら1跳躍です。」

「良いんだ、俺が飛ぶのが好きだから跳んでいるんだ。」

「はぁ。」


「わはははは!」

「楽しい!」


「最高!」


 俺は、9回の跳躍を楽しんで其処に付いた。


 突然空から降ってきた俺を見た門番が、口ごもりながら聞いてくる。

「あの、身分を証明する物は?」


「あぁ。」俺は、ベカスカのギルドカードを門番に見せる。

「ひょぇ? ど、どうぞお通り下さい。」門番は奇妙な声を上げると俺を門の中に入れてくれた。


「あぁ、この町の名物は何処で食えるんだ?」俺は、挙動不審な門番に尋ねる。


「あ、あそこの赤い屋根の店が・・・」


「おぉ、サンキュウ、行ってみるよ。」俺はその店に歩を進めた。


************


「あ、あ、あ、あれが有名な、やらかしのケイジさんか。」門番が顔を赤くしながら言う。

「き、緊張して、挙動不審になっちまった。」


************


「おぉ、並びは無いのか、このまま入って良いのかな?」俺はそう言いながら、その店の門を潜る。



「らっしゃいやせ~!」威勢のいい掛け声が、俺を迎えてくれた。

「こちらのカウンターへどうぞ。」俺一人だと思われて、カウンター席に案内された。


 俺は、席に着いてメニューを見た。


「おほ、これだよ。」メニューを見た俺は心でガッツポーズをする。


「生牡蠣、牡蠣フライ、土手鍋。」


「お~い、注文良いか?」

「は~い、喜んで。」


「この生牡蠣4個。」

「はい、生カーキ4個。」


「牡蠣フライ定食1人前。」

「カーキフライ定食1人前。」


「牡蠣鍋も1人前で。」

「すみません、鍋は2人前からです。」


「あぁ、んじゃ、2人前で。」

「はい、カーキ鍋2人前。」


「牡蠣フライ定食も1人前追加で。」

「はい、カーキフライ定食1人前追加。」


「サラン。」

「はい。」サラマンダーの主体が現れる。


「え? 何処から? サラマンダーの主体?」店員が狼狽える。


「マスター、ここは何処だ?」


「あぁ、マシロヒ言う処らしい。」


「らしい?」


「カーキと言う貝が美味いと聞いて跳んできた。」


「ははは、マスターらしいな。」


「サラン、酒は何が良い?」

「マスターのお勧めは何だ?」


「冷酒かなぁ。」

「では、それで。」


「冷酒も2人前な。」

「はい、喜んで。」店員が店の奥に引っ込んだ。



「お待ちどうさま、生カーキです。」生カーキが机に置かれる。


「とりあえず、サランに奉納を。」

「ありがとうマスター。」


「冷酒お待ち!」冷酒が提供された。


「ほれ、サランに奉納を。」俺は冷酒を持ちながら言う。

「ありがとうマスター。」


 俺は、冷酒をサランのグラスに注いだ。


「では。」サランが生カーキを口に入れる。

「おぉ、ミルキィな味が良い。」


「そして。」冷酒をあおってため息をつく。

「生きていてよかった。」


「それ程なのか?」俺は生カーキを口に入れる。


「ふむ、食い慣れた牡蠣の味だ。」

(いや、此処で冷酒を飲むと至高の味になるのか?)俺は冷酒を飲んだ。


「美味い。」いや、美味いけどそれだけだ。


「カーキ鍋2人前、お待ちどうさま。」俺の前に土手鍋が置かれる。


「サランに奉納を。」

「ありがとうマスター。」


「ふむ、やっぱり土手鍋か。」

「あふいが、ふまい。」サランがハフハフ言いながら鍋を食べる。


「うん、土手鍋だな。」俺はそれを食べ進める。


「まぁ、どんどん食って良いぞ、サラン。」

「たべてまふ、マスター。」


「カーキフライ定食お待ち。」それが目の前に置かれる。


 俺は牡蠣フライ定食を目の前にして固まっている。


「マスター、どうしたのだ?」


「いや、サランに奉納を。」

「ありがとう。」


「なぁ。」俺はカウンターの店員に声をかける。

「はい、何でしょう?」


「これは、どうやって食うんだ?」


「はい、そこにあるレモネを絞って、塩をかけてお召し上がりください。」

「え? レモン?」


「はい。」

「此処にあったんだ。」


「はい、レモネはこの地方の特産品です。」


「そうか、ところで、ソースやタルタルは無いのか?」

「そーす? たるたるとは何の事でしょう?」


「え? 牡蠣フライはソースかタルタルだろう?」

「申し訳ありません、何のことやら。」


「マスター、其れで食べたい。」

「いや、まずいだろ。」


「それが良い。」

「あ~、自前のソースで食べても良いか?」俺はカウンターの店員に聞く。


「え? それは構いませんが。」

「良し。言質取ったぞ。」俺はそう言いながら、ソースと自前のタルタルソースを取り出す。


「ほれ、サラン、これが牡蠣フライに合うソースだ。」そのソースをサランに渡す。


「其処の黄色いレモンを絞って、少しソースをかけて食べろ。」

「はい、マスター。」そう言いながらサランは檸檬を絞り、ソースを付けてフライを口に入れる。


「うみゃい。」

「ほれ、冷酒だ!」俺は、サランのコップに冷酒を注ぐ。

「ごくごくごく、ぷはー、マスター至極だ。」


「ごくり。」店員が喉を鳴らす。



「そうか、次は檸檬を絞ったフライに、このタルタルソースをかけて食ってみろ。」

「はい、マスター。」


「ふわぁぁ。」

「そこでライシーだ。」


「あ“~、最高だ、マスター。」


「あの。」カウンターの店員がおずおずと聞いてくる。


「ん? 何だ。」


「そのそーすとたるたるを食べさせてくださいませんか?」


「あぁ、別に良いぞ。」


「ありがとうございます。」そう言うと店員は自分の分の牡蠣フライを揚げ始める。


 その間に、俺はソースとタルタルを使って、牡蠣フライ定食を堪能した。


「お願いします。」揚げたての牡蠣フライを皿に乗せた店員にお願いされる。


「ほらよ。」俺は、ソースの瓶をそこに置く。


「これが、ソース。」店員は皿の上のカツの一つに、檸檬を絞り、ソースを数滴たらして口に入れた。

「ふぉ!」店員の口から変な空気が漏れた。


「こんな物が有ったとは。」店員は恍惚を感じながら咀嚼している。


「で、こちらが『タルタル』でしょうか?」

「あぁ、そうだ。」


「これはどのような?」

「ゆで卵を潰して、胡瓜の酢漬けとタマネのみじん切りを合わせ、マヨネーズを入れて、塩胡椒で味を整えた物だ。」


「すみません、タマネしか解りませんが、いただきます。」店員が牡蠣フライにタルタルソースを乗せて口に入れる。


「なぁ!」店員は一度固まり、その後ゆっくりと咀嚼を始めた。


「至極です。」店員が言う。

「そうか、良かったな、お会計を頼む。」俺はレジに向かいながら言う。


「待ってください!」

「あ?」


「そのソースと、たるたるを教えて下さい。」

「良いぞ。」


「え?」

「対価は?」


「カーキの仕入れ先を紹介します。」


「ふむ、良いだろう。」

「おぉ、感謝します。」


「まず、ソースだが、俺はとある港町の噌の店で仕入れてるからツテがあるなら頼ってみろ、其れで駄目なら、ギルドに俺の指名依頼と言う事で依頼を出せ。」

「はい、判りました。」


「で、タルタルは今ならタダだ、タルタルのレシピは5Gだ。」

「え?」


「つまり、食べて盗めるならタダだ。」俺は言う。


「成程。」


「さて、どうするかな?」

(5Gを払ったら、この店は此処で終わりだ。)


「解りました、タルタルを下さい。」


「ははは、そこにあるじゃないか。」俺はさっき出したタルタルソース入りのボールを指さす。


「マヨネーズの作り方は、ギルドで売っているぞ。」


「おぉ、港町のジヤオ・キカと言う者を訪ねてください。」


「ははは、合格だ。」俺はそう言いながら店を出た。


************


「港町はどっちだろう。」

(右の方に1kmです。)


「んじゃ、歩いて行くか。」

「私はこれで。」そう言うと、サランは指環に引っ込んだ。


「つれないな。」そう呟き、屋台や出店を冷やかしながら歩いた。


 屋台の串焼きが美味そうだったので、一本頼み、ラガーも頼んだ。


 そんな俺を、遠くから身なりが粗末な子供たちが見ていた。


「おやじさん。」俺は、屋台の親父に声をかけた。

「何だい?」


「この辺りには、孤児が多いのかい?」

「あぁ、最近港の直ぐ傍にモンスターが現れるようになってな、この辺りの漁師は皆夫婦で沖に出ているからな。」


「そうか、おやじさんこの皿に串焼きを50本焼いてくれ。」俺は大皿を虚無の部屋から取り出す。

「え? 良いけど。」おやじさんは、焼き台に20本を並べて焼いて行く。


「いくらだ?」

「1Gだ。」


「カードは、使えないか。」俺は1G分のBを屋台に置く。

「まいど。」おやじさんはそれを受け取り、前掛けのポケットに入れた。



「出来たぜ。」おやじさんが言う。


「おぉ、ありがとう。」俺は串焼きが乗った皿を虚無の部屋に仕舞って屋台を後にした。


 そして、子供たちの所に行くと、子供たちに声をかけた。


「なぁ、君たちの世話をしている人の所に連れて行ってくれないか?」

「え? おじさん誰?」

「私達を誘拐しても、お金はもらえないよ。」


「ははは、おじさんは酷いな、これでもまだ20歳なんだけどな。 それと誘拐はしない。」

(本当の歳は60を超えてるからお爺さんなんだけどな。)


「寮母さんの所に行きたいの? なんで?」

「大事なお話があるから。」

「解ったぁ。」

「こっちだよ。」孤児たちが俺の両手を持って歩き始める。


 ものの数分で其処に着いた。


(昔のベカスカの孤児院と同じだな。)俺は思った。


 窓ガラスは割れていて、壁のあちらこちらに穴が開いている。

 建物の周りには、申し訳程度の畑が作られていて、何かの野菜が作られている。


 因みに、今のベカスカの孤児院は、孤児たちの働きで収入が増え、窓ガラスも壁も修理され、孤児たちの食事も俺の作った物が振舞われている。

 寝るときの寝具も、厚い毛布だ。


 更に俺の指導を受けた孤児たちは、貴族の料理人として買われていった。


 勿論、貴族が孤児を虐待しているという噂を聞いたら、俺がその貴族を滅した。


「こんにちは。」

「はい、いらっしゃいませ。」


「俺はケイジだ、宜しくな。」俺は寮母さんに挨拶した。


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