やらかしの129
時は少し戻り、ヤミノツウの華厳の店、「水龍」で。
「決めた、あたし、ケイジ様に告白する!」
「マジで、エル。」
「うん、玉砕したら、ユーゴと結婚して店を持つ。」
「ひでぇ、俺は補欠か。」
「良いじゃないか、エルと結婚できるぞ。」
「良いなあ。」
「じゃぁ、あたしもケイジ様に告白する。」
「エヌも?」
「うん。」
「本当に?」
「玉砕したら、ショウマと店を持つ。」
「やった、俺かぁ。」
「くそぉ、羨ましい。」
「じゃぁ、あたしも、ケイジ様に告白する。」エムも言う。
「拒否られたら、ビーアと店を持つ。」
「良かったな、ビーア。」
「あぁ。」
*************
「「「ケイジ様、結婚してください!」」」エル達3人が俺に宣言する。
「はぁ。」
(3人の求婚、確認しました、)
(最早、呪いだな。)
「あっ、今回は断っても他の相手がいるな。」
(では、断りますか?)
(あぁ。)
「やめとくか。」
「え?」
「そんな。」
「酷い。」
(彼女たちの結婚適正破綻、確認しました。)
「え?」
「ぐすん、ユーゴ、慰めて。」
「いや、無理だな。」
「なんで?」
「いや、なんか急に、な。」
「あたしをお嫁さんにしてくれないの?」
「いや、ちょっと、悪いなエル。」そう言いながらユーゴが店から出ていく。
見ると、ショウマとビーアもエヌたちを無視して店を出ていく。
(結婚適正破綻の結果です。)
(マジで呪いじゃねーか。)
(・・・。)
(これ、どうすりゃ治るんだよ。)
(申し込みを受ければ。)
(はぁ。)
「今のは冗談だ。解った、受けよう。」
「え?」
「マジで?」
「やったー。」
「ウフフ、嬉しい。」
「私、尽くします。」
「寝かせない。」
「いや、寝かせてくれ。」
*************
「ケイジ様、そりゃないですよ。」求婚を断ったら、その娘が堕ちるこの世界の理を知らない3人が文句を言う。
「この行き所のない気持ちを、どうすれば良いんだ?」
「ユーゴ、まだ、イロハ達がいる。」
「そうだった、良いとこを見せるぞ。」
「俺もだ。」
*************
(お前ら頑張れ、リョウ以外の奴は、お前らで落とせ。)俺は三人にエールを送った。
「しかし、俺は何人嫁を貰えばいいんだろう。」
「ぐふふ、孤児たちに肩入れするのを、止めたらいいのではないですか?」
「あぁ、それが一番だろうな。」
「お止めになりますか?」
「いや。」
「ぐふふ、流石ケイジ様です。」
「ほほほ、しかし、ヤミノツウへの孤児の流入は減っていません。」
「それは何でだ?」
「はい、近隣の、マヌタやシバエマでダンジョンが発生してスタンビートが頻繁に発生し、その影響で孤児が集まっています。」
「それは、べワカタキや、シハリク、シヤバテタでは抑えられないのか?」
「無理な規模です。」
「はぁ、解った。」
「少しダンジョンを潰そう。」
「ぐふふ、流石ご主人様です。」
「紫炎、マヌタのダンジョンはどこだ?」
「リアンが治める、『ルズイ』の隣町で、およそ17Kmです。」
「え? 難しい距離だな。」
「軽く、エイッって感じですね。」
「紫炎。」
「はい?」
「のりっのりな答えだな。」
「ははは、まさかぁ。」
「その棒読み感が、イラっと来るな。」
「カルシュウムが足りていないのでは? 今晩のお食事は、メザシをおかずにすることをお勧めします。」
「メザシはまだ見つけていない、いやそうじゃない、紫炎。」
「はい?」
「俺を、おちょくってないか?」
「まさかぁ、私はケイジ様をサポートする存在、それ以上でも、それ以下でもありません。」
「はぁ、そうか。」
「はい。」
「まぁ良い、ルズイへ。」
「はい。」俺はそこを潜る。
「ぐふふ、お供します。」ダンサがついて来た。
「いつものような虐殺だぞ。」
「ぐふふ、マヌタは唐揚げが美味しい店があると聞いています。」
「そうなのか?」
「はい。」
「いや、いつの間に唐揚げが広まったんだ?」
「ぐふふ、ご自覚ください。」
「え? 俺?」
「それ以外、誰が?」
「あぁ、そう。」
「ぐふふ。」
*************
「マスター殿。」
「おぉ、リアン、どうした?」
「マヌタに行かれるとか?」
「おぉ、耳が早いな。」
「お供いたします。」
「私がいるから、大丈夫だ。」サランが指輪から現れて言う。
「むぅ、サラマンダーばかりずるいぞ!」
「私はマスターと一心同体だからな。」
「私だって、政務がなければ!」
「ぐふふ、どうせすぐ終わりますから、一緒に行きましょう。」
「むぅ。」サランが口を尖らせる。
「ダンサが言うように、一瞬で終わるから、良いだろうサラン。」
「な、マスターがそう言うなら。」サランはしぶしぶ認める。
「では、跳ぶか。」リアンとダンサを虚無の部屋に入れ、俺は跳ぶ。
「わはは。」
一瞬で着いてしまった。
「つまらん。」其処は、マヌタ町の入り口の門だった。
突然空から降ってきた俺を見て、門番が固まっている。
「み、身分を証明するものを。」
「あぁ、俺はベカスカのギルドカードを見せる。」
「あぁ、貴方が噂の、ようこそマヌタへ。」
「他にもいるんだ。」俺はダンサとリアンを虚無の部屋から出し、サランも呼び出す。
「こいつ等には、身分証明がないんだが?」
「いえ、Aランクの方の御連れなら問題ありません。」
「そうか、あぁ、ギルドは何処だ?」
「はい、門から真っ直ぐ進んだところにあります。」
「ありがとう。」
「いえ、光栄です!」門番が俺に敬礼をする。
俺達は、ギルドに向かった。
「邪魔するぜぃ。」俺はそう言いながら、ギルドの門を開ける。
「おいおい、礼儀がなってない奴が来たもんだ。」
「おぉ、新人にはお仕置きが必要だな。」そう言いながら、ガラの悪い男たちが席を立つ。
「おいおい、冒険者たちの内輪もめ、特にギルド内ではご法度じゃないのか?」
「へ~、そうなのか、姉ちゃん。」その男がカウンターの獣人に凄む。
「そうにゃ。」
「ほぉ、良い度胸をしているな。」そう言いながらカウンターに行こうとする男の前俺はに行く。
「おい、一般常識を弁えろよ。」
「何だと、貴様、俺を誰だと思っているんだ!」
「知らないなぁ。」
「俺は、Bランクのヘーボ様だ。」
「まったく知らないな。」
「貴様。」
「ヘーボ様を知らない奴は、もぐりだぞ。」
「そうだ、そうだ。」取り巻きが囃し立てる。
「お前達に忠告する。」
「何をだ?」
「俺に、敵意を向けるな。」
「はぁ?」
「その瞬間に、死ぬぞ。」
「だはははは、面白い、こいつ馬鹿だ!」ヘーボが笑う。
「ひははは、ヘーボ様、捻り潰して下さい。」
「ぎゃははは、最高。」
「ひははは、終わったなあいつ。」
「と、言う事だ、お前は死ね。」ヘーボが俺に切りかかる。
「あ~あぁ。」俺がぼそりと言う。
「ひぐぅ。」ヘーボは白目をむき、その場で倒れる。
「え? ヘーボ様?」
「この野郎、何をしやがった。」
「許さねえぞ。」
「この野郎!」
「いや、俺は忠告したぞ。」
「げふぅ。」
「うぎゃ。」
「だばぁ。」その3人もその場でこと切れる。
「ありがとうございますにゃ。」受付の獣人が俺にお礼を言う。
「あんなごろつきを、ギルマスは何故放っておいたんだ?」
「このギルドには、ギルマスがいないにゃ。」
「なんで?」
「スタンビートで、命を落としたにゃ。」
「あ~。」
「紫炎、ベカスカに。」
「はい。」
「アイリーン、ギルマスが死んだらどうするんだ?」
「え? そのギルドで一番ランクが高い者を、仮のギルマスにします。」
「成程。」
「その候補がいない場合は?」
「別の町から派遣されます。」
「んじゃ、マヌタにギルマスを派遣してくれ。」
「はい。」
「ヘーボが、スタンビートを討伐しなかったにゃ。」カウンターの猫獣人が言う。
「そうか、ところでアンタ、独身か?」
「何にゃ、口説いているのにゃ?」
「いや、俺じゃなくて、俺の弟が嫁さんを探しているんだ。」
「あんたじゃないにゃ?」
「あぁ、俺が言うのもなんだが、良い獣人だぞ。」
「にゃぁー、考えとくにゃ。」
「宜しく!」そう言いながら、俺はダンジョンに向かう。
「おぉ、湧いてるな。」ダンジョンから出てくる魔物を見ながら、俺が言う。
「さぁ、虐殺の始まりだ。」俺はそう言うと魔物の中心に跳んだ。
「「「「「「はぎゃぁぁぁぁぁ」」」」」」
俺は、生き残った魔物に剣を刺す。
「ぎゃぁぁあ。」
それを見た、他の魔物が俺に敵対する。
「「「「「「「「「「「「ぎゃぁぁ。」」」」」」」」」」」途端に俺の周りから、魔物が消える。
「屑魔石が数十個です。」
「孤児院の、オーブンや冷蔵庫に使えるから、全部回収な。」
「はい。」
「さて、行くか。」俺はダンジョンの入り口に進んだ。
「出来て、数か月のダンジョンですが、魔物の共食いによりダンジョンが育っています。」
「うわぁ、自給自足のダンジョンって。」
「此処が入り口か。」その場所は、石畳でできた広場で、真ん中に下に続く階段があった。
今も、出て来ようとする魔物が、俺に敵対した瞬間に消滅している。
「さて、お掃除、お掃除。」俺はそう言いながらダンジョンの階段を下りる。
「「「「「ぎゃぁぁぁ。」」」」」絶え間なく聞こえる悲鳴にも慣れたもんだ。
「さて、一階層か。」俺はドアを開ける。
「「「「「「「「「「ひぎゃぁぁあぁぁぁ。」」」」」」」」」」
(屑魔石52、魔石20、アイテムは有りません。)
「虚無の部屋に。」
(はい。)
「さて、2階層♪」
「「「「「「「「「「「はぎゃぁぁぁぁぁぁぁあ」」」」」」」」」」」
(屑魔石22、魔石40、破滅の鎧1です。)
「破滅の鎧?」
「装備していると、HPを一歩歩く毎に削りますが、全ての魔法攻撃、物理攻撃が無効になる鎧です。」
「
「う~ん、持って置くか。」
「はい。」
「さて、3階層だ。」俺は階段を下りる。
(紫炎。)
(はい。)
(このダンジョン、何階層?)
(7階層です。)
(後5階層か。)
(はい。)
「よし、サクサク行くぞ。」
俺は3階層の扉を開ける。
「「「「「「「「「「「「「「「「あぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」」」」」」」」」
「屑魔石12、魔石77、上魔石3、真実の指輪1、アダマンタイトの鍋1です。」
「真実の指輪って?」
「一度だけ嘘を見破ります。」
「それは、虚無の部屋に。」
「はい。」
「アダマンタイトの鍋は?」
「熱伝導率が最高の鍋です。」
「あ~。」
後でムーニャにあげるか。
「ガシガシ行くぞ、次は4階層だ。」
「「「「「「「「「「はぎゃぁぁぁぁ。」」」」」」」」」
「魔石20、上魔石7、炎のアミュレット1です。」
「なんだよ、炎のアミュレットって?」
(炎属性の攻撃を無効化する物です。)
「へぇ~。」
「それだけですか?」
「あぁ、売れば資金になるな。」
「次、5階層!」
「「「「「「「「「「「「「「「へぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」」」」」」」」」」」」」」」
「魔石36、上魔石11、バハロー肉(並)1重です。」
「しょぼ!」
「ぐふふ、贅沢ですね。」
「マスター殿、ドロップがあっただけでも。」
「じゃぁ、この肉はリアンにやるよ。」
「え? 頂けるのですか?」
「あぁ。」
「ありがとうございます。」
「それ以上の肉を、マスターは食べさせてくれるからな。」
「ぐふふ、否定しません。」
「なんですって?」
「ミノタウルスとか、マスターバハローとか、至極でした。」サランがウットリとして言う。
「ぐふふ、そうですね。」ダンサもそれに答える。
「ず。」
「?」
「ズルいです、マスター殿。」
「いや、ズルいと言われても。」
「何で、呼んでくれないんですか?」
「いや、毎回紫炎に頼んで連絡しているぞ。」
「え?」
「はい、その都度、『今は忙しい!』の声で接続を切られました。」
「だそうだ。」
「あぎゃぁぁぁ」リアンが発狂した。
「わた、私はぁぁ。」
「おい、リアン。」
「今まで、どれだけ損をしていたのですか?」
「どこぞの肉屋と同じ反応だな。」
「私はぁぁ。」
俺は、リアンの口を奪う。
「はうぅ。」
「落ち着け。」
「はい。」
「散策を続けるぞ。」俺はそう言って6階層に向かう。
「ぐふふ、流石はご主人様です。」
「ダンサ、黙れ!」
「ぐふふ。」
「おや?」そこに入って俺は思う。
「雑魚がいないのか?」
「その様です。」
「え~っと?」
「ボス部屋です。」
「6階層が?」
「はい。」
「はぁ、何がいるんだ?」
「レベル180、サキュバスです。」
「は?」
「サキュバス?」
「はい。」
「うふふふ、珍しい。」その部屋の奥から声がする。
「あぁ、初めましてだな、俺はケイジだ、宜しくな。」俺はその声に答えた。
「うふふふ、我が領域に足を踏み入れて、意識を保っている事は驚愕します。」
「あぁ、俺は特別らしい。」
「その様ですねぇ、私の魅力も吸生もレジストしています。」
「で、警告だ。」
「はい?」
「ここから出ていけ。」
「はい?」
「今出ていけば、命は助かるかも?」
「うふふふ、ダンジョンの魔物に出ていけですか?」
「あぁ。」
「無理です。」
「何でだ?」
「私は、ダンジョンで生まれました。」
「あぁ。」
「私は此処から離れられません。」
「離れられれば、出ていくのか?」
「えぇ、それが出来るのならば。」
「俺は、その方法を知ってる。」
「ぐふふ、ケイジ様、お止めになった方が。」
「マスター、止めた方が良い。」
「マスター殿、サキュバスは討伐対象だ。」
「あら~。」
「お前に名前をやろう。」
「はい?」
「サキュバス、サキュ、キュバ、いや、夢魔か、ふむ、ユマ、良し、お前は今からユマだ。」
「え? あたしに? 名前? ユマ?」
(ユマがダンジョンから切り離されました。)
「え~、マジで?」
「よし、最下層の魔物は何だ?」
「あたしは無視?」
「お前以上の奴がいるから、黙ってろ。」
「はい。」
「で、最下層の主は?」
「マスター、駄目だ。」
「マスター殿、ここはいけない!」