やらかしの13
「で、此処がマヤオのダンジョンかな?」
「へっへっへっ、そうでやす。」
「紫炎、何階層だ?」
(4階層です。)
「ボスは?」
(レベル82のトロールです。)
「トロール?」
(単眼の巨人種、物理攻撃ほぼ無効の存在です。)
「魔法は?」
(99%効きます。)
「楽勝じゃん!」
「マスター一階層に冒険者がいて、戦闘中だ。」
「あぁ、その戦闘が終わるまでは、介入出来ないな。」
「ミーニャ、お茶くれ。」
「はいにゃ!」ミーニャが慣れた手つきで紅茶を煎れる。
俺が用意した机に、人数分の紅茶を手際よく用意する。
「さんきゅうな。」俺がミーニャの頭を撫でながら紅茶を口にする。
「美味い。」
「にゃ、主の口に合ってよかったにゃ!」
「マスター、先に入った冒険者が全滅しそうだ!」
「え?じゃぁ、サラン、助けがいるか聞いてくれ!」
「解った、マスター」そう言ってサランが扉の向こうに声をかける。
「我が主の救済を望みますか?」
「た、頼む!もうだめだ!」
「だそうです!」
「あぁ。」そう言って俺がそこに入る。
「「「「「ひぎゃぁぁぁぁ」」」」」
いつものように、消え去る存在。
蹂躙した者の残留物。
「マスター、此処も屑です!」
「皆さん、お疲れさまでした。ドロップ品は全て提供しますので、回収したらここを出てください。」
「えー何で?」
「この次の階層はレベル30の魔物がいます。」
「え~、うそだ~。」リーダーらしき男が言う。
「そう思うなら、どうぞお先に!」
「きっと、俺達をだましているんだ。」そう言いながら、その冒険者たちは奥の階段から下に降りる。
そいつ等が下りて数分後。
「うわぁぁあぁ!」悲鳴が聞こえ始めた。
「あぎゃぁぁ。」
「みぎゃぁぁ。」
「ぎゃゃぁぁぁ。」
何人かの悲鳴が聞こえるが、忠告を無視した奴らを助ける義理は無いな。
暫くすると、声が聞こえなくなった。
「んじゃ、いくか。」
「ミーニャは、此処で待っててくれ。」
「はいにゃ。」
「あー、カッターは一緒に来ても良いぞ。」
「な、がはは、俺もここで後ろからの敵を押さえるぞ。」
「そうか、判った。」
「がはは、任せろ。」
「あー、可愛いからって、ミーニャを口説くなよ。」
「な、するか!」
「ミーニャ、口説かれたら一応、生かしておけよ。」
「にゃ、主、判ったにゃ。」
俺達は2階層に踏み入る。
眼の前に岩山がそびえていた。
「先に進むか。」
岩山に踏み込む。
直ぐに、悲痛な顔をした、冒険者たちの躯が俺達を出迎える。
見ると、全員の腹部に穴が開き血まみれになっている。
「マスターの忠告を聞かない奴らの末路に相応しい!」
「まぁ、そう言うな。仕方ないから助けるけどな。」
「紫炎、何を唱えれば良い?」
(HP1で蘇える、ディでよろしいのでは?)
んじゃぁ「ディ!」
「うぅ。」うめき声が上がった。
腹部の傷も塞がり、とりあえず生き返ったみたいだ。
「帰りに拾うか。」
「マスターは、本当にお優しいのですね。」
「まあな。」
「で、此処にいるのは何だ?」
「レベル30のハーピィです。」
「ハーピィ?」
「頭だけが人間で、身体は鳥類の魔物で、歌声で眠らせ、その生き胆を喰らう者達です。」
「え?生き胆を食う?」
「はい、マスター」
「さっきの奴ら、内臓も再生してるのか?」
(最低限の再生はしています。)
「最低限?」
(生きるのに必要な、最低限です。)
「ふ、深く考えるのは止めた。ダンジョンは自己責任だったな。」
(御意。)
「で、歌声で眠らせる?」
「はい、マスター。」
「俺に効くかな?」
(効きません。)
「だよなぁ。」
(来ました。)
「♪♬♪♬♪♬♪♬♪♬♪♬」
「おぉ、良い歌声だな。」
「マスターは平気なのか?」
「おぉ、サランも効かないんだな。」
「我は、奴らより上位の存在だからな。」
「なるほど。」
暫くすると、ハーピィの顔色が変わる。
「やっぱり眠ってないとそうなるか。」
「逃げるかな?」
しかし、ハーピィ達は攻撃を仕掛けてきた。
「え~、ふつう逃げないか?」
(今までそう言う者がいなったのでしょう!)
「若いダンジョンだし、そう言う事か。」
数十匹のハーピィが俺に襲いかかる。
俺は腰の刀を抜いて、侍の技を発動する。
「虚空斬!」剣刃を飛ばす技.
全てのハーピィが塵となる。
「マスター、ドロップは歌姫の指輪だ。」
歌姫の指輪
(風属性攻撃の倍化と、風属性攻撃半減の指輪です)
「微妙だな。」
「微妙ですね。」
「売るか!」
「仰せのままに!」
「紫炎、ミーニャに連絡取れるか?」
(可能です。繋ぎますか?)
「頼む!」
(どうぞ。)
「ミーニャ。」
『え?主?』
「ミーニャー、カッターと2階層に来てくれ。」
『はいにゃ。』
「主、来たにゃ。」
「がはは、ケイジ。何だ?」
「カッター、あそこに転がっている冒険者を、ダンジョンから連れ出して馬車に乗せておいてくれ!」
「がはは、任せろ!」
「ミーニャ、サランと一緒にドロップアイテムを集めてくれ!」
「はいにゃ!」
「相変わらず、多いな~」俺も魔石を拾いながら独り言を言う。
(ここの階層は、良い物が多いですね。)
「主~終わったにゃ!」
「マスター、すべて集めた!」
「おー、ご苦労さん!」そう言って、二人の頭を撫でる。
「えへへ。」
「マスター。」
「そう言えば、此処に入ってから、どの位の時間が過ぎた?」
(1刻です。)
「うを、まだ昼前か~。」
「サクサク攻略するのは良いけど、夜営無駄になるな。」
「ふふふ、マスター、夜営のテントでも私はマスターに快楽をご提供できますよ。」
妖艶な顔をして、サランが言う。
「サラン、順番待ちになって、お前の番は朝方だぞ!」
「な?」
「やはり、正妻からだろ?」
「く、わ、判ったマスター。順番は守る!」
「でもその頃は、俺、寝てるな!」
「な、マスターが寝ていても、私なら色々可能だ!」
「サラン。」俺はサランの頭を撫でながら言う。
「寝させてくれ!」
「っ!」
「そ、それがマスターの望みなら。」
(よし!安眠確保!)
「んじゃ、三階に行くか。」
「御意!」
「ミーニャ、危険はないと思うから、階段の所で待っててくれ。」
「はいにゃ。」
俺達は、3階に降りる。
「これは、不思議な光景だな。」
目の前には、右側が岩山、左側には海が広がっていて、その堺は砂浜ではなく1m程の崖で、その崖に奥に続く道があった。
「岩山の岩陰と、海の中に凄い存在を感じるな。」
「マスター、岩山には、レベル5~60のセイレーンが確認できます。」
「セイレーン?」
「上半身は、人間の女性ですが、腕と下半身が鳥類の魔物です。」
「ハーピーの上位種か?」
「いえ、マスター別物ですが、攻撃は同じような物です。」
「歌か?」
「はい、眠らせて巣に持ち帰り、更に爪から出る毒を身体に注入して動けなくして、雛の餌にします。」
「生きながら食われるのか、いやだな。」
(ケイジ様、海の中には同レベルの人魚が存在しています。)
「人魚?」
(一説では、セイレーンの亜種が、鳥類の代わりに魚類の下半身に進化したとも言われています。)
「そっちも歌か?」
(はい、眠らせて海に引きずり込み、溺れさせた後で生き胆を喰うそうです。)
「此処のダンジョンは、その系統なのかな?」
「マスター、来ます。」
海を見ると、目から上を出した頭が数十個浮かんでいる。
岩山の方には、数十羽が今にも飛び立とうとしていた。
「うわぁ、面倒くさそうな数だ。」
「サラン、下がれ!」
「はい、マスター。」
「一気に行かせてもらうぞ!」
一歩前に出て、叫ぶ。
「霹靂!」
あたり一面に雷が落ちる。
岩山の方は、効果がてき面だった。
セイレーン達は、絶命しないまでも、感電して動けない状態だ。
海の方は、数体が浮いているが、人魚達は海に潜って回避したようだ。
「バースト!」俺は海中に魔法を放つ。
海中で、爆発し、海面がせり上がって、海水が岸壁を超えてくる。
俺はサランを抱えると、岩山の中腹までジャンプする。
「マスター、人魚達が浮いてます。」
「爆破漁って奴だ。」
「良い子はマネしちゃダメだぞ!」
「マスター?」
「ごほん。あのままじゃ、ドロップが沈むな。」
「はい、マスター」
「トルネード!」俺は海面に向かって呪文を唱える。
竜巻が海水ごと人魚達を吸い込み、空中に巻きあげる。
俺は、魔力をコントロールして、海水だけをはじき出し、人魚達をセイレーンの傍に落下させた。
存命していたセイレーンも、人魚落下の衝撃で絶命した。
俺達がいる岩山の下に、ドロップ品が散乱していた。
『ミーニャ、来てくれ。』
「はい、主!」
「悪いな、又ドロップ品を集めてくれ。」
「了解だにゃ!」
「主、これは凄いにゃ!」
「魔物の歌姫の純情」
このアイテムを持って、戦いを行うと、戦う相手に何らかの状態異常が付与される。
耐性無効、複数付与、ボーナスとして、役に立たない耐性付与の場合、即死付与。
「きょ、凶悪だな。」
「これは、ミーニャかな?」
(ミーニャ様もこれで即戦力です。)
「ミーニャ。」
「はい、主!」
「これを肌身離さず持っていろ!」
「にゃ、主の愛を感じるにゃ!」
「マスター、ドロップは全て拾った。」
「おぉ、サラン、ありがとうな。」
「マスターの為に!」
「さて、最後の階層か。」
「準備は良いか?」
「私は全開だ!」
「ミーニャは後ろに下がっているニャ!」
「よし、行くぞ。」
俺達は4階層に向かった。
リアルで、左手の中指を、両開きのドアに挟まれて粉砕骨折をしてしまい、モチベがダダ下がりなのです。
マジで痛い。
更新頑張りますので、見捨てないで下さい。