やらかしの145
ムーニャ視点。
「ちゅん、ちゅん。」
鳥の声で目が覚めた。
「くにゃ~。」欠伸をして目を覚ます。
「良い朝にゃ。」そう言いながら、ベットを抜け出して洗面所に行って顔を洗う。
歯磨きをして、ブラシで髪の毛と、尻尾の毛を整える。
家を出ていくと、孤児院の子供達も置きだしていて、それぞれが朝の作業に散っていく。
「おはよーにゃ。」そう言いながら、箒と塵取りを持って、孤児院の周りと、主様の家の周りの道路を掃除する。
それが終わったら、孤児たちと一緒に、畑仕事と、家畜のお世話をするにゃ。
今日は、畑のお世話をするにゃ。
トマツ―がだいぶいい具合に実っていたので、収穫する。
ダンシャも、良い具合になっていたので、畑の半分を収穫した。
ケイジ様の畑は、本当に凄い。
普通の畑での収穫量の2倍近い物が収穫できる。
『必要な肥料をやって、連作障害を考慮すれば良いんだ。』と言っていたけど、ムーニャには解らなかった。
収穫した物は、孤児院の冷暗所に保存した。
主様が、魔法で温度を下げた部屋だと言っていたが、良く判らない。
朝ごはんの用意をして、孤児と先生達といただく。
この間、主様が作ったベーコンを焼いて、その油で目玉焼きを作った物に、お弁当用のポテトサラダを乗せ、お弁当で余ったパンをトーストした物と、大量に作ったコンソメスープ。
「いただきます!」
「美味しいにゃ。」
「ベカスカもそうだったけど、此処ヤミノツウの孤児院も、食事とお風呂は至極だにゃ。」
「ごちそうさまでした。」
食事を終え、孤児たちと食器を洗う。
「さて、今日もお弁当を作るにゃ。」
「「「「お~。」」」」孤児たちが手を上げる。
ヤミノツウの孤児院でも、ベカスカと同じ様にお弁当を作って売る事にしたにゃ。
タマゴサンド、ポテトサンド、カツサンドのサンドセットと梅干、タラコ、シャケ、高菜、沢庵、肉味噌のおにぎりを作って、ランダムに3個づつモウチクで包んで、お弁当を作っていく。
ヤミノツウの孤児の案で、おにぎりとサンドウィッチの混合弁当も作った。
もともと、ヒドラさんがご意見番を務めていたヤミノツウ城、今は役所になっている建物の前で売っているにゃ。
役所に来る人が、買ってくれるので売り上げも上々にゃ。
一つ迄に、3セットを売り切った。
お昼ご飯は、畑で採れたサツマをふかした、ふかし芋を食べた。
甘くて美味しかった。
午後は、明日のお弁当の用意をする。
パン生地を発酵させ、発酵後はどんどん焼いて行く。
孤児たちも、手際よく同じ作業を進めていく。
2刻ほどで、40個の食パンが焼けた。
ポテトサラダと、コロッケの用意もする。
ダンシャを茹でて、潰していく。
一つは、胡瓜を薄く輪切りにして、塩でもんで、水で洗って、水きりしたものと、薄く櫛切りにした玉葱、オークのハムを細かく刻んだ物を入れて、マヨネーズと塩胡椒で味を付ける。
もう一つは、丸く成型して、バク粉をまぶし、卵を潜らせ、パン粉を付けてお皿に並べる。
これは、明日油で揚げて、パンにはさむにゃ。
ハムの下ごしらえもしなくちゃ。
孤児たちに教えながら、ハムを仕込んでいく。
三日漬けこんだハムを調理して、仕上げる。
漬けこんでいた汁ごと鍋に入れて、沸騰したら火を止めて半刻待つ、これを3回繰り返して、最後に肉を取り出し、漬け汁を沸騰させて、容器に入れた肉に流し込んで、冷めたら冷蔵庫に入れる。
そうそう、冷蔵庫が新しくなった。
今までのは、上に氷を入れて冷やしていたのだけれど、新しい冷蔵庫は魔石を入れて冷やすものだ。
何でも、ていおんじゅくせいをする為に、主様がドワーフの人に作ってもらったらしい。
でも、『時間魔法を使えばどうとでもなった~。』と主様が叫んでいたのは何でだろう?
華厳様も、新しい冷蔵庫が気に入ったようだ。
コンロや、オーブン、其れに冷蔵庫、新しいものを作る主様は素敵だ。
オーク肉もまだあるから、トンカツの下ごしらえもしておく。
コロッケと同じ様に、バク粉をまぶして、卵を潜らせてパン粉の衣をつけて、お皿に並べる。
これも、コロッケと同じで、明日油で揚げてサンドウィッチを作る。
下ごしらえが済んだら、夕食の時間になっていた。
「今日は、何が食べたいにゃ?」孤児たちに聞く。
「カレーが言い!」
「うん、カレー。」
「辛くない奴!」
「俺は、辛くても良い。」孤児の一人が見栄をはる。
「じゃぁ、カイエンペッパーを渡すから、好きなだけ辛くするにゃ。」
「え?」
「どんだけ辛くしても良いにゃ。」
「む、ムーニャ姉ちゃん。」
「何にゃ?」
「辛くない奴で。」
「「「あはははは!」」」
「だらしないの。」
「うるせぇ!」
「「「あははは!」」」
「このぉ!」
「喧嘩をするなら、晩御飯は無しにゃ。」
「はい。」
カレー粉は、作り置きして瓶に大量にあるから、肉と野菜を切って出汁を入れて煮たものに、カレー粉を入れるだけの簡単なお仕事。
「今日のライシーは、誰が炊いてくれるにゃ?」
「は~い、あたし。」孤児の一人が手を上げる。
「ん?」
「え?」
「初めて見る顔にゃ?」
「昨日、此処に連れてきてもらった。」
「ライシーを炊いたことは?」
「有りません。」
「はぁ。誰か、此処にあるタマネ、ダンシャ、ニンジを調理して。」
「はーい。」孤児の一人が手を上げる。
うん、この娘は料理が出来る子だった。
「任せるにゃ!」
「は~い。」そう言いながら、その娘が野菜を調理し始める。
任せても大丈夫そうにゃ。
「で、ライシーを炊く準備をするから、こっちに来るにゃ!」最初に手を挙げた娘に言う。
「はい。」
「あたしがやる事を見て、覚えるにゃ!」
「はい。」
「解らない事が有ったら、聞くにゃ!」
「はい。」
「最初に、ライシーをとぐにゃ。」
「とぐ?」
「ライシーを、キレイにするにゃ。」
「はい。」
「ライシーを、今日は9カップ。」
「9カップ?」
「此のコップが1カップにゃ、1カップで茶碗2杯分にゃ。」
「はい。」
「今日は、寮母様と合わせて15人いるから、おかわり分も合わせて炊くにゃ。」
「はい。」
「9カップ分のライシーを、土鍋に入れて水を入れたら、軽くすすいで水を捨てる。」
「はい。」
「これを3回。」
「はい。」
「次は、水を入れたら、ライシーを手のひらで潰すようにとぐにゃ。」その通りに実行する。
「結構強くやるのですね。」
「そうにゃ、で、水を捨てて、もう一回同じことをする。」
「はい。」
「で、水を捨てたら、水を捨てて半刻待つにゃ。」
「何故ですか?」
「ライシーに水を吸わせるにゃ。」
「はい。」
「で、炊き方は、最初弱火で・・。」
「炊きあがったら、底からしゃもじで裏返して、半刻置いて完成だにゃ。」
「はい、判りました。」
「頼もしいにゃ。」
「ムーニャ姉さま、カレーが良い具合です。」
「火を止めて、カレー粉を入れるにゃ。」
「はい。」
「今日は、トッピングにウインナーも付けるにゃ。」
「やた!」
「ウインナーを茹でて、一人3本にゃ。」
「わーい。」
孤児と寮母さん達と、楽しく食事した。
今日は、主様に初めて夜伽をする日にゃ。
お風呂も入ったし、歯磨きもしたし。
うぅ、緊張するにゃ。
主様の部屋のドアを開ける。
「おぉ、ムーニャか?」
「はいにゃ。」
主様の顔を見て、安心している自分に気が付いた。
「は、始めてにゃから。」
「あぁ、優しくする。」そう言いながら口づけされた。
その後、素敵な世界が待っていた。