やらかしの156
俺は店の外に出てコンロを取り出し、網をセットしてコンロを起動した。
ブ~ン、コンロが起動し、網が焼かれていく。
網が適度に焼けたので、俺は虚無の部屋から『くさや』を取り出して焼き始める。
「ぐわ、ケイジ、何を焼いているんだ?」店から出て来たバランが言う。
「ん? 『くさや』だ。」
「排泄物の匂いがするぞ。」
「そう言う食い物だ。」
「これが旨いものなのか?」
「俺は好きだぞ。」
「ぬぅ、解った、席で待っている。」そう言うと、バランは店に戻っていった。
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「ぐふふ、まず納豆を藁から取り出して、小皿に入れます。」
「ほぉ。」ドレースさんたちは、ダンサの言う通りに納豆を小皿に取り出す。
「ぐふふ、臭いが気になる方はいますか?」
「いや、私は平気だ。」ドレースさんが言う
「私もです。」ドレースさんの奥さんも言う。
「私も平気です。」
「私も大丈夫。」シータとローリも答える。
「うん、平気。」リョウが言う。
「我はちょっと苦手だ。」
「ぐふふ、ではバラン様は、納豆を良くかき混ぜた後で、醤と出汁を入れ、辛子とネギと卵を合わせて混ぜてください。」
「おぉ、解った。」
「他の方は、納豆をよく混ぜたら、醤と出汁を入れて、お好みで辛子を入れて更によく混ぜてライシーの上に乗せて、アサクで包んで食べてください。」
「おぉ、出来た、でライシーの上に乗せるのか?」ドレースさんが納豆をライシーの上にかけて、アサクで巻いて口に入れる。
「おぉ、これは癖になる。」
「えぇ、とても美味しい。」
「私、毎日食べたい。」
「ケイジ様にお願いしよう。」
「おぉ、お前達が羨ましい。」
「お待たせしました。」俺は人数分のくさやを焼き上げて店に戻った。
「さぁ、お義父さんとお義母さんに。」俺はくさやが乗った皿を置く。
「おぉ。」
「赤辛子マヨもここに置きます。」俺はマヨネーズに唐辛子を振った物を人数分取り出して其処に置く。
「シータと、ローリの分だ。」俺はそこに皿を置く。
「ケイジ様、ありがとうございます。」
「で、バランの分はこれだ。」俺はバランの前にくさやが乗った皿を置く。
俺は、納豆の乗ったライシーを持って固まっているバランに言う、
「なんだ、納豆は苦手か?」
「な。」バランが反応する。
「うん?」
「何で、こんなに旨いものを隠していた?」
「いや、最近になって完成したんだ。」
「ふふふふ、ケイジ。」
「おぅ。」
「さっさと出せ。」
「あ?」
「まだ、我の知らない美味い物を知っているんだろう?」
「はぁ?」
「我の知らない美味い物、くふふ。」
ズビシ!
「くわぁ。」俺のデコピンを受けてバランが壁まで飛んだ。
「別に隠しているわけじゃない、其れを見つけるのが大変なんだ。」
「おぉ、そうなのか?」
「この納豆も、大豆が手に入ったから作れたんだぞ。」
「それなら、欲しいものを我に言えば、手に入る物は用意してやるぞ。」
「おぉ。」俺は手をポンと鳴らす。
「その手があったか。」
「その顔は、今思いついたって言う顔だな。」
「今思いついた。」
「ははは、流石に我が明友だな。」
「?」
「我を利用しようとしないのがな。」
「普通だろう。」
「ははは、全くお前は。」
「?」
「まぁ良い、我もくさやを喰うぞ。」
しかし、皿の上にはくさやが無い。
「は?」バランが固まる。
「え? いつまでも食べないので、要らないと思い食べちゃいました。」シータが言う。
「すみません、冷めると美味しくなくなるので私も食べました。」ローリも皿を手にして謝る。
「なぁ。」バランが気落ちする。
「今、おかわりを焼いてやるよ。」俺はバランの肩に手を置いて言う。
「ケイジ。」
「ぐふふふ、バラ受けのケイジ攻め、ごっつあんです!」ダンサがウザいが無視だ。
「ほれ、焼けたぞ。」俺はくさやが乗った皿をバランの前に置く。
「おぉ。」
「赤辛子マヨだ。」俺は唐辛子マヨをそこに置く。
「身をむしったら、これを付けて食べろ。」
「解った。」バランは、くさやをむしってマヨネーズに付けて口に入れる。
「ぬを。」
「どうだ?」
「美味い。」
「そうか、良かったな。」
「まだあるから、欲しかったら言えよ。」
「後3匹は食いたい。」
「あぁ、解った。」
「ケイジ君、私もお代わりが欲しい。」
「私もです。」ドレース夫妻が言う。
「ケイジ様、私ももっと食べたい。」
「ケイジ様私もです。」シータとローリも皿を前に出して言う。
「ははは、くさや大人気だな。」俺はそう思いながら、コンロの上にくさやを乗せる。
(そして、俺の好きな物を好きだと言ってくれる人がいる事に感謝する。)
(明日、港町にくさやを仕入れに行こう。)俺は強く思った。
結局、俺はくさやを20匹焼いた。
「ははは、疲れた。」
「ぐふふ、お疲れ様です。」
「ドレースさんも、バランも満足して帰ったか?」
「はい。」
「それは良かった。」
「ぐふふ、明日は私も港町に連れて行って下さい。」
「おぉ、ダンサ、良いぞ。」
「ぐふふ、ありがたき幸せ。」
「?」
「明日ココノツに参ります。」そう言いながら、ダンサが虚無の窓を潜る。
「はぁ、風呂に入るか。」俺は風呂に向かった。
俺の家の風呂は、一年中温泉がかけ流しで沸いている。
俺は、全装備を外して、風呂に入る。
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「で、何でお前らがここにいるんだ?」
「嫁の務めです。」カリナが言う。
「嫁の務めにゃ。」ミーニャが言う。
あえて割愛しよう、ダンサと、ヨイチ以外の嫁が風呂に入っていた。
「ケイジ様のお身体を洗うため。」
「嫁以外の者に、ケイジ様の身体を洗わせないため。」
「だから、お前ら変だって。」
「ケイジ様の寵愛を受けるためです。」
「はぁ。」俺はため息を浮いて、嫁達から体を洗われた。
気持ち良いのだけは実感した。
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次の日、ダンサはココノツに現れた。
「ぐふふ、昨日はお楽しみだったようですね。」
「ドラクエ1かよ。」
「ぐふふ。」
「ふふふ、最早義務だ。」
「ぐふふ、ハーレムを作った男の定めです。」
「はぁ、そんな物作るつもりはなかったんだけどな。」
「出来てしまった物は、しようがありません。」
「はぁ、そうなんだよな。」
「ぐふふ、流石はケイジ様です。」
「よし、気を取り直して港町に行くぞ。」
「ぐふふ、お供します。」
俺達は、虚無の窓を潜る。
「もう秋刀魚は季節外れだな。」
「ぐふふ、これからは冬魚ですね。」
「あぁ、ブリ、ヒラメ、カレイ、フグ、ボラ、ハタハタ、アンコウ、タラ、カマス、キンメダイ。」
「ぐふふ、楽しみです。」
「あぁ、だが、キンメダイはいつもの港町では上がらないよな。」
「カオズシの港町です。」
「ぐふふ、高級魚です。」
「キンメは今度だな。」
「ぐふふ。」
「さて、くさやの仕入れの前に、店を冷やかすか。」
「ぐふふ、お供します。」
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「邪魔するぜぃ。」
「おぉ、ケイジさん、久しぶりだ。」
「ちっ。」
「もう秋刀魚は終わりか。」
「サンマってなんだ?」
「嘴が黄色い細長い魚だよ、この間滅茶苦茶買っただろう。」
「あぁ、サマか、そうだな、もうシーズンは終わりだな。」
「で、どんな魚がある?」
「今日は此処にあるだけだな。」
「おぉ、アンコウがある、あれ?」俺は、虚無の部屋を覗く。
奥の方にアンコウがある。
「あれぇ?」そう言えば、昔かったことを思い出した。
「アンコウと、タラとハタハタを全部貰う。」
「え~っと、アンコとターラとハッタを全部か?」
「あぁ、決済ヨロ。」俺はギルドカードを渡す。
「毎度ありぃ。」の言葉と共にその店を出た。
「次は、八百屋だな。」
「ぐふふ。」
「邪魔するぜい。」
「あら、また来てくれたのかい、どうぞ見て言っておくれ。」
「ちっ。」
「ネギとシイタ、キノコ類は全部買う。」
「これは1G分あるよ。」
「買う。」
「後は目ぼしい物は無いかな。」俺は店の中を見渡して気付く。
「ジャガの新種があるな。」
「あぁ、流石だね。それはインカだよ。」
「インカ?」
「果肉が黄色くて、甘い奴だよ。」
「へぇ。」
特に興味が無いな。
「んじゃ、また来るな。」俺はその店を出る。
「ダンサ、噌、やソースの在庫はどうだ?」
「ぐふふ、今のところ必要ありませんが、新作があるかもです。」
「あぁ、成程。」俺達はその店に行った。




