やらかしの133
「はぁ、バハム。」
「なに?」
「何でその姿になった?」
「主人が、名前をくれたから。」
「なんで、女子高生の姿だ?」
「じょしこうせい?」
「あぁ。」
「さぁ。」
「おい。」
「霊峰ジフに挑戦する者達の、一番若い娘の姿を模した。」
「制服で登頂する者がいたのか?」
「5合目までは、乗り物に乗って来るからね。」
「成程。」
「納得した?」
「バハム。」
「なに?」
「お前は、女なのか?」
「生物学的にはそうだよ。」
「はぁ。」
「?」
「その姿のまま、ついてくるのか?」
「駄目?」
「いや、問題ない、多分。」
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「頭痛~い。」バドラがのたうち回る。
「そうだろうな。」
「ケイジ様、治して。」
「やだ。」
「酷~い。」
「自業自得だ。」
「ぶう。」
「で、バハムがくれた尻尾の肉の処理を頼めるか?」
「はいにゃ。」
「解ったぁ。」
「お任せを。」
「あい!」
「頑張る。」
「ズビシ!」
ムーニャとリョウ、その他にイロハ、ニホ、テト、チリが答える。
「その他3人娘の返事がないと寂しいな。」俺は思う。
エルは、ワシカに店を出し、水龍2号店として、繁盛しているようだ。
エヌは、エゴワカに店を開き、同じように水龍3号店として繁盛していると聞いた。
エムは、ガランの所で水龍4号店を開き、ガランが常連になっているらしい。
だが、3人とも、夜になると俺の屋敷に戻り、夜の生活を満喫しているのは秘密だ。
さて、20本のドラゴンの尻尾の皮と鱗とお肉、皮と鱗はいつもの様にベカスカ道具屋に売ろう。
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「ドラゴンの尻尾だけ、20本とは珍しいですね。」
「ドラゴンが自分でくれたんだ。」
「なんと、流石はケイジ様ですな。」
「今回は、尻尾の鱗だけですか?」
「あぁ。」
「肉の方は?」
「あぁ、バランが食いたいそうだ。」
「なんと、国王様にご献上を? 領地が貰えますぞ。」
「いや、貰わない、既にヤミノツウを貰ってるしな。」
「おぉ、そう言えば、ケイジ様はヤミノツウの御領主でしたな。」
「部下に丸投げしてるけどな。」
「ははは、使える鱗は180枚でした、180Gです。」
「あぁ、決済宜しくな。」俺はカードを渡す。
「はい、喜んで」
「はい、ご確認ください。」
「あぁ、信じてるよ。」
「もったいないお言葉です。」
「それじゃ「お待ちください、ケイジ様。」
「ん?」
「ミノタウルスは、ございませんか?」
「あるよ。」
「おぉ、お売りいただけませんか?」
「内臓付きの下半身でよければ。」
「解体は、わたくし共で行います。」
「んじゃ、2体卸すよ、どこに出せば良い?」
「では、カウンターに。」
「乗り切らないぞ。」
「では、奥の倉庫に。」
「あぁ。」
俺は、それをそこに置いた。
「おぉ、これほどとは。」
「確認してくれ。」
「いえ、見ただけで解ります、皮に傷一つない上物であることが。」
「そうか。」
「今回は、肉も内臓も卸していただけるのですよね?」
「あぁ。」
「300Gでお引き取りさせていただきます。」
「良いよ。」俺はカードを渡す。
「それで、ケイジ様、舌も頂けませんか?」
「1本いくら?」
「20Gで。」
「え?」
「え、安過ぎましたか、では30Gで。」
「え? あぁ、それで良いぞ。」
「幾ついただけますか?」
「幾つほしい?」
「出来れば、3本ほど。」
「良いぞ。」俺は、処理前の舌を取り出す。
「おぉ。」
「処理の方法は、ギルドに「既に買っております。」
「あっそう。」
「んじゃ、此処に置くぞ。」
「おぉ、これが、伝説のミノタウルスの舌。」
「伝説じゃねーよ。」
「決済いたしました。」
「あぁ。」
「この度の納品、感謝の極みです。」
「え? そこまで?」
「今後ともよろしくお願い申し上げます。」おやじが、恭しく頭を下げる。
納める素材に対しての態度なんだろうな。
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「バドラ。」
「なに?」
「華厳の所で食うか? バランの所で食うか?」
「え~、ケイジ様が料理してくれないの?」
「あぁ、あんな事は二度と御免だ。」
「え~、素敵だったのに。」
「そんなもん食わなくても、満足させてやるよ!」
「ぐふふ、大声で何を言ってるんですか?」
「ほほほ、こんなに明るいうちから。」
「違うから、ドラゴンの肉をどこで食うかだ。」
「ぐふふ、バラン様の所は置いておいて、此処で焼肉パーティで宜しいのでは?」
「あぁ、そうなるよな。」
「味付けや、調理はお前たちがやれよ。」
「ぐふふ、喜んで。」
「ほほほ、任せてください。」
「ケイジ様、この華厳もお力添えいたします。」
「あぁ、宜しくな。」そう言いながら、バランの所に潜る。
「おぉ、ケイジ、どうしたんだ?」
「あぁ、お前に貢ぎ物だ。」そう言いながらドラゴンの尻尾の肉を5本分取り出す。
「なあ?」
「おぉ、これは。」バランとボルカが固まる。
「知り合いのドラゴンに貰ったから、お裾分けだ。」
「なぁ、ケイジ。」
「なんだよ。」
「お前、その意味を解っているのか?」
「あ?」
「国王に、ドラゴンの肉を献上する意味だ。」
「しらね~よ。」
「ケイジ様、領地を複数与える事です。」ボルガが言う。
「パス。」
「え?」
「俺は、俺の嫁さんの父親に、お歳暮を贈っただけだ。」
「はぁ?」
「なんだよ、嫁さんの親にお歳暮を贈ったら、領地が貰えるとか、無いわ~。」
「いや、おせいぼってなんだよ?」バランが叫ぶ。
「年末に、お世話になった人に贈る、贈り物?」
「知らんわ!」
「とにかく、特別な物じゃない。」
「そうか。って、ドラゴンの肉をホイホイ持ってくるな。」
「おや、そう言う事か、んじゃ、これ以降は持ってこない。」
「いや、ケイジ、持って来ても良いぞ。」
「バランやボルカに迷惑がかかるなら、こっちで処分するよ、悪かったな。」
「ちよ、ケイジ。」
「なんだよ?」
「いや、数本なら持って来ても良いかな?」
「何言ってるんだ、お前達の迷惑になるなら、俺が処分するよ。」
「ケイジ、酷くないか?」
「ケイジ様あんまりです。」
「何言ってるんだ?」
「マジでその対応ですか?」
「お前達が、迷惑って言ってるんだ、俺が処分するよ。」
「ケイジ様、マジで引き受けますから。」ボルカが俺の肩を持ちながら言う。
「お、おぉ。」
「大丈夫だ、問題ない。」バランも顔を引きつらせながら言う。
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「あいつらにも、お裾分けするか。」俺は思う。
「紫炎、スナに。」
「はい。」
俺はそこを潜った。
「おぉ、ケイジ様、お久しぶりです。」地龍と名乗った者が挨拶をしてくる。
「あぁ、久しいな、地龍。」
「もったいないお言葉です。」
「ふむ、地龍と呼ぶのも面倒くさいな。」
「は?」
「お前は今後、マグマと名乗れ。」
「おぉ、おぉぉ、私に名前をお与え下されるのですか?」マグマの身体が光る。
「あれ? これやらかした?」
「いえいえ、最早テンプレです。」
「要らねーよ、そんなテンプレ!」
「ケイジ様、此のマグマ、一生ケイジ様にお仕えいたします。」地龍の上位種、地殻龍となった者がそこに跪く。
「あぁ、お前達に贈り物を持ってきた。」
「贈り物、ですか?」
「あぁ、これだ。」俺は、ドラゴンの尻尾のお肉を5本取り出す。
「なぁ、ドラゴンの肉ですか?」
「あぁ。」
「な、流石はケイジ様です。」
「皆で、食ってくれ。」
「はい、ありがたく。」
「で、ヨイチは?」
「はい、あちらで陣頭指揮をとられております。」
「連れていくから、後は頼むぞ。」
「仰せのままに。」マグマがひれ伏す。
「ヨイチ。」俺の言葉に、ヨイチが振り返り、満面の笑みを浮かべて駆け寄ってくる。
「ケイジ様、どうされました?」
「あぁ、焼肉パーティのお誘いだ。」
「まぁ、喜んで。」
「んじゃ、行くぞ。」
「え? 引継ぎが。」
「あぁ、マグマ、頼んだ。」
「御意!」
「と言う事で、大丈夫だ。」
「はい、ケイジ様。」ヨイチが俺に抱き着く。
俺は、そのまま虚無の窓を潜った。
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「ほほほ、ケイジ様、つつがなく進んでいます。」
「ぐふふ、ドラゴンのお肉は最高です。」
「ケイジ様、華厳は至福の時を味わっております。」
「ヨイチも楽しんで来い。」
「え? ケイジ様は?」
「俺には、ドラゴンの肉は無理だと分かったからな。」
「え?」
「大丈夫だよ、楽しんでおいで。」
「はい。」ヨイチがその輪に加わる。
俺は、普通のお肉のエリアに行く。
「ケイジ様の為に、グレートマスターバハローのフルコースをするにゃ!」ムーニャが言う。
「おい、待て、誰が許可した?」
「それ以上のお肉の焼肉を見ながら、普通のお肉を食べるにゃ?」
「あぁ、それは嫌だな。」
「にゃ。」
「マスターミノタウルスのお肉を解禁しよう。」
「にゃ?」
「よし、マスターミノタウルスの、すき焼き、焼肉、ステーキ、もつ煮、解禁する、ただし、自己責任な。」
「にゃ!」
「はい!」
「しらね~ぞ。」
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「これは、駄目だ。」
「ケイジ兄さま、もう駄目です。」
「俺もだ。」
マスターミノタウルスの破壊力、パネェ。
「心に誓うにゃ。」
「あぁ、そうしよう。」