表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
149/203

やらかしの148

「そう言えば、ボルガの息子はどうなったんだ?」


「ほほほ、半月ほど前に一人前にいたしました。」扇で口元を隠しながらヒドラが言う。


「ほぉ、あれから3か月も経っていないが?」

「ほほほ、優秀な者でしたので。」


「それは凄いな。」

「ほほほ。」


「では、検分に行こうか?」

「ほほほ、願っても無い事です。」


「ダヨトは何処が近い?」

「ヤゴナです。」紫炎が答える。


「バランの王城か。」

「はい。」

「そこからの距離は?」


「37Kmです。」

「2、いや、1跳躍?」

「はい。」


「んじゃ、ヤゴナへ。」

「はい。」


「え~っと、どの方向だ?」

「右に30度です。」

「此の位?」

「はい。」


「んじゃ。」俺は跳ぶ。


「わははは!」


 俺はダヨトの門の前に着地する。


 門の前に並んでいた者たちが驚愕するが、「あっ、あの人はケイジさんだ。」と言う誰かの言葉でそこにいた全員が納得した。


「やらかしのケイジさんだ。」

(なんだそれ?)


 俺は、大人しく列の最後尾に並ぶ。


 俺の番になる。


「え~っと、身分を証明する物は?」門番が言う。


「俺のこの顔だ。」俺は、いつぞやバランがやった事を試してみる。

「はい、ケイジ様、どうぞお通り下さい。」


「え?」

「はい?」

「其れで良いの?」

「はい、ケイジ様であることは確認できましたので。」

「え~。」


「え~っと、俺が連れている者達は?」

「ケイジ様の従属者で、認識しています。」


「あっそう。」


 俺は、不本意ながら門を潜る。


「ほほほ、流石はケイジ様ですね。」

「其れで済んじゃうの?」


「ほほほ、その様ですね。」


「さて、どの店が美味いんだ?」

「ほほほ、検分とは?」


「誰が、ボルゲを検分すると言った?」

「ほほほ、言っていませんね。」ヒドラが口元を扇子で隠す。


「ダヨトはヤゴナに近いので、ヤゴナとほとんど変わらないですよ。」


「なんだ、そうなのか。」

「おいおい、兄ちゃん聞き捨てならねーな。」

「ん?」


「ダヨトの手羽先はヤゴナ以上だぜ。」

「おぉ、そうなのか?」


「この先に店があるから、行ってみろよ。」

「おぉ、ありがとうな。」

「な~に、良いって事よ。」


 早速その店に行ってみることにした。


「ほぉ、結構行列しているな。」

「ほほほ、その様ですね。」


 俺は、大人しくその行列に並んだ。


「ふ~ん、回転は良いみたいだな。」

 直ぐに、俺の番になった。


店に入ると、お勧めを3人分に、ラガーも3個頼んだ。


 何気なく、店を見まわしていたら、それが目に入った。


「ヤゴナ本店直伝の味、手羽元をご堪能下さい。」


「何だそれ? ヤゴナと同じ味じゃねーか。」


 その後、がっかりしながら家に帰った。


************


 家に帰ると直ぐに、虚無の窓からアイリーンが俺に言う。


「ザード様から、緊急依頼が入っています。」


「緊急依頼?」

「町が、ゴブリンの軍団に襲われているそうです。」


「何だそれ、受けた、紫炎!」

「はい。」ザードの町に虚無の窓がつながる。


************


「うぉ!」虚無の窓を潜った俺が見たものは、町を幾重にも囲むゴブリンの群れだった。


 町は、門を閉じ、塀をよじ登って侵入するゴブリンを、兵士や冒険者が一匹ずつ倒していた。


「ザードは何処にいる?」俺は近くの兵士に尋ねる。

「え? あなたは?」

「あぁ、俺はケイジだ、宜しくな、ザードから依頼を受けて来た。」

「え? 何処から?」町の全ての門は、固く閉ざされている。


「ああ、俺の魔法だ。」

「そうですか、ザード様は、前線で指揮をとられています。」

「そうか、ありがとう。」

「いえ。」兵士は、塀に向かって歩いて行った。


「とりあえず、俺に敵意を向けさせれば良いか?」

「はい。」


「とりあえず、ザードを探そうか。」俺は、襲撃が多そうな方に向かって走る。


************


「壁を乗り越えたゴブリンだけを打ちなさい、力は温存するように、長丁場になりますよ。」ザードが、町の人間を鼓舞しながら戦っていた。


「ザード。」

「おぉ、ケイジ様。」

「どんな具合なんだ?」

「町の周りを、数千匹のゴブリンが取り囲んでいます。」

「あまりの数に、打って出る訳にもいかず、防戦一方です。」

「原因は解らないんだよな。」

「はい。」


「とりあえず、ゴブリンを殲滅するから、魔石の回収をよろしくな。」

「え?」ザードが狼狽える。


 俺は、壁の上に跳ぶと、ゴブリンに向かって言う。


「今から、お前らを殲滅する!」

『ぐぎゃぁ、たかが人間が?』

『ぎゃははは、俺、あいつ犯す、犯して食う。』

『ゴブリンにもホモがいるのか?』


「ケイジ様、ホモとは?」

「あぁ、ザード、忘れろ。」

「はい。」


「ツンドラ!」俺の魔法で、その辺りが凍り付き、数十匹のゴブリンが死んだ。


『ぐぎゃぁ、あいつが魔法で仲間を殺した!』

『仲間を殺す、許さない!』

『あいつ殺す!』


 俺は、ゴブリンの前に飛び降りて、再び魔法を使う。

「ウインドカッター!」多方向に風の刃を飛ばす。


 一度に数百匹のゴブリンが死ぬ。


『あいつだ。』

『あそこにいる奴が、仲間を殺した!』

『許せない!』

『あいつを殺せ!』そう思ったゴブリンがその場で息絶える。

『どうした? あぁ、死んでいる、あいつが何かした!』

『あいつを許さない!』そう言ったゴブリンもその場で死ぬ。


「ははは、お前達の仲間を殺しているのは俺だ!」俺が声を上げる。


『許さない!』

『仲間の敵!』

『殺す!』


 俺に敵対したゴブリンがばたばたと死んでいく。


『あの男のせいで、仲間が死んでいく!』

『許さない、仲間の仇!』そう言いながら、ゴブリンは皆こと切れていく。


俺は、町を囲った塀沿いに歩いて行く。

『ぐぎゃぁ。』

『へぎゃぁ。』

『ぶぎゃぁ。』


 ゴブリンが、俺に敵意を向けて、自滅していく。


 俺が、町を一周すると、ほぼ全てのゴブリンが横たわっていた。


「ん?」俺は、其の存在に気付いた。


 町から少し離れた場所にいる集団。


「ん~?」俺は、その集団を鑑定する。


「数100匹のゴブリン、ゴブリンチャンプ、ゴブリンロード、そして、ゴブリンエンペラーがいます。」紫炎の声がする。


「ふ~ん。」俺は、その方向に向かい歩いて行く。


『ぎゃぁぁ。』

『ぶはぁぁ。』

『うぎゃぁぁ。』


 俺が歩く方向に、断末魔が響く。


『そこで止まれ!』俺を止める声がする。


「あ? 俺を止める奴は誰だ?」

『皇帝様の御前である、平伏せ。』


「あぁ、俺に敵対するって事だな。」

『違う、皇帝様には全ての者がひれ伏す、お前も速やかに平伏せ。』


「お前、何だ?」俺が威圧を込めて言う。

 俺の威圧に耐え切れないゴブリンがバタバタと倒れていく。


『私は、ゴブリンチャンプ、皇帝の剣だ。』


「あぁ、ご苦労さん、俺はケイジだ、覚えなくて良いぞ。」


『え?』


「直ぐに死んじゃうからな。」


『何を?』


「チャンプもロードも関係ない、お前らは俺が滅ぼす。」俺が挑発する。


『何を? はぐぁ!』ゴブリンチャンプがその場でこと切れる。


『貴様、皇帝に、ぐはぁ!』ゴブリンロードもそこで死ぬ。


『私は、ここで死ぬのか?』ゴブリンエンペラーが言う。


「あぁ。」

『何故だ?』

「人間の町を襲ったから?」


『私は、鬼の王に言われた通りに、この町を襲っただけなんだが。』


「お前の意思がない事が減点だ、そしてお前の部下だけに襲わせたことで、アウト!」

『もともと、我の生には興味が無い、滅せよ。』


「解った、どうやって死にたい?」

『え?』


「火で死にたいか、水で死にたいか、風で死にたいか。土で死にたいか。雷で死にたいか、身体を爆散して死にたいか?」


『どうせなら、私を扇動した鬼の王と一緒に業火に焼かれて死ぬのが相応しい。』


「解った。」

『おぉ。』


「その、鬼の王は何処にいる?」

『此処から、西に行った、ウオザと言う温泉地にいます。』

「ウオザ?」

(此処から西に89Kmの所です。)

(えっと、2跳躍?)

(はい。)

 俺は、ゴブリンエンペラーを虚無の部屋に仕舞い、ウオザに跳んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ