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やらかしの14

 4階には、ただただ広い草原があった。

「地平線が見えるな。どんだけ広いんだ?」

(空間のゆがみがあります。全ての境目が反対側の境目に繋がっています。)

「無限回廊か?」

(似たようなものです。)

「で、この見晴らしの良い場所で、トロールはどこに隠れているんだ?」

「マスター、上だ!」

「上?」

 俺が上を見ると、巨大な足の裏が迫って来ていた。

「おい、おい、いきなりだな!」俺は回避しながら言う。


「ヅドン!」と言う音と共に衝撃波が襲ってくる。


 その衝撃波で、俺は転がる。

「ぷっは~、やってくれるよ。」


 そこには、身長15m程の巨人がいた。

 全身が薄い緑色の巨人は、一つの目で俺を見る。

 そして、口元を少し引き上げる。

「あ~、今あいつ、俺を馬鹿にしたな。」

「マスターを馬鹿にするなど、万死に値します。」

「いいよ、サラン、少し付き合ってやろう。」

「な、マスター、瞬殺でよろしいのでは?」


「完全にへし折ってから、絶望の果てに屠ってやるよ。」

 にやりと笑う俺の顔を見て、サランが恍惚の表情を浮かべる。

「あぁ、マスターの本気が見れるのですね?」

「いや、1割ぐらいじゃね?」


 俺はそう言うと、トロールの前に出る。

 トロールは、右手に持った巨大な棍棒を俺に振り下ろした。


 俺は腰の刀を抜き、剣刃を飛ばす.


 トロールが持っていた、巨大な棍棒が粉砕される。

 俺の周りに棍棒のかけらがぼとぼとと落下する。

 トロールは、自分の持っていたものが無くなった事に驚愕している。

「んじゃ、いくぜ!」

 俺はそうつぶやくと、トロールの足元に走った。

「眞空斬!」腰の刀を抜いて技を発動する。

 トロールの両足を粉砕して、俺は元居た場所まで跳躍する。


 トロールは声もなく崩れ落ちる。

 両足は、もう役に立たないだろう。

 腕の力だけで体を起こし、トロールは俺を見る。

 その目には絶望の色が見て取れた。


「お前、物理攻撃無効だっけ?」

「・・・うん。」トロールが頷く。

「そんなお前の両足はどうなった?」

「!!」トロールは驚愕して暴れるが、次の瞬間静かになった。

「自分の運命が判ったみたいだな。」

「・・・」

 トロールは俺の前に首を差し出した。

「その意気や由!」

 俺はトロールの首を撥ねた。

 その途端に、草原が消える。

「な、こんなに狭かったのか?」

 そこには、200m四方の部屋が存在していた。

(いえ、ケイジ様、ダンジョンの主が死んだので、その影響が無くなりました。)


「マスター、結局魔法は使わなかったのだな。」

「最初からそう言っただろ。」


「マスター、素敵です!」


「ん?これがドロップ品か?」

 そこには木の棒が転がっていた。


「レベル82のトロールのドロップが木の棒かよ。」そう言いながら俺は木の棒を拾う。


「マジで何の変哲もない、木の棒だな。」

(はずれダンジョンですね。)


「マスター、コアがある。」


「ふふふ、判った。」俺は刀を抜くと、コアに切りかかった。

「とりゃ、うりゃ、そりゃ!」

 コアは粉々になる。

「二度と復活しないように!」

 最後にコアがあった場所に刀を突き立てた。


 ダンジョンが死んだ。



「ダンジョンの発生がいびつだな!」

「はい、マスター、私もそう思います!」

「本来なら、自然にある魔素を吸収して発生するはずだが、こんなに近い場所に、しかも高レベルの魔物がいるダンジョンが存在するのはあり得ないな。」

「マスター、魔素に何者かの介入を感じます。」


「ほぉ。それは?」

「魔王です。」

「はぁ、やっぱりそう来るか。」

「サランの見立てで、どいつだ?」

「第20位の戦王リキードではないかと思います。」

「根拠は?」

「残留している、魔素です。」

「成程なぁ。」


「ふぅ、とりあえずギルドに報告するか。」

 俺達はダンジョンを出る。

「悪いな、夜営の用意が無駄になったな。」

「へっへっへっ、問題ないですよ。」


 来た時と同様に、2刻ほど馬車に揺られて、シハリクに着いた。

「おぉ、世話になったな。」俺は業者にいつも通り料金に5Gを上乗せして払う。

「へっへっへっ、旦那、毎度です!」

 業者は、乗っていた冒険者たちをギルドの前に転がすと、町の喧騒に消えて行く。

「料金を払わない奴には、容赦ないな!」

 冒険者達は、ギルド職員によりギルド内の救護室に運ばれた。

 今日2回目の、シハリクのギルドだ。


「がはは、清算頼むぜ!」


「はい、お預かりします。」

「カッター様、ダンジョン攻略補佐、並びに冒険者救出補佐確認しました。合わせて45Gです。」

「がはは、判った!」

「カッター、予約の店は今日で良いのか?」

「いや、明日にしたが。」

「今日に変更しようぜ!肉が食いたい!」

「な、がははは、よ~し、今から変更してくるぞ。」

「あぁ、頼んだ、カッター。」

「がははは、任せろ!」


「んじゃ、俺のもお願いします。」


「はい、承りました。」

「野良ダンジョン2件攻略、確認しました、報酬600Gです。」

「冒険者救助確認しました、報酬400Gです。」


「あと、ダンジョンについての情報があるんだが。」

「では、此方へ。」

 俺達は、奥の部屋に通される。

「座ってお待ちください。」


「何だよ、このギルドはお茶もくれないのかよ。」

「ミーニャ、お茶くれ。」

「はいにゃ!」

 いつものように、ミーニャが紅茶を煎れて、俺の前に出してくれる。

「さんきゅうな。」俺はいつものように、ミーニャの頭を撫でると、紅茶を口にした。


 暫くすると、部屋に小柄な女性が入って来た。

「お待たせして、申し訳ありません、私がシハリクのギルドマスターのモーマです。」

「あ、あぁ、俺はケイジだ、よろしくな。」

「あれ、お茶も出さずにすみません!」

「気にするな、自分で用意する!」

「後で事務員に申し付けておきます~。」


「で、ダンジョンについての情報があるとの事ですが。」

「あぁ。この近辺のダンジョンの発生がいびつな事に気が付いた。」

「いびつですか?」

「あぁ、2階層以降にいきなり70レベルや30レベルのモンスターが巣くっていた。」

「ほぇ~、それは、冒険者では無理ですね!」

「魔王の介入を感じ取った。」

「え?ええええ?」


「だから、今後この近辺に発生したダンジョンは俺が狩る!」

「それは、独占するという事ですか?」

「いや、自己責任で、ダンジョンに入る事は止めない。」

「お勧めしないと言うだけだ。」


「だから、ダンジョンの発生に気付いたら、俺に連絡してくれ。悪いようにはしない。」

「ほぇ~、理解しました。情報感謝します。」


「いや、ついでだ。」俺は立ち上がる。

「ケイジ様、カウンターで報酬を受け取って下さいです。」

「え?あ、あぁ、判った。」

 俺は部屋を出ると、カウンターに立ち寄る。

「ギルマスに行けと言われた。」そう言いながらカードを職員に渡す。

「ダンジョン情報確認しました、100Gです。」

「え?お、おぅ。」俺はカードを受け取ると、ギルドを出た。


「がはは、待っていたぜ!さぁ、行こうか!」カッターが俺の肩を抱いて店に案内する。

「今日は無礼講だ!」カッターが言う。


 店に着くと、ムーニャ、カリナ、メームも待機していた。

「がははは、どんどん注文してくれ!」カッターが言う。

 店の人間が、しれっとラガーを人数分置いていく。


「とりあえず乾杯だ!」カッターがグラスを持つ。

 俺達もそれぞれグラスを持つと、杯を掲げた。

「乾杯!」

 俺はそれを喉に流し込む!

「く~、美味いなぁ。」

「あ、ムーニャとメーム、それにカリナさんは好きな飲み物を頼んで良いぞ。」

「主様、ありがとうです。これは苦くて駄目です!」

「ご主人様、私は果実酒を頂きます。」

「ムーニャもそれが良いにゃ。」

「お、俺はこれで良い。」

「メーム、無理しても楽しくないぞ。」

「な、わ、判った。オレンジジュースを貰う。」


「お待たせしました、肉盛り合わせです!」

「おぉ~、待っていたぜ!」

 早速カッターが肉を焼き始める。


 俺は店員を捕まえた。

「何でしょうか?」

「カッターは何人前で頼んだんだ?」

「はい、10Gで10人前ですが。」

「あと30G俺が払うから、それなりにしてくれ。」そう言ってカードを渡す。

「かしこまりました。」店員は腰に付けた端末で決済をすると、カードを俺に返してくる。

「足りなくなったら、俺に行ってくれ。」

「はい、承りました。」


「よ~し、食うぞ!」

「主様、此方いい具合です!」ムーニャが焼けた肉を俺の皿にのせる。

「ムーニャ、俺の事は良いから楽しめ。」

「にゃ、はいです、主様。」

「しかし、ムーニャが焼いた肉は美味いな!」俺は独り言のように言って肉を口にする。

「マスター、私が焼いたのも味わってくれ!」サランが俺の皿に肉を乗せる。

「私の炎で焼けないのが心残りだ。」

「おぉ、サランの炎で焼いた肉か、それは美味そうだな。」

「な、何時でも言ってくれれば提供するぞ。」

「その時が来たら、楽しみにしておくよ。」

「御意。」

「旦那様、私が心を込めて焼いた肉もご賞味ください。」カリナが肉を俺の皿にのせる。

「おぉ、これは、半生具合が良いね。」

「ありがとうございます、旦那様。」

「くぅ、ポン酢に合うな。」

「おっと、ラガーが無いな、おやじ!ラガーをくれ。出来たらジョッキで!」

「がはは、俺にもくれ!」

「へい!只今!」

店の親父は樽を持ってきた。

「こちら、サービスです。」

「おい、おやじ!」俺が言う。

「へ、へい、何でしょう?」

「随分景気が良い事してくれるじゃないか。」

「ケイジ様の武勇は聞こえておりますので。」

「ふふふ、気に入った、後50G払うぞ。」そう言ってカードを渡す。

「ありがとうございます。」

「皆に好きな物を提供してやってくれ!」

「はい、仰せのままに!」

「主~、お肉美味しいにゃ。」

「そうか、ミーニャどんどん食え。」

「はいにゃ。」

「サラン、食わないのか?」

「マスター、私は食と言う行為が不要なのだ。」

「あぁ、どうすれば良い?」

「私に供えてくれれば受け取れる。」

「高位の存在も面倒くさいな。」俺はそう言うと焼けた肉を数切れと、ジョッキになみなみと注がれたラガーをサランの前に置く。

「サラン、奉納奉る!」

「な、マスター、勿体ない。」

「これで乾杯できるな。」俺はニカッと笑う。

「あ、あぁ、マスター。」サランが涙を流しながらジョッキを合わせてくる。

「乾杯!」


 サランはジョッキを煽る。

「ふ、ふふふ、これは、美味いな!」

「おお、サランはいける口か!」

「いや、マスター私は初めてだ。」

「くぅー、良いねぇ。サランの初めてを俺が貰ったんだな。」

「な、マスター、違うけど、それでいい。」

「まぁ、飲め。」

 俺はサランのジョッキにラガーを注ぐ。

「サランに奉納を!」

「あぁ、マスター、嬉しい。」


 サランは2杯目のジョッキを煽る。

「マスター、私は幸せ者だ。」

「何言ってるんだ、今後一生サランは俺の物だ。」

「な、マスター」


「俺の元にいる限り、お前に孤独を与えないことを誓うぞ!」 


 途端にサランが硬直し、恍惚の表情を浮かべる。

「マスター、貴方に生涯の忠誠を誓います。」

「な、どうしたんだ?」

(サランの忠誠ポイントクリアです。)

「は?」

(サランは今後、ケイジ様の庇護下で行動します。)


「え?どういう?」

(サランの意志は有りますが、ケイジ様の意志の元行動します。

「なにそれ?」

(サランの血族化確認しました。)

「血族?」

(繋がりが、より深くなりました。)


「照会。」俺はカードを額に当てて呟く。



 カード所有者:ケイジ

 ギルドランク:A

 ギルド預金:13,640G

 伴 侶:獣人:ミーニャ

 伴 侶:人 :カリナ・ゴウショーノ

伴 侶:獣人:ムーニャ

血 族:サラン(サラマンダー)



「何だこりゃ?」

「マスター、マスターの思考が流れ込んでくる。」

「へ?」

「マスターの見ている物、聞いている音、感じているすべてが私に流れ込んできている。」

「そ、それは迷惑「素晴らしい!」

「へ?」

「マスターの情報を共有できる。こ、こんな至福!」

「マスター、私は幸せだ。」

「え?おぉ、それは良かった。」


「あー、サラン。」

「はい、マスター。」

「いつでも、自由に行動して良いからな。」

「はいマスター。」

「私はいつでもマスターを守ります。」

「いや、そうじゃない、そうじゃないんだよ。」

「マスター、厠は見ないから大丈夫だ!」


「そうじゃない!俺の精神がすり減っていくのは何故だ!」

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